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アジアの対外投資ポジションと為替動向に影響を及ぼす3つの重要な判断について、弊社アジア担当チーフ・エコノミストのチェタン・アハヤが解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は株式投資の現場で関心が高まっている、アジアの投資家が現在直面する3つの重要な判断について、弊社アジア担当チーフ・エコノミストのチェタン・アハヤが解説します。
このエピソードは7月22日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
まずは、全体像を見てみましょう。
アジアの対外投資ポジションはこの13年間で倍増し46兆ドルに達しました。このうちのかなりの部分が米国資産への投資です。
しかし、昨今のドル安を受け、アジアの投資家の間では3つの重要な疑問が生じています。米国資産を減らして分散すべきか、アジアの貯蓄の増加分のうち、どの程度を米国に配分すべきか、米国資産の為替ヘッジを積極化すべきか、という疑問です。
まず、投資の分散を取り上げます。投資家は米国の双子の赤字を踏まえて、米国のマクロ経済見通しに対する懸念を表明しています。また、弊社の米国経済チームは引き続き成長の鈍化を予想しており、目先の財政刺激策は予想以上だったものの、関税と移民規制の強化による影響を打ち消すには不十分だと見ています。
このように米国の成長率と金利が他国の水準に近づき、安全資産としての米ドルの位置づけが議論され続けた結果、ドルの価値は低下しています。そして、弊社のマクロ・ストラテジストの予想では、ドルは来年2Qまでにさらに8-9%安くなる見通しです。
では、データ上はどうでしょうか。投資先の分散はすでに始まっているでしょうか。
透明性が高くて入手し易いアジアの証券ポートフォリオを見てみましょう。アジアの対外投資の合計46兆ドルのうち、証券ポートフォリオは21兆ドルを占めます。そのうち、2025年1Q時点で8兆6,000億ドルが米国資産です。興味深いことに、中国が保有する米国資産は2013年にすでにピークを迎えていますが、中国以外のアジア諸国が保有する米国資産は増加し続けています。中国を除くアジアが保有する米国資産は今年1Qに過去最高の7兆2,000億ドルに達し、その大半が株式です。
つまり全体としては、アジアの投資家は現時点では資産を分散していません。しかし、貯蓄の増加分からの配分は減っています。アジアの経常黒字額は大きく、1Qは1兆1,000億ドルでした。これが今後やや減少したとしても、構造的な黒字によってアジアの対外投資ポジションは拡大し続けるでしょう。
ただし、米国への追加配分は減少し始めています。アジアの証券ポートフォリオに占める米国資産の割合は2024年4Qに41.5%とピークに達した後、今年1Qには減少し始めました。実際に、弊社のグローバル・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タンによると、アジアの投資家は2Qに米国株式の純購入額を減らしています。
最後に、ヘッジについてお話します。アジアの投資家は対米国の投資ポジションの為替ヘッジを増やし始めており、弊社の見るところ、昨今のアジア通貨高はヘッジ需要の増加もひとつの原因だと思われます。全体的な傾向の代用指標としてよく用いられる台湾人寿保険を見てみましょう。同社のヘッジ比率は1Qにはまだ低下していましたが、2Qには上昇し始めています。これは2Qの急激な台湾ドル高と並行しています。
同時に、米国資産の保有が多いその他の諸国でも、ドルがピークに達して以降、通貨高となっています。これはヘッジ需要の増加が外国為替市場に影響を及ぼしていることを示す明確な証拠だと考えます。
全体的に見て、アジアの46兆ドルの投資ポジションが為替市場に及ぼす影響は非常に大きいと言えます。投資先を米国から分散するかどうか、資産配分を減らすか、そのままか、どの程度ヘッジするかという投資家の判断がこの先の為替動向に影響してくるでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
アジアの対外投資ポジションと為替動向に影響を及ぼす3つの重要な判断について、弊社アジア担当チーフ・エコノミストのチェタン・アハヤが解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は株式投資の現場で関心が高まっている、アジアの投資家が現在直面する3つの重要な判断について、弊社アジア担当チーフ・エコノミストのチェタン・アハヤが解説します。
このエピソードは7月22日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
まずは、全体像を見てみましょう。
アジアの対外投資ポジションはこの13年間で倍増し46兆ドルに達しました。このうちのかなりの部分が米国資産への投資です。
しかし、昨今のドル安を受け、アジアの投資家の間では3つの重要な疑問が生じています。米国資産を減らして分散すべきか、アジアの貯蓄の増加分のうち、どの程度を米国に配分すべきか、米国資産の為替ヘッジを積極化すべきか、という疑問です。
まず、投資の分散を取り上げます。投資家は米国の双子の赤字を踏まえて、米国のマクロ経済見通しに対する懸念を表明しています。また、弊社の米国経済チームは引き続き成長の鈍化を予想しており、目先の財政刺激策は予想以上だったものの、関税と移民規制の強化による影響を打ち消すには不十分だと見ています。
このように米国の成長率と金利が他国の水準に近づき、安全資産としての米ドルの位置づけが議論され続けた結果、ドルの価値は低下しています。そして、弊社のマクロ・ストラテジストの予想では、ドルは来年2Qまでにさらに8-9%安くなる見通しです。
では、データ上はどうでしょうか。投資先の分散はすでに始まっているでしょうか。
透明性が高くて入手し易いアジアの証券ポートフォリオを見てみましょう。アジアの対外投資の合計46兆ドルのうち、証券ポートフォリオは21兆ドルを占めます。そのうち、2025年1Q時点で8兆6,000億ドルが米国資産です。興味深いことに、中国が保有する米国資産は2013年にすでにピークを迎えていますが、中国以外のアジア諸国が保有する米国資産は増加し続けています。中国を除くアジアが保有する米国資産は今年1Qに過去最高の7兆2,000億ドルに達し、その大半が株式です。
つまり全体としては、アジアの投資家は現時点では資産を分散していません。しかし、貯蓄の増加分からの配分は減っています。アジアの経常黒字額は大きく、1Qは1兆1,000億ドルでした。これが今後やや減少したとしても、構造的な黒字によってアジアの対外投資ポジションは拡大し続けるでしょう。
ただし、米国への追加配分は減少し始めています。アジアの証券ポートフォリオに占める米国資産の割合は2024年4Qに41.5%とピークに達した後、今年1Qには減少し始めました。実際に、弊社のグローバル・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タンによると、アジアの投資家は2Qに米国株式の純購入額を減らしています。
最後に、ヘッジについてお話します。アジアの投資家は対米国の投資ポジションの為替ヘッジを増やし始めており、弊社の見るところ、昨今のアジア通貨高はヘッジ需要の増加もひとつの原因だと思われます。全体的な傾向の代用指標としてよく用いられる台湾人寿保険を見てみましょう。同社のヘッジ比率は1Qにはまだ低下していましたが、2Qには上昇し始めています。これは2Qの急激な台湾ドル高と並行しています。
同時に、米国資産の保有が多いその他の諸国でも、ドルがピークに達して以降、通貨高となっています。これはヘッジ需要の増加が外国為替市場に影響を及ぼしていることを示す明確な証拠だと考えます。
全体的に見て、アジアの46兆ドルの投資ポジションが為替市場に及ぼす影響は非常に大きいと言えます。投資先を米国から分散するかどうか、資産配分を減らすか、そのままか、どの程度ヘッジするかという投資家の判断がこの先の為替動向に影響してくるでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。