投資機会が見つかる可能性のあるAI関連以外の分野と、株価の上昇ペースを抑制するかもしれないリスクについて、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが考察します。
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トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、物色の範囲が拡大するという弊社の見方と、当面気を付けるべきリスクについてお話しします。
このエピソードは7月14日にニューヨークにて収録されたものです。
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物色の範囲を拡大する動きが広がっています。その傾向は株価、相対的なパフォーマンス、そして業績見通しの修正に現れています。それを受けて投資家も、市場で最も売買が盛んな分野の持続可能性に疑問を抱いたり、それ以外の当面のリスクについて考えたりしています。
私が物色範囲の拡大を最初に呼びかけたのは、去年昨年の終わりごろでした。米国は2025年4月にローリング・リセッションが終了し、新たな景気拡大局面に入ったと考えたからでした。この「新しい」景気拡大局面では、企業の利益の伸びが想定をはるかに上回ることがよくあります。費用効率をあらかじめ高めていた企業で、売上高が再び増加し始めるからです。
まさに典型的な営業レバレッジです。市場はこの動きを去年昨年の終わりごろに予想し始めましたが、イラン紛争の勃発で歯止めがかかりました。原油が急騰し、利下げ期待も消えてなくなり、投資家は一斉に引き返しました。AI関連投資の恩恵を受けることが最も明らかな銘柄に、特に半導体関連株とメモリ関連株に戻っていきました。
5月半ば以降はイラン紛争の影響も弱まっています。原油は急落し、物色範囲の拡大もふたたび機能し始めました。重要なのは、市場がAI関連株を見捨てたわけではないことです。AI関連株とそれ以外の銘柄の間を行ったり来たりしているだけです。AI関連か、そうでないかという区分が重要なのです。
半導体関連株は、業績見通しの修正に支えられて歴史的な上昇相場を演じてきました。しかし、すごいストーリーであっても短期的には息切れをします。業績見通し修正の広がりが株価を歴史的な高値に押し上げ、市場でトップクラスの量の売買が行われるセクターになると、上値を目指すためのハードルは非常に高くなります。ここまでくると、ストーリーの良し悪しはもう問題ではありません。変化率を引き上げ続けられるかが問題になるのです。これはもう、まったく別の話です。
おそらく、ハイパースケーラーのアンダーパフォーマンスが最初の警戒信号だったのでしょう。半導体関連株はハイパースケーラーの設備投資次第です。したがって、設備投資を行う側が、その投資の恩恵を受ける側に後れを取り始めたら、両者の乖離はいずれに解消されるのが普通です。実際、そうなり始めています。メタが先日、外部の顧客に余剰計算能力の販売を始めることを決めました。この決断は、AI設備投資サイクルの終わりを意味していないのかもしれません。しかし、この設備投資の今後の展開とペースについて、市場が厳しく精査し始めていることを物語っていると言えましょう。
ハイパースケーラーのクレジット・スプレッドと株価を目にした経営陣は、投資のペースを少し落とすべきではないかと考える。そして実行に移すと、市場で悪材料視されてほかの銘柄も下落するという悪循環になる。いわゆるフィードバック・ループです。株価の調整はこのAIサイクルにおいても何度か経験済みです。今回もそういった調整であるように見えます。サイクルの終わりではなく、リセットだということです。
このリセットにより、市場のほかの部分にも機能する余地が生まれます。物色の範囲拡大に当たって弊社が選好するのはこれまで同様、一般消費財、運輸、そしてバイオテクノロジーです。いずれも、投資家に人気があった分野ではありません。実際、投資家の心理もポジショニングもまだ低調です。しかし、それこそが私の気に入っている理由なのです。
このストーリーのリスクは、短期的には2つあります。第1のリスクは、ホルムズ海峡の完全再開をめぐる不確実性が依然として大きいことです。これは、米国とイランの両方が問題の軸になっているためです。おかげで、原油価格はまだ下落基調にあるとしても、短期的には乱高下しています。
第2のリスクは、金利のボラティリティが再び上向いていることです。また名目でも実質でも、金利のカーブは全体的に上方にシフトしています。金利が安定しなければ、いずれ株価にマイナスの影響を及ぼすでしょう。株価指数だけでなく、弊社が予想する物色範囲の拡大から恩恵を受けそうな個別銘柄にとっても、マイナスになると考えられます。ただ、14日発表のインフレ率が予想を下回ったことで、このところの金利上昇圧力はいくらか弱まるでしょう。
しかし、新しい議長を迎えたFRBは、インフレが再び頭をもたげることのないように万全を期すという決意を変えていません。つまるところ、市場に不確実性をもたらすことになっても、このリスクには早めに対処するのが得策だと私は思います。
まとめましょう。株式市場は過去数ヵ月間の相場を受けた値固めと調整の局面にあります。これは業績見通しの修正率がピークに達したこと、そしてFRBが経済成長よりもインフレ抑制を重視する方向に反応関数をシフトさせたことの結果です。
最近の半導体関連株へのロールオーバー、株式や社債の新規発行による大量供給、そしてFRB議長の交代――こういった要素を踏まえると、株式市場は新たな強気相場に入る前に、ボラティリティの上昇や株価の調整を経験すると予想されます。
モメンタムを追いかけてはいけません。経済成長と業績拡大のすそ野の広がりが追い風になる分野で、株価が下げたときにリスクを取るにようにしたいところです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。