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主人公のマナは、高校最後の思い出として友人たちと北陸の海へと向かいました。美しい海の風景、獲れたての海の幸、そして温かい人々との出会い――しかし、彼女は思いもよらない運命に巻き込まれていきます。
「人魚の肉を食べると不老不死になる」
そんな伝説を聞いたことがありますか? それは単なる昔話なのか、それとも実際に起こりうることなのか。本作では、伝説が現実へと変わる瞬間を描いています。
不老不死という夢のような力を手に入れたとき、人は本当に幸せになれるのか。
この物語は、ファンタジーでありながら、人生の意味を問う作品でもあります。
(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
[シーン1:北陸小浜の海/海辺のペンションで食事する女子高生たち]
■SE/波の音が聞こえる飲食店の店内
「北陸さいっこう〜!」「きたぞ小浜(おばま)〜!」「かんぱ〜い!」
ジュースで乾杯する私たち。
私の名はマナ。
『真』実の『魚』って書くのよ。
夏休みの卒業旅行。
まるでJRのコマーシャルみたいな女子旅。
私は高校の友達2人と一緒に、高山から北陸・小浜までやってきた。
とは言っても、宿に到着したのはもう夕方。
ここまでの鉄道の旅、なかなかシュールだったなあ。
高山発11時3分の特急ひだで
富山に着いたのが12時32分。
そこから念願の北陸新幹線!
『つるぎ』に乗って敦賀へ。
敦賀から鈍行に乗り換えて、小浜に着いたのは午後3時半なんだもん。
4時間半の長旅だったけど、
予約したペンションにチェックインしたら疲れも吹っ飛んじゃった。
ペンション『Emily』。
すっごいオシャレな海沿いのテラス。
つい先日オープンしたばっかりだけあって、館内もピッカピカ。
オーナーは若いご夫婦。
まだ20代かなあ。素敵なお二人。
人前でも仲がよくて、ちょっぴりうらやましい。
みんなもそう言ってるし(笑)
獲れたてのアオリイカ。
のどぐろの醤油漬け。
夏の岩牡蠣。
さっきまで跳ねてた甘エビ。
いつもは肉食系の私たちが、肉食獣のようにむしゃぶりつく。
ふふふ。
食材はぜ〜んぶ奥さんが海で獲ってくるんだって。
え?海女さんなんですか?
『違うわよ。でも漁業許可はとってるわ』
『私、生まれたときから素潜りが得意なの』
そう言ったあと、ご主人の方を見てペロっと舌を出す。
かわいい〜。
料理は夫婦で仲良く共同作業してる。
奥さんが下ごしらえしてご主人が焼く。
『あ、いたっ』
「大丈夫ですか?」
『大丈夫。ほんのちょっと指先を切っちゃっただけ。
こう見えて私、どんくさいの。
あ、いばるとこじゃないか』
心配そうな顔のご主人を制して、料理を配膳する。
超新鮮なたちうおの刺身。
みんなの箸が、一斉に料理へ伸びる。
気がついたら・・・完食じゃん。
私、食べてないのに、もう。
それを見た奥さんがお皿をさしだす。
『まかないにしようと思ってた刺身だけど、食べてみて』
「あ、そんな。大丈夫です」
『だめよ。18歳以下は遠慮禁止だからね』
私は頭を下げて刺身ひと切れを口にした。
基本的に醤油もわさびもつけない。
あれ?
すこ〜しだけ塩味。
そりゃ海の魚だもんね。
おいしい!
