<日の出ラジオ 我らの文学236 中勘助『銀の匙』164(後編15①)>
ラジオ収録20260728 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、畠山果也(社長)。
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十五
ある日のこと貞ちやんの留守にひとりで遊んでたときに離れでれいの蜩の鈴が鳴つた。
<蜩(ひぐらし)>
有一天小贞不在,我一个人到寺里玩, 偏房里又传来蝉鸣般的铃声。
が、折あしく茶の間には誰もゐなかつたので私は思ひきつて離れへいつた。
<折あしく→タイミングの悪いことに、あいにく。>
不巧,茶室里谁也不在,我果断地去了偏房。
橋をわたつたところのうす暗い部屋には衣桁いかうに輪袈裟や数珠がかかつて香の薫がすーんともれてくる。
<衣桁(いかう)→着物を掛けておくための道具。数珠(じゅず)。薫(かおり)>
过了桥,只见那昏暗屋子的衣架上,挂着袈裟和念珠,熏香的味道沁然飘荡。
私はそこまでゆきはしたものの急に気おくれがしてためらつてゐた。
<気後れがして→相手の勢いや場の雰囲気に押されて自信をなくし、怯(ひる)んでしまうこと。>
我走到那里,忽然有点胆怯,犹豫起来。
耳の遠い老僧は足音がきこえなかつたかまたからからと鈴を鳴らした。私はやうやく襖をあけて手をついた。
<襖(ふすま)→和室の部屋の間仕切りや押入れに使う引き戸>
老僧耳背,也许是没听到我的脚步声,又“咔拉拉”地摇起铃铛。我终于拉开门,把手伸过去。
彼方はなにげなく大きな茶托をさしだしたがふと顔をみて
「おお、これはこれは」といつた。
<茶托(ちゃたく)→湯呑みの下に敷く受け皿。>
他毫不经意地将大茶托递了过来,看到我的脸吃惊道:“哦哟,是你啊……”
私は瞼をふるはせながらお辞儀をして茶托をうけとり、はづかしいやうな、嬉しいやうな、大願成就したやうな気もちで茶の間へきて見おぼえたとほりそこにある番茶をいれてもつていつた。
<瞼(まぶた)をふるはせながら→感情の高ぶりによって目元が細かく震えている様子。お辞儀(おじぎ)→深く頭を下げる礼の作法。大願成就(たいがんじょうじゅ)→長い間強く願っていた大きな夢が叶うこと。番茶(ばんちゃ)→主に収穫時期が遅く、硬くなった葉や茎を使った日本の一般的なさっぱりしたお茶。>
我紧张地鞠躬接过茶托,有些害羞,有些开心,又像是很大的愿望终于得偿。来到茶室,照之前看别人做的那样泡了一杯粗茶。