われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

By Leo_楠元纯一郎EducationLanguage Learning
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われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎 episodes

  • 241 中勘助 銀の匙 169(後編15⑥)

    <日の出ラジオ 我らの文学241 中勘助『銀の匙』169(後編15⑥)>

    ラジオ収録20261006 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者・クスモン) 中国語翻訳・朗読 レオー(レオ君)(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師・日の出仙人)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士・かっか)。畠山果成(キャナル君)

    <<44.4万回突破記念!ありがとうございます!>>

    久しぶりで思ひ出の多い橋をわたつたら離れには香の煙がたちこめて大般若のときに見おぼえのある坊さんが大勢よつて話してゐた。

    〈大般若(だいはんにゃ)→般若心経(はんにゃしんぎょう)は大般若経の神髄をまとめた経典。ただし、浄土真宗(阿弥陀経)と日蓮宗(法華経)はこれを唱えない。

    我久违地走过那座充满回忆的桥,偏房中香烟缭绕,我在大般若经会上见过的几位和尚正聚在一起谈话。

    老僧はへちまをかいてくれた座敷に据ゑてある曲彔きよくろくのうへに金襴の袈裟をかけ、払子ほつすをもつて、昔ながらの石仏のやうに寂然と扶坐ふざしてゐる。

    <曲彔(きょくろく)→お坊さんの肘掛け椅子。金欄(きんらん)→金や銀の糸の織物。払子(ほっす)→僧侶が葬儀の時に持っているハタキのような法具でもともとは虫除けだったとも。寂然(じゃくぜん・じゃくねん・せきぜん)。扶坐(ふざ)している→足を組んで座る(結跏趺坐)。>

    老僧在他曾为我画丝瓜的那间屋中,身披锦襕袈裟,手持拂尘,寂然趺坐于一张开法会时禅僧坐的椅子上,一如从前那般模样。

    私はそのまへへいつて昔のとほり頭をさげて焼香した。

    <焼香(しょうこう)→仏式の葬儀・法要等で、香を焚いて故人や仏様を拝む作法>

    我走到他面前,如从前那样低下头,烧了一炷香。

    私たちが僧正遍昭と綽名をつけたでこでこな和尚さんが「大往生ぢや 大往生ぢや」といひながら蕎麦饅頭をぱくぱくくつてゐた。

    <綽名(あだな)→愛称。でこでこな→顔の作りに凹凸(おうとつ)のある。大往生(上長寿)>

    那个绰号“僧正遍昭”、额头光亮饱满的和尚一面大口嚼着荞麦馒头,一面说着:

    “寿终正寝,寿终正寝。”

    私はいよいよ木から落ちた猿であつた。

    <いよいよ→ますます。木から落ちた猿→猿も木から落ちる→弘法も筆の誤り、河童の川流れ。ここでの意味は、失敗とかして気恥ずかしい、バツ(場都合)が悪い気持ち。気まずい、居づらい。>

    这一次,我更加不知所措了。



    20 min
  • 240 中勘助 銀の匙 168(後編15⑤)

    <日の出ラジオ 我らの文学240 中勘助『銀の匙』168(後編15⑤)>

    ラジオ収録20260923 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)。

    今日はお彼岸の中日。

    <<43.5万回突破記念!ありがとうございます!>>

    老僧がなくなつたのはそれから三年ばかり後のことであつた。

    那之后不过三年,老僧人就去世了。

    私は中学へはひるし、貞ちやんは奉公にでるし、寺とはいつとはなしにうち絶えてたがある晩突然 老僧がなくなつたから といふ使がきたので私は父といつしよに悔みにいつた。

    <奉公(ほうこう)→住み込みで家事に従事すること。行儀見習い。いつとはなしに→いつの間にか。うち絶えて→関係が切れて。使(つかい)→命令や任務を受けて派遣される使者(ししゃ)。お悔(く)やみ→故人の死を悼(いた)み、悲しむ気持ちを伝える行動様式。>

