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驛長に突き刺さった逆矢は、驛長の体を貫いて飛び去っていった。本来の「矢」の収められる、住吉神社に戻ってゆくようだ。逆矢を返された驛長は、力を失ってその場にうずくまった。博多市の怨念によって守られていた博多驛だ。その守りの怨念を失えば、驛はもう、砂上の楼閣のようなものだ。偉容を誇っていた驛は、砂のようにグズグズと崩れ去り、そして消滅した。そこは、ただの「公園」に戻っていた。怨念が作り上げた旧博多驛はすべて消え去り、ただ驛長だけが残されていた。「驛長……。たいへんなことば、しでかしてくれたな」さすがにマイヅル様の声も、怒気を含んでいた。十年近くの間、マイヅル様は力を奪われ、博多の街を危機にさらしていたのだから。驛長は肩を落とし、自らのやったことが信じられないとでもいうかのように、両手を見つめていた。「私は……、今まで、何ということを……」「なんば言いよるとか、今までさんざん、怨念ば使って、悪事ば働いてきたくせに」フクハクたちが、驛長につかみかからんばかりに詰め寄った。その怒りは当然だ。だが、かなめはどうしても、驛長の態度が、騙そうとしているようには思えなかった。「ちょっと待って、フクハクたち、驛長さんの話ば聞いてみらんね」
驛長に突き刺さった逆矢は、驛長の体を貫いて飛び去っていった。本来の「矢」の収められる、住吉神社に戻ってゆくようだ。逆矢を返された驛長は、力を失ってその場にうずくまった。博多市の怨念によって守られていた博多驛だ。その守りの怨念を失えば、驛はもう、砂上の楼閣のようなものだ。偉容を誇っていた驛は、砂のようにグズグズと崩れ去り、そして消滅した。そこは、ただの「公園」に戻っていた。怨念が作り上げた旧博多驛はすべて消え去り、ただ驛長だけが残されていた。「驛長……。たいへんなことば、しでかしてくれたな」さすがにマイヅル様の声も、怒気を含んでいた。十年近くの間、マイヅル様は力を奪われ、博多の街を危機にさらしていたのだから。驛長は肩を落とし、自らのやったことが信じられないとでもいうかのように、両手を見つめていた。「私は……、今まで、何ということを……」「なんば言いよるとか、今までさんざん、怨念ば使って、悪事ば働いてきたくせに」フクハクたちが、驛長につかみかからんばかりに詰め寄った。その怒りは当然だ。だが、かなめはどうしても、驛長の態度が、騙そうとしているようには思えなかった。「ちょっと待って、フクハクたち、驛長さんの話ば聞いてみらんね」