
Sign up to save your podcasts
Or
142 中勘助『銀の匙』69(前編49①)>
ラジオ収録20221209
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」
司会 楠元純一郎
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)
中国語翻訳 編集 レオー
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
四十九
そのころ西隣へ縫箔ぬひはくを内職にする家がこしてきてそこの息子の富公といふのがあらたに同級になつた。
<縫箔(ぬいはく)→刺繍と金銀の箔で模様を表した着物型の能装束。内職(ないしょく)→本職の他に家計補助のためにする仕事、主婦などが家事の合間にする賃仕事、サイドビジネス、副業。こしてきて→引っ越してきて→転居してくること。>
那时西边搬来一户邻居,副业是给衣服刺绣缝箔。这家的儿子名叫富公,成了我们的同学。
彼はさつぱり出来ない子だつたが口前がいいのと年が二つも上で力が強いために忽ち級の餓鬼大将になつた。
<口前(くちまえ)がいい→話が上手い。忽(たちま)ち→すぐに。>
他成绩不好,但能说会道,比我大上两岁,力气也大,立刻就成了班上的孩子王。
で、自然私はこれまでのやうに権威をふるふことができないばかりか体面上さうさう頭をさげてゆくこともならず、ひとり仲間はづれのかたちになつてしまつた。
<そうそう→そのような状態になってすぐに。仲間はずれ→仲間に入れてもらえず孤立すること、村八分。>
有他在,我自然是不能像以前那样耀武扬威了,可碍于颜面,又不愿向他低头,渐渐就被伙伴们孤立起来。
彼は近処に友達がないもので学校から帰ると私を誘ひにきて裏で遊ぶ。私は彼をあんまり好かないのとお蕙ちやんと遊びたいのが山山なのとでちつとも気がすすまなかつたけれど、その反感をかふのを懼れてせうことなしにつきあつてゐた。
<山山(やまやま)→たくさん。気が進まない→気乗りしない。反感を買う→反発の感情を相手に抱かせること、嫌われること。懼(おそ)れて→危惧して。せうことなしに→どうしようもなくて>
他在这附近没有朋友,放学回家后就来约我去后院玩。我本来就不怎么喜欢他,又一心想和阿蕙玩,一点也提不起兴致。但又害怕得罪人,只好奉陪。
もともとおてんばの好きなお蕙ちやんは私たちの遊びを垣根ごしに面白さうに見てたが終には自分も出てきて見やう見まねに縄とびや箍まはしなどをやるやうになつた。
<おてんば→男勝りの活発な女の子。見よう見まねに→他人の仕草を見ているうちに自然に習い覚えて、自分でもできるようになること。箍(たが)まわし→桶の周りにはめる竹や金属の輪を回す遊び。>
阿蕙本来就是个假小子,她起初隔着围篱,满脸好奇地看着我们玩,最后忍不住跑过来,学着我们的样子翻绳、滚铁环。
如才ない富公は お嬢さん お嬢さん と機嫌をとつて、さかだちをしたり、筋斗とんぼがいりをしたり、いろんな芸当をやつてみせる。
<如才ない→話などがうまく、愛想がよく、気が利いていて手抜かりがないこと。筋斗(とんぼがえり)→筋は木を切る道具で重く、柄(え)が軽いのでよく斗転(回転)する、とんぼ返りをする。芸当→特別な技術を伴って演ずる技、離れ業(はなれわざ)。>
体贴的富公一口一个“大小姐”地讨好她,一会儿表演倒立,一会儿表演翻筋斗,变着花样讨她欢心。
そんなことの大好きなお蕙ちやんは 富ちやん 富ちやん と彼のあとばかり追つてあるく。
阿蕙特别喜欢这些,“阿富、阿富”地唤着他的名字,追在他身后。
伯母さんひとりの手に育てられてお国さんとばかり遊んでた私は修業がつまないのでとてもそんなはなれわざはできず、器量わるくも富公がこの小女王の寵幸をほしいままにするのを指をくはへて見てるよりほかはなかつた。
<修業がつまない→修行を積んでいない→研鑽を積んでいない。器量わるい→不細工(ブサイク)。寵幸(ちょうこう)をほしいままにする→かわいがられる。指を咥(くわ)えて→羨ましがりながら、手を出せずにいる>
我由阿姨一手带大,以前只和阿国一起玩过,从小就觉得那些花招都很无聊,哪里做得出来。但此时再不甘愿,也只能在一旁眼睁睁地看着富公依着小女王的要求宠溺着她,我唯有羡慕的份儿。
142 中勘助『銀の匙』69(前編49①)>
