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#35 愛すべきおじい・おばあ


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僕・やまちのおばあは、シングルマザーの母に代わって、よく授業参観に来てくれたものです。 僕が小学6年生、最後の授業参観の時のことでした。その日は、卒業が間近に迫った児童たちによる、両親への手紙を目の前で音読するという催しがありました。 手紙を聞きながら嗚咽する母親、もらい泣きする先生。拙い字で書かれた「ここまで育ててくれてありがとう」という言葉に込められた感謝が直に伝わり、感動的な雰囲気のまま進行していきました。 苗字が「や」で始まる僕の順番は、クラスで最後です。3日前に書き上げたおばあへの感謝の気持ちをしたためた手紙を取り出し、立ち上がったその時、チャイムが鳴りました。予定よりも時間がかかったせいで、授業の時間をオーバーしてしまっていたのです。 「いいよ、気にしないで読んでください。」 そう先生は言いました。しかしそれに異議を唱えた人物がいました。僕のおばあです。 「美容院の時間があるけんが、早めにして。」 どこまでもマイペースなおばあに、教室は笑いの渦に包まれました。僕は持ち前の早口で手紙を読み切りましたが、感謝の気持ちというのは等倍速で聞かなければ心には響きません。思えば僕のおばあは、お涙頂戴の感動話が大嫌いでした。戦後を生きた人は、あまりにもふてぶてしいのだなと実感しました。 僕の感謝の言葉は、おばあが亡くなった時、棺の前で言わせてもらおうと思っています。美容院の予約もないでしょうから。 


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