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ラジオ収録20220607
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国の小学校教諭)
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)楠元純一郎(法学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
四十一
不勉強の報いは覿面にきていよいよ試験となつたときにはほとんどなんにも知らなかつた。ほかの者がさつさとできて帰つてゆくのに自分ひとりうで章魚みたいになつて困つてるのはゆめさら楽なことではない。
<報い(むくい)→ある行為が結果として自分の身に返ってくるものごと。覿面(てきめん)→結果が即座に現われること。この薬は効果てきめん。うで章魚→茹でダコ→茹でて赤くなったタコ。ゆめさら→少しも、つゆにも>
不学习的后果立竿见影,马上就考试了,我几乎什么也不会。其他人早早答完题回了家,我一个人像煮章鱼一样急红了脸,不知道如何是好,真是痛苦万分。
なかでもつらかつたのは読本だつた。私は最後に先生の机へ呼びだされた。問題は蔚山うるさんの籠城といふ章だつた。蔚山なんて字はつひぞ見たこともない。黙つて立つてるもので先生はしかたなしに一字二字づつ教へて手をひくやうにして読ませたけれど私は加藤清正が明軍に取囲まれてる挿画に見とれるばかりで本のはうは皆目わからない。
<なかでも→とりわけ、とくに。読本(とくほん)→国語の教科書。蔚山(うるさん)→韓国の地名。籠城(ろうじょう)→城に立てこもって敵を防ぐこと。ついぞ→今まで一度も~ない。しかたなしに→他に方法がなにもない様。加藤清正(かとうきよまさ)→日本の文禄(1591年)・慶長(1598年)の時代に朝鮮に出兵した豊臣秀吉の家臣、大名。挿画(そうが)→挿絵。見惚れる(みとれる)→我を忘れてうっとり見ること。皆目(かいもく)→まったく~ない>
最难熬的是朗读的考试。我最后还是被老师叫到了桌子旁边。题目是让我读《蔚山笼城》的章节。蔚山两个字我见都没见过。老师看到我默不作声站在那里,没有办法,只好一个一个字教我,带着我读。可是我看着加藤清正被明军包围的插画入了迷,一个字也看不进去。
先生は根気がつきて「どこでも読めるところを読んでごらん」といつて読本を私のまへへ投げだした。私はわるびれもせず「どつこも読めません」といつた。試験がすんでからもやつぱり居坐りだつた。
<根気がつきて→粘る気力がなくなった。匙を投げる→これ以上どうしようもないと諦めること。わるびれ→悪びれ→恥ずかしがる、自分のしたことを悪いと思うこと。どっこも→どこも。居座り(いすわり)→席に座ったまま>
老师无可奈何,把书本往我面前一丢,让我把会读的字都读出来。我恬不知耻的说,我哪个字都不会读。考试结束,我的座位果然没有变。
私はいちばん前にゐるから一番だと思つてゐた。名札のびりつこにかかつてることも、点呼のときしまひに呼ばれることも、自分が事実できないことさへもすこしの疑ひすら起させなかつた。
<びりっこ→びり→順位が一番最後、どんじり、けつ。点呼(てんこ)→出席をとるときに名前を呼ぶこと。しまいに→最後に。すら~ない→すら→一つの事例を取り立てて、他を際立たせるときに使う>
我坐在最前面,还以为自己是第一名。尽管我的名牌挂在最后,点名也是最后才点我,题目我的确也是都不会,可是我从来没有起过疑心。
好きな先生のそばにおかれてちつとも叱られずにゐる、これが一番でなくてどうしようか。それに私はつひぞ免状とりに出たことがなかつたし、学校から帰つて一番だといつて自慢するとみんなは えらい えらい といつて笑つてるので自分だけは至極天下泰平であつた。
<一番でなくてどうしようか→一番で当然だ(と思っている)。ついぞ→そのときまで一度も~ない。免状とりに出たことがない→お稽古事をした単位取得証書をもらったことがない。至極(しごく)→きわめて。天下泰平(てんかたいへい)→なんの心配事もなく、のんびりしていること>
被喜欢的老师安排在身边,做什么都不会被骂,这难道不是第一名才有的待遇吗?我从来都没有拿过奖状,从学校回家却总自豪地说我是第一名,大家都“了不起,了不起”地笑我,只有我觉得天下太平的很。
