モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
... moreShare 市場の風を読む
Share to email
Share to Facebook
Share to X
グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンタートランプ次期政権のかたちが具体化するに伴い、その財政政策に注目が集まっています。グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが、最近英国で行われた選挙を参考に、米国の政策シフトに伴う市場の反応について考えます。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンター, 今回は、グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが、米国の選挙と財政政策について、そして英国の財政政策の経験からどのような教訓が得られるかについてお話します。
このエピソードは11月13日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
弊社の最近のリサーチでは米国の選挙が重要な位置を占めてきました。弊社は米政権が対峙しなければならない、政策上重要な3つの側面に注目しています。これらは移民、関税、そして言うまでもなく財政政策です。引き続き選挙が1つのテーマであることに変わりありませんが、英国と比較して米国についてどのような教訓を得られるか検討してみると良いかもしれません。
英国では総選挙から数ヵ月を経て、最近新たな予算案が提出されました。英国における選挙の経験が比較対象として適切な最大の理由は、新政権の発足から予算の提示までに要する時間です。市場はもっぱら 変化を期待するものですが、実際に政策を策定するプロセスははるかに煩雑で時間を要するものです。
今週は、多くの期待が既に株価に織り込み済みになりました。そこで、英国における政策形成プロセスについて考え、そこから米国について得られる教訓を検討することが有益と思われます。
去る5月に英国では総選挙の結果、14年ぶりに政権が交代しました。ただし、新政権による来年度予算案の提示という重要な時が訪れたのはわずか1週間前でした。
今回、おぼえておくべき点は、予算案の発表を受けて金利が急上昇し、政府に対する信頼が試されたことです。その結果、特に米国の財政状態は債務の対GDP比を安定させるためにプライマリーバランスを必要としていることから、今回、市場は労働党新政権の予算に注目しました。そして、特に金利が上昇した時、つまり負債のコストが上昇する場合は、債務を一定に維持するには、プライマリーバランスが拡大する必要があります。
新しい労働党政権は、資金不足を増税で賄う一方で、同時に政府の投資支出拡大を提案しています。意思の疎通を巡る問題をある程度抑えるために、増税を中心とする多くの提案は事前に公表されました。新たな財政支出が予想される点も周知されており、正式に予算案が発表される数ヵ月前から英国の金利は上昇していました。
しかし、いろいろと前置きされていたにもかかわらず、予算案発表当日に市場は反応しました。投資支出の前倒しの度合いや、予算責任局が同時に実施した、この政策は成長とインフレを押し上げ、その結果、より高い金利を必要とするとの評価も市場はサプライズと見なしました。
現在、クライアントとの会話で、米国と英国の類似点が指摘されています。負債コストがイールドカーブに織り込まれるに連れて、米国の金利コストは着実に上昇しています。時間の経過に伴い、米国の債務における金利費用の対GDP比も継続的に上昇し、じきにそれまでの最高値を更新するでしょう。
このように、債務の対GDP比を本当に安定させたいなら、米国は財政を引き締める必要があります。市場は財政政策の信頼性を評価する必要があると見られ、金利負担が大きくなるほど、厳しく精査するでしょう。米国の予算プロセスは、英国に比べると大幅に明確さを欠くため、2025年の大半で審議や議論が起こる見込みです。そして、関税がどれだけ新たな持続的な歳入につながるかという新たな疑問があります。貿易転換効果により、関税による歳入の増加は限定的であると過去の例は示唆しています。これらの事実を総合すると、米国財政政策の見通しは、かなり長い間変化し続けると予想されます。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
共和党のホワイトハウスへの返り咲きと連邦議会での過半数議席獲得が確定しようとしている現在、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、規制緩和、税制改正による追い風、投資意欲の回復に市場が備えようとしていると述べています。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン, 今回のエピソードでは、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、米国大統領・議会選挙の結果と株式市場への影響についてお話しします。
このエピソードは11月11日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
