１９８８年の夏、鄭南榕は初めて出国し、日本・アメリカに赴き、台湾独立 聯盟のメンバーをはじめ、数多くの在外台湾人と会いました。帰国後、更に 積極的に新しい国家の建設を推し進めるため、「新国家運動」が誕生したの です。ただ、台湾独立のスローガンを唱えるだけでは足りず、さらなる実際 の行動がなければなりません。そこで鄭南榕は１２月１０日、「世界人権デ ー」当日に発行した週刊『自由時代』２５４号に、許きょ 世せい 楷かい 博士によって書か れた「台湾共和国憲法草案」を掲載しました。この論文を呼び水として広く 共同議論を引き起こし、台湾に適した新憲法を作り出すような役割を果たす ことを期待されたのです。

台湾社会を揺るがしたこの「新憲法草案」は、国民党政府の不安をも引き起 こしました。雑誌は再び発行禁止の憂き目に遭い、翌年の１月２１日に「反乱罪容疑」での召喚状が届きました。鄭南榕は断じてこの罪名を受け入れる ことを拒否し、またそれは明らかに国民党政府が政治的に異議を唱える人た ちへ与える迫害であり、人民には抵抗する権利があるはずだと指摘しました。

そこで、鄭南榕はその決意を示すため、「国民党は私を捕まえる事はできな い。私の屍を超えてゆけ！」と明言して、１月２６日から雑誌社に立てこも ることにしました。国民党政府の圧政に対して、鄭南榕の籠城戦は、実は最 も平和的な非暴力抗争でした。

籠城している間、国際組織からの関心と台湾社会からの声援が殺到しました。 また、警察隊の強行突入を防ぐために、支持者たちは自発的にボランティア として、昼夜を通し、交互に雑誌社を見守っていました。

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