    我升上中学,小贞工作了,不知不觉,我已经很久不去寺里玩。一天晚上,突然有寺里的人来告诉我们老僧圆寂的消息。我和父亲一起出席了他的葬礼。

    老僧はこれといふ病気もなくいはば寿命がつきたので、方方の住職になつてる昔のお弟子たちがかはるがはる世話をしてたのださうだ。

    <寿命(じゅみょう)が尽きた→老衰。住職(じゅうしょく)→お寺の代表。弟子(でし)→師匠について学問・技芸・芸道の教えを受ける人。かわるがわる→交替交替で>

    听说老僧人生前一直由各家寺院的住持轮流照料,他们都是老僧人的弟子。而他不是病逝,只是寿命到了,自然死亡。



    24 min
  • 239 中勘助 銀の匙 167(後編15④)

    <日の出ラジオ 我らの文学239 中勘助『銀の匙』167(後編15④)>

    ラジオ収録20260915 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、畠山果也(社長)、日本が誇る語学の帝王(カツどんさん)初登場!。

    <<42.6万回突破記念!ありがとうございます!>>

    いつになく間ぢかく坐らされて汗ぐつしよりになりながら今までこの人を死ぬまでも石仏みたいにして鈴を鳴らす人ときめてた私はその一挙一動をなにか珍しいことのやうにじつと眺めてゐた。

    <いつになく→いつもと違うこと。間じか(近)く→距離が短い。汗ぐっしょり→汗でひどく濡れている様。石仏(いしぼとけ)→石に彫られたり、石で作られた仏像。一挙一動→一つ一つの動作や振る舞い。>

    我之前从未坐得离他这么近,紧张得浑身是汗。在这天之前,我已认定老僧会像石佛一样,摇一辈子的铃;如今我目不转睛地望着他,仿佛他的一举一动都带有珍稀的意味。

    老僧は大きな硯をもちだして墨をすらせ、筆をとつてさらさらと糸瓜の絵をかいた。一枚の葉と、一本の蔓と、一つの糸瓜と。

    <硯(すずり)→固形の墨(すみ)を水で磨(す)って液体にする書道用具。糸瓜(へちま)→インド原産の瓜科、ツル性の一年草。蔓(つる)→地面を這う、または他のものに絡みついて伸びる「つる」。>

    老僧取出一只大砚台,把墨磨开,拿起笔利索地画了一幅丝瓜。纸上画了一片叶子,一条藤蔓,一个丝瓜。

    そのうへへ 世のなかをなんのへちまと思へどもぶらりとしてはくらされもせず とかき急須みたいな書判をしてとみかうみしてたが、不意にからからと笑つて「さあ、これをあげるであちらへもつておいで」といつて硯を棚にのせ、筆を洗ひ、さつさと金剛座へ帰つてもとの石仏になつてしまつた。

    <とみかうみ→あっちを見たり、こっちを見たり。「世の中を 何のへちまと思えども ぶらりとしては 暮らされもせず」→世間や人生の厳しさと、それでも適当に気を抜いてばかりでは生きていけない現実を、ユーモアを交えて詠んだ江戸時代の狂歌(または俗謡)。→「世の中(浮世)なんて、へちまのように大した価値もないくだらないものだと思ってみても、だからといって何もせずにぶらぶらと暢気に暮らしていくわけにもいかない(生きていくためには働いたり、世間のしがらみに付き合ったりしなければならない)」。急須(きゅうす)→茶葉にお湯を注いでお茶の成分を抽出するための、日本で広く使われている茶器のこと。書判(かきはん)→昔の文書の末尾に自筆で書いた署名やサイン、または手書きの印影のこと。金剛坐→仏教用語でダイヤモンドのように堅固で壊れない、釈迦が悟りを開いた際の座所。>

    接着又在上面题字:“我看人世如丝瓜,切莫吊儿郎当活。”他在旁边画了一个小茶壶似的花押,左看右看了一会,忽然哈哈大笑道:“好了,这个送给你,你把它带走吧。”说完他把砚台放回书架,洗好毛笔,匆匆回到自己的金刚座上,又成了一尊石佛。

    私は木から落ちた猿のやうにすごすごと糸瓜の絵をもつて家へ帰つた。

    <すごすごと→期待した結果が出せず、気落ちして(意気消沈して)元気がない様子でその場から引き下がる、立ち去る様子>

    我像离了水的鱼一样不知所措,最后只好垂头丧气地拿着这幅丝瓜回家了。



    27 min
  • 238 中勘助 銀の匙 166(後編15③)

