先週、FRBが大きく動いたにもかかわらず、世界の市場を取り巻く強い不透明感と、各国中央銀行の今後の対応に関する疑問が残る理由を、弊社グローバル・チーフエコノミストのセス・カーペンター(Seth Carpenter)が解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードは、弊社グローバル・チーフエコノミストのセス・カーペンターがお届けします。今回のサイクルで初めての利下げを決定したFRBの会合について検討し、世界経済にとって何を意味するかを考えます。
このエピソードは9月23日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
FRBは50ベーシスポイントの利下げを実施しました。しかし、金融政策の反応関数に大きな変化はありませんでした。むしろ、FRBのパウエル議長の言葉を借りるなら、この50べーシスポイントは、政策措置で後手に回らないとの決意表明でした。今後は25ベーシスポイントの利下げが続く公算が大きいと私は見ています。今回もパウエル議長は、リスクの認識次第で、FRBが段階的にも迅速にも行動できることを示しました。
ただし、今のところパウエル議長や他の政策担当者のコメントから、FRBは依然、米国の景気は順調で、労働市場は堅調と見ていることが分かります。しかし、再び月間の新規雇用者数が10万人となるか、個人消費が軟化することがあれば、状況は変わるでしょう。したがって、引き続き利下げのペースと最終的な着地点が、市場の議論の焦点になると見られます。
弊社の基本シナリオは、FRBのドットチャートが示唆するよりも若干前倒しになっており、フェデラルファンド(FF)金利はドットチャートにおける来年末ではなく、来年央に3.5%を若干下回ると予想しています。FRBの予測では2026年にかけて、またそれ以降にも誘導目標が低下していますが、ドットのばらつきは、連邦公開市場委員会(FOMC)の中でまだコンセンサスが形成されていないことの表れと言わざるを得ません。そうした背景から、データ次第という表現も、当面忘れるわけにはいかないと考えています。
変化の程度は異なりますが、今回としばしば比較されるのが1990年代です。当時は経済が安定し、成長が持続するに伴い、FRBは最終的に利下げサイクルを休止しました。したがって、次にどうするか、選択肢はたくさんあります。
世界各国の中央銀行は、今回のFRBによる利下げのような世界の金融環境と、国内の見通しの両方に適応し、反応していきます。新興国市場では、ブラジルとインドネシアの事例が良い参考になります。ブラジルの中央銀行は、利下げサイクルと長い休止期間の後、政策に対する信認の維持と、市場の期待に注意しながら、今週、政策金利を10.75%に引き上げました。外部要因として自国通貨安がある一方で、国内経済の力強い成長が考慮すべき内部要因として存在し、この2つの要因はいずれもインフレのリスクを示唆しています。
インドネシアの中央銀行は、自国通貨の大幅な上昇後、利下げを行いました。これにより、インフレのリスクは低減され、金融政策の方向性を変えることが可能になりました。
次に先進国の中央銀行に関して言えば、FRBによる50ベーシスポイントの利下げは、弊社予想を大きく変えるものではありません。弊社の予想通り、最終的に一連の25ベーシスポイントの利下げが実施された場合、他の先進国の中央銀行が現行政策を実質的に調整する必要はないと言って良いでしょう。欧州では、既に賃金上昇率が軟化しており、インフレの減速を確認する経済指標の発表を待っています。したがって、弊社は9月の利下げに強い確信を持っており、12月にも追加利下げを予想しています。
今後、FRBの追加利下げがユーロ高を招き、こうした物価傾向が強まる可能性はありますが、それによって欧州中央銀行(ECB)が軌道を実質的に変え、より積極的に利下げを行うには至らないと考えています。英国では、インフレに関して依然として疑問符が多く残る点を考慮し、中央銀行のイングランド銀行は9月に政策金利を据え置いた後、11月に利下げを再開すると弊社は考えています。
直近の会合で判断が分かれたことから、イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)は発表される経済指標の微調整に基づいて計画を頻繁に調整していないことが分かります。そして日銀ですが、来年1月まで現状を維持すると弊社は予想しています。日銀の直近の金融政策決定会合は基本的にコミュニケーションを目的としており、実際、植田総裁のコメントは7月の会合が引き起こした類いの反応にはつながりませんでした。したがって、弊社予想が正しく、FRBの道筋がほぼ予想通りになれば、他の先進国の中央銀行が大きな変更を行なう必要はありません。
FRBはその見通しに本格的な調整を加えることはしませんでした。その代わりに、大きな変更を行うことへの意欲を表明しましたが、それはあくまで意欲に過ぎず、基本的な戦略が変わったことをはっきり示すものはありません。
市場へのインプリケーションは、明快かもしれません。引き続き底堅い経済状況が続く中でFRBが利下げに踏み切ったのは、リスク資産にとってポジティブなはずです。しかし、FRBはまた、油断が生じないようにしています。したがって、不確実性は十分にあると言わねばなりません。それでなくとも米国大統領選挙を控えているため、2025年に何が起こるか、予測は極めて難しくなっているのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。