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『バックドラフト〜火事場のスーパーヒーローは女子高生だった!?』は、火災現場に現れる謎のヒーロー「白い魔女」と、彼女の運命を巡る物語です。
火事といえば、日常の中で最も恐ろしい災害のひとつ。その炎の中に飛び込み、人々を救う者たちがいます。本作では、そんな火災の恐怖と、それに立ち向かうヒーローの勇姿を描いてみました。
主人公は「白い魔女」と呼ばれる高校生ヒーロー。しかし、彼女はかつて火災の中から救われた少女であり、過去の悲劇が彼女を突き動かしています。彼女はなぜ炎と向き合い続けるのか? そして「赤い閃光」の正体とは?
飛騨の街を舞台にした、熱きヒーローアクションをお楽しみください!
それでは、物語の幕開けです(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
■SE〜火事の現場/サイレン/業火の音
「助けて!」(※女性)
(※ここからヒーロー赤い閃光のモノローグ)
4階建ての木造アパート。
激しく燃え盛る炎の中で、TVのニュースが乾燥注意報と火の元の注意を呼びかけている。
■SE〜TVから流れるニュースの音
『高山市内全域に乾燥注意報が発令されています。火の元には十分ご注意ください・・・』
「助けて!だれか!」
部屋の中から助けを呼んでいるのは、若い女性。
よし、まだ間に合う。
私の名前は、人呼んで『赤い閃光』。
炎を切り裂いて、疾風のように火事現場から人を救い出すから、だそうだ。
ただ単に『ヒーロー』でいいのだが。
現場は森に囲まれたアパート。
梯子車はギリギリ入れる市道の端まで近づき車体を固定する。
窓に向かって梯子を懸命に伸ばしていく。
私は一足早く、煙が立ちのぼる4階の窓に飛びこんだ。
女性が、崩れた箪笥に足を挟まれている。
片手で箪笥を動かし、女性を抱き抱えて部屋から飛び出そうとしたとき、
「奥に・・・まだ娘が・・・」
なに!?
同時に、梯子を伝って部屋に入った若い消防士が奥の部屋の扉をあけた。
まずい。
■SE〜バックドラフトの爆発音
その瞬間、部屋中に炎が吹き荒れた。
バックドラフト。
気密性の高い室内で酸素が少なくなると炎はまるで鎮火したように見える。
ところが、炎がくすぶった部屋で、いきなり窓をあけると・・・
酸素が急に流入して大爆発=バックドラフトをおこす。
爆風に逆らって、私は奥の部屋に飛び込み、倒れた幼女を咄嗟に胸の中へ包み込む。
炎は容赦なく、窓から冬空へ吹き上がる。
娘を抱いた私の体は燃えながら森の中へ吹き飛ばされていった。
(※ここまで赤い閃光のモノローグ)
■SE〜ニュース速報の音
『昨夜未明、高山市内で4階建てのアパートが全焼しました。
焼け跡から、このアパートに住む母親と助けに入った消防士の遺体が発見されました。
火は2時間半後に消し止められましたが、3歳の娘が行方不明となっています』
(※ここから白い魔女のモノローグ)
この火事のあと、人々の前から赤い閃光は姿を消した。
それから15年後。
ここ高山市内にはある噂が流れていた。
火事現場に必ず現れるという『白い魔女』。
ヒーローなのか、悪魔なのか、誰もその正体を知らない・・・
■SE〜学校の終業チャイム
「ごめ〜ん。お先に〜」
友だちの誘いを適当に受け流して、家路を急ぐ。
高校3年生。18歳。
同級生たちは、雑貨屋やカフェで毎日高校生活を謳歌しているが、私は違う。
毎日家に帰ると速攻で、防災無線をこっそり傍受する。
あ、これ、違法じゃないよ。傍受した内容を第三者に話さなければね。
そうそう。だから誰にも言わないでね。
そんなとき、私の育ての親でもあるばあちゃんは、不審な顔で私を見ているが、
勉強だってちゃんとやってるから大丈夫。
だって、それがヒーローのつとめだもん。
ヒーロー。
そう、私は荒れ狂う炎から高山市民を守る孤高のヒーロー。
人々は、私のことを『白い魔女』と呼ぶ。
なんちゃって。
そもそも、なんでばあちゃんが私を育ててくれるのか?