    <日の出ラジオ 我らの文学238 中勘助『銀の匙』166(後編15③)>

    ラジオ収録20260908 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、畠山果也(社長)。

    <<42.5万回突破記念!ありがとうございます!>>

    そんなにして橋をわたつてゆくこともたびたびであつたけれどこの枯木のやうな隠者にはとりつくしまもない。

    <とりつくしまもない→取り付く島もない→頼りにして取りすがろうとしても相手にもしてもらえないこと。けんもほろろ(頼み事を無愛想に突き放し、冷淡に断ること。>

    就这样,我从那座桥上走过许多次,这枯木一般的隐士却连一点靠近他的机会都没有给我。

    ところがある時またからからと鈴がなつて、いつものとほり茶碗をおいて帰らうとしたら意外にも後ろから呼びとめて「絵をかいてあげように紙を買つておいで」といつた。

    然而有一次,铃铛又“咔啦啦”地响了,我像往常那样放下茶杯转身回去的时候,他竟然从身后叫住了我:“你把纸买好,我给你画幅画吧!”

    私は狐につままれた気もちで唐紙を買つてきて老僧のまへに出した。老僧は根の生えたやうに坐つてる脇息のそばから立つて日あたりのいい隣の間へ私をつれていつた。

    <狐(きつね)につままれた→狐に化(ば)かされたように、何が起きたのか分からずポカンと唖然とする様子。唐紙(からかみ)→中国由来の装飾紙。根の生えたように座っている→じっと座ったまま動かない様。脇息(きょうそく)→肘掛け>

    我莫名其妙地买来一张有金粉花纹的纸,递给老僧人。他从那张坐到生了根似的摇椅上站起来,把我带到旁边采光明亮的房间。

    部屋は悉く渋色に燻ぼつて 椿寿 と書いた小さい額がかかつてゐる。

    <悉(ことごと)く→残らずすべて。渋色(しぶいろ)→燻(くす)んだ茶褐色。燻ぼって→燻(くすぶ)って→火が炎をあげずに煙ばかりを出している状態→煤(すす)ける、黒ずむ。椿寿(ちんじゅ)→長寿を祝う言葉。額(がく)→絵画や書を飾る額縁・枠。>

    屋子的墙壁已经被线香熏成淡黄色,上面挂着一张写有“椿寿”二字的小小匾额。



    22 min
  • 237 中勘助 銀の匙 165(後編15②)

    <日の出ラジオ 我らの文学237 中勘助『銀の匙』165(後編15②)>

    ラジオ収録20260811 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、畠山果也(社長)。

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    橋が朽ちてゆらゆらするのでともすればこぼれさうになる。

    <朽(く)ちて→木や建物が腐って形が崩れたり、ボロボロになったりすること。ゆらゆら→揺れる様。ともすれば→放っておくと、ややもすると、悪い方向になりがちである。こぼれそうになる→お茶が溢れそうになる。>

    回来的路上,陈旧的小桥摇摇晃晃,差点把茶泼洒。

    頭をさげて出したらまた「おお、これはこれは」といつた。

    <出したら→お茶を。これはこれは→思いがけない出来事や人物に出会ったとき、感嘆の気持ちを表す丁寧な挨拶。>

    我低着头,将茶递给老僧,他又说了一次“哦哟,是你啊……”

    私は静に襖をたてほつとして橋をわたつた。

    <襖を立て→襖を閉めて?>

    我静静关上门,松了一口气,过了那座桥。

    それからはときどき家の人のかはりにゆくことがあつたが、私はいつも どうかして話をする機会を得たい とそればかり願つてゐながら前へでるとなにひとついひ得ずに黙つて茶碗をうけとり、黙つて茶碗をさしだして帰つてくる。

    后来,我经常代替寺里的人去给老僧送茶,每次都暗自发愿,希望能有机会和老僧说话;可来到他面前,却又什么也说不出口,总是默默接过茶杯,再默默将茶杯递回给他。

    さきは梟かなぞのやうに おおこれは をくりかへすばかりでちつとも言葉をかけない。

    <さきは(先は)→先方は。梟(ふくろう)>

    对方也总是谜一般地重复那句“哦哟,是你啊”完全没有和我搭话的意思。

    黒塗りの茶托を手にうけて橋をわたるとき南天の実をくひにきたひよ鳥があわただしくたつて茶をこぼさせたこともあつた。

    <たって→飛び立って>

    捧着漆成黑色的茶托过桥的时候,曾有一只来啄南天竹果实的小鸟慌慌张张地站上来,把茶弄洒了。

    月の夜なぞに白い花がほろほろと橋のうへに散つてたこともあつた。

    <ほろほろ→花びらや涙がこぼれ落ちる様子>

    也曾在月夜见到白色的花纷纷扬扬落在桥上。



    34 min
  • 236 中勘助 銀の匙 164(後編15①)

