われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

141 中勘助 银汤匙 68(前編48③)


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ラジオ収録20221202

「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」

司会 楠元純一郎

中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校教諭)

中国語翻訳 編集 レオー

読解者・朗読  松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)

読解者  福留邦浩(国際関係学者)

中国語朗読  刘耀鸿     

聴講   张晓良  張智航  劉凱戈 

 そんなにしてるうちにいつか私はお犬様や丑紅の牛といつしよにお蕙ちやんまでを自分のものみたいに思つてその身にふりかかる毀誉褒貶の言葉や幸不幸な出来事はそのままひしひしとこちらの胸にこたへるやうになつた。

<丑紅の牛→「寒中の丑の日に買う紅は、唇や口中の荒れを防ぐ」という江戸時代の紅屋の広告からの言葉。毀誉褒貶(きよほうへん)→褒めたり貶したりすること。ひしひしと→強く身や心に感じる様。こたえる→強く感じる。>

  就这样,不知不觉间,我已经觉得阿蕙和犬神、泥牛一样是属于我的。发生在她身上的事情,无论是被人称赞还是批评,无论她幸或不幸,我都视同于发生在自己身上,和她一同喜悦或哀愁。

私はお蕙ちやんを綺麗な子だと思ひはじめた。それがどんなに得意だつたらう。併しそれと同時に自分の容貌は嘗て思ひもかけなかつたつらい重荷となつた。自分はもつともつと綺麗な子になつてお蕙ちやんの心をひきたい。さうして二人だけが仲よしになつていつまでもいつしよに遊んでゐたい。私はそんなことを考へはじめた。

<併し(しかし)。嘗て(かつて)→今まで一度も〜ない。>

我开始认为阿蕙长得很漂亮。这让我多么得意!可是与此同时,自己的相貌也给我平添了一份从前根本不曾想过的哀愁。我希望自己变得更好看,吸引阿蕙的芳心。我希望我们能就这样一直当好朋友,永远在一起玩—我开始考虑起这些事情来。 

 ある晩私たちは肱かけ窓のところに並んで百日紅の葉ごしにさす月の光をあびながら歌をうたつてゐた。そのときなにげなく窓から垂れてる自分の腕をみたところ我ながら見とれるほど美しく、透きとほるやうに蒼白くみえた。それはお月様のほんの一時のいたづらだつたが、もしこれがほんとならば と頼もしいやうな気がして「こら、こんなに綺麗にみえる」といつてお蕙ちやんのまへへ腕をだした。

<百日紅(サルスベリ>

       一天晚上,我和阿蕙靠在小窗边,月光从百日红叶子的缝隙间透下来。我们一面沐浴着月光,一面唱着歌。那时,我看到自己的手腕从窗台上垂下来,透明的莹白,非常好看。其实只是月神一时的作弄,但我竟希望那是真的,便把手腕伸到阿蕙面前: “看,我的手腕多漂亮!”  

「まあ」さういひながら恋人は袖をまくつて「あたしだつて」といつて見せた。しなやかな腕が蝋石みたいにみえる。二人はそれを不思議がつて二の腕から脛、脛から胸と、ひやひやする夜気に肌をさらしながら時のたつのも忘れて驚嘆をつづけた。

<蝋石(ろうせき)。二の腕(にのうで)→肩と肘(ひじ)の間の部分。脛(はぎ)→膝から「くるぶし」までの部分、すね。夜気(やき)→夜の冷えた空気。>

“哎呀!” 我的小恋人也把自己的袖子卷起来。“你看我的也很漂亮!” 那手腕软乎乎的,像蜡石一般粉嫩。我们看着彼此的腕子,都觉得很神奇,又依次给对方看了胳膊、小腿、胸脯。夜晚的凉意抚着肌肤,我与阿蕙不住赞叹着,忘记了时间的流逝。



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