銘柄、ファクター、セクターの選定が引き続きポートフォリオのパフォーマンスを決定するカギであるとの見方を、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが解説します。
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トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン.
今回は、金利が上昇し、業績予想が弱含む中での株式について最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが解説します。
このエピソードは2月18日 にニューヨークにて収録されたものです。
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12月上旬以降、S&P 500指数は足踏み状態が続いています。昨年夏からのほぼ遮るもののない株価上昇がストップした理由はいくつかありますが、10年国債利回りの上昇が最大の理由だと私は見ています。弊社は12月に、成長と業績が順調に推移すると想定した場合、株式マルチプルにとって最適な水準は4-4.5%であると述べました。
4.5%は株式バリュエーションにとって重要な水準であると弊社は判断しました。そして案の定、FRBが12月会合でハト派姿勢を弱めると、利回りは4.5%の閾値を超え、株式と債券利回りは負の相関関係となり、これが今も続いています。つまり、利回りは過去数年間のリターンの大きな原動力であったバリュエーション上昇の追い風ではなくなってしまったということです。
現在はむしろ、企業業績がリターンの最大の原動力になっており、当面はこの状況が続くと思われます。FRBはすでにハト派色を徐々に弱めていますが、関税に関する不透明感と先日のインフレデータを受けて、この変化がさらに進む可能性があり、債券市場が織り込む年内の利下げ回数は1回に変化しています。弊社の公式見解もこれと同様で、弊社エコノミストは、現時点で6月に1度の利下げを見込んでいます。これは今後のインフレ率と成長率の動向次第です。
弊社は、投資戦略も変更しています。S&P 500は12月に弊社の戦術的な目標である6100に達し、S&P 500企業のリビジョン・インデックスは反転していることから、セクターとファクターへの重視を強めています。弊社が特に選好するのは、絶対ベースと相対ベースの両方で業績予想の修正が強い分野です。
半導体よりも金融、メディア・エンターテインメント、ソフトウェア、消費財よりも消費者サービスがこの考え方にフィットします。ディフェンシブ・セクターの中では生活必需品、ヘルスケア、REIT【←リート】よりも公益事業を選好します。これらはいずれもアウトパフォームしており、当面はこの見方を継続します。
成長率が大幅に低下することなく10年国債利回りが持続的に4.5%を下回らない限り、高クオリティの大型株を最優先するスタンスを維持します。10年利回りの構成要素のうち、株式バリュエーションとの関係で注目すべきは、やはりターム・プレミアムであり、これは低下したとはいえ、過去数年と比べると依然高い水準にあります。
そのほかに株価を左右するマクロ要因としては、ホワイトハウスが非常に積極的に発する関税政策、移民規制などと、DOGE【←ドージ】つまり政府効率化省のコスト削減策が挙げられます。関税については、株式市場に固有のイベントが今後も見込まれます。
ただ、中国、メキシコ、カナダに対する関税が2026年末まで継続した場合、S&P 500企業の1株当たり利益に対する影響は5-7%程度と予想されます。これはわずかな減少とはいえず、今回発表されたガイダンスが4Q業績に比べ弱い理由のひとつと思われます。
中国に対する関税が強い逆風となっている業界は一般消費財と電子機器です。移民の流入減少とストックの減少は、少なくとも上場企業にとっては、人件費の高騰よりも総需要に打撃となる可能性が高いでしょう。
最後に、政府効率化省が政府支出を大幅に削減できるかについては懐疑的な見方が続いています。私はそれに関してはもう少し楽観的ですが、大成功を収めた場合には成長の逆風となり、その後に財政赤字の縮小と民間経済のクラウディングアウトの軽減という追い風が吹き、その結果FRBの利下げ回数が増え、ターム・プレミアムが低下して長期金利は低下する可能性があると理解しています。
結論として、長期金利の上昇、そしてドル高と最初の政策変更による成長への逆風は、株式マルチプルが現時点で上限に達していることを示唆しています。したがって、ポートフォリオに単純にベータを追加するよりも、銘柄、ファクター、セクターを選定することがパフォーマンスには重要です。
このため、弊社は引き続きリビジョン・インデックス、クオリティ、規模のファクターを重視し、業界レベルでは金融、ソフトウェア、メディア・エンターテインメント、消費者サービスを選好します。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。