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主人公は、売り出し中の若手声優。夢に向かってひたむきに走り続ける彼女の前に、ある日届いたのは、小さなリュックを背負ったさるぼぼだった——。
飛騨高山を舞台にした番組 「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでも視聴できます。「小説家になろう」サイトでもお楽しみいただけます(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
[シーン1:アフレコスタジオ]
「カット!」
「え?なに?OKじゃないの?」
「う〜ん。
悪くはないんだけどさ・・・
演じているのはエミリなんだから、もっとエミリらしい表現ができないかなあ」
言い方は柔らかいけど、ぶっちゃけダメ出しってこと。
音響監督が腕を組む。
あ、だめだ。
彼のこのポーズは・・・
しばらく沈黙の時間が続くことを意味している。
アフレコに立ち会っている作画監督が
”飲み物買ってくる”と言って復調から出ていく。
プロデューサーはスマホでメールを打ち始めた。
私の名前は桑木栄美里。
今売り出し中の若手声優である。
今日は、リメイクされた異世界アニメの初回アフレコ。
主人公は、もちろん私。
異世界にただ一人残っているエルフを演じる。
最近のアニメは、1シーズン2クール12回が原則。
短期勝負だから初回のつかみが結構重要になってくる。
今回ものっけから魔族との戦闘シーン。
魔法使いをあなどった魔物が、圧倒的なパワーで倒される。
私の第一声は、いきなり決め台詞だ。
音響監督は、腕を組んだまま台本とにらめっこしている。
私らしい表現かあ。
別に作ってるわけじゃないけどなー。
リメイク作品だから、大人気の初代CVをどうしても意識してしまう。
オリジナルのアニメを何度も見直したのがいけなかったか。
確かに素晴らしい出来だったし。
声優たちもみなうまかった。
あれを越えなければ、というプレッシャーは半端ない。
「よし!」
わ、びっくりした。
音響監督が突如立ち上がった。
プロデューサーはメールを打つ手を止め、
作画監督はあわててブースに戻ってくる。
「今日はいったんここまでにしよう」
ええええええええ!?
スタジオ、夜まで抑えてんじゃないの?
私たち声優の抑えだって、終日って聞いてるけど。
プロデューサーも作画監督も青ざめて音響監督に詰め寄る。
だめだ。
この人、こういうとこ、がんこちゃんだから。
結局、その日は解散となった。
ま、しょうがない。
私、こういうこと、引きずらないんだ。
ちょうどいいや。
いまのうちに、郵便局行ってママから送られた荷物とってこよう。
[シーン2:自宅の部屋]
わあ、古川屋のあげづけだ。
大好物。さすがママ、わかってる〜。
あ、どろぼう漬と朴葉味噌も〜。
さっそくつまんじゃおっと。
あれ?さるぼぼも?
なんでいまさら?アパートにもいっぱいいるのに。
でもこのさるぼぼ、お守りがついてない。
その代わり小さなリュック背負ってる。かわいいかも。
あ、もうこんな時間。
推しのボカロのライブ配信番組。
もう始まっちゃってるじゃんか。
私はさるぼぼのリュックをつまんでテーブルに置いた。
■SE/操作音「ピッ」
ん?
いまピって言った?
さるぼぼが?
いやいや、そんなことより番組、番組。
あれ?まだ始まってない。
さっきのは気のせいか。
ま、いいや。ラッキー。
明日に持ち越した番組の台本も、
いまのうちに目を通しておくかな。
[シーン3:再びアフレコスタジオ]
「お前の前にいるのは、2000年以上生きた魔法使いだ!」
「いいね、だいぶ良くなった」
だいぶ?OKじゃないの?どうして?どこがいけなかったの?
