永瀬清子の世界

#107「私は」


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「世間みず」で「井の中の蛙」のような「私」。かつては、自分の「狭さ」や「ある部分しかピントが合はない」ことを「欠点」と思っていました。しかしこの「欠点」は、隠すものではなく肯定すべきものだと考えているところにこの詩の魅力があります。たとえば、昼間のいつもの明るさの中では感じにくい光でも、闇の中では、「少しのすき間から一直線にさしてくる光」は鮮烈な光として届きます。そのように「私」は、自分の「欠点」を生かして、「私」でなければ見えないものを捉えようとしているのではないでしょうか。闇が深ければ深いほど、差し込む光の強さは際立ちます。そしてその光のように「私」の見方を深めていくことは、いつか自分自身を支える「私」の味方になっていくのです。「欠点」というマイナスを「私」しか捉えられない光というプラスにしていく。この詩を貫く眼差しに永瀬清子さんの生き方を感じないではいられません。<文・白根直子>

注)永瀬清子の詩「私は」(『諸国の天女』河出書房 1940年)の引用は『永瀬清子詩集』(思潮社 1979年)によります。同題の他作品と区別するため、便宜上()内に冒頭の一行目の一部を題名に付記しました。

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