ラジオ収録20221209
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」
司会 楠元純一郎
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)
中国語翻訳 編集 レオー
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
四十九
そのころ西隣へ縫箔ぬひはくを内職にする家がこしてきてそこの息子の富公といふのがあらたに同級になつた。
<縫箔(ぬいはく)→刺繍と金銀の箔で模様を表した着物型の能装束。内職(ないしょく)→本職の他に家計補助のためにする仕事、主婦などが家事の合間にする賃仕事、サイドビジネス、副業。こしてきて→引っ越してきて→転居してくること。>
那时西边搬来一户邻居,副业是给衣服刺绣缝箔。这家的儿子名叫富公,成了我们的同学。
彼はさつぱり出来ない子だつたが口前がいいのと年が二つも上で力が強いために忽ち級の餓鬼大将になつた。
<口前(くちまえ)がいい→話が上手い。忽(たちま)ち→すぐに。>
他成绩不好,但能说会道,比我大上两岁,力气也大,立刻就成了班上的孩子王。
で、自然私はこれまでのやうに権威をふるふことができないばかりか体面上さうさう頭をさげてゆくこともならず、ひとり仲間はづれのかたちになつてしまつた。
<そうそう→そのような状態になってすぐに。仲間はずれ→仲間に入れてもらえず孤立すること、村八分。>
有他在,我自然是不能像以前那样耀武扬威了,可碍于颜面,又不愿向他低头,渐渐就被伙伴们孤立起来。
彼は近処に友達がないもので学校から帰ると私を誘ひにきて裏で遊ぶ。私は彼をあんまり好かないのとお蕙ちやんと遊びたいのが山山なのとでちつとも気がすすまなかつたけれど、その反感をかふのを懼れてせうことなしにつきあつてゐた。
<山山(やまやま)→たくさん。気が進まない→気乗りしない。反感を買う→反発の感情を相手に抱かせること、嫌われること。懼(おそ)れて→危惧して。せうことなしに→どうしようもなくて>
他在这附近没有朋友,放学回家后就来约我去后院玩。我本来就不怎么喜欢他,又一心想和阿蕙玩,一点也提不起兴致。但又害怕得罪人,只好奉陪。
もともとおてんばの好きなお蕙ちやんは私たちの遊びを垣根ごしに面白さうに見てたが終には自分も出てきて見やう見まねに縄とびや箍まはしなどをやるやうになつた。
<おてんば→男勝りの活発な女の子。見よう見まねに→他人の仕草を見ているうちに自然に習い覚えて、自分でもできるようになること。箍(たが)まわし→桶の周りにはめる竹や金属の輪を回す遊び。>
阿蕙本来就是个假小子,她起初隔着围篱,满脸好奇地看着我们玩,最后忍不住跑过来,学着我们的样子翻绳、滚铁环。
如才ない富公は お嬢さん お嬢さん と機嫌をとつて、さかだちをしたり、筋斗とんぼがいりをしたり、いろんな芸当をやつてみせる。
<如才ない→話などがうまく、愛想がよく、気が利いていて手抜かりがないこと。筋斗(とんぼがえり)→筋は木を切る道具で重く、柄(え)が軽いのでよく斗転(回転)する、とんぼ返りをする。芸当→特別な技術を伴って演ずる技、離れ業(はなれわざ)。>
体贴的富公一口一个“大小姐”地讨好她,一会儿表演倒立,一会儿表演翻筋斗,变着花样讨她欢心。
そんなことの大好きなお蕙ちやんは 富ちやん 富ちやん と彼のあとばかり追つてあるく。
阿蕙特别喜欢这些,“阿富、阿富”地唤着他的名字,追在他身后。
伯母さんひとりの手に育てられてお国さんとばかり遊んでた私は修業がつまないのでとてもそんなはなれわざはできず、器量わるくも富公がこの小女王の寵幸をほしいままにするのを指をくはへて見てるよりほかはなかつた。
<修業がつまない→修行を積んでいない→研鑽を積んでいない。器量わるい→不細工(ブサイク)。寵幸(ちょうこう)をほしいままにする→かわいがられる。指を咥(くわ)えて→羨ましがりながら、手を出せずにいる>
我由阿姨一手带大,以前只和阿国一起玩过,从小就觉得那些花招都很无聊,哪里做得出来。但此时再不甘愿,也只能在一旁眼睁睁地看着富公依着小女王的要求宠溺着她,我唯有羡慕的份儿。
143 Listeners
210 Listeners
0 Listeners
168 Listeners
40 Listeners