    <日の出ラジオ 我らの文学236 中勘助『銀の匙』164(後編15①)>

    ラジオ収録20260728 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、畠山果也(社長)。

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    十五

    ある日のこと貞ちやんの留守にひとりで遊んでたときに離れでれいの蜩の鈴が鳴つた。

    <蜩(ひぐらし)>

    有一天小贞不在,我一个人到寺里玩, 偏房里又传来蝉鸣般的铃声。

    が、折あしく茶の間には誰もゐなかつたので私は思ひきつて離れへいつた。

    <折あしく→タイミングの悪いことに、あいにく。>

    不巧,茶室里谁也不在,我果断地去了偏房。

    橋をわたつたところのうす暗い部屋には衣桁いかうに輪袈裟や数珠がかかつて香の薫がすーんともれてくる。

    <衣桁(いかう)→着物を掛けておくための道具。数珠(じゅず)。薫(かおり)>

    过了桥,只见那昏暗屋子的衣架上,挂着袈裟和念珠,熏香的味道沁然飘荡。

    私はそこまでゆきはしたものの急に気おくれがしてためらつてゐた。

    <気後れがして→相手の勢いや場の雰囲気に押されて自信をなくし、怯(ひる)んでしまうこと。>

    我走到那里,忽然有点胆怯,犹豫起来。

    耳の遠い老僧は足音がきこえなかつたかまたからからと鈴を鳴らした。私はやうやく襖をあけて手をついた。

    <襖(ふすま)→和室の部屋の間仕切りや押入れに使う引き戸>

    老僧耳背,也许是没听到我的脚步声,又“咔拉拉”地摇起铃铛。我终于拉开门,把手伸过去。

    彼方はなにげなく大きな茶托をさしだしたがふと顔をみて

    「おお、これはこれは」といつた。

    <茶托(ちゃたく)→湯呑みの下に敷く受け皿。>

    他毫不经意地将大茶托递了过来,看到我的脸吃惊道:“哦哟,是你啊……”

    私は瞼をふるはせながらお辞儀をして茶托をうけとり、はづかしいやうな、嬉しいやうな、大願成就したやうな気もちで茶の間へきて見おぼえたとほりそこにある番茶をいれてもつていつた。

    <瞼(まぶた)をふるはせながら→感情の高ぶりによって目元が細かく震えている様子。お辞儀(おじぎ)→深く頭を下げる礼の作法。大願成就(たいがんじょうじゅ)→長い間強く願っていた大きな夢が叶うこと。番茶(ばんちゃ)→主に収穫時期が遅く、硬くなった葉や茎を使った日本の一般的なさっぱりしたお茶。>

    我紧张地鞠躬接过茶托,有些害羞,有些开心,又像是很大的愿望终于得偿。来到茶室,照之前看别人做的那样泡了一杯粗茶。


    35 min
  • 235 中勘助 銀の匙 163(後編14⑤)

    <日の出ラジオ 我らの文学235 中勘助『銀の匙』163(後編14⑤)>

    ラジオ収録20260707 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、畠山果也(社長)。

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    まことにこの老僧は人間の世界とは橋ひとつをへだてて世のなかには夏になれば牡丹がさくといふことのほかなんにも知らないかのやうに寂寞と行ひすましてゐる。

    <寂寞(じゃくまく・せきばく)→ひっそりと静まり返って、もの寂しい様子。すましている→何事にも動じないように振る舞ったり、集中していたり、クールな様子。>

    老僧人寂寞地修行,仿佛对他来说,去往凡尘人世不过是跨过一座拱桥,而世间自有诸多琐事,除却夏天牡丹花开,他一概不闻不问。

    私はいつしか子供心に老僧を敬ふ念をおこしどうかしてこの人にすがりたいと思ひはじめた。

    <敬ふ→うやまう。すがりたい→すがる→頼りにして助けを求める。>

    年幼时,我很敬重这位老僧,还想过追随在他身旁。

    そのじぶんにはもうすつかり寺の人たちと心安くなつてたので貞ちやんのゐるゐないにかかはらず毎日のやうに遊びにいつて、年寄りのするやうに手を腰にまはして庭をあるいたり、冷たい墓地をまはつたりして、をりをり人の身のうへや自分の身のうへを思つて涙をうかめることもあつた。

