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何も無かった公園に、突如として建物が出現していた。煉瓦造りの、重厚な建築物だ。「これは……、昔ここにあった博多驛じゃないか?」博がつぶやいて、そんなはずはないというように首を振った。新しい博多駅ができて、この場所にあった昔の博多驛は取り壊され、姿を消したはずなのに……。怨念の瘴気が渦巻く中から、一人の人物の姿が浮かび上がった。「カタハネたちよ……」「まったく、お前たちが愚図でのろまなせいで、怨念を充分に集めるまでに、長い時間がかかってしまった」「驛長、そげな……」カタハネたちは、愕然とした表情だ。ピンと張っていた背中の羽が、見る間に垂れ下がってゆく。「もう、お前たちに用はない。ハンの者たちと共に、そこで指をくわえて見ているがいい」驛長はそう言い捨てると、驛舎の中へと消えてしまった。
何も無かった公園に、突如として建物が出現していた。煉瓦造りの、重厚な建築物だ。「これは……、昔ここにあった博多驛じゃないか?」博がつぶやいて、そんなはずはないというように首を振った。新しい博多駅ができて、この場所にあった昔の博多驛は取り壊され、姿を消したはずなのに……。怨念の瘴気が渦巻く中から、一人の人物の姿が浮かび上がった。「カタハネたちよ……」「まったく、お前たちが愚図でのろまなせいで、怨念を充分に集めるまでに、長い時間がかかってしまった」「驛長、そげな……」カタハネたちは、愕然とした表情だ。ピンと張っていた背中の羽が、見る間に垂れ下がってゆく。「もう、お前たちに用はない。ハンの者たちと共に、そこで指をくわえて見ているがいい」驛長はそう言い捨てると、驛舎の中へと消えてしまった。