ばあちゃんが言うには、息子が死んだ日に、息子から赤ちゃんの私を託されたのだという。
その辺の事情を詳しく聞こうとすると、いつものらりくらりをはぐらかされてしまう。
だから私は、父さん・・・あ、その息子のことね。
ばあちゃんの息子だから、私は父さん、と呼んでいる。記憶はなにひとつないけど。
私は、父さんの部屋から遺品を必死で調べた。
わかったことは、
父さんはこの山間(やまあい)の村の消防団に入っていたこと。
消防団仲間からは弱虫と揶揄されていたこと。
私のことをいつも気にして死んでいったこと。
これだけ?父さんのこと、もっと知りたい。
そんなある日、物置の壁の奥に隠し扉を見つけた。
その中には驚くべきものが隠されていた。
なんの素材できているのかまったくわからないツナギの赤いスーツ。
同じく赤いブーツ。赤いベルト。そして赤いマスク。なに?これ?
何気なくマスクを被ったとき、私はすべてを知った。
私の頭の中へ直接メッセージが響き渡ったのだ。
■SE〜キーンという耳鳴りのような音
『このマスクを被るものには、太古の昔に封印された古代飛騨戦士の力が与えられる』
『森の木々よりも高く空を飛び、岩をも打ち砕く力を手にするであろう』
『その力は生ある限り、人々を救うためにのみ使うことが許される』
そう、父さんこそ赤い閃光だったのだ。
昔ニュースで見た。火災現場から赤ん坊を助けて姿を消した赤い閃光。
そうだったんだ・・・
すべてを知った私は、父さんの跡を継ごうと心に誓った。
と言っても、赤はダサいから、全部白く塗っちゃったけど、てへ。
そして私は、『白い魔女』となった。
父さんを奪った火災を根絶やしにするために・・・
そのとき、防災無線が響いた。火事だ。場所は?
古い街並みの近く。木造の町家じゃん。急がないと。
高山市の歴史は火事の歴史といってもいい。
天明と明治の大火災では甚大な被害をもたらした。
いま、伝統的建造物が多く建ち並ぶこの街を火事なんかでなくしたくない!
森の木々の間を疾風のようにぬって飛ぶ。
火災現場に到着する寸前、私は前髪で顔の左側を隠した。
実は私の左の頬には直径3センチくらいのやけどの跡がある。
でも同級生の前でもしっかり髪の毛で隠しているし、誰もこのことは知らない。
知っているのはばあちゃんだけだ。
ばあちゃんからは形成手術を受けるよう勧められたが、私は断った。
心の中に燻り続ける火災への憎しみを忘れないように。
ほどなく火災現場に到着した。
私は逃げ遅れたカップルを家の奥から1人ずつ抱え出す。
最初に女性。続いて男性。
助け出された男性は、安心してポケットからタバコを取り出す。
マッチで火をつけようとした瞬間、私は手のひらで炎を握りつぶし、
箱ごとタバコもひねりつぶした。
男性が、私を睨みつける。
私は逆に憎悪の眼差しで彼を射抜く。
助け出した部屋の中で灰皿付近だけが燃え尽きていたのを私は見逃さない。
男性の唇が動く前に、私は飛び去る。
そのとき、報道のTVカメラが私をとらえていたことに気づかなかった。
飛び去る瞬間の私の顔。マスクで隠せない左頬。
やけどの跡がニュースで流れてしまった。
ま、いっか。ああ、今日は少し疲れたな。
私は、防災無線を傍受しながら、ゆっくりと森の上を飛ぶ。
そのとき、またしても火災の一報が入った。
場所は・・・え?うちの近く?
待って、住所は?え?これって、うちじゃん!
そんな!火の始末はなによりも完璧にしているのに!
ばあちゃん!!
警察無線を同時に傍受すると、とんでもない事実が浮かび上がった。
最近市内に出没している放火犯の可能性ありだと!
なんだってぇ!
ばあちゃん!無事でいて!お願い!
音速を超えるかと思うくらいのスピードで家に到着した。
よかった。まだ炎の勢いは強くない。
私は、勝手口から家の中へ入る。
ばあちゃんは、TVのある奥の座敷にいるはずだ。
ばあちゃん!
ああ、よかった。無事で!
さっきまで火の勢いがすごかったけど、もう大分小さくなったから大丈夫?
違うよ、ばあちゃん。炎はまだ生きている。
弱くなったフリをしてるだけなんだ。
さあ、私の肩につかまって。ゆっくりと窓の方へ行くよ。
そのとき、若い消防士が窓を叩き割った。
あ、だめ!バックドラフトが!