「セリフ前半は悲壮な表情。タメを作って心の中でニヤリとしてから後半へ。
これだと完璧だったんだけどなあ。
いいや、少し休憩しよう」
ちょっとちょっとお。
休憩ばっかしてちゃあ、物語が全然進まないじゃん。
まだここ、アバンタイトルでしょ。
私はむしゃくしゃしてスマホをとろうとバッグに手をつっこんだ。
と、スマホではなくさるぼぼを握っちゃったらしい。
知らず知らずまたリュックを・・・
「おいおい、どうした?
ボールド見えなかったか?」
え?え?
どういうこと?
もう休憩終わったの?
いや。なんかおかしい。
私はバッグの中のさるぼぼを取り出した。
もう一度リュックをつまんでみる。
「じゃあ、シーン1。
主人公の決めセリフ、このあといくよ」
え?
ついつい反射的にもう一度つまむ。
「1分後にリハなしで本番にしよう」
これって・・・
タイムリープ〜!?
しかも微妙な分刻みの。
ええ〜い、もっかいリュックつまんだれ。
「リハの前にマイク位置決めとこうか」
なんか・・・おもろ〜〜〜〜
ってか、これ。使えるじゃん!
「監督」
「なんだ?」
「イメージつかんだから、リハなしでいきましょ」
「おおそうか。オッケー。1分後にリハなしで本番いこ」
「お前の前にいるのは、2000年以上生きた魔法使いだ!」
「オッケー!すごくいい!パーフェクト!」
やたっ!
鳴り物入りで始まった異世界アニメの初回アフレコは
音響監督も大満足の出来で終わった。
やっぱ、すごいな。飛騨のさるぼぼって。
いまどきはタイムリープ機能までついてるんだ。
突然私に訪れた幸運のアイテム。
部屋に帰ってからいろいろ試してわかったことは・・・
・リュックをつまんでさるぼぼを持ち上げると60秒前にタイムリープする
・タイムリープしてから60秒以内にもういっかいつまむとさらにその60秒前に戻る
・連続してつまんでも60秒前にしか戻らない
・繰り返しても日付を越えて前の日に戻ることはできない
ってことくらい。
いいんじゃない。
アフレコのときだけじゃなくて、これ、オーディションにも使えるわ。
ふっふっふ。
それからの人生は、まさに薔薇色。
私はどこへ行くにもさるぼぼを手放せなくなった。
リュックをつまんで60秒のタイムリープを使いこなし、
人生を何度も何度もやりなおす。
現場に入るまで教えてもらえない、大作映画のオーディション。
台本をもらったら何度も何度もやり直して、見事主役をゲット。
製作委員会の人たちから、
”まるで最初から内容を知っていたみたいだ”
なんて言われるほど。
昨日は去年CVをアフレコしたゲームの記念パーティ。
ライバルの共演声優がプロデューサーにいきなりプレゼントを手渡した。
おっと、今日誕生日だったっけ。
私はタイムリープで60秒前に戻り、
バースデーメッセージを
ライバルのプレゼントよりも先に送ってやった。
ふふん。
60秒って意外と使えるじゃん。
調子に乗ってタイムリープを繰り返すうち、ある異変に気づいた。
戻った60秒前の過去が少しずつ、本物の過去と変わってきている。
最初のタイムリープで手に入れた大作映画のアフレコ。
いよいよラストカットの収録という日。
原作・脚本・音楽までひとりで手がける大物監督が顔を出した。
『最後のセリフ、ごめんだけど変えちゃったから』
え?
