われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

175 中勘助 银汤匙 103(後編4⑤)


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103(後編4⑤)> 

ラジオ収録20240312

「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎 中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)朗読  松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)中国語訳監修 劉凱戈 李可心  孙轶凡

軼凡

そんなにしてやつとこさと一日の苦行をすませてさて帰る段となれば今度は生臭いびくがまた重荷となる。さうしてこれも教育のためとあつて私のいやがる路――古道具屋や倉庫や荷車や溝などのある路、電線の風に鳴る路、屋台店のならんだ路――をわざわざ廻り道してあるく。

<やっとこさと→ようやく、かろうじて物事をする様。苦行(くぎょう)→苦しい修行。帰る段→帰るとき。生臭い→生の魚、肉、血などの臭い。びく→釣った魚を入れておく籠。廻(まわ)り道して→遠回りして>

就这样结束一整天的辛苦修行,总算踏上回家之路。可那腥臭的鱼篓又开始让人头疼。哥哥连这个“教育机会”也不放过,故意绕远,带我走我不喜欢的路—有的路上有古董店、仓库、货车和水沟,有的路上电线被风吹得乱响,有的路上有许多摊贩。

叱られ叱られして疲れきつた足に後から小走りしてゆくのだが、遠い路を遠くして歩くのでまだ家近くならないうちに日がくれてしまふ。そのときの不愉快と不平……のうちに夕べの空にひとつふたつ耀きはじめる星、それは伯母さんが神様や仏様がゐるところだと教へたその星を力に懐しくみとれてゐれば兄は私のおくれるのに腹をたてて「なにをぐづぐづしてる」といふ。はつと気がついて「お星様をみてたんです」といふのをききもせず「ばか。星つていへ」と怒鳴りつける。

<小走(こばし)り→小股で足早に歩くこと。日が暮(く)れて→日没。夕べ→夕方の雅語。見惚(みと)れて→うっとりと見る、見惚(みほ)れる。ぐづぐづ→愚図愚図→のろまな様>

我被骂得筋疲力尽,还要跟在他身后一路小跑。原本路途就远,再故意绕

远,经常还离家很远太阳就下山了。我揣着一肚子的不愉快和愤愤不平,看到黄昏

的天空上闪着一两颗灿烂的星。呆望着那些繁星,我想起阿姨曾说神明或佛祖就住

在那里,于是试图从它们身上汲取力量。而哥哥又嫌我走得太慢,生气道:

“你磨蹭什么呢!”我这才忽然回过神来。“我在看星星大人。”“笨蛋。给我叫星星。”他怒吼着,根本不听我说的话。

あはれな人よ。なにかの縁あつて地獄の道づれとなつたこの人を 兄さん と呼ぶやうに、子供の憧憬が空をめぐる冷たい石を お星さん と呼ぶのがそんなに悪いことであつたらうか。

<あはれな→可哀想な。道連(づ)れ→同行。憧憬(どうけい・しょうけい)→あこがれること>

这个人多么可悲啊!既然,我必须把这个不知因为什么孽缘要在地狱之路上结

伴同行的人尊为兄长,那么,将孩提时期憧憬着的天上的冰冷石头叫作“星星大

人”,又有何不可呢?



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