選挙前に弊社が実施した調査では、共和党の圧勝がプラスに寄与すると見込まれていた銘柄で、11月5日までの期間に大幅なアウトパフォームは見られませんでした。つまり、共和党の圧勝が完全には織り込まれていませんでした。その結果、先週は金融株、工業株およびその他のシクリカル株が大幅にアウトパフォームしました。選挙結果が明らかとなり、規制緩和環境、税制政策の追い風、アニマルスピリット復活の可能性といった見通しが強まったため、クオリティの高いシクリカル株にはさらなる上昇の余地が見込めると我々は見ています。こうした展開の背景には、シクリカル株のアウトパフォーマンスへのサポートを既に強めていたマクロ経済環境があります。このため、我々は10月初めにこれらの銘柄のウェイトをオーバーウェイトに引き上げています。ただし、引き続き、関税の影響を受ける消費財株と再生エネルギー株については売りのスタンスを維持します。
10月初めに金融株のウェイトを引き上げたのは、決算発表シーズンを控えて期待が低かった一方、ポジショニングも依然、低かったためです。その後、我々の調査で、選挙にかけての金融株のアウトパフォーマンスの大半は、予測市場においてトランプ候補勝利の確率が上昇したからではなく、業績予想の大幅な上方修正によって説明されることが分かりました。選挙結果が判明した現在は、ファンダメンタルズの改善に加えて、規制緩和に対する期待もパフォーマンスを牽引していると見られます。
2016年のシナリオでは、小型株と、クオリティのより低い株式が、選挙後にアウトパフォームすると示唆されていました。しかし今回は、考慮に価する重要な違いが2つあります。第1に、2016年には金利とポジティブな相関関係があった市場のいくつかの領域が、現在はマイナスの相関関係になっていることです。別の言葉で言うなら、景気サイクルのより終盤に近いところにある現在の環境において、金利上昇に対するこうした銘柄の感応度は、2016年よりもマイナスの度合いが大きくなっています。仮に、選挙後に金利のアップサイドが大きくなるのであれば、小型株とよりクオリティの低いシクリカル株の上値余地が小さくなると思われます。さらに、小型株の相対的な収益予想修正の度合いが現在はネガティブになっていますが、2016年はポジティブでした。最後に、2016年は選挙後にアニマルスピリットが上昇しましたが、小型株の相対パフォーマンスは、選挙からわずか1ヵ月後の12月初めにピークをつけました。米国株式市場のモメンタムは、クオリティの高いシクリカル株を中心に上昇を維持していますが、潜在的なリスクは考慮すべきです。その第1は、ターム・プレミアムの上昇に牽引された金利の大幅な上昇です。これまでのところ、ターム・プレミアムの上昇は50ベーシスポイントと、投資家の懸念にはつながっていません。しかし、財政の持続可能性に関する懸念から、ターム・プレミアムが今後大きく上昇すれば、株式のバリュエーションに逆風になることが見込まれます。第2に、マクロ経済関係者の間でより多く支持されている見解の1つがドル高です。年末までドル高が続いた場合、多国籍企業の2024年と2025年の利益成長に逆風となる可能性があります。
株価のポジティブなモメンタムに対する最後のリスクは、株価それ自体です。過去数ヵ月、S&P 500は、ファンダメンタルズから離れた動きを見せました。より具体的には、S&P 500の前年比の動きと、業績修正の度合いや景況感調査との関係性が現在ほど薄くなることは稀です。しかし、これまでのところ、市場や財界首脳の選挙に対するポジティブな反応を踏まえると、恐らくアニマルスピリットが企業業績予想の上方修正につながる可能性があります。これは、すでに株価に織り込み済みとなっているだけに、現在の株式市場の道筋を維持するためには必要なことです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
第二次トランプ政権の誕生が見込まれ、グローバル市場にその影響が一部なりとも織り込まれました。今回は、関税引き上げの可能性と財政政策の二つの長期的なテーマについてお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト ----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、米国大統領への選出が見込まれるトランプ氏の第二次政権が市場に及ぼす影響について、弊社の債券・米国公共政策担当グローバル責任者のマイケル・ゼザスの初期考察をお伝えします。
このエピソードは11月6日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
投票日の夜、トランプ氏の勝利が確実視されるにつれ、市場は、第二次トランプ政権が採るであろう公共政策の影響を材料として織り込み始めました。まずはドルが上昇しました。トランプ氏が関税の引き上げを主張していることを踏まえれば当然の動きですが、これは米国よりもほかの国々の成長に影響が及ぶことになるでしょう。また、米国債が売られ、利回りが上昇しました。財政赤字の大幅拡大に繋がる減税政策をトランプ氏が支持していることを考えれば、これも当然の動きと言えるでしょう。こうした中、米国株式市場は、資本財やエネルギーなど、優遇税制および規制緩和拡大の恩恵を受けると思われるセクターを中心に、株価が上昇しました。
ただ、第二次トランプ政権の誕生が見込まれることで、グローバル資産市場に対する影響が一部なりとも織り込まれた現在、市場の動きを理解することはこれまでよりも難しくなりました。我々が注目するテーマはいくつかありますが、最も重要と考えるのは次の2点です。
