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144 中勘助『銀の匙』71(前編50①)>
ラジオ収録20221230
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」
司会 楠元純一郎
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)
中国語翻訳 編集 レオー
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
五十
気も狂ひさうな日がいく日かつづいた。ある日のこと私がまたひとり自習室にとぢこもつて思ひ悩んでるときにふとぽくぽくちりちりいふぽつくりの音がきこえた。はつとしたが胸をおさへて窓をあけることはしなかつた。すると忘れるまもないなつかしい声が「ごめんあそばせ」と格子のところでいつた。
<いく日か→幾日か、何日か。とじこもって→閉じ籠って。ふと→なにげなく、なんの脈絡もなく、突然。ぽっくり→女児用の下駄。格子→等間隔の平行線の交わりの区切り、仕切り。格子のところ→玄関口>
让我快要发疯的日子一天天过去。有一天,我又把自己一个人关在自习室,正在苦闷的时候,外面忽然传来轻巧细碎的木屐声。我心下一惊,却压抑着自己的情绪,没有开窗。没过多久,门口响起那个让我怀念又眷恋的声音。“打搅了。”阿蕙走到格子门旁。
「どなた様でございます」伯母さんがそら恍とぼけて出ていつて「おお おお どこのお客様かと思つたらこんなかはええお嬢様だつた」といひいひ抱へあげる様子で、訳をしらないもので かぜをひいたか の、お泊りにいつたか のと尋ねてゐる。
<空(そら)恍(とぼ)けて→知らないふりをして、知らばっくれて。こんなかはええ→こんな可愛いい。抱(かか)へあげる→抱き上げる。訳を知らない→道理、事情、理由がわからない>
“您是哪位呀?” 阿姨装作不知情地走过去。 “哎呀!哎呀!我还在想是哪位贵客,原来是这么可爱的大小姐呀!” 她说着就要抱起阿蕙,因为不知道我们之前的事情,还问她“之前感冒了吗”“去哪里玩了吗”之类的问题。
お蕙ちやんは伯母さんのあけた障子からおとなしくはひつてきて「御無沙汰いたしました」としとやかに手をついた。
<障子(しょうじ)→木枠に紙を貼ったもので、部屋を遮る道具。ご無沙汰いたしております→一定期間連絡をとっていないお世話になった方に述べる言葉。しとやかに→淑やかに→もの静かで上品で、慎み深い(謙虚な)様>
阿蕙乖巧地从阿姨拉开的门前走进来,端庄地跪坐在我面前,双手交叠放在地面,对我行礼: “好久不见。”
こらへにこらへてた私はそのひと言に張りつめた気の弦つるをきられてわれしらず
「お蕙ちやん」と呼びかけると同時にくやし涙がさつとこぼれた。
<こらへにこらえてた→堪えに堪えてた。弦(つる)→円周上の二点を結ぶ線分、げん。心の琴線に触れる→感動する。我知らず→自分で意識しないで思わず。>
我一忍再忍的情绪像紧绷的琴弦,随着她这一句话忽然松懈下来,不由自主地叫了声“阿蕙”,委屈的泪水“唰”地掉了下来。
144 中勘助『銀の匙』71(前編50①)>
ラジオ収録20221230
「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」
司会 楠元純一郎
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)
中国語翻訳 編集 レオー
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
五十
気も狂ひさうな日がいく日かつづいた。ある日のこと私がまたひとり自習室にとぢこもつて思ひ悩んでるときにふとぽくぽくちりちりいふぽつくりの音がきこえた。はつとしたが胸をおさへて窓をあけることはしなかつた。すると忘れるまもないなつかしい声が「ごめんあそばせ」と格子のところでいつた。
<いく日か→幾日か、何日か。とじこもって→閉じ籠って。ふと→なにげなく、なんの脈絡もなく、突然。ぽっくり→女児用の下駄。格子→等間隔の平行線の交わりの区切り、仕切り。格子のところ→玄関口>
让我快要发疯的日子一天天过去。有一天,我又把自己一个人关在自习室,正在苦闷的时候,外面忽然传来轻巧细碎的木屐声。我心下一惊,却压抑着自己的情绪,没有开窗。没过多久,门口响起那个让我怀念又眷恋的声音。“打搅了。”阿蕙走到格子门旁。
「どなた様でございます」伯母さんがそら恍とぼけて出ていつて「おお おお どこのお客様かと思つたらこんなかはええお嬢様だつた」といひいひ抱へあげる様子で、訳をしらないもので かぜをひいたか の、お泊りにいつたか のと尋ねてゐる。
<空(そら)恍(とぼ)けて→知らないふりをして、知らばっくれて。こんなかはええ→こんな可愛いい。抱(かか)へあげる→抱き上げる。訳を知らない→道理、事情、理由がわからない>
“您是哪位呀?” 阿姨装作不知情地走过去。 “哎呀!哎呀!我还在想是哪位贵客,原来是这么可爱的大小姐呀!” 她说着就要抱起阿蕙,因为不知道我们之前的事情,还问她“之前感冒了吗”“去哪里玩了吗”之类的问题。
お蕙ちやんは伯母さんのあけた障子からおとなしくはひつてきて「御無沙汰いたしました」としとやかに手をついた。
<障子(しょうじ)→木枠に紙を貼ったもので、部屋を遮る道具。ご無沙汰いたしております→一定期間連絡をとっていないお世話になった方に述べる言葉。しとやかに→淑やかに→もの静かで上品で、慎み深い(謙虚な)様>
阿蕙乖巧地从阿姨拉开的门前走进来,端庄地跪坐在我面前,双手交叠放在地面,对我行礼: “好久不见。”
こらへにこらへてた私はそのひと言に張りつめた気の弦つるをきられてわれしらず
「お蕙ちやん」と呼びかけると同時にくやし涙がさつとこぼれた。
<こらへにこらえてた→堪えに堪えてた。弦(つる)→円周上の二点を結ぶ線分、げん。心の琴線に触れる→感動する。我知らず→自分で意識しないで思わず。>
我一忍再忍的情绪像紧绷的琴弦,随着她这一句话忽然松懈下来,不由自主地叫了声“阿蕙”,委屈的泪水“唰”地掉了下来。
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