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ラジオ収録20240225
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎 中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)読解者 李亜老師(日本語言語文学博士) 聴講 劉凱戈、李可心、吉川佳太、沈苁怡
彼の奥底のしれぬ沈黙、その沈黙の底から溢れだす涙、私はどうかしてその正体をつかまへようといふことを思ひたつて、それからはみんなの笑ふのもかまはず努めて彼に近づくやうにした。
<正体(しょうたい)→本当の姿、本質、実体。かまわず→気にせず。努(つと)めて→できるだけ。>
他有一种深不可测的沉默,他的泪水从沉默的谷底流出。我无论如何都想要探知那泪水的真相,便不顾大家的嘲笑,刻意接近他。
私は彼の機嫌のいい折をみては おはやう とか さやうなら とかいふ短い挨拶の言葉をかけてみたが、さきは帝王が臣下に対するほどの会釈もかへさない。
<折(おり)→とき、機会。さき→相手。会釈(えしゃく)→軽い挨拶、お辞儀。>
我曾瞅准他心情好的时候,试着对他说一些诸如“早上好”“再见”之类简短的寒暄,蟹本却连帝王对臣子般点个头的反应都没有。
それでもかまはず倦うまず撓たゆまずつづけるうちある日彼は虱のやうにへばりついてる席をはなれひよこひよことそばへきてれいの舌たらずみたいに「□□さーんーはーいーいーひーとーだ」といふなり ふ、ふ、ふ と笑つていつてしまつた。
<倦
(う)まず
撓(
た)ゆまず→飽きたり怠けたりしないで。虱(しらみ)→小さな吸血昆虫。へばりついている→引っ付いて放れないさま。舌足らず→舌がうまく動かず、発音がはっきりしないこと。いふなり→言うや否や、言うとすぐに。
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即使如此,我仍不气馁,对他寒暄照旧。直到有一天,他终于不再像虱子一样粘在桌前,悄悄走到我身旁,“嘿嘿嘿”地笑着,口齿不清地说:“X——X——是——个——好——人——”
私にはそのひと言が飛びたつほど嬉しかつた。彼のいふことには微塵も嘘はない。すでにそのじぶん人の言葉には嘘のあることをあまりに多く知りすぎてた私にはたわいもない気まぐれなそのひと言がしみじみと身にしみて、きつと友達になれるだらう、さうしてこの気の毒な人を慰めてやることができるだらう と、もうその暗黒の扉の鍵が手に入つたかのやうに喜んだ。
<微塵(みじん)も→少しも。そのじぶん→その時分。たわいもない→取るに足りない、たいしたことのない。しみじみと→深く心に染みて感じるさま。身に染みて→深く感じて。気の毒な→他人の不幸や苦痛に同情して心を痛めること。慰(なぐさ)めて→悲しんでいる人に優しい言葉をかけるなどして悲しみを和らげること。>
这句话让我高兴的快跳起来了。蟹本的话里不参杂一点虚假。那个年纪的我,已经明白人言中有太多的谎话,而他天真无邪的这一句让我深深感动。我想,我们一定能成为朋友,我一定能抚慰这可怜人的心,于是简直像得到了开启那扇黑暗大门的钥匙般开心。
で、私は 今日こそ と思つて隣の席へいつてなにかと話しかけてみたがにやにや笑ふばかりでさつぱり埒があかない。そのうち彼は黙りこんで机
にうつむいてしまつた。
<埒(らち)があかない→物事がいつまでたっても進展せず、はかどらない。うつむく→顔を伏せる>
我以为今天就是最好的时机,就走到他的座位旁边,试着和他聊天。可他只是傻呵呵的笑着,一点反应都没有。没过多久,就默不作声地趴在桌上了。
と、やがてのことに奥の手をだして ひぎやあ と見事な一喝をくはした。日ごろの苦心も鸚鵡のひと声にまんまと水の泡になつた。
<やがてのことに→やっとのことに。奥の手→とっておきの秘策、最後の手段。一喝(いっかつ)→大きな一声でしかりつけること。まんまと→相手の計略にうまくひっかかってしまうこと。水の泡(あわ)になる→せっかくの努力が無駄になること、水泡に帰す。>
我只好使出最后一招,“呀——”地对他大喝一声。平日的苦心经营都随着这一声叫喊化为泡影。
蟹本さんは私のやうに望ましい連れがないゆゑに余儀なくひとりでゐるのではなくてはじめからほんとになんにもいらない人なのであつた。
<連(つ)れ→その人と行動を共にする人。ゆゑ→ゆえ(故)→理由。余儀なく→仕方なく、やむを得ず、そうせざるを得ないさま。ゐる→いる>
原来蟹本和我不同,他不是因为没有谈得来的朋友才孤身一人,而是从一开始就不需要任何人。