1つめは、関税の引き上げについてです。弊社エコノミクスチームによれば、関税の引き上げは物価の上昇や、成長の妨げにつながり、例えば、10%の一律関税や中国からの輸入品に対する60%の関税が課されれば、物価は1%押し上げられ、GDP成長率は1.4%縮小すると試算されます。こうした数字の変化は、ソフトランディング・シナリオはもちろん、株式やその他のリスク資産にとって追い風となるような投資環境を著しく損なう可能性があり、また、その度合は小さいかもしれませんが、異なる方法で関税を引き上げても、同じような影響があるでしょう。我々の見解では、行政トップによる関税引き上げは、一律ではなく、特定の国や製品を対象にしたものにならざるを得なくなる、すなわち、関税の引き上げ方の違いによって市場見通しは大きく変わると考えます。
2つめのテーマは、財政赤字拡大のペースと規模についてです。米国の財政政策は、2025年に失効する米国税制改革法(Tax Cuts and Jobs Act)に定められたいくつかの条項に準拠することが求められています。よって、今回の選挙結果にかかわらず、その動向に関しては、2025年終わりまで不透明さが残ると我々は予想していました。ただ、弊社の基本ケース想定ではないにせよ、共和党による上院の過半数議席獲得を踏まえると、減税が前倒しで、しかもより大型化して実施される可能性も出てきました。こうした中、財政赤字拡大のペースと規模の違いは、最近上昇した金利が今後さらに上昇するのか、現行水準のままで推移するのかを左右する要因になると考えます。
結論を言えば、選挙が終わり、今後、政権交代が始まると共に、市場戦略を策定する指針となるような政策が数多く実施されるようになります。我々は、政策立案者の声明や考えにこれからも注目し、そこらから読み取れるシグナルを皆様にお届けして参ります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
ミレニアル世代とZ世代のパーソナルファイナンスに対する意識と取り組みを探り、その主なトレンドを浮き彫りにした最近の調査結果について、モルガン・スタンレーの米国フィンテックおよび決済サービス担当責任者がお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、モルガン・スタンレーの米国フィンテックおよび決済サービス・リサーチ責任者のジェームス・フォーセットが、米国の若年層のパーソナルファイナンスに対する意識と取り組み方について深掘りし、その結果が示唆する重要な意味を説明します。
このエピソードは11月1日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
Y世代という呼び方でも広く知られるミレニアル世代とZ世代が、お金に関して上の世代とは異なる新しい考え方を持ち、実践していると思われる方は多いでしょう。何せこの2つの世代は、人生の多くをオンラインで過ごしており、金融やそのほかの問題について、必ずしも親のアドバイスを頼りにしている訳ではないのですから。しかし、私たちが実施した調査の結果からすると、事実はその逆かもしれません。
米国の人口の40%近くを占める16歳から43歳までの年齢グループのお金に関する考え方を理解するため、私たちは当該年齢グループに該当する米国の消費者4,000人以上を対象にAlphaWise調査を実施しました。
この調査の結果からすると、ミレニアル世代とZ世代の財務目標、銀行サービス選好度、中期的な人生設計における願望は、全般として上の世代が重視・優先していたものとそれほど大きく異なりません。例えば、2018年に実施した本調査の結果と同様、この年齢グループの消費者にとって人生で最も重要な要素が家族であるとの考えに変わりはなく、また、持ち家、大学教育、雇用、個人的な財務状況について前向きな考えを持つ傾向がある点も変わっていません。さらに28歳から43歳までの年齢グループを見ると、年間平均所得は10万ドル以上とすべての年齢グループの中で2番目に高く、また、年間平均支出は8万6,000ドルで、そのうちの3分の1以上が住宅関連に向けられています。
向こう5年から10年の間に持ち家に住みたいと考えるY世代とZ世代の比率は拡大しており、また、Y世代の中でも年齢が若い層の場合、これからの人生設計で最も優先度の高い中期的な願望は、家族を作り、子育てを開始することでした。これは、リテール、住宅用、宿泊用、レンタル収納など、消費者向け不動産業界にとって追い風要因となる可能性があります。ただし、Y世代とZ世代は、パンデミック以前と比べて住む場所を変えたいと考える傾向が弱くなくなっています。2018年の本調査結果と比べると、現在のY世代とZ世代は、向こう5年から10年までの間に住む場所として、現在と同じ地域に住み続けたいと考える傾向が当時より強くなっているのです。
Y世代とZ世代の消費者は、上の世代と比べて毎月貯金する傾向が強く、これが裁量的支出を将来的に押し上げる追い風要因となる可能性があります。また、年齢グループの違いにかかわらず、旅行が優先順位のトップにあることに変わりなく、これが現在進行中の旅行市場の力強い伸びと、大手クレジットカード・プロバイダーにとって有利なクロスボーダー決済への追い風となる可能性があります。