■SE〜バックドラフトの爆発音
考える間もなく、炎が窓から夜空へ噴き上がる。
私は片手でばあちゃんを抱き抱え、片手で消防士を炎の届かないところまで引っ張る。
安全な場所でばあちゃんを降ろすと、ばあちゃんはすかさず
『お前が無事でよかった』
と泣きながら私の頭を撫でる。
『なに言ってんの。それはばあちゃんの方でしょ』
『TVで見て心配してたんやさ』
あ、あのときの、カメラ・・・そっか。ばあちゃんに、わかっちゃったんだ・・・
『もうええから休みんさい』
うん・・・
でも、あとひとつだけ仕事残ってるから。
火災現場の最前列でサングラスをして我が家を見つめる男性。
私はその肩を強くつかみ、
『放火は重罪だよ』
と言って、近くにいる警察官の元へひきづっていく。
その際、男のジャケットから、燃焼促進剤の瓶がこぼれ落ちた。
私はばあちゃんの元へ走って戻り、笑顔で呟く。
『今日はもう、温泉にでも泊まろうよ。みんなにバレちゃったし』
ばあちゃんは満面の笑みになり、私の頭を優しく撫でた。
『バックドラフト〜火事場のスーパーヒーローは女子高生だった!?』は、火災現場に現れる謎のヒーロー「白い魔女」と、彼女の運命を巡る物語です。
火事といえば、日常の中で最も恐ろしい災害のひとつ。その炎の中に飛び込み、人々を救う者たちがいます。本作では、そんな火災の恐怖と、それに立ち向かうヒーローの勇姿を描いてみました。
主人公は「白い魔女」と呼ばれる高校生ヒーロー。しかし、彼女はかつて火災の中から救われた少女であり、過去の悲劇が彼女を突き動かしています。彼女はなぜ炎と向き合い続けるのか? そして「赤い閃光」の正体とは?
飛騨の街を舞台にした、熱きヒーローアクションをお楽しみください!
それでは、物語の幕開けです(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
■SE〜火事の現場/サイレン/業火の音
「助けて!」(※女性)
(※ここからヒーロー赤い閃光のモノローグ)
4階建ての木造アパート。
激しく燃え盛る炎の中で、TVのニュースが乾燥注意報と火の元の注意を呼びかけている。
■SE〜TVから流れるニュースの音
『高山市内全域に乾燥注意報が発令されています。火の元には十分ご注意ください・・・』
「助けて!だれか!」
部屋の中から助けを呼んでいるのは、若い女性。
よし、まだ間に合う。
私の名前は、人呼んで『赤い閃光』。
炎を切り裂いて、疾風のように火事現場から人を救い出すから、だそうだ。
ただ単に『ヒーロー』でいいのだが。
現場は森に囲まれたアパート。
梯子車はギリギリ入れる市道の端まで近づき車体を固定する。
窓に向かって梯子を懸命に伸ばしていく。
私は一足早く、煙が立ちのぼる4階の窓に飛びこんだ。
女性が、崩れた箪笥に足を挟まれている。
片手で箪笥を動かし、女性を抱き抱えて部屋から飛び出そうとしたとき、
「奥に・・・まだ娘が・・・」
なに!?
同時に、梯子を伝って部屋に入った若い消防士が奥の部屋の扉をあけた。
まずい。
■SE〜バックドラフトの爆発音
その瞬間、部屋中に炎が吹き荒れた。
バックドラフト。
気密性の高い室内で酸素が少なくなると炎はまるで鎮火したように見える。
ところが、炎がくすぶった部屋で、いきなり窓をあけると・・・
酸素が急に流入して大爆発=バックドラフトをおこす。
爆風に逆らって、私は奥の部屋に飛び込み、倒れた幼女を咄嗟に胸の中へ包み込む。
炎は容赦なく、窓から冬空へ吹き上がる。
娘を抱いた私の体は燃えながら森の中へ吹き飛ばされていった。
(※ここまで赤い閃光のモノローグ)
■SE〜ニュース速報の音
『昨夜未明、高山市内で4階建てのアパートが全焼しました。
焼け跡から、このアパートに住む母親と助けに入った消防士の遺体が発見されました。
火は2時間半後に消し止められましたが、3歳の娘が行方不明となっています』
(※ここから白い魔女のモノローグ)
この火事のあと、人々の前から赤い閃光は姿を消した。
それから15年後。
ここ高山市内にはある噂が流れていた。
火事現場に必ず現れるという『白い魔女』。
ヒーローなのか、悪魔なのか、誰もその正体を知らない・・・
■SE〜学校の終業チャイム
「ごめ〜ん。お先に〜」
友だちの誘いを適当に受け流して、家路を急ぐ。
高校3年生。18歳。
同級生たちは、雑貨屋やカフェで毎日高校生活を謳歌しているが、私は違う。
毎日家に帰ると速攻で、防災無線をこっそり傍受する。
あ、これ、違法じゃないよ。傍受した内容を第三者に話さなければね。
そうそう。だから誰にも言わないでね。
そんなとき、私の育ての親でもあるばあちゃんは、不審な顔で私を見ているが、
勉強だってちゃんとやってるから大丈夫。
だって、それがヒーローのつとめだもん。
ヒーロー。
そう、私は荒れ狂う炎から高山市民を守る孤高のヒーロー。
人々は、私のことを『白い魔女』と呼ぶ。
なんちゃって。
そもそも、なんでばあちゃんが私を育ててくれるのか?
