弊社米国公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、米中間の緊張、輸出管理、そして国内規制が、AI産業の構造や主導権の行方にどのような影響を与えているのか、投資家が何に注目すべきかをどのように変えつつあるのかを解説します。
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トランスクリプト
市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社の米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、米国でAIの未来が、政府によってますます左右されるようになっている状況について、AIがどこで構築されるのかから、米国企業や消費者がどの技術を利用できるのかまで、幅広く見ていきます。
このエピソードは8月7日にニューヨークにて収録されたものです。
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AIは経済と社会を急速に変えつつあります。ですから今は、政府がその発展をどう管理していくのか、そのルールを考える上で重要な局面です。まず注目すべき分野は、特に米中競争の文脈におけるテクノロジー規制です。
さて、過去10年の大半において、政府のアプローチは、明確に国家安全保障上の意味合いを持つ比較的限られた技術群を規制しつつ、より広範な商業関係は維持するというものでした。しかし、輸出規制が経済のより多くのセクターに広がり、AIがソフトウェアから物理的なインフラへと移行する中で、国家安全保障に該当するものの定義は広がっています。
例えば、商務省はエンティティー・リストを拡大する可能性があります。そうなれば、米国のクラウド・プロバイダー、ソフトウェア企業、モデル・マーケットプレイスは、指定された中国の開発者に関連するモデルを削除する、あるいはサポートを停止することが求められます。
その後、議会は年次国防権限法やその他の政策手段を通じて、こうした規制をより持続的なものにする可能性があります。弊社は、AI Overwatch Actなどの複数の法案に注目しています。この法案は、最先端のAIチップの輸出を巡る規制を強化し、議会の監督権限を付与するものです。またMATCH Actは、規制をさらに上流の半導体製造装置にまで広げ、同盟国の製造業者との連携をより緊密にすることを目指しています。
これらの措置は、米国人が中国のモデルを利用することを直接禁止するものではありませんが、中国が将来のフロンティア・システムを訓練する能力を制約する可能性があります。
ただし、制限を課す可能性があるのは米国だけではありません。中国には、統合と市場参入をより重視した独自の政策手段をもっています。規制当局は、海外のモデルやAPIをブロックすることができます。また、現地での管理下での展開を義務付けることも、中国の独自のデータやコンテンツ基準を課すことも、サイバーセキュリティやエンティティー・リストに関する権限を使って国内代替品を促進することも可能です。
その結果として考えられるのは、AIエコシステムがますます明確に二つに分かれていくことです。これは、弊社が掲げる「二つの世界」という見方が、実際に形になっているということです。時間の経過とともに、世界のAI市場は、別々のテクノロジー・エコシステムへと二分されていくと弊社は考えています。
その姿は、米国が輸出規制、同盟国を中心としたサプライチェーン、そして主にクローズドなフロンティア・モデル・プラットフォームに依存する一方で、中国は国内ハードウェア、オープンウェイトのモデル、補助金を受けたコンピュート、そしてローカライゼーションを重視する、というものです。時間の経過とともに、この二分化は異なるチップ、モデル、標準、データ・ルール、流通チャネルを生み出す可能性があり、第三国は競合する技術基盤の間で立ち位置を探ることになります。
二つ目に注目すべき分野は、国内規制です。現在、規制環境はかなり分断されています。自動意思決定や子どもの安全など、特定の課題については、各州が先行して動いています。同時に、議会は、業界、消費者団体、国家安全保障当局者の間で競合する目標に向き合っています。
これまでのところ、証拠が示しているのは、政権が軽い規制アプローチを選好しているということだと弊社は考えています。つまり、広範な新しい免許制度ではなく、主に自主的な全国的枠組みです。ただし同時に、最先端モデルに対しては、より直接的な監督へと向かいつつあります。これには、モデルの公開前により積極的な役割を果たし、サイバーセキュリティや知的財産など、一定の保護が満たされていることを確認する可能性も含まれます。
業界が公に示している優先事項は、このアプローチとおおむね重なっているように見えます。一貫した連邦レベルの枠組み、より明確な責任基準、データ、コンピュート、電力へのアクセス、そしてモデルの学習を実質的に制限しない著作権ルールです。
もちろん、業界は一枚岩ではありません。フロンティア・モデルの開発企業とその他のプレーヤーの間には、微妙ながら重要な違いもあります。
では、これは投資家にとって何を意味するのでしょうか。政府がどのように反応するかは、AIが社会全体でどのように開発され、普及していくかを左右する上で、二つの主要な点から極めて重要になります。
第一に、規制はAIインフラのペースだけでなく、その地理的な分布も変えると弊社は見ています。
同時に、こうした制約は、オンサイト発電、燃料電池、蓄電など、ボトルネックを解消するソリューションの投資妙味を高める可能性があると弊社は考えています。
第二に、テクノロジーの二分化が進むことは、並行するサプライチェーンへの投資を支える要因になります。
ここでの重要なポイントは、政府がもはや業界を外側から規制しているだけではないということです。国内ルールを通じてAIがどれだけ速く発展するのかを、インフラ、許認可、ソブリンAI政策を通じてAIがどこで発展するのかを、そして輸出管理や市場アクセス規制を通じてどの技術が利用可能になるのかを、政府が方向付ける役割を担っているのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。