それでも慌てず、さるぼぼのリュックをつまむ。
60秒前の世界へ。
『なにしてんの?始めるよ』
「え?最後のセリフ、変えるんじゃ?」
『変えないよ、絵もできあがってるのに』
そんな・・・
ま、いいけど・・・
セリフはちゃんと入ってるから。
その場はなんとか切り抜けた。安堵のため息。ふう。
それからもずっとさるぼぼのタイムリープを使い続ける私に、
ある日決定的な出来事がおこった。
春からスタートした異世界アニメの最終話。
サプライズで人気男性声優がゲスト出演した。
共演者たちにも知らされていなかったので、みんなもうびっくり。
私は、いつものように落ち着いて60秒前へ。
ところが、戻った60秒前の世界では、
共演者たちはすでに人気男性声優のゲスト出演を知っていた。
焦った私は何度もタイムリープを繰り返す。
その度に違う過去が私を待っていた。
そんな・・・
私は、覚悟を決める。
肌身離さず持っていたさるぼぼを復調室に置き、
深呼吸をしてアナブースに入った。
ゲスト声優のセリフを受けて、最後の言葉を表現した。
「お別れだね。涙なんて私たちには似合わないよ。
いつかまた、出会える日まで」
静かな言葉のなかに託された密かな思い。
決して高くないテンションだったが、
アナブースも復調もしばらく沈黙に包まれた。
やがて、誰からともなく拍手がわきおこる。
ゲスト声優も満面の笑みだ。
オンエアが楽しみだな。
スタジオをあとにした私は、バス停のベンチに腰をおろす。
バッグからさるぼぼをとりだし、リュックの中身を開いた。
今までは、せっかくの幸運に茶々を入れたくなくて開けなかったんだ。
中から出てきたのは・・・桜山八幡宮のお守り。
ああ・・・
なんだか、力が抜けちゃった。
ううん。そうじゃなくて。
今まで助けてくれてありがとう。
私は、アパートの近くにある神社で手を合わせ、さるぼぼを預かってもらった。
自分の部屋へ戻ったら、すぐにママに電話。
あのさるぼぼ、なんだったの?
『え?さるぼぼって?そんなん送ってないわよ』
でも、この答えもなんとなく、予測できていた。
そっか。ごめんごめん。勘違いだわ。
ほんの数ヶ月だけの不思議な体験。
それでも、私にとっては、大きな自信になった。
未来を作るのは過去だけど、
未来を変えるのは自分しかない。
きっかけをくれたさるぼぼに、感謝。
ありがとう。
未来はためらいつつ近づき、
現在は矢のように速く飛び去り、
過去は永久に静かに立っている。
~ フリードリヒ・シラー
主人公は、売り出し中の若手声優。夢に向かってひたむきに走り続ける彼女の前に、ある日届いたのは、小さなリュックを背負ったさるぼぼだった——。
飛騨高山を舞台にした番組 「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでも視聴できます。「小説家になろう」サイトでもお楽しみいただけます(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
[シーン1:アフレコスタジオ]
「カット!」
「え?なに?OKじゃないの?」
「う〜ん。
悪くはないんだけどさ・・・
演じているのはエミリなんだから、もっとエミリらしい表現ができないかなあ」
言い方は柔らかいけど、ぶっちゃけダメ出しってこと。
音響監督が腕を組む。
あ、だめだ。
彼のこのポーズは・・・
しばらく沈黙の時間が続くことを意味している。
アフレコに立ち会っている作画監督が
”飲み物買ってくる”と言って復調から出ていく。
プロデューサーはスマホでメールを打ち始めた。
私の名前は桑木栄美里。
今売り出し中の若手声優である。
今日は、リメイクされた異世界アニメの初回アフレコ。
主人公は、もちろん私。
異世界にただ一人残っているエルフを演じる。
最近のアニメは、1シーズン2クール12回が原則。
短期勝負だから初回のつかみが結構重要になってくる。
今回ものっけから魔族との戦闘シーン。
魔法使いをあなどった魔物が、圧倒的なパワーで倒される。
私の第一声は、いきなり決め台詞だ。
音響監督は、腕を組んだまま台本とにらめっこしている。
私らしい表現かあ。
別に作ってるわけじゃないけどなー。
リメイク作品だから、大人気の初代CVをどうしても意識してしまう。
オリジナルのアニメを何度も見直したのがいけなかったか。
確かに素晴らしい出来だったし。
声優たちもみなうまかった。
あれを越えなければ、というプレッシャーは半端ない。
「よし!」
わ、びっくりした。
音響監督が突如立ち上がった。
プロデューサーはメールを打つ手を止め、
作画監督はあわててブースに戻ってくる。
「今日はいったんここまでにしよう」
ええええええええ!?
