われらの文学 レオンラジオ 楠元純一郎

96 中勘助 银汤匙 23(前編33①)


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨



ラジオ収録20211225

中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国の小学校教諭)

読解者・朗読   松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)

読解者      福留邦浩(国際関係学者)楠元純一郎(法学者)

中国語朗読    刘耀鸿

聴講      张晓良 劉凱戈


三十三

 いよいよといふ日になつたが私は朝から

「お国さんがいかなければいかない」

をくりかへしてどうやら一日がくれた。

终于到了开学的日子,我从早上开始一直说:“阿国不去,我也不去。”就这样总算一天过去了。

〈いよいよ→とうとう、ついに。どうやら→なんとか、どうにか。〉


その晩私は寐間のかくれ家から無理やりに茶の間の白洲しらすへひきたてられて威おどしつ賺すかしつすすめられたけれど心をきめてがんばつてたら兄がいきなり衿くびをつかまへ妙なことをしてさんざ畳へたたきつけたあげく続けざまに頬ぺたを打つた。

〈寐間(ねま)→寝室、寝間着(ねまき→パジャマ)、白洲→江戸時代の裁判所、玉砂利が敷き詰められているところ。玉砂利にはお清め(汚れを除く)の意味あり。 威(おど)しつ賺(すか)しつ〉→脅す→怖がらせる)、賺す→機嫌をとる、宥める、言いくるめて騙す。さんざ→さんざん→ひどく(酷く)、あげく(挙句)→結果、頬っぺた、頬(ほほ)→cheek、cheek dance→頬を寄せ合って踊る踊り。


那天晚上,我被从卧室的藏身之处硬是给拽到了茶室去审问,大家对我软硬兼施,可是我铁了心不去上学。哥哥突然抓着我的衣领,略施巧劲将我一再猛烈地摔在榻榻米上,又再打了我耳光。


伯母さんは

「この弱い子をどうせるだ どうせるだ」

といつて

「私がよういつてきかせるで」

とかばひながら寐間へつれて逃げた。


<どうせるだ→どうするんだ。いってきかせる→教え諭す。庇(かば)いながら→他人から害を受けないように保護する>


阿姨说:“这孩子身体这么弱,你们怎么能这样!”又说“我跟他好好说,让他上学”。然后保护着我逃到了卧室。


兄は高等中学で柔術をやつてゐた。明る日は頬をはらして食事もせずにじつと寐間にひつこんでたら伯母さんは心配して仏様のお供物をこつそり私にたべさせた。

<はらす→腫らす、お供物(おくもつ)、こっそり→人に知られないように、密かに>


哥哥在高中学柔道。第二天,我的脸肿了,吃饭也不吃,只是躲在卧室里。阿姨很担心,把佛像旁边的供果偷偷的给我吃。


さうしたらその日から急にひどく熱が出て唯さへ癇の強い私が夜どほしろくに眠らないのを伯母さんはお念仏をくりかへしながら夜の目もねずに看病してくれた。

〈唯さえ→普通の場合でも、そうでなくても、癇の強い→小児に多い「ひきつけ」の病気、夜どほしろくに→夜通し(一晩中)、ろくに→十分に、まともに、夜の目→眠るべき目、夜の目も寝ずに→一晩中寝ずに、一睡もせず〉


而自从那天,我突然发起高烧来,我本来就容易抽搐,整晚睡不着觉。阿姨不停的念经,夜里更是不阖眼地照顾我。




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