ばあちゃんが言うには、息子が死んだ日に、息子から赤ちゃんの私を託されたのだという。
その辺の事情を詳しく聞こうとすると、いつものらりくらりをはぐらかされてしまう。
だから私は、父さん・・・あ、その息子のことね。
ばあちゃんの息子だから、私は父さん、と呼んでいる。記憶はなにひとつないけど。
私は、父さんの部屋から遺品を必死で調べた。
わかったことは、
父さんはこの山間(やまあい)の村の消防団に入っていたこと。
消防団仲間からは弱虫と揶揄されていたこと。
私のことをいつも気にして死んでいったこと。
これだけ?父さんのこと、もっと知りたい。
そんなある日、物置の壁の奥に隠し扉を見つけた。
その中には驚くべきものが隠されていた。
なんの素材できているのかまったくわからないツナギの赤いスーツ。
同じく赤いブーツ。赤いベルト。そして赤いマスク。なに?これ?
何気なくマスクを被ったとき、私はすべてを知った。
私の頭の中へ直接メッセージが響き渡ったのだ。
■SE〜キーンという耳鳴りのような音
『このマスクを被るものには、太古の昔に封印された古代飛騨戦士の力が与えられる』
『森の木々よりも高く空を飛び、岩をも打ち砕く力を手にするであろう』
『その力は生ある限り、人々を救うためにのみ使うことが許される』
そう、父さんこそ赤い閃光だったのだ。
昔ニュースで見た。火災現場から赤ん坊を助けて姿を消した赤い閃光。
そうだったんだ・・・
すべてを知った私は、父さんの跡を継ごうと心に誓った。
と言っても、赤はダサいから、全部白く塗っちゃったけど、てへ。
そして私は、『白い魔女』となった。
父さんを奪った火災を根絶やしにするために・・・
そのとき、防災無線が響いた。火事だ。場所は?
古い街並みの近く。木造の町家じゃん。急がないと。
高山市の歴史は火事の歴史といってもいい。
天明と明治の大火災では甚大な被害をもたらした。
いま、伝統的建造物が多く建ち並ぶこの街を火事なんかでなくしたくない!
森の木々の間を疾風のようにぬって飛ぶ。
火災現場に到着する寸前、私は前髪で顔の左側を隠した。
実は私の左の頬には直径3センチくらいのやけどの跡がある。
でも同級生の前でもしっかり髪の毛で隠しているし、誰もこのことは知らない。
知っているのはばあちゃんだけだ。
ばあちゃんからは形成手術を受けるよう勧められたが、私は断った。
心の中に燻り続ける火災への憎しみを忘れないように。
ほどなく火災現場に到着した。
私は逃げ遅れたカップルを家の奥から1人ずつ抱え出す。
最初に女性。続いて男性。
助け出された男性は、安心してポケットからタバコを取り出す。
マッチで火をつけようとした瞬間、私は手のひらで炎を握りつぶし、
箱ごとタバコもひねりつぶした。
男性が、私を睨みつける。
私は逆に憎悪の眼差しで彼を射抜く。
助け出した部屋の中で灰皿付近だけが燃え尽きていたのを私は見逃さない。
男性の唇が動く前に、私は飛び去る。
そのとき、報道のTVカメラが私をとらえていたことに気づかなかった。
飛び去る瞬間の私の顔。マスクで隠せない左頬。
やけどの跡がニュースで流れてしまった。
ま、いっか。