スタジオ、夜まで抑えてんじゃないの?
私たち声優の抑えだって、終日って聞いてるけど。
プロデューサーも作画監督も青ざめて音響監督に詰め寄る。
だめだ。
この人、こういうとこ、がんこちゃんだから。
結局、その日は解散となった。
ま、しょうがない。
私、こういうこと、引きずらないんだ。
ちょうどいいや。
いまのうちに、郵便局行ってママから送られた荷物とってこよう。
[シーン2:自宅の部屋]
わあ、古川屋のあげづけだ。
大好物。さすがママ、わかってる〜。
あ、どろぼう漬と朴葉味噌も〜。
さっそくつまんじゃおっと。
あれ?さるぼぼも?
なんでいまさら?アパートにもいっぱいいるのに。
でもこのさるぼぼ、お守りがついてない。
その代わり小さなリュック背負ってる。かわいいかも。
あ、もうこんな時間。
推しのボカロのライブ配信番組。
もう始まっちゃってるじゃんか。
私はさるぼぼのリュックをつまんでテーブルに置いた。
■SE/操作音「ピッ」
ん?
いまピって言った?
さるぼぼが?
いやいや、そんなことより番組、番組。
あれ?まだ始まってない。
さっきのは気のせいか。
ま、いいや。ラッキー。
明日に持ち越した番組の台本も、
いまのうちに目を通しておくかな。
[シーン3:再びアフレコスタジオ]
「お前の前にいるのは、2000年以上生きた魔法使いだ!」
「いいね、だいぶ良くなった」
だいぶ?OKじゃないの?どうして?どこがいけなかったの?
「セリフ前半は悲壮な表情。タメを作って心の中でニヤリとしてから後半へ。
これだと完璧だったんだけどなあ。
いいや、少し休憩しよう」
ちょっとちょっとお。
休憩ばっかしてちゃあ、物語が全然進まないじゃん。
まだここ、アバンタイトルでしょ。
私はむしゃくしゃしてスマホをとろうとバッグに手をつっこんだ。
と、スマホではなくさるぼぼを握っちゃったらしい。
知らず知らずまたリュックを・・・
「おいおい、どうした?
ボールド見えなかったか?」
え?え?
どういうこと?
もう休憩終わったの?
いや。なんかおかしい。
私はバッグの中のさるぼぼを取り出した。
もう一度リュックをつまんでみる。
「じゃあ、シーン1。
主人公の決めセリフ、このあといくよ」
え?
ついつい反射的にもう一度つまむ。
「1分後にリハなしで本番にしよう」
これって・・・
タイムリープ〜!?
しかも微妙な分刻みの。
ええ〜い、もっかいリュックつまんだれ。
「リハの前にマイク位置決めとこうか」
なんか・・・おもろ〜〜〜〜
ってか、これ。使えるじゃん!
「監督」
「なんだ?」
「イメージつかんだから、リハなしでいきましょ」
「おおそうか。オッケー。1分後にリハなしで本番いこ」
「お前の前にいるのは、2000年以上生きた魔法使いだ!」
「オッケー!すごくいい!パーフェクト!」
やたっ!