ようし、思いっきり料理を堪能したら、明日は思いっきり海で泳ぐぞ〜。
最高の夏。
窓から入ってくる潮風が私の髪を揺らしていった。
[シーン2:二学期の学校と生活]
■SE/体育祭の雑踏
二学期が始まると、最初の行事は「体育祭」。
そのとき、不思議なことに気づいた。
何度走っても、みんなを引き離して一着になる。
長距離でも短距離でも。
あれ?私、トラック競技って苦手だったはずだけど。
それに転んで怪我をしてもすぐに治る。
ううん。すぐに、なんてレベルじゃない。
瞬時に傷口が塞がっていくのよ。
ゴジラか、っちゅうの。
でもって、いつもお腹が空いてるんだよなあ。
北陸へ行ってから食べ物の好みも変わっちゃったし。
今までは、お肉大好き人間。
おうちの台所事情も考えずに飛騨牛ばっか食べてた。
なのに、いまは魚が食べたくて我慢できない。
お肉なんて食べたくなくなっちゃった。
高山っ子の風上にも置けないやつ。
ママは私のワガママ聞いて毎日魚を料理してくれる。
高山に住んでてよかったわ〜。
お隣が北陸だからいつでも新鮮な魚を食べられるもんね〜。
あ、でもホントは、火を通す料理より、生の魚が食べたいんだけどな。
夏だから難しいか。
体調も変わってきたみたい。
もしかして肌の艶もよくなってきたんとちゃう?
ニキビとか全部消えちゃったし。
口内炎も全然できない。
悩んでたお通じも規則正しくなってるわ。
ん?あれ?
なんか、目の前が・・・見えにくい?
と思ってコンタクトはずしたら・・・
ぬぁんと、10m先までハッキリ見えるじゃん。
目医者さんで測ってもらったら4.0〜!
うっそぉ!
どうしたの!?私!
アベンジャーズに入れるかも〜。
夏でも冬でもよく風邪を引いてたのに、いまはもう健康そのもの。
風邪を引く、という感覚自体思い出せない。
というより力が有り余っている。
力を排出するために、毎朝自転車通学は全力疾走だ。
うわ!私、車より速く走ってる!
どういうこと?
すごいじゃん!やっぱアベンジャーズに入れるわ〜。
調子に乗って前の車を追い抜いた瞬間・・・
■SE/車の急ブレーキの音
[シーン3:病院の病室]
■SE/病院の音
私は右折してきた車に跳ね飛ばされた。
気がついたら、病院のベッドの上。
目を開けたとき、驚愕した顔の医師と、涙顔のパパ、ママが私を見つめていた。
運び込まれたとき、症状は絶望的だったらしい。
ここで説明するのも恐ろしい状態。
着ていた服を見ればわかるわ。
ボロボロに破れ、白い夏服は真っ赤に染まっている。
それからは毎日検査の連続。
通常のMRIやCTスキャンでは、異常なし。骨密度200%!?
うひゃあ。
その他の検査でも正常値をはるかに超える健康値ばかり。
納得できない医師は、私の細胞を調べた。
すると・・・
テロメラーゼという細胞不死化酵素が異常に増殖していることがわかった。
少し前に話題となった、いわゆる不老不死アイテムである。
テロメラーゼが活性化すると、がん化することが多いのだが、
私の場合は特殊なケースだという。
え?不老不死ってこと?
私、永遠に18歳のまま死なないってこと?
これって、ラッキーかも?
そう思ってパパとママの顔を見る。
あ、喜んでくれてるんじゃないんだ。
・・・そうか。
私、これからずうっと、愛する人たちを見送り続けるってこと・・・
人間の寿命は短いのに、どうしてそれを理解しようとしなかったんだろう。
そんなの、いやだ。
冷静に考えてみる。
こんな風になったのはいつから?
二学期になってからだ。
夏休みになにがあった?
