足元の株式市場反落の終盤におけるリスク、投資家が取るべきポジション、そして次に起こりうること――これらについて弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが考察します。
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トランスクリプト
市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、今回の株価調整の終盤に入るにあたって投資家が行うべきことについてお話しします。
このエピソードは4月6日 にニューヨークにて収録されたものです。
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ここ数ヵ月間、私の見方はずっと変わっていません。端的に言えば、米国は2022年から2025年まで私が呼ぶところの「ローリング・リセッション」にありましたが、現在は去年昨年4月に始まった強気相場に入っていると引き続き考えています。最近はAIによるディスラプション、プライベート・クレジット、そしてロシアとウクライナに加えてイランでも新たに戦争が始まるなど、いろいろな脅威が生じていますが、それにもかかわらず株価の回復傾向に変わりはありません。
市場は何も心配していなかったわけではなく、去年昨年秋以降は株価が調整しています。実際、調整はかなり進んでおり、S&P500種株価指数の予想P/E倍率は18%低下しています。これほどの低下は、リセッション(景気後退)やFRBによる金融引き締めサイクルの時期以外ではまれですし、リセッションも引き締めも実現の可能性は低いと私はみています。
一方、増益のペースは衰えていません。それどころか、数年ぶりの高いレベルに向かって加速しています。このことは、オイルショックがリセッションに至った過去の事例と異なる主なポイントのひとつです。そして、そのような状況になっていない以上、相場は悪材料をかなり織り込んだのだと私はみています。
水面下ではもっと大きなダメージが生じています。株価が直近の高値から20%以上下落している銘柄が過半数を占めているのです。30~40%下がった銘柄も少なくありません。これほどの規模のリセットは、株価調整の初めのほうではなく、終わりのほうで生じるのが普通です。
S&P500は先週反発し、私が以前から指摘していた6300~6500の抵抗帯を上方に突き抜けました。この水準を再度試す展開はあり得るでしょうか。もちろん、あり得ます。特に金利が押し上げられたり、地政学リスクが一段と高まったりすれば、その可能性は高いでしょう。しかし、それが重要な意味を持つ下落だとは私は思いません。
まだ欠けている要素として、そして私が実際に目にしたいと考えているのは、すなわち、半導体関連やメモリー関連銘柄にとりわけ見られる過密トレードでのリスク回避の動きです。相場の底固めには、この種のポジションのリセットが必要になることがよくあります。
そのため、私たちが株価調整の終盤にいるのであれば、次に問われるべきは「どのポジションに身を置くべきか」になります。私の考えでは、重要なのはバランスです。したがって、循環株と高クオリティな成長株を組み合わせたバーベル型のポートフォリオが正しいアプローチになると考えます。
循環株の側では、私は金融、一般消費財・サービス、資本財・サービスを選好します。これらのセクターは増益の勢いが引き続き強く、バリュエーションも大幅に低下しています。また、イラン紛争開始前には市場全体をリードしていましたし、米国経済はローリング・リセッションから回復する初期段階にまだとどまっているという弊社の中核的な見方も反映しています。先週発表された雇用統計で民間部門の雇用者数が18万6000人増となり、過去3年で最大級の伸びになったことも、この見方を支持しています。
成長株の側では、現時点ではリスク・リワードが非常に優れている銘柄としてハイパースケーラーに私は注目しています。生活必需品株のようなディフェンシブ・セクターとおおむね同じ株価倍率で売買されていながら、利益の伸び率が3倍以上高いのです。同時に、市場の心理とポジションの状態は2022年の弱気相場以降と、すなわち利益の伸び率がマイナスだった時期と同じくらい悪くなっています。
では、これから悪化しうるものには何があるでしょうか。株式にとってのメインリスクは、やはり金利と、中央銀行の政策の2点です。戦争ではありません。
これはもう、ご承知のとおりです。なぜなら、株価と債券利回りは逆相関関係にあり、金利の上昇は株価のバリュエーションに圧力を加えるというパターンの裏返しにすぎないからです。金利については、米国債10年物利回りで4.5%という水準が引き続き分水嶺のひとつになるでしょう。これを超えて上昇すると、株価のバリュエーションは持続的に反発する前に悪化する可能性がありそうです。
さらに、債券市場のボラティリティとFRBによる見通しは金融を引き締めの方向に動かしています。最近では、これが市場のストレスの真の源泉になっています。
ただ皮肉なことに、金融の引き締めは、究極的にはFRBやほかの中央銀行がよりハト派的な金融政策転換を行うためのおぜん立てをしていると言えるのです。金融が過度に引き締められた状態になると、FRBは柔軟に対応します。過去数年間を振り返ると、FRBにそのような意識があることを示す証拠がたくさん見つかります。
結論を申し上げますと、市場は厳しい局面をすでにかなり乗り越えています。地政学リスク、プライベート・クレジットにまつわる懸念、そして究極的には生産性を向上させるテクノロジー、AIの悪い副作用も織り込んだということです。
今は最後のハードルを飛ぼうと、すなわち政策、金利水準、ボラティリティといった困難を乗り越えようとしているところです。ここを切り抜ければ、その後の見通しがぐっと開けてくるだろうと私はみています。
ただ、忘れてはなりません。相場は、確実性の台頭を待ってはくれません。常にその先を走っています。投資家にもそのような姿勢が求められます。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。