モルガン・スタンレー最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、株式市場の動きから2025年については控えめながらも楽観的な見方がうかがえるものの、関税とインフレをめぐる懸念が市場参加者の期待を抑制しているとみています。
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トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが選挙後の株式市場の展開を振り返り、弊社の考えとどの程度合致しているかについてお話しします。
このエピソードは12月10日 にニューヨークにて収録されたものです。
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選挙が終わってから弊社では、2016年の選挙後に見られたようなアニマルスピリットの反転上昇が起きる可能性に注目しています。今では歴史となったあの時期には、我々が行ったセンチメント分析に示されたように企業、消費者、投資家の心理が幅広く改善しました。過去 1ヵ月間のセンチメントのデータは、小企業主導の比較的控えめな楽観論を反映したものになっていますが、実際のところ、サービス関連事業者の見通しはいくらか抑制されていました。
こうした調査の詳細な結果や企業から寄せられたコメントを精査した限りでは、消費者と企業は2025年を迎えるにあたり、比較的楽観的ではあるものの、関税をめぐる不確実性や物価の高止まりにより、2016年の選挙後に見られたような熱狂にはおそらく至らないと思われます。
2016年は、中国の積極的な景気刺激策もあって、米国が工業・製造業の不振から抜け出しつつあるときでもありました。この不振のために世界の金利水準は今よりもずっと低く、政府部門の赤字やバランスシートの状態は今よりはるかに良好だったため、減税や規制緩和といったリフレ的な政策の影響を吸収することができました。その結果、株式市場は、経済成長を促進すると解釈された財政拡張政策をほとんど即座に好感しました。しかし今日(こんにち)では、財政拡張政策はこの点でそれほど好感されているようには見えません。ひょっとしたら、財政赤字や政府部門のバランスシートといった制約の一部が響いているのかもしれません。
それにもかかわらず、これらの原動力は、景気循環に比較的敏感なセクターを選好する我々にとっては依然として支援材料です。しかし、金利がなかなか動かない状況を考えると、景気敏感株のなかでもクオリティの高い銘柄を保有し続けたり、規制緩和が追い風になることが明らかなセクターに建設的に照準を合わせ続けることも理にかなっています。そのため、弊社では金融を筆頭にソフトウェア、公益事業、資本財・サービスの4セクターをオーバーウエイトとしています。
金利については、S&P500のリターンと債券利回りの変化がプラスの相関関係を示していることが興味深いと感じています。言い換えれば、これは「良い」マクロ経済指標が株式のリターンにとっても「良い」ということです。さらにこの相関性は、景気敏感株とディフェンシブ株とではっきり2つに分かれています。景気敏感株は素材株を除いて金利との間にプラスの相関関係を示す一方、ディフェンシブ株は公益株を除いて金利との間にマイナスの相関関係を示しているのです。
弊社ではこの現象を、たとえ利回りが比較的高い環境であっても景気敏感株と市場全体はやはりマクロ経済指標の改善を好感するしるしだ、ととらえています。とは言え、あまりハト派的でない金融政策が採られたりターム・プレミアムが上昇したりして金利が上昇する場合には、この力関係が逆回転する可能性が高くなるという点が存在します。今年4月には、10年物米国債の利回りが4.5%になるところで、経済成長とインフレがターム・プレミアムを押し上げていました。今のところ、米国債利回りはそれよりも低い水準に抑えられており、ターム・プレミアムもゼロに近くなっています。
裏を返せば、マクロの経済成長の指標が悪化して国債利回りが大きく低下するときには、景気敏感株も不釣り合いに大きな打撃を受けることになるでしょう。従って、4.00~4.50%という10年物米国債利回りが株式のバリュエーションにとってスイートスポット、すなわち最適な水準になるでしょう。利回りがこのレンジより低くなっても、その主な原因がFRBの利下げにあって、経済成長の大幅減速が生じていないのであれば、株式市場は利回り低下を容認する可能性があります。逆に利回りがこのレンジより高くなっても、金利上昇ペースが緩やかであれば、かつその主因がFRBのタカ派的な政策やインフレ率の上昇というよりは力強い名目経済成長のほうにあるならば、やはり容認される可能性があります。
最後になりますが、年末が近づくにつれ、12月の季節的要因が投資家の注目点のひとつとなりそうです。過去45年におけるS&P500の12月のリターンの中央値は1.5%で、45回あった12月の73%でプラスのリターンが記録されています。特筆すべきは、そのパフォーマンスのほぼすべてが月の後半に得られているということです。これらのトレンドは、方向的には小型株指数のラッセル2000と同じですが、ラッセルのリターンの中央値は約2.5%とさらに高くなっています。前述したように小企業の景況感が選挙後に急上昇を示したことから、今年のパフォーマンスはさらに高くなる可能性もあるでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。