卒業旅行。北陸。ペンション。美味しい料理。
そのくらいしか非日常はない。
考えよう。考える時間は永遠にある。
だが病院は待ってくれない。
医者はもう興味津々。
人類の未来のためにご協力を、などとのたまった。
私はパパ、ママに訴える。
もう検査はうんざり。
早く退院したい。
遺伝子情報まで調べられてたまるか。
究極の個人情報じゃん。
このままだときっと私、移送されちゃうよ。
高山市内のどこかにあるって噂の秘密研究組織に。
”そんな都市伝説みたいなこと”
と言いながらも、パパとママは小さくうなづく。
”そうね。あなたは実験動物じゃないもの。必ず守ってあげる”
そう言ってウィンクした。
そのとき。
病室のドアがノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのは、見覚えのある女性。
あ。あのときのペンションの・・・
彼女は私にだけわかるように、口に指をあててから、
「特別医療研究員のカウンセラーです」
と言った。そして続けざまに、
「少しの間だけ、患者と2人にしてもらえますか」
と、病室の医師とパパ、ママを遠ざけた。
<2人きりの病室>
「ごめんなさい」
「え?なに?」
「あなたを探したの」
彼女は優しく、でも少し早口で話し始めた。
「あの日、あなたに食べてもらったまかないのお刺身。
その中に多分私の血液が少し混じっちゃってたと思うの。
それを食べてあなたは不老不死に」
「そんな・・・」
「今からもっと荒唐無稽な話をするわね。
あなたが食べたのは、人魚のDNAが入ったお刺身。
つまり人魚の肉ってこと」
「人魚?」
「ごめんなさい。
私あやまってあなたを八百比丘尼にしてしまった」
「え?」
「でも大丈夫。まだ間に合うから」
「人魚の肉を食べたものを元に戻すには、人魚の涙を飲むしかないの」
「人魚の涙・・・」
「私を信じて。何も言わず、私の涙を一滴。口に含んでちょうだい」
そういうと、彼女の瞳から一筋の涙が滴る。
涙を手のひらで受けた彼女は、私に差し出す。
私は迷いながら、彼女の手のひらにキスをした。
「ありがとう。
最後にひとつだけ真魚に言っておくね。
不老不死ってわかったとき、心の中で思ったこと、これからも忘れないで」
「うん・・・ありがとう。あなたの名前は?」
「エミリ。エミリよ。元、人魚姫。いまは愛する人の妻」
「人魚姫・・・人魚ってホントにいるんだ・・・あの・・・ご、ご主人とお幸せに」
「ふふ。マナも本当に愛してくれる人を大切にね」
「うん」
「じゃあもう行くわ・・・」
「ありがとう。私もまた会いに行く!」
「うん。今度はもっと美味しい料理用意するから」
私たちは笑顔で別れた。
そのあと、突然消えたテロメラーゼに医師たちは狼狽し、言葉を失った。
パパとママは私の肩を抱き、笑顔で退院の準備を始める。
「パパ、ママ、さあ、おうちに帰ろっ!
主人公のマナは、高校最後の思い出として友人たちと北陸の海へと向かいました。美しい海の風景、獲れたての海の幸、そして温かい人々との出会い――しかし、彼女は思いもよらない運命に巻き込まれていきます。
「人魚の肉を食べると不老不死になる」
そんな伝説を聞いたことがありますか? それは単なる昔話なのか、それとも実際に起こりうることなのか。本作では、伝説が現実へと変わる瞬間を描いています。
不老不死という夢のような力を手に入れたとき、人は本当に幸せになれるのか。
この物語は、ファンタジーでありながら、人生の意味を問う作品でもあります。
(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
[シーン1:北陸小浜の海/海辺のペンションで食事する女子高生たち]
■SE/波の音が聞こえる飲食店の店内
「北陸さいっこう〜!」「きたぞ小浜(おばま)〜!」「かんぱ〜い!」
ジュースで乾杯する私たち。
私の名はマナ。
『真』実の『魚』って書くのよ。
夏休みの卒業旅行。
まるでJRのコマーシャルみたいな女子旅。
私は高校の友達2人と一緒に、高山から北陸・小浜までやってきた。
とは言っても、宿に到着したのはもう夕方。
ここまでの鉄道の旅、なかなかシュールだったなあ。
高山発11時3分の特急ひだで
富山に着いたのが12時32分。
そこから念願の北陸新幹線!
『つるぎ』に乗って敦賀へ。
敦賀から鈍行に乗り換えて、小浜に着いたのは午後3時半なんだもん。
4時間半の長旅だったけど、
予約したペンションにチェックインしたら疲れも吹っ飛んじゃった。
ペンション『Emily』。
すっごいオシャレな海沿いのテラス。
つい先日オープンしたばっかりだけあって、館内もピッカピカ。
オーナーは若いご夫婦。
まだ20代かなあ。素敵なお二人。
人前でも仲がよくて、ちょっぴりうらやましい。
みんなもそう言ってるし(笑)
獲れたてのアオリイカ。
のどぐろの醤油漬け。
夏の岩牡蠣。
さっきまで跳ねてた甘エビ。
いつもは肉食系の私たちが、肉食獣のようにむしゃぶりつく。
ふふふ。
食材はぜ〜んぶ奥さんが海で獲ってくるんだって。
え?海女さんなんですか?