鳴り物入りで始まった異世界アニメの初回アフレコは
音響監督も大満足の出来で終わった。
やっぱ、すごいな。飛騨のさるぼぼって。
いまどきはタイムリープ機能までついてるんだ。
突然私に訪れた幸運のアイテム。
部屋に帰ってからいろいろ試してわかったことは・・・
・リュックをつまんでさるぼぼを持ち上げると60秒前にタイムリープする
・タイムリープしてから60秒以内にもういっかいつまむとさらにその60秒前に戻る
・連続してつまんでも60秒前にしか戻らない
・繰り返しても日付を越えて前の日に戻ることはできない
ってことくらい。
いいんじゃない。
アフレコのときだけじゃなくて、これ、オーディションにも使えるわ。
ふっふっふ。
それからの人生は、まさに薔薇色。
私はどこへ行くにもさるぼぼを手放せなくなった。
リュックをつまんで60秒のタイムリープを使いこなし、
人生を何度も何度もやりなおす。
現場に入るまで教えてもらえない、大作映画のオーディション。
台本をもらったら何度も何度もやり直して、見事主役をゲット。
製作委員会の人たちから、
”まるで最初から内容を知っていたみたいだ”
なんて言われるほど。
昨日は去年CVをアフレコしたゲームの記念パーティ。
ライバルの共演声優がプロデューサーにいきなりプレゼントを手渡した。
おっと、今日誕生日だったっけ。
私はタイムリープで60秒前に戻り、
バースデーメッセージを
ライバルのプレゼントよりも先に送ってやった。
ふふん。
60秒って意外と使えるじゃん。
調子に乗ってタイムリープを繰り返すうち、ある異変に気づいた。
戻った60秒前の過去が少しずつ、本物の過去と変わってきている。
最初のタイムリープで手に入れた大作映画のアフレコ。
いよいよラストカットの収録という日。
原作・脚本・音楽までひとりで手がける大物監督が顔を出した。
『最後のセリフ、ごめんだけど変えちゃったから』
え?
それでも慌てず、さるぼぼのリュックをつまむ。
60秒前の世界へ。
『なにしてんの?始めるよ』
「え?最後のセリフ、変えるんじゃ?」
『変えないよ、絵もできあがってるのに』
そんな・・・
ま、いいけど・・・
セリフはちゃんと入ってるから。
その場はなんとか切り抜けた。安堵のため息。ふう。
それからもずっとさるぼぼのタイムリープを使い続ける私に、
ある日決定的な出来事がおこった。
春からスタートした異世界アニメの最終話。
サプライズで人気男性声優がゲスト出演した。
共演者たちにも知らされていなかったので、みんなもうびっくり。
私は、いつものように落ち着いて60秒前へ。
ところが、戻った60秒前の世界では、
共演者たちはすでに人気男性声優のゲスト出演を知っていた。
焦った私は何度もタイムリープを繰り返す。
その度に違う過去が私を待っていた。
そんな・・・
私は、覚悟を決める。
肌身離さず持っていたさるぼぼを復調室に置き、
深呼吸をしてアナブースに入った。
ゲスト声優のセリフを受けて、最後の言葉を表現した。
「お別れだね。涙なんて私たちには似合わないよ。
いつかまた、出会える日まで」
静かな言葉のなかに託された密かな思い。
決して高くないテンションだったが、
アナブースも復調もしばらく沈黙に包まれた。
やがて、誰からともなく拍手がわきおこる。
ゲスト声優も満面の笑みだ。
オンエアが楽しみだな。
スタジオをあとにした私は、バス停のベンチに腰をおろす。
バッグからさるぼぼをとりだし、リュックの中身を開いた。
今までは、せっかくの幸運に茶々を入れたくなくて開けなかったんだ。
中から出てきたのは・・・桜山八幡宮のお守り。
ああ・・・
なんだか、力が抜けちゃった。
ううん。そうじゃなくて。
今まで助けてくれてありがとう。
私は、アパートの近くにある神社で手を合わせ、さるぼぼを預かってもらった。
自分の部屋へ戻ったら、すぐにママに電話。
あのさるぼぼ、なんだったの?
『え?さるぼぼって?そんなん送ってないわよ』
でも、この答えもなんとなく、予測できていた。
そっか。ごめんごめん。勘違いだわ。
ほんの数ヶ月だけの不思議な体験。
それでも、私にとっては、大きな自信になった。
未来を作るのは過去だけど、
未来を変えるのは自分しかない。
きっかけをくれたさるぼぼに、感謝。
ありがとう。
未来はためらいつつ近づき、
現在は矢のように速く飛び去り、
過去は永久に静かに立っている。
~ フリードリヒ・シラー