これらのほかにも、私たちの分析結果からは予想外の事実をいくつか読み取ることができました。例えば、この調査の結果は、世間で広く受け入れられている「若い世代は信用面で不利」という考えが事実と反することを示唆しています。実際、この調査の結果に基づくなら、Z世代の消費者の大半は、X世代やミレニアル世代と同様、従来型クレジットカードを1枚以上保有しています。ミレニアル世代とZ世代の従来型クレジットカード利用頻度は2018年に比べ高くなっていますが、データを分析した結果からすると、これは資金ニーズに迫られてというよりは、利便性によるものだと考えます。若年層の借入の多くは、主として従来的な金融機関から借りる自動車および住宅関連ローンで、フィンテックから資金を借りる例はまだ少ないようです。
予想外の結果はまだあります。Y世代とZ世代が上の世代よりオンライン・バンキングに魅力を感じていることは確かなのですが、2つの世代を合わせた全体の75%が金融機関の物理的な支店の重要性を認識していることも事実で、オンライン・サービスしか提供しないオンライン専業銀行より、従来型の商業市銀行、地方銀行、コミュニティバンクを好む傾向が依然として見られます。さらに言えば、Y世代とZ世代はどちらも、銀行が物理的な支店を持つことは長期的に重要と考えています。
私たちの分析結果からすると、どの世代にしても、それぞれが重要・優先と考えるパーソナルファイナンス要素は歳を取っても変わらない傾向が見られます。このようなパターンが将来にわたって変わらず続くかどうかに関して、引き続き注視してきたいと考えています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
オフショアリングの動きが数十年続いた後、米国の製造業の国内生産に回帰する動きが起こっています。マルチインダストリー・アナリストのクリス・スナイダー(Chris Snyder)が、このトレンドの背景にあるものを解説します。
このエピソードを英語で聴く。
—----トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、弊社の米国マルチインダストリー・チームのクリス・スナイダーが、工業の生産拠点の米国回帰によって予想される幅広い影響を検討します。
このエピソードは10月25日 にニューヨークにて収録されたものです。
To hear this episode in English, click the link in the episode description.
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
世界の製造業に劇的な変化が起こっています。その中心となっているのが米国です。過去数十年間、オフショアリングと国際的なサプライチェーンへの依存が続いた後、国内生産に回帰する動きが起こっています。リショアリングと呼ばれるこの動きは単なる一過性のトレンドではなく、戦略的な生産能力の調整であり、全世界で進行中のテーマである「多極化」を示唆しています。
実際、米国は再工業化の初期段階を迎えようとしていると弊社は考えています。これは数十年にわたる機会で、弊社はその規模を10兆ドルと試算しています。さらに、過去20年以上、停滞が続いた米国の工業が再び成長し始める可能性があると見ています。
米国内における生産を有効かつ黒字にする複数の要因があいまって、製造業の米国回帰に拍車をかけています。最初に火を点けたのは、関税や貿易協定など政策の変更でしたが、コロナ禍によってサプライチェーンの長期化や海外生産への過度の依存によるリスクが明らかになりました。
その一方で、オートメーション、人工知能、高度なロボット工学など、最先端技術の普及によって、低賃金諸国のコスト優位性は後退しています。盤石なテクノロジー・セクターとイノベーションのエコシステムを持つ米国は、技術を活用して製造業の基盤を活性化できる類のないポジションにあります。
直接その恩恵を受けるのは誰でしょうか?半導体、医薬品、そして高度な製造システムといったハイテク・セクターが、最大の勝ち組になると見られます。自動車や航空宇宙など、在来の工業セクターも復活しつつあります。さらに、より持続可能な製造工程に投資する企業も、政策によるインセンティブや市場の需要拡大の両方から恩恵を受ける位置にあります。結局のところ、こうした企業はサプライチェーンを短縮し、訴訟や関税のコストを低減し、事業運営構造の復元力を高めることになるでしょう。
米国経済全般にとってはどうでしょうか?その影響はかなり広範囲に及ぶと弊社は予想しています。米国の工業の全容が変化するに当たって、リショアリングはGDP成長を押し上げると見込まれるだけでなく、長年、米国経済の頭痛の種となって来た貿易赤字の拡大に歯止めをかけ、さらには縮小させる可能性もあります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
人間の脳と外部ディバイスの直接接続を可能にする技術の医療分野における可能性と市場機会について、この方面に詳しいモルガン・スタンレー医療テクノロジー・チームがお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、モルガン・スタンレー米国医療テクノロジー・チームのカラム・ティッチマーシュが、SFさながらのテーマ、ブレイン・コンピューター・インターフェイス、略してBCIについてお話します。
このエピソードは10月22日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