『違うわよ。でも漁業許可はとってるわ』
『私、生まれたときから素潜りが得意なの』
そう言ったあと、ご主人の方を見てペロっと舌を出す。
かわいい〜。
料理は夫婦で仲良く共同作業してる。
奥さんが下ごしらえしてご主人が焼く。
『あ、いたっ』
「大丈夫ですか?」
『大丈夫。ほんのちょっと指先を切っちゃっただけ。
こう見えて私、どんくさいの。
あ、いばるとこじゃないか』
心配そうな顔のご主人を制して、料理を配膳する。
超新鮮なたちうおの刺身。
みんなの箸が、一斉に料理へ伸びる。
気がついたら・・・完食じゃん。
私、食べてないのに、もう。
それを見た奥さんがお皿をさしだす。
『まかないにしようと思ってた刺身だけど、食べてみて』
「あ、そんな。大丈夫です」
『だめよ。18歳以下は遠慮禁止だからね』
私は頭を下げて刺身ひと切れを口にした。
基本的に醤油もわさびもつけない。
あれ?
すこ〜しだけ塩味。
そりゃ海の魚だもんね。
おいしい!
ようし、思いっきり料理を堪能したら、明日は思いっきり海で泳ぐぞ〜。
最高の夏。
窓から入ってくる潮風が私の髪を揺らしていった。
[シーン2:二学期の学校と生活]
■SE/体育祭の雑踏
二学期が始まると、最初の行事は「体育祭」。
そのとき、不思議なことに気づいた。
何度走っても、みんなを引き離して一着になる。
長距離でも短距離でも。
あれ?私、トラック競技って苦手だったはずだけど。
それに転んで怪我をしてもすぐに治る。
ううん。すぐに、なんてレベルじゃない。
瞬時に傷口が塞がっていくのよ。
ゴジラか、っちゅうの。
でもって、いつもお腹が空いてるんだよなあ。
北陸へ行ってから食べ物の好みも変わっちゃったし。
今までは、お肉大好き人間。
おうちの台所事情も考えずに飛騨牛ばっか食べてた。
なのに、いまは魚が食べたくて我慢できない。
お肉なんて食べたくなくなっちゃった。
高山っ子の風上にも置けないやつ。
ママは私のワガママ聞いて毎日魚を料理してくれる。
高山に住んでてよかったわ〜。
お隣が北陸だからいつでも新鮮な魚を食べられるもんね〜。
あ、でもホントは、火を通す料理より、生の魚が食べたいんだけどな。
夏だから難しいか。
体調も変わってきたみたい。
もしかして肌の艶もよくなってきたんとちゃう?
ニキビとか全部消えちゃったし。
口内炎も全然できない。
悩んでたお通じも規則正しくなってるわ。
ん?あれ?
なんか、目の前が・・・見えにくい?
と思ってコンタクトはずしたら・・・
ぬぁんと、10m先までハッキリ見えるじゃん。
目医者さんで測ってもらったら4.0〜!
うっそぉ!
どうしたの!?私!
アベンジャーズに入れるかも〜。
夏でも冬でもよく風邪を引いてたのに、いまはもう健康そのもの。
風邪を引く、という感覚自体思い出せない。
というより力が有り余っている。
力を排出するために、毎朝自転車通学は全力疾走だ。
うわ!私、車より速く走ってる!
どういうこと?
すごいじゃん!やっぱアベンジャーズに入れるわ〜。
調子に乗って前の車を追い抜いた瞬間・・・
■SE/車の急ブレーキの音
[シーン3:病院の病室]
■SE/病院の音
私は右折してきた車に跳ね飛ばされた。
気がついたら、病院のベッドの上。
目を開けたとき、驚愕した顔の医師と、涙顔のパパ、ママが私を見つめていた。
運び込まれたとき、症状は絶望的だったらしい。
ここで説明するのも恐ろしい状態。
着ていた服を見ればわかるわ。
ボロボロに破れ、白い夏服は真っ赤に染まっている。
それからは毎日検査の連続。
通常のMRIやCTスキャンでは、異常なし。骨密度200%!?
