われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

219 中勘助 銀の匙 147(後編12①)


Listen Later

我らの文学 中勘助『銀の匙《银汤匙》』〈8〉(抜粋)

19中勘助『銀の匙』147(後編12①)>

ラジオ収録20251029「レオンラジオ日の出」作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎(法学者) 中国語翻訳・朗読 レオー(録音師・中国大慶美術教師) 中国語監修 冯宪中(国際経済学者) 朗読・読解者 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)

十二

春のころには坂ひとつ向ふの広い原へいつて凧をあげる。貞ちやんのは鬚達磨で、私のは障子骨の金太郎だつた。

<凧(たこ)→風に泳がせ、糸を引き、揚力を生み出して、空中に飛揚させるもの。髭達磨(ひげだるま)→逹磨→中国に禅宗を伝えたインドの高僧で、9年間、修行で髭を剃らなかったことから長く伸びた髭で有名。障子骨(しょうじぼね)→障子の木枠の中に、縦横に組み渡した細い桟(さん)。桟→横木。金太郎→熊と相撲を取るなどして育った怪力の少年の物語。>

  春天的时候,我们去坡道对面宽阔的原野上放风筝。小贞的风筝是留着胡子的

达摩,我的是木框做的金太郎。

最初糸目をおさへられてこちらの思ふままになつてた凧は高くあがるにしたがひ威張りだして、終にはひとすぢの糸で夢中に空を見あげてる揚げ手を支配しはじめる。

<揚げ手→(凧)を揚げている人>

起初我们按着线,风筝还很听话,但它越飞越高,就渐渐耀武扬威起来,最后反倒支配了我们这些痴迷地望着天空放风筝的人。

彼はぶんぶんうなりながらゆーらゆーらと尻尾をふつて大空の海を泳ぐやうにみえる。あんまり張りが強くなつてひきずられたり、なにかにさはつて廻りだしたりするとなんだか怖くなつて 「かんにんだー、かんにんだー」とあやまりながら一所懸命だまをだして機嫌をなほしてもらふ。

<堪忍(かんにん)だ→我慢してください、許してください。だまをだす→凧の糸を出し切る。>

金太郎风筝呜呜地长啸着,优哉游哉地摇着尾巴,在广袤的天空之海中畅游。有时候线绷得太紧,我们反被风筝拽着走;有时不知道做错了什么,惹得风筝在空中兜了个圈。我们一面慌忙道歉:“饶了我吧,饶了我吧!”一面拼命地放线,哄着风筝开心。



...more
View all episodesView all episodes
Download on the App Store

われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎By Leo_楠元纯一郎


More shows like われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

View all
となりの雑談 by TBS RADIO

となりの雑談

51 Listeners