ラジオ収録20220607
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国の小学校教諭)
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)楠元純一郎(法学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
四十一
不勉強の報いは覿面にきていよいよ試験となつたときにはほとんどなんにも知らなかつた。ほかの者がさつさとできて帰つてゆくのに自分ひとりうで章魚みたいになつて困つてるのはゆめさら楽なことではない。
<報い(むくい)→ある行為が結果として自分の身に返ってくるものごと。覿面(てきめん)→結果が即座に現われること。この薬は効果てきめん。うで章魚→茹でダコ→茹でて赤くなったタコ。ゆめさら→少しも、つゆにも>
不学习的后果立竿见影,马上就考试了,我几乎什么也不会。其他人早早答完题回了家,我一个人像煮章鱼一样急红了脸,不知道如何是好,真是痛苦万分。
なかでもつらかつたのは読本だつた。私は最後に先生の机へ呼びだされた。問題は蔚山うるさんの籠城といふ章だつた。蔚山なんて字はつひぞ見たこともない。黙つて立つてるもので先生はしかたなしに一字二字づつ教へて手をひくやうにして読ませたけれど私は加藤清正が明軍に取囲まれてる挿画に見とれるばかりで本のはうは皆目わからない。
<なかでも→とりわけ、とくに。読本(とくほん)→国語の教科書。蔚山(うるさん)→韓国の地名。籠城(ろうじょう)→城に立てこもって敵を防ぐこと。ついぞ→今まで一度も~ない。しかたなしに→他に方法がなにもない様。加藤清正(かとうきよまさ)→日本の文禄(1591年)・慶長(1598年)の時代に朝鮮に出兵した豊臣秀吉の家臣、大名。挿画(そうが)→挿絵。見惚れる(みとれる)→我を忘れてうっとり見ること。皆目(かいもく)→まったく~ない>
最难熬的是朗读的考试。我最后还是被老师叫到了桌子旁边。题目是让我读《蔚山笼城》的章节。蔚山两个字我见都没见过。老师看到我默不作声站在那里,没有办法,只好一个一个字教我,带着我读。可是我看着加藤清正被明军包围的插画入了迷,一个字也看不进去。
先生は根気がつきて「どこでも読めるところを読んでごらん」といつて読本を私のまへへ投げだした。私はわるびれもせず「どつこも読めません」といつた。試験がすんでからもやつぱり居坐りだつた。
<根気がつきて→粘る気力がなくなった。匙を投げる→これ以上どうしようもないと諦めること。わるびれ→悪びれ→恥ずかしがる、自分のしたことを悪いと思うこと。どっこも→どこも。居座り(いすわり)→席に座ったまま>
老师无可奈何,把书本往我面前一丢,让我把会读的字都读出来。我恬不知耻的说,我哪个字都不会读。考试结束,我的座位果然没有变。
私はいちばん前にゐるから一番だと思つてゐた。名札のびりつこにかかつてることも、点呼のときしまひに呼ばれることも、自分が事実できないことさへもすこしの疑ひすら起させなかつた。
<びりっこ→びり→順位が一番最後、どんじり、けつ。点呼(てんこ)→出席をとるときに名前を呼ぶこと。しまいに→最後に。すら~ない→すら→一つの事例を取り立てて、他を際立たせるときに使う>
我坐在最前面,还以为自己是第一名。尽管我的名牌挂在最后,点名也是最后才点我,题目我的确也是都不会,可是我从来没有起过疑心。
好きな先生のそばにおかれてちつとも叱られずにゐる、これが一番でなくてどうしようか。それに私はつひぞ免状とりに出たことがなかつたし、学校から帰つて一番だといつて自慢するとみんなは えらい えらい といつて笑つてるので自分だけは至極天下泰平であつた。
<一番でなくてどうしようか→一番で当然だ(と思っている)。ついぞ→そのときまで一度も~ない。免状とりに出たことがない→お稽古事をした単位取得証書をもらったことがない。至極(しごく)→きわめて。天下泰平(てんかたいへい)→なんの心配事もなく、のんびりしていること>
被喜欢的老师安排在身边,做什么都不会被骂,这难道不是第一名才有的待遇吗?我从来都没有拿过奖状,从学校回家却总自豪地说我是第一名,大家都“了不起,了不起”地笑我,只有我觉得天下太平的很。
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