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米国の関税によるインフレ率と企業業績への影響はこれまでのところ限定的です。しかし、それが変わるかもしれない理由とその時期について、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 本日は、関税が至るところで目立ちはじめているにもかかわらず経済指標に反映されない理由と、今四半期にはこの状況が変わると弊社が考える理由を、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
このエピソードは7月16日 にロンドンにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
投資家は少なくとも2月から関税に関するニュースを目にしています。7月中旬に至っても市場では上昇が続いており、予想されていた関税の影響がそろそろ現れるのではとの疑念が当然生じています。「えっ、また関税の話?」と顔をしかめている方もおられるでしょう。
ただ、このテーマは市場にとって引き続き重要だと思われます。何よりも、影響が目前に迫っているテーマだと弊社は考えています。予想されていた関税の影響が経済指標と企業業績に現れ始めるのはこの第3四半期だというのが弊社の見立てです。
まず初めに、関税の影響はまさに今現れ始めています。今週発表されたインフレ率を見ると、関税に敏感なセクターの影響により米国のコアインフレ率が再び上昇し始めています。ちょうど始まった2Qの決算発表は総じて好調だろうと弊社は見ており、さらに予想を小幅に上回る可能性もありますが、今後数ヵ月の業績をまとめた3Q決算は関税の影響を受ける可能性が高まるでしょう。そして、ここでも消費財と小売りセクターが特に大きな影響を受けると思われます。
では、なぜ関税の影響が今まではそれほど問題にならず、なぜ間もなくそれが変わるのでしょうか。一つ目の理由は、関税率が急激に上昇しているためです。関税の発動は一時停止または延期されたにもかかわらず、税率は短期間で上昇しており、現時点で過去最高の9%に達しています。そして、ここ数週間の米国政府の発表に従うと、税率は事実上この2倍、現在の9%から15-20%近辺に上昇する可能性があります。
関税の影響が現れ始めている2つ目の理由は、関税の徴収が増えているためです。米国税関が6月に徴収した関税は260億ドルを超えました。これを年換算するとGDPのおよそ 約1%に相当する非常に大きな金額です。徴収額は3ヵ月前にはこれほど大きくはありませんでした。
3番目に、関税の一時停止や延期があったため、それによる影響の遅れもあります。また、輸送中の貨物は追加関税の対象とならず、欧州やアジアからの大量の貨物が輸送中だったと思われることから、これも影響が遅れた原因となります。しかし、このように遅れていた影響が実際に現れ始めていることは、徴収した関税の増加と関税率の上昇が示すとおりです。
4番目の理由として、企業が関税を予測し影響を緩和しようとしたことが挙げられます。企業は関税の発動前に大量の在庫を発注しました。しかし、3Qまでにはその大量の在庫を売り切っており、恩恵はなくなると考えられます。つまり、関税前に積み増した在庫は、3Q決算までにはすべて捌(さば)けている可能性が高いのです。そして現在発注している新たなストックは、売上原価が上がっています。
つまり、関税が経済指標と企業業績に及ぼす影響の大部分はこれからやって来ると考えるのが妥当で、特に今四半期、つまり25年3Qに影響が現れると弊社は見ています。その時期は6-7月というよりも、おそらく8-9月だと見ており、市場はコアインフレ率の連続的な上昇を受けてこの問題に一層注意を払うだろうと思われます。
このため、クレジットについては高クオリティを重視し、特に8-9月はこの傾向を強めるべきだと考えます。小売セクターのクレジットについては特に慎重に見ており、小売セクターは3Qにこれらのリスク要因が集中し、大きなリスクにさらされると予想しています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
米国の関税によるインフレ率と企業業績への影響はこれまでのところ限定的です。しかし、それが変わるかもしれない理由とその時期について、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 本日は、関税が至るところで目立ちはじめているにもかかわらず経済指標に反映されない理由と、今四半期にはこの状況が変わると弊社が考える理由を、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
このエピソードは7月16日 にロンドンにて収録されたものです。
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投資家は少なくとも2月から関税に関するニュースを目にしています。7月中旬に至っても市場では上昇が続いており、予想されていた関税の影響がそろそろ現れるのではとの疑念が当然生じています。「えっ、また関税の話?」と顔をしかめている方もおられるでしょう。
ただ、このテーマは市場にとって引き続き重要だと思われます。何よりも、影響が目前に迫っているテーマだと弊社は考えています。予想されていた関税の影響が経済指標と企業業績に現れ始めるのはこの第3四半期だというのが弊社の見立てです。
まず初めに、関税の影響はまさに今現れ始めています。今週発表されたインフレ率を見ると、関税に敏感なセクターの影響により米国のコアインフレ率が再び上昇し始めています。ちょうど始まった2Qの決算発表は総じて好調だろうと弊社は見ており、さらに予想を小幅に上回る可能性もありますが、今後数ヵ月の業績をまとめた3Q決算は関税の影響を受ける可能性が高まるでしょう。そして、ここでも消費財と小売りセクターが特に大きな影響を受けると思われます。
では、なぜ関税の影響が今まではそれほど問題にならず、なぜ間もなくそれが変わるのでしょうか。一つ目の理由は、関税率が急激に上昇しているためです。関税の発動は一時停止または延期されたにもかかわらず、税率は短期間で上昇しており、現時点で過去最高の9%に達しています。そして、ここ数週間の米国政府の発表に従うと、税率は事実上この2倍、現在の9%から15-20%近辺に上昇する可能性があります。
関税の影響が現れ始めている2つ目の理由は、関税の徴収が増えているためです。米国税関が6月に徴収した関税は260億ドルを超えました。これを年換算するとGDPのおよそ 約1%に相当する非常に大きな金額です。徴収額は3ヵ月前にはこれほど大きくはありませんでした。
3番目に、関税の一時停止や延期があったため、それによる影響の遅れもあります。また、輸送中の貨物は追加関税の対象とならず、欧州やアジアからの大量の貨物が輸送中だったと思われることから、これも影響が遅れた原因となります。しかし、このように遅れていた影響が実際に現れ始めていることは、徴収した関税の増加と関税率の上昇が示すとおりです。
4番目の理由として、企業が関税を予測し影響を緩和しようとしたことが挙げられます。企業は関税の発動前に大量の在庫を発注しました。しかし、3Qまでにはその大量の在庫を売り切っており、恩恵はなくなると考えられます。つまり、関税前に積み増した在庫は、3Q決算までにはすべて捌(さば)けている可能性が高いのです。そして現在発注している新たなストックは、売上原価が上がっています。
つまり、関税が経済指標と企業業績に及ぼす影響の大部分はこれからやって来ると考えるのが妥当で、特に今四半期、つまり25年3Qに影響が現れると弊社は見ています。その時期は6-7月というよりも、おそらく8-9月だと見ており、市場はコアインフレ率の連続的な上昇を受けてこの問題に一層注意を払うだろうと思われます。
このため、クレジットについては高クオリティを重視し、特に8-9月はこの傾向を強めるべきだと考えます。小売セクターのクレジットについては特に慎重に見ており、小売セクターは3Qにこれらのリスク要因が集中し、大きなリスクにさらされると予想しています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。