弊社グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが25年の世界経済を左右する無数の変動要素を評価し、今年の経済はコロナ禍の開始以降で最も不確実性が強まると思われる理由を解説します。
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トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日はモルガン・スタンレーのグローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが25年の展望と世界経済の見通しについて解説します。
このエピソードは1月7日 にニューヨークにて収録されたものです。
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弊社が示す今年の見通しは、通常は市場のロードマップです。しかし、25年に関しては、読み手の自由な判断に任せる部分が含まれます。今年の見通しで強調した重要なテーマは不確実性です。特に、米国の次期政権は関税、移民、財政政策を自由に選ぶでしょう。
不確実性の中にはFRBの12月会合でのリプライスやドル高などすでに市場で目に見える形となっているものもあります。弊社は関税と移民制限政策を背景にインフレ低下にブレーキがかかり成長が鈍るものの、そうなる時期はこれらの政策が徐々に進む年末だと基本的には考えています。
実際にはこれらの政策の順序も実施規模もタイミングも未だ不透明ですが、それでも世界経済や各国の中央銀行に大きな影響を及ぼすでしょう。米国経済は雇用の堅調と底堅い消費支出という堅調な基礎に支えられて新しい年を迎えています。
インフレ率は低下基調で、11月のインフレ指標は弊社の予想と一致しましたが、個人消費支出はFRBの予想を下回りました。FRBは12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げましたが、パウエル議長は非常に慎重な姿勢で、FRBはインフレリスクが上方に偏ると見ています。
パウエル議長はFOMCが次期政権による政策変更についての想定を組み入れ始めたところだと発言しました。弊社は現時点で、関税と移民制限によって景気は減速し、かつインフレ率が上昇すると確信していますが、これらの政策は丸1年かけて徐々に実施されると想定しています。そのため、スタグフレーション的な影響が強まるのは今年ではなく、26年になってからだと見ています。
同じように、減税の延長措置も事実上丸一年かけて実施されると予想しています。このため、今年の財政に重要な影響はないものと見ています。実のところ、この大半は単に現行の税制の延長措置であるため、財政への正味の影響は26年も非常に小さいと考えます。
さて、中国ではデフレ圧力が続く見通しで、米国の政策の不確実性が原因で政策対応は一段と難しくなるでしょう。政策当局が12月末の会議で発表した財政出動はわずかに上振れしたにとどまり、財政出動の詳細については3月に開かれる全人代まで待つ必要があるでしょう。
一方、為替レートは弊社の休業中に1ドル 7.3人民元を超え、22年、23年のピークとほぼ同水準となりました。ドル高が修正の重石となっていることは明らかです。政策の枠組みは米中の潜在的な貿易関係を考慮する必要があります。このため、中国でも多くの不確実性が存在し、その多くは政策が原因です。
ユーロ圏が抱える米国との貿易リスクは中国よりも小さいと言えるでしょう。ユーロ安は低下基調にあるインフレの安定化を助けると思われますが、弊社の見通しでは冴えない成長が見込まれます。個人消費支出は減速し、おそらく多少安定するでしょう。インフレ低下が続くほか、ECBが金融緩和政策を継続して設備投資を支えるためです。
ただし、特にフランスとイタリアでは財政健全化が成長の大きなリスクとなり、貿易を巡って緊張が生じ投資が先送りされれば、成長がさらに弱まる可能性があります。
一方、日本では日銀が1月か3月に利上げするかどうかが重要な議論になっています。日銀の植田総裁は直近の会合後、インフレ見通しの確信を深めたいと述べています。
それでも、弊社は引き続き1月の利上げを予想しており、その理由は日銀支店長会議で力強い賃金動向に関する洞察が十分に得られると考えるためです。そして弊社が注目している円安も踏まえれば、日銀が1月に利上げする十分な理由になると見ています。あるいは、日銀は連合が春闘結果を発表する3月を待って利上げの妥当性を判断するかもしれません。いまのところ経済指標は良好で、日本のコア消費者物価指数は11月に2.7%をつけています。市場は利上げ時期が1月なのか3月なのかヒントを得ようと、1月14日の氷見野副総裁のスピーチに注目するでしょう。
最後に、メキシコ中銀が直近の利下げ決定で強調したように、今年は慎重の一語に尽きるでしょう。エコノミストとして完全に同意します。この先1年間はコロナ禍の開始以降で最も不確実性が強まります。政治と政策は本来予想が難しいものです。弊社は通常以上に頻繁に予想を見直していく予定です。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。