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30. Around Thirty, Not a Fable


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真面目な回が続いたので、ゲストにくのりんを迎え、久々に肩の力を抜いた雑談(?)回。研究者のメンタルの浮き沈み、生成AIに詰められる「グリルミー」、30代で来るフィジカルのガタ、研究のタコツボ化、研究室の「色」、そして教員という「公共性の高い人格」まで、とりとめなく話しました。


Chapters

(00:00) 久々の雑談と、研究者のメンタルの浮き沈み

(06:26) グリルミー:AIに詰められる

(17:46) 30代、フィジカルにガタが来る

(20:59) メンタルとフィジカルのシーソー

(23:10) タコツボ化と研究の「形式化」

(25:01) 研究室の「色」とブランディング

(28:55) 研究会は「意見をもらいに行く」場

(33:00) 研究者の動機と、興味への引き寄せ

(38:35) 公共性の高い人格と教員の立場


Show notes

  • kunori(くのりん)… 今回のゲスト。博士課程4年。koikeやaburaと同じく知的学習支援システム(ITS)まわりの研究者で、今後も登場するかも。
  • 単位取得退学… 博士課程の単位を取りきって退学すること。aburaの大学の場合:そこから1年以内に学位論文を通せば課程博士、過ぎると論文博士扱いで難易度が跳ね上がる。aburaが一番ヒリヒリしたのは、この最後のジャーナルの採録待ちの時期だった。
  • グリルミー(Grill Me)… 指示や考えを一問ずつ執拗に問い詰めてくる、Matt Pocock作のClaude Codeスキル(mattpocock/skills)。「私を焼いてください」=grill me(本来はgrill = 尋問という意味)。koikeが自分用にカスタムして研究ビジョンを相談したら、ととある「大先生」に詰められている気分になってそっと閉じた。後で気づいたのは、きついのは中身より「言い方」で、隙のないロジックと冷たい語尾のセットがトラウマを疼かせる、ということ。本来(?)は開発の仕様固め(plan modeの代わり)に使う道具。
  • ムーザルのプログラミング絶望ラジオ… koikeがグリルミーを知ったポッドキャスト(Spotify)。grill-meは「#44 grill-meで曖昧さを排除しよう」で紹介されていた。(収録ではkoikeが番組名を「絶望プログラミングラジオ」と少し言い間違えている。すみません。)
  • Fable / Mythos(Anthropicのモデル)… koikeがグリルミーを試したのは、収録前日(2026/6/9公開)の新モデル Fable 5 の力試しも兼ねて。Fable 5とMythos 5は中身は同じモデルで、危険な用途(サイバー・生物・化学など)を安全側に振り分ける安全策を付けて一般公開したのがFable、その制限を一部外して限られた防御者向けに絞ったのがMythos(一般非公開)。koikeの「Mythosに安全策を足したのがFable」という整理はおおむね正しい。名前も神話(Mythos)と寓話(Fable)で、どちらも語源は「語られた物語」だが、koike的には、「Fable」に「うそ」という意味が入ってるのがちょっと気になる年頃。
  • 抱き癖(だっこの左右差)… koikeの左肩痛の犯人(説)。片腕ばかりで15キロの子を抱いていると左右の筋力差が広がり、体のゆがみにつながる。子育て中の人は気をつけて。
  • メンタルとフィジカルのシーソー… メンタルが良いとフィジカルが落ちる、という30代のkoikeの実感。25〜30歳くらいが両方のピークで、今ちょうどその均衡が崩れるタイミングにいる。
  • タコツボ化… 同じ思考回路ばかり使って、そのルートにしか入れなくなること。kunoriの「考え方が形式化されすぎている」という漠然とした不安がこれ。ただしその不安自体は認知が活性化しているサインで、むしろ健全。何も思わなくなる方が怖い。
  • 研究室の「色」/ブランディング… 「これはうちじゃないよね」を明示的に共有して、研究室のアプローチをはっきりさせること。aburaの研究室はオントロジー工学・知識構造・思考タスクの設計を軸に、3年生の段階から議論する。明確な色は博士課程の不安への対抗策になる一方、閉じこもり(タコツボ化)の温床にもなる諸刃。
  • 「意見をもらいに行く」場… 研究会も国際会議も、本来は「どこかに通せばいい」ではなく意見をもらいに行く場。論文や採択という「形式」を目的化せず、公表していい議論につなげるのが筋。そもそもkoikeが研究者になった動機が「楽しく議論したいから」。
  • テニュア… 任期なしの安定ポジション。koikeはテニュアになって競争由来の不安が薄れた(もともとあまり競争してこなかったのもある)。
  • 自分に引き寄せる/マズローのハンマー… 興味の薄い仕事(共同研究やお金のための研究)を、自分の関心(モデル化など)に引き寄せるスキル。ただし引き寄せすぎると最初のタコツボ化に逆戻り。「ハンマーを持つと、何でも釘に見える」=道具の法則(マズローのハンマー)に注意。
  • AI for Science 萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)… aburaが応募した、AI活用研究にお金をつける文科省の公募(SPReAD)。1課題500万円・半年規模で約1,000件。普段なら考えない「AIを使う」視点で自分の研究を眺め直すと、面白い切り口が見つかる、というストラテジー。
  • 公共性の高い人格… 教員という看板を背負うと、人格の「公共性」が勝手に上がって、俗っぽい自分が好き勝手に喋りづらくなる(窮屈さを感じる)、というkoikeの言葉。このポッドキャストでの喋り方も含めて、立場が表現の自由度を下げる、という話。
  • 個別最適性と公平性(教員と学生の距離)… 「密室指導は控える」「学生と関係を密にしすぎない」といったルールは、成績・学位・キャリアを左右する力の非対称を前提に、ハラスメントや不適切な関係から学生を守るためのものです。番組では「オーバーケア」という言葉を使いましたが、これは適切ではなかったかもしれません。ルールが要らない・過剰だと言いたいわけではなく、伝えたかったのは、教員と学生の距離を「個別最適性」と「公平性」のトレードオフとして見たい、ということです。個別最適性は、一人ひとりの関係性に合わせて距離やケアを最適化する方向です。公平性は、全員に一律で予測可能な線を引き、えこひいきや力の濫用を防ぐ方向です。全員に同じルールを当てはめる公平性のやり方には、本来そこまで必要のない人にまで一律にかかるコストがあり、ルール通りに徹底すると教員は冷たくならざるを得ず、いずれ「それなら全部AIでいい」になりかねません。心理的安全性や率直な指導は、オフの交流(雑談や食事など)の積み重ねから生まれる部分もあるので、できれば個別最適の側に寄せたいところです。とはいえ、その個別最適を力を持つ側の裁量に委ねること自体が濫用の温床になります。なので、公平性の最低ライン(線引き)は外さないこと、配慮の負担は力を持つ側が引き受けることを前提に、そのバランスを取るしかありません。ただ、それは非常に難易度が高く、ともすれば現実的ではないタスクだと思っているのが率直なところです。
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