われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

216 中勘助 銀の匙 144(後編11⑤)


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16中勘助『銀の匙』144(後編11⑤)>

ラジオ収録20250729「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎(法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)、Elena(パナマの実業家)、伍永揚(湖南衡陽の大学卒業生)、張涵(四川成都のアニメ制作デザイナー)、赵光悠(辽宁沈阳の中文博士)

 寺はおもに旗本を檀家にして江戸の絵図にものつたほどのものであつたが、御維新になつてからはそれらの人はみんなちりぢりばらばらになり、たまたまこちらにふみとどまつた者もおほかた零落してしまつたので、自然寺も思ひのほかの窮迫に陥つて年年に荒廃してゆくばかりの有様であつた。

<旗本(はたもと)→江戸時代、将軍に直接仕える家臣団の一員で、石高が1万石未満で、将軍に謁見(えっけん・おめみえ)できる者。御維新→明治時代。檀家(だんか)→特定の寺院に所属し、経済的な支援を行い、葬儀や法事などの仏事を受けられる家。おおかた(大方)→ほとんど。零落(れいらく)→落ちぶれる、没落する。>

寺院的信众以旗本身份的武士为主,甚至连江户城的手绘地图上也有它。但明治维新以后,信众们走的走,散的散,偶然留在本地的人也大多没落,寺院的境遇自然也变得窘迫,一年比一年荒废。

それでもまだ伯母さんにおぶさつていつたじぶんの俤は大概そのままにのこつて、玄関の衝立の孔雀はなほ誇りかに豪奢な尾をたれ、いろいろに咲きみだれた牡丹の花には今も昔の夢に酔ふかのやうに幾羽の蝶が舞つてゐた。

<おぶさる→背負われる。俤(おもかげ)→心の中に浮かぶ様子。衝立(ついたて)→間仕切り、パーティション。孔雀(くじゃく)。誇(ほこ)りかに→誇らしく→得意げで自慢したい気持ち。豪奢(ごうしゃ)な→非常に贅沢(ぜいたく)で派手(はで)な。牡丹(ぼたん)→中国の国花、百花の王、富貴の象徴。幾羽(いくわ)の→何羽かの>

不过阿姨背着我来这里的时候,它大概保持着原貌,玄关处屏风上的孔雀还骄傲地垂着奢华的尾巴,许许多多绚烂的牡丹花上有几羽蝴蝶飞舞,好像沉醉于故梦中。



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