アイアンマンとして知られる主人公のトニー・スタークが作中で装着する最新版アーマースーツは、ブレイン・コンピューター・インターフェイスの良い例だと思います。大富豪のビジネスマンで発明家でもある主人公が重傷を負った際に開発したこのアーマースーツにより、主人公は頭の中でそう考えるだけで、空を飛んだり、リパルサーブラストなる武器で障害物を吹っ飛ばしたり、誘導ミサイルで敵を撃退したりと、超人的な能力を発揮できるようになるのです。
もちろん、これはSFの世界の出来事です。現実世界のブレイン・コンピューター・インターフェイス、略してBCIは、それほど奇想天外な技術ではありません。しかし、頭の中でそう考えるだけで、例えば、スクリーンに文章を表示させたり、ロボット義肢を動かしたりすることができるなど、魅力的な技術であることに変わりはないと思います。
BCIは100年以上前から開発が進められてきた技術ですが、最近の技術進歩のおかげで実用化のタイミングが急速に近づいています。私たちの予想では、BCIの商業ベースでの医療利用はあと5年ほどで始まり、ALSなどの筋萎縮性側索硬化症からうつ病まで、幅広い健康障害の治療に役立つようになるでしょう。
私たちがBCIに見込む市場機会は膨大で、理論上の最大市場規模、言い換えるならTAMは米国だけで4,000億ドルに達すると見ています。BCI技術には、スクリーン上のカーソルを動かすなど、頭の中で考えたことを実行するエネーブルBCIと、うつ状態やてんかん発作などの有害事象を予防するプリベンティブBCIの二つのタイプがあり、この数字はこれら二つのBCI技術それぞれに見込むTAMを合わせたものです。
BCIの医療分野における市場機会を分析するに当たり、私たちはTAMを初期TAMと中間TAMの二つのセグメントに分けました。初期TAMは、重度の上肢障害を持つ個人や、てんかん発作やうつ状態など、特定の神経系疾患を患う個人を対象とするBCIに見込むTAMから成ります。最初にBCIを利用した治療を受けられるのは、こうした障害や疾患を持つ個人になるとの考えからです。一方、中間TAMは、軽度の上肢障害や重度の下肢障害を持つ個人を対象とするBCIに見込むTAMから成ります。BCI技術が発達すると共に、こうした障害を持つ個人もBCIを利用した治療を受けられるようになるとの考えからです。
米国では現在、初期TAMを形成するBCI対象の個人や患者が少なくとも280万人、中間TAMを形成するBCI対象の個人や患者が680万人存在します。そして先に説明した一度きりのインプラント処置に基づく推計通り、この二つを併せた潜在売上高は4,000億ドルに達すると考えます。
一方、更新サイクルやソフトウエア更新に伴って繰り返し得られる経常収益を勘案すると、BCIに見込む市場機会は著しく拡大する可能性があります。しかし、推計TAMの規模が膨大なことは確かなのですが、実用化から最初の20年間の普及には限りがあると私たちは考えています。私たちの予想に基づくなら、BCIのインプラント処置による2035年までの売上高は15億ドル弱、その後、年間ランレートは2036年から5億ドルを超え、2041年には10億ドルに達します。
BCIの医療分野利用が向こう数年間のうちに始まることは、考えるだけでわくわくします。しかし、BCIの医療分野利用が広く普及し、さらに発展するには、規制が設けるいくつものハードルを乗り越える必要があると私たちは予想します。BCIは将来的に、ニューロゲーミング、戦争、果ては人体の生物化学的最適化などといった分野でも利用されるようになるのでしょうか?
その可能性は確実にあります。しかし、だからこそ、この最先端テクノロジーの安全かつ責任ある利用を全うする責務が私たちにはあるのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
選挙結果の不透明感がクレジット投資家に不利益をもたらし得る理由について、弊社のコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のAndrew Sheetsが解説します。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は弊社のコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のAndrew Sheetsが米国選挙とクレジットへの影響について解説します。
このエピソードは10月18日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
モルガン・スタンレーの今年のクレジットに対する前向きな姿勢は単純な理論を拠り所としています。クレジットは極端を嫌う資産クラスであり、企業が破綻すれば損失が発生しますが、企業の利益が2倍、3倍に増えたからと言って特に利益が増えるわけではありません。クレジットは適度を並外れて好む資産クラスだと言えます。
そして、モルガン・スタンレーでは、大いに適度を予想しています。米国と欧州の適度な成長。適度なインフレ、これは来年にかけて低下し続けます。中央銀行の利下げは適度で、景気後退期によく見られるような急激な利下げではなく、フェデラルファンド金利は来年の中頃には3.5%を若干下回る水準に落ち着くと弊社は見ています。適度な経済と企業の積極性が適度な水準であることは投資家の耳に心地よく響き、平均より高いバリュエーションを支えると弊社は見ています。
では、来たる11月5日の米国選挙はこの無難な状況にどう影響するでしょうか。