うひゃあ。
その他の検査でも正常値をはるかに超える健康値ばかり。
納得できない医師は、私の細胞を調べた。
すると・・・
テロメラーゼという細胞不死化酵素が異常に増殖していることがわかった。
少し前に話題となった、いわゆる不老不死アイテムである。
テロメラーゼが活性化すると、がん化することが多いのだが、
私の場合は特殊なケースだという。
え?不老不死ってこと?
私、永遠に18歳のまま死なないってこと?
これって、ラッキーかも?
そう思ってパパとママの顔を見る。
あ、喜んでくれてるんじゃないんだ。
・・・そうか。
私、これからずうっと、愛する人たちを見送り続けるってこと・・・
人間の寿命は短いのに、どうしてそれを理解しようとしなかったんだろう。
そんなの、いやだ。
冷静に考えてみる。
こんな風になったのはいつから?
二学期になってからだ。
夏休みになにがあった?
卒業旅行。北陸。ペンション。美味しい料理。
そのくらいしか非日常はない。
考えよう。考える時間は永遠にある。
だが病院は待ってくれない。
医者はもう興味津々。
人類の未来のためにご協力を、などとのたまった。
私はパパ、ママに訴える。
もう検査はうんざり。
早く退院したい。
遺伝子情報まで調べられてたまるか。
究極の個人情報じゃん。
このままだときっと私、移送されちゃうよ。
高山市内のどこかにあるって噂の秘密研究組織に。
”そんな都市伝説みたいなこと”
と言いながらも、パパとママは小さくうなづく。
”そうね。あなたは実験動物じゃないもの。必ず守ってあげる”
そう言ってウィンクした。
そのとき。
病室のドアがノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのは、見覚えのある女性。
あ。あのときのペンションの・・・
彼女は私にだけわかるように、口に指をあててから、
「特別医療研究員のカウンセラーです」
と言った。そして続けざまに、
「少しの間だけ、患者と2人にしてもらえますか」
と、病室の医師とパパ、ママを遠ざけた。
<2人きりの病室>
「ごめんなさい」
「え?なに?」
「あなたを探したの」
彼女は優しく、でも少し早口で話し始めた。
「あの日、あなたに食べてもらったまかないのお刺身。
その中に多分私の血液が少し混じっちゃってたと思うの。
それを食べてあなたは不老不死に」
「そんな・・・」
「今からもっと荒唐無稽な話をするわね。
あなたが食べたのは、人魚のDNAが入ったお刺身。
つまり人魚の肉ってこと」
「人魚?」
「ごめんなさい。
私あやまってあなたを八百比丘尼にしてしまった」
「え?」
「でも大丈夫。まだ間に合うから」
「人魚の肉を食べたものを元に戻すには、人魚の涙を飲むしかないの」
「人魚の涙・・・」
「私を信じて。何も言わず、私の涙を一滴。口に含んでちょうだい」
そういうと、彼女の瞳から一筋の涙が滴る。
涙を手のひらで受けた彼女は、私に差し出す。
私は迷いながら、彼女の手のひらにキスをした。
「ありがとう。
最後にひとつだけ真魚に言っておくね。
不老不死ってわかったとき、心の中で思ったこと、これからも忘れないで」
「うん・・・ありがとう。あなたの名前は?」
「エミリ。エミリよ。元、人魚姫。いまは愛する人の妻」
「人魚姫・・・人魚ってホントにいるんだ・・・あの・・・ご、ご主人とお幸せに」
「ふふ。マナも本当に愛してくれる人を大切にね」
「うん」
「じゃあもう行くわ・・・」
「ありがとう。私もまた会いに行く!」
「うん。今度はもっと美味しい料理用意するから」
私たちは笑顔で別れた。
そのあと、突然消えたテロメラーゼに医師たちは狼狽し、言葉を失った。
パパとママは私の肩を抱き、笑顔で退院の準備を始める。
「パパ、ママ、さあ、おうちに帰ろっ!