    <心安く→懇意である→親しくなり遠慮がいらない関係。をりをり→ときどき。身の上(みのうえ)→自身の状況や生活、個人的な事情、境遇。身の上話(みのうえばなし)、一身上の都合により(辞表の決まり文句)。涙をうかめる→涙が溜まって今にも溢れ出しそうな→涙ぐむ>

    那时,我已经和寺里的人彻底混熟了,即使小贞不在也每天去玩。我像老僧那样将双手放在腰间,在庭院里走来走去,或者去冷清的墓地里转一圈,想起别人和自己身上发生的事情,有时忍不住眼含热泪。

    ……私は鎖をひきずる囚人が己の姿を愧づるやうな気もちでいつもうなだれて足もとを見つめながら考へこんで歩くのが癖であつた。

    <ひきずる→地面を擦りながら引っ張る。囚人(しゅうじん)→牢屋に閉じ込められている受刑者。己(おのれ)→自分。愧(は)づる→過ちを反省し恥ずかしいと思うこと。斬鬼(ざんき)に堪えない。項垂(うなだ)れて→元気がなく力なく下を向く様子。>

    ……我就像拖着锁链的囚犯一样自惭形秽,养成了走路时垂着头盯住脚尖思考的习惯。



    30 min
  • 234 中勘助 銀の匙 162(後編14④)

    <日の出ラジオ 我らの文学234 中勘助『銀の匙』162(後編14④)>

    ラジオ収録20260616 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、沛公(立命館大学生)、胡さん・郭灏东(神田外語学院日本語教育学学生)畠山(CUC中国語専攻・Kakehashi Studio)、稲本廉(神田外語学院大学院進学科学科長)李美松(両国京桜学院・両国進学塾社長)、宋嘉駿、徐子文(東洋大学大学院生)。

    <<38.59万回突破記念!ありがとうございます!>>

    どうかすると老僧は茶がほしいときに蜩の鳴くやうな音のする鈴をならすことがあつた。

    <どうかすると→ややもすれば、ともすれば、場合によっては。蜩(ひぐらし)→夏の終わり頃に物悲しく鳴く蝉。>

    老僧若想喝茶便摇铃,那铃声如日本暮蝉的鸣叫。

    それでもききつける者がゐなければ鉢の子のやうに茶碗を手にうけとことこと橋をわたつて自分で茶をいれてゆく。

    <鉢の子→仏教の修行僧(托鉢僧)が、施し物(米や金銭)を受けるために首から下げるお椀のこと。とことこ→ゆっくり、のんびり、軽やかに可愛く歩く様子。>

    如果没人听到铃声,他就托起一只钵子似的茶杯,迈着小碎步过桥自己倒茶。

    また時たま仏事によばれて頭巾を阿禰陀にかぶり、かた手に数珠、かた手に杖をついてとぼとぼと歩いてゆく姿をみる者はこの見すぼらしい坊さんがなにかの時には緋の法衣をきる人だと思ふ者はなかつた。

    <仏事(ぶつじ)→仏教に基づいた儀式や行事全般。法事は亡くなった人を供養するための仏教行事で仏事の一部。頭巾(ずきん)→布を折りたたんで袋状にして頭に冠(かぶ)るもの。阿弥陀に被り→帽子などを深く被らず、前を上げて、後ろに傾けて浅く被ること。数珠(じゅず)。とぼとぼと→元気がなく、弱々しく、力なく歩く様。見窄(みすぼ)らしい→外見や身なりが貧弱で貧相で見苦しい、情けない様子。緋の法衣(岩波文庫のルビは「ひのころも」→仏教の僧侶が身につける鮮やかな赤色の法衣。>

    偶尔有人叫他去做法事,他便戴上头巾,一手拿念珠,一手拄手杖,步履蹒跚地出门。谁也想不到这个寒碜的和尚在有人需要他时,会穿上绯红的法衣。



    40 min
  • 233 中勘助 銀の匙 161(後編14③)