政府の扱う問題を誰が指揮するのか、しかも、世界最大かつ最強の経済を誇る国の政府です。この選挙は2人の候補者の違いという点でも注目に値し、この2人の経済、国内政策、対外政策に対する考え方は非常に対照的です。これらを背景に、クレジット投資家が念頭に置くべきことを提案します。
第一に、大きな視点から「クレジットは適度を好む」という概念は弊社にとってぶれない軸です。経済政策を大きく変えるような選挙結果、あるいは政策全般の不透明感が増すような選挙結果はクレジットにとって大きなリスクとなる確率が高いでしょう。
第二に、議論の対象となっている様々な政策の中でも、関税は特に重要だと感じます。なぜなら関税は一般的に議会の承認なく導入でき、したがって実施の確認が非常に容易なためです。関税案によりクレジットの個別銘柄レベルで大きなばらつきが生じる可能性があり、最終商品のかなりの部分を輸入している小売などのセクターにとっては重大なリスクとなります。時間に制約のある投資家に対しては、関税は弊社が大半の時間を充てる政策分野であり、弊社の選挙がらみのクレジットリサーチの多くが重点的に取り上げています。
第三に、注目すべきこととして、株式相場が史上最高値近辺にあり、クレジット・スプレッドが歴史的な低水準にあっても、選挙を控えて株式もクレジットも予想ボラティリティが拡大しています。そこで疑問が生じます。これらのオプション市場は他の市場が知らないことを知っているのではないか?弊社は懐疑的です。歴史的に、市場でボラティリティの拡大と史上最高値が同時に起きている場合、そういうことは滅多にありませんが、短期的には悪くなく、むしろ良い兆候である傾向があります。この説明として考えられるのは、投資家はまだ少し臆病になっており、本来あるべき姿ほど前向きでないのかもしれません。
米国選挙が近づいていますが、結果は読みにくく、将来の政策が選挙にかかっています。現在見られる高いインプライドボラティリティは、弊社の見るところ、何か隠れた要素を反映しているのではなく、既知の未知を織り込んでいるものと思われます。関税政策は議会の承認が不要で実施が容易なため、クレジットの個別銘柄に最も強く関係してくるでしょう。そして大きな視点から、クレジットは適度を好むため、それを達成する可能性がより高い選挙結果がクレジットにとってはベストとなるでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社の韓国・台湾担当チーフエコノミストが、韓国の人口動態に迫る危機を克服するために必要な改革についてお話します。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、モルガン・スタンレーの韓国・台湾担当チーフエコノミストのキャサリン・オー(Kathleen Oh)が、韓国の高齢化危機を克服するために何が必要かをお話します。
このエピソードは10月15日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
韓国は人口動態に関して最も大きな問題を抱える国々の1つです。公式データによれば、来年は65歳以上の国民が人口の20%を超える超高齢化社会となる見通しです。その意味するものは極めて大きく、韓国政府は最近、人口緊急事態を宣言しました。これは誇張ではないと弊社は考えています。
最大の原因は韓国の低い出生率にあります。2023年には世界で最も低い水準に落ち込み、現在は0.72となっています。参考までに、一般に、人口を一定に維持するために必要な合計特殊出生率は2.1と言われています。来年までに韓国の人口は減少し始め、向こう40年間で生産年齢人口が2分の1に減少し、総人口は現在より3分の1少なくなると予想されています。韓国中央銀行は、このペースで人口が減少すると、潜在成長率が2024年~2025年の2%から減少し、2040年までにマイナスになる可能性があると予想しています。
それでは、なぜ韓国の出生率はこうした記録的な低水準になったのでしょうか?短期的には主として2つの原因があります。第一はコロナ禍の時期に、結婚する人が減少し、出生数が急速に減少しました。韓国では婚外子はタブーとされています。2022年に結婚が再開し、出生数が若干回復しましたが、不十分な水準です。
第2に、過去10年間に住宅価格が80%上昇し、若いカップルが家族を持つ意欲に水を差しています。子供が1人いる家庭は、第2子を持つには金銭的な負担が大きいと感じています。短期的な要因以外に構造要因もあります。韓国は短期間に急速な経済成長を遂げた結果、雇用情勢と住宅市場の見通しが不透明になっています。
韓国の政策担当者は過去20年間、低い出生率の問題に取り組んできました。政府はこれまでに3,200億ドル以上を人口動態の課題解決に投じています。こうした努力によって、たしかに問題の認知度は高まりましたが、危機を克服するには至っていません。 なぜでしょうか。それは、所得の不確実性や、育児と教育にかかる高いコストという根本的な原因に対処して来なかったからです。
構造改革が必要であることは明らかです。確かに韓国は現在、問題の克服に向けて根本的な問題について重要な施策を講じています。政策担当者は15年ぶりに年金制度改革に取り組んでいます。仕事と生活のバランス改善、男女の賃金格差縮小、働く親たちへの支援拡大などの措置が焦点となっています。また、移民に対する規制緩和も検討されており、人材不足の緩和につながるとみられます。さらに民間教育にかかるコストを低減する努力もなされています。そして、政府は資本市場のインフラ改善も重視しています。韓国政府は海外からの投資を惹きつけることを目指すとともに、家計の資産蓄積手段の確保や、国内企業の借入れコスト低減を助けようとしています。
