7中勘助『銀の匙』125(後編8⑤)>
ラジオ収録2024001218
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎(法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)
羊羹函にできたいくつかの繭は種にするために残されたが、私の心がその几帳の奥にまでとどいたのか、それともお姫様が光りかがやく夏の世をすてかねてか、まもなく彼女はまつ黒な眼のうへに美しい眉をたて、新しい歓びにふるへる翅さへもつて昔の俤をしのばすやうな可愛らしい姿をあらはした。
<世をすて→世を捨てる→世俗を離れる、俗せを捨てる、隠遁して出家する、世をすてかねて→この世を離れがたくて? 翅(はね)。俤(おもかげ)→心の中に浮かぶ姿。しのばす→思い出させる?慕う?>
为了未来的繁衍,羊羹盒子里留下几颗蚕茧。不知是因为我的心还留在那幔帐
深处,还是因为小公主不舍得放弃光芒璀璨的夏天,没过多久,它乌黑的眼睛上头
就长出一对秀丽的眉,还多了一双翅膀,为新的喜悦而颤动。小公主摇身一变,可
爱得很,从前的面容再也找不见了。
さうして右に左に輪をかくやうにして睦びあふ伴侶をもとめてあるくのを私は竹のなかから出た人よりも珍しく眺めてゐた。
<睦びあふ伴侶→親しく仲のいい配偶者、パートナー。竹の中から出た人→かぐや姫>
我看着它左顾右盼地画着圈,寻觅亲近的伴侣,比看到辉夜姬还要珍奇。
蚕が老いて繭になり、繭がほどけて蝶になり、蝶が卵をうむのをみて私の智識は完成した。
蚕老后成茧,茧又化蝶,蝶再生卵。我的知识更新了。
それはまことに不可思議の謎の環わであつた。
这真是不可思议的、谜一般的循环。
私は常にかやうな子供らしい驚嘆をもつて自分の周囲を眺めたいと思ふ。
我希望自己能常怀着孩童般的惊叹之心观察周遭的事物。
<楠元純一郎が好きなフレーズ。彼の生き方そのものといえる。>
人びとは多くのことを見馴れるにつけただそれが見馴れたことであるといふばかりにそのままに見すごしてしまふのであるけれども、思へば年ごとの春に萌えだす木の芽は年ごとにあらたに我らを驚かすべきであつたであらう、それはもし知らないといふならば、我我はこの小さな繭につつまれたほどのわづかのことすらも知らないのであるゆゑに。
<見すごす→見過ごす→見落とす、見ていながら気づかないでしまう。見慣れたこと→よく見るありふれた光景。いふばかりに→いわんばかりに→物事に対して実際にははっきり口に出して言うわけではないが、態度や仕草で鮮明に表れている様。驚かすべき→驚かすはず。ゆゑに→ゆえに→から(理由を表す)>
人们往往对许多事情司空见惯,进而习以为常,甚至视而不见。但回忆起来,每年春天树木萌
发的嫩芽都值得我们感叹。如果完全无法感知这种情绪,就意味着我们连裹在一颗小蚕茧中的道理也不明白。