148 中勘助『銀の匙』75(前編51③)>
ラジオ収録20230127
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎 中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学者)中国語朗読 刘耀鸿 聴講 张晓良 張智航 劉凱戈 吉川佳太
そのうちある日のことれいのちよつぺいが学校のひけがけにこそこそとやつてきて
「あした待ちぶせするつていつてたよ」といふなり見つかるのが怖いのかさつさと駈けていつた。
<れいの→例の→あの、いつもの。ひけがけ→終わって退出すること。待ち伏せ→予め交戦地域を設定し、部隊を適所に配置し、敵や獲物に発見されることなく偽装して目標の観察をし、適時において奇襲を加えるという攻撃、いうなり→言うとすぐに>
不久后的一天,长呸在放学时偷偷摸摸地跑来找我: “富公说明天要埋伏你呢!”
也许是害怕被富公看到自己通风报信,他说完就跑了。
私はちよつぺいの心根を嬉しく思つた。翌朝私は二尺ばかりの布袋竹ほていちくのでこでこなやつを羽織のしたへしのばせて さあこい といふ気で学校へいつた。
<心根(こころね)→本心、心の奥底、本性。二尺→一尺はおよそ30cm。布袋竹→マダケの一種で、棹の下部が七福神の布袋様の腹のように膨れ上がることから。羽織(はおり)→丈の短い着物、羽織る→着物の上から軽くかけるようにして着る。忍ばせて→隠して。>
长呸的真性情让我很开心。第二天一早,我做好大战一场的思想准备,把一截结实饱满、两尺来长的罗汉竹,塞进和服外衣里,上学去了。
最後の時間がすむやいなや富公は「みんなこい みんなこい」と相図しながらまつ先に教場を駈けだした。
<相図(あいず)しながら→身振りなどで知らせながら。駆け出した→走って外に出た>
最后一节课刚刚下课,富公就比画着对大家说: “都过来,都过来!” 第一个冲出教室。
するとなかでもおべつかつかひの三四人の奴らがばらばらとあとについていつた。私は覚悟をきめてわざといちばんあとから帰つたら相手は案のぢやう人通りのない八幡様の笹藪のところで待ちかまへてゐておべつかが えへん えへん とばかにした咳ばらひをする。
<おべっかつかい→お世辞を言って人に気に入られようと機嫌をとる者。案の定(あんのじょう)→予想した通り。咳払い→「えへん」とかいう相図>
还有三四个爱拍马屁的家伙也稀稀落落地跟在他身后。我 心意已决,特意最后一个走出教室。那群人果然埋伏在八幡神社的竹林里,那里没 什么人经过。我听见他的小跟班怪腔怪调地咳嗽几声。
こちらは 今日こそ とおもふ心を色にもみせずすまして通らうとするのを富公は「そら、やれやれ」と下知げぢをした。
<おもう心を色にもみせずすまして→気持ちを悟られないように。下知(げち)→上から下へ指図、命令すること>
我暗暗想着这一天终于来了, 却不动声色地走过去。就在这时,富公命令道:“喂!快上快上!”