もちろん、減少傾向を急に反転することはできませんし、ポジティブな変化には数年を要するでしょう。むしろ数十年かかる可能性もあります。韓国政府は、出生率を2030年までに1.0に回復させることを中期目標に設定しており、達成すれば生産年齢人口の減少が5年先送りされると見られます。さらに、出生率が2.1に到達した場合は、生産年齢人口の減少を20年遅らせることができます。反対に、出生率が現在の0.72にとどまった場合、2065年までに人口は半減し、2040年から経済が縮小し始めます。これは、政府が回避すると決意した最悪ケースのシナリオです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
モルガン・スタンレー欧州サスティナビリティ・リサーチ責任者のマイク・キャンフィールドが、安全かつ責任ある人工知能を担保することがAI革命にとって不可欠な理由についてお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む 」Thoughts on the Marketへようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回のエピソードでは、モルガン・スタンレー欧州サスティナビリティ・リサーチ責任者のマイク・キャンフィールドが、今、注目されている「AIはどのくらい安全なのか?」というテーマについてお話します。このエピソードは10月10日にロンドンにて収録されたものです。
英語でお聴きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
AIは、私たちの暮らし方、働き方、人と人との関わり方を大きく変えています。個人の判断から世界の安全保障まで、社会のあらゆるレベルと側面を変革する可能性がAIにはあります。だからこそ、医療や交通、金融、ひいては防衛まで、私たちの社会を維持するために不可欠なシステムにAIが深く組み込まれるほど、私たちは技術進歩のスピードに合わせた安全なAIシステムを開発、展開する必要があると考えます。
安全もしくは責任あるAIがどのようなものであるべきかを成文化しようとする試みは、AI市場をリードする企業、学術機関、シンクタンク、非政府組織(NGO)、業界団体、政府間組織によって進められており、これまでに発表されたガイドラインや基準は、どれも最も基本的な部分でいくつか明確な共通点があります。一般的なガイドラインや基準を見ると、どれも実用的な観点からのイノベーション育成と経済的繁栄を支えることに重点を置きながらも、AIシステムが人間の基本的な権利や価値を尊重し、人間にとって信頼できる存在であることを証明すべきと断言しています。
世界各国/地域のAI規制は現在どのようになっているのでしょうか?
世界で最も進んだAI規制は、詳細なリスク・ベース・アプローチに基づき策定されたEUのAI規制法で、AI利用の透明性を重視し、AIが人間や人間の基本的権利におよぼし得るリスクに着目した内容になっています。米国の場合、AI利用に関する包括的な連邦規制や連邦法はまだありませんが、特定業種を対象にしたAI利用指針を定めた連邦法はいくつかあり、例えば、2019年の「国防権限法」や2020年の「国家AIイニシアチブ法」などがこれに該当します。また、これらの連邦法とは別に、安全で責任あるイノベーションを促進しながらも、プライバシーなど、米国人および米国人の権利の保護を目的に、バイデン大統領がAIに関する大統領令を発令しています。ほかにも、アジア太平洋地域の国々では、消費者保護、プライバシー、透明性、説明責任などに関する独自のAIガイドラインの策定に取り組んでいます。
こうした中、我々が「ソシオテクニカル」と呼ぶ、人間と技術のインタラクションを重視するアプローチを、AIシステム・デベロッパーが採用することに、政策立案当局や規制当局が期待するようになるのは明らかと考えます。世界中にすでに存在するAI規制やAIの基礎的基準を精査すると、世界の国/地域の政策立案当局が成功するAI政策を策定するには、4つのコンセプトを柱とするアプローチを採る必要があると考えます。
私たちは政策策定の柱となるこれら4つのコンセプトを「STEP(ステップ)」と呼んでいます。安全性を意味するSafety(セーフティー)の「エス」、透明性を意味するTransparency(トランスペアレンシー)の「ティー」、倫理性を意味するEthics(エシックス)の「イー」、そしてプライバシーの「ピー」それぞれの頭文字を組み合わせた造語で、これら4つのコンセプトを満たせばAIは正しい『ステップ』を踏むことができると考え、そう呼ぶことにしました。安全性は、システムの信頼性に注目し、AI利用が人や社会に危害を加えることのないよう、AIの悪用や濫用の防止に主眼を置いたコンセプトです。透明性は、説明可能性や説明責任に関するコンセプトで、将来のフィードバックや結果の監査が可能なシステム作りの促進を目的としています。倫理性は、AIバイアスの回避を念頭に置き、主として差別/偏見の防止、包括性の促進、法の支配の尊重を組み合わせたコンセプトです。そして最後のプライバシーは、データ保護、AI利用による情報漏洩の防衛/予防手段、学習データの要配慮個人情報の本人同意などに配慮したコンセプトです。