    <日の出ラジオ 我らの文学233 中勘助『銀の匙』161(後編14③)>

    ラジオ収録20260527 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、沛公(立命館大学生)、胡さん・郭灏东(神田外語学院日本語教育学学生)畠山(CUC中国語専攻・Kakehashi Studio)、稲本廉(神田外語学院大学院進学科学科長)李美松(両国京桜学院・両国進学塾社長)、宋嘉駿、徐子文(楠元大学院生)。

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    七十七になる老僧はそこにとぢこもつて朝夕の看経かんきんのほかにはもの音もたてない。

    <看経(かんきん)→仏教の経文(きょうもん)を読むことで、元々は黙読であったが現在では声に出して読む読経(どっきょう)と同義。>

    七十七岁的老僧人就埋首于此,除了早晚诵经,平时什么声音也没有。

    私たちはただいつとはなしに隙をもれてくる薫物のかをりによつてそこに石のごとくにしづまりかへつた人のゐることを知るばかりであつた。

    <いつとはなしに→いつの間にか、知らない間に。隙(ひま。すき?)。薫物(たきもの)→沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)などの香木や香原料(前掲のほか、丁子(ちょうじ)抗菌殺菌抗炎症局所麻酔作用)、麝香(じゃこう)ジャコウジカの分泌物を乾燥させた官能的なムスクの香り)を粉末にし、蜂蜜や梅肉などを練り合わせて丸めたお香(練香ねりこう)>

    我们只能从门缝间偶然飘出的熏香味道,得知那个像石头一样一动不动的人在那里。



    33 min
  • 232 中勘助 銀の匙 160(後編14②)

    <日の出ラジオ 我らの文学232 中勘助『銀の匙』160(後編14②)>

    ラジオ収録20260519 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 なんだかんだぱんだ楠元純一郎(東洋大学教授・法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学博士) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・神田外語学院社会学非常勤講師)読解者 福留邦浩(日本経済大学教授・国際関係学博士)、沛公(立命館大学生)、胡さん・郭さん(神田外語学院日本語教育学学生)畠山(CUC中国語専攻・Kakehashi Studio)、稲本廉(神田外語学院大学院進学科学科長)李美松(両国京桜学院・両国進学塾社長)、宋さん、徐さん(楠元大学院生)。

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    いつもかたくとざされてもの音もしない離れの障子があいて脇息に凭よつた老僧の姿のみえるのはこの頃である。

    <とざされて→閉ざされて→完全に遮断されて。脇息(きょうそく)→脇において、もたれかかる安楽用具。凭→もたれる、よる。>

    这样的时候,平日里静寂无声,似乎永远紧闭着的那扇偏房的木门便会打开,里面有一位老僧人倚在靠椅上。

    離れのまへには老僧の秘蔵の牡丹の古木があり淡紅のひとへの花びらに芳しい息をふくんでふくらかに花をひらく。

    <秘蔵(ひぞう)の→とても大切にして人にはあまり見せずに隠して持っている。淡紅(たんこう)→薄紅(うすべに)→紅色に白を混ぜたような色。芳(かんば)しい→香りがよいこと、好ましく立派な様子。成績が芳しくない。ふくらかに→肉づきがよく丸みがある、ふっくらとしている、ふくよかである。>

    偏房前是老僧人秘藏的一棵老牡丹树,淡红色的单瓣牡丹饱满地开着,芳香扑鼻。

    そこは狭い中庭をあひだに母屋とは弓なりの橋ひとつをへだてて、日あたりのいい縁のしたには秋海棠のひとり生えがしげり、むかつて左の端には青桐、右の端にははくうん木が涼しい蔭をつくつてゐた。

    <母屋(おもや)→敷地内の中心となる家族の居住用の建物。縁(えん)→建物の端(はし)、縁側(えんがわ)。秋海棠(しゅうかいどう)→秋に咲くバラ科のカイドウに似た花。ひとり生えがしげり→自然に自生すること。青桐(あおぎり)→日本三大美幹木(白樺(幹が白色、姫沙羅(ヒメシャラの幹は滑らかな赤褐色)、青桐(幹が鮮やかな緑色)。白雲木(はくうんぼく)→白い小花が房状に垂れ下がって咲く木。>

    这里和狭小的中庭之间隔着正房,有一座弓箭形状的拱桥将此处与正房连通。朝阳的屋檐下长着一株茂盛的秋海棠,对面左边是一棵梧桐树,右边的一株玉玲花树撑起一片阴凉。



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