もちろん、政策立案者は、偏見、差別、イノベーションを損なわない指針の導入、急激な進化スピード、法的責任、その他問題に着目しながら、AI規制の策定を巡る多様な困難に挑んできました。しかし、AIによるアウトプットは論理的根拠が不明なものもしばしばあり、これがAI規制の根底にある最も難しい問題となっています。なぜなら、AIシステムは本質的に学習するよう設計されているからで、AIモデルを作った開発者ですら思いもしなかったアウトプットを示すことがあるからです。
教育の向上、スマート電力グリッド管理の拡大、医療診断の向上、精密農業の拡大、生物多様性のモニタリングおよび保護の促進など、AIが社会に対しておよぼすプラスの影響は様々ですが、AIが社会にこうした影響を与える前に、安全かつ責任あるAIの利用を担保することは、我々にとって不可欠なステップと考えます。医薬品開発を加速したり、材料科学研究を進める、生産効率を押し上げる、気象予測の精度を向上さる、場合によっては精度の高い自然災害予想を可能にするなど、AIが社会に貢献する可能性は膨大であることは明らかです。
このように様々な観点から、AIの可能性を最大限引き出したいと思うのであれば、私たちはAIの正しい利用を促す指針を策定する必要があると考えます。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
FRBが9月に利下げを実施した後は、雇用統計の方が追加利下げより市場に与える影響が大きい可能性があります。コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ(Andrew Sheets)がその理由をお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回のエピソードは、モルガン・スタンレーのコーポレート・クレジット・リサーチ責任者を務めるアンドリュー・シーツが、FRBの次の動きがそれ程重要ではない可能性がある理由についてお話します。このエピソードは10月4日 にロンドンにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
過去数ヵ月間、FRBは世界の市場に関する議論の中心に位置してきました。7月末に政策金利を据え置く判断で、当初市場を元気づけた後、8月初めの一連の低調な経済指標発表を受け、FRBの政策は遅きに失したのではないかという懸念が浮上しました。これに対応してFRBは9月に予想より大幅な0.5パーセントの利下げを実施します。こうした紆余曲折を考慮すると、投資家共通の疑問が、「FRBは次にどうするのか?」であるのも無理のないことです。
しかし、FRBの次の一手がそれほど重要ではないとしたらどうでしょうか?
金融政策は強力であると同時に非力でもあります。強力である理由は、金利は、住宅の購入から設備投資資金の調達や競合企業の買収まで、経済全体の数多くの判断に影響を及ぼすことです。また、非力でもあるのは、金利がこうした判断に影響を及ぼすまでには時間がかかり、影響が表われるまでの時間も様々だからです。利下げが経済に与える影響が完全に表われるには、6ヵ月から12ヵ月かかると見られます。したがって、先月FRBが実施した0.5パーセントの利下げの影響が完全に表われるのは、2025年6月になるかもしれません。
この時間差が、FRBの次の動きがそれ程重要ではないと見られる理由の1つです。2つめの理由は、弊社が考える市場の懸念の対象です。過去2ヵ月の市場のボラティリティの多くを引き起こしたと考えられる、労働市場を中心とする米国経済に対する懸念が、現在は弱まっていると弊社は考えています。
もしも金利が高過ぎて、労働市場が軟化しているなら、向こう数ヵ月間、利下げのペースを速めても効果がない可能性があります。効果が現れるまでの時間を考慮すると、利下げによる支援は間に合わないと見られます。
一方で、景気が実際に急速に減速している場合は、必要とされる程度の影響を与えるためには、金利がかなり大幅に低下しなければならない可能性があるとの
見解もあります。FRBの経済見通し(SEP)によれば、9月に0.5パーセントの利下げを行なった現在も、経済成長の追風にも妨げにもならない政策金利は、現行水準をおおよそ2パーセント下回ると見られます。金利は中立と見られる水準を優に上回っています。
簡単に言えば、今後数ヵ月間で経済指標が大きく悪化すると、FRBの追加利下げでは間に合わない可能性があります。また、経済指標が堅調を維持した場合、FRBには政策を調整するための十分な時間的余裕が生じるでしょう。現時点で最も重要なのは、データであってFRBの次の動きではありません。
過去にもこうした考え方を裏付ける事例があります。米国の最も積極的な利下げサイクルに含まれる2001年、2008年、2020年2月が、株式市場とクレジット市場の低迷と重なる点は特筆に値します。1995-96年、1998年、2019年といったより小幅な利下げサイクルは、市場がはるかに良好だった時期と重なります。市場にとって最も重要なのは、データであってFRBの利下げ幅ではないと想定すれば、納得できます。
これらは全て、今の時期に当てはまるように感じます。今回の米国雇用統計の上振れは、FRBの政策が予定通りで、より大幅な調整が必要ないとの見方を裏付けています。これは良い知らせです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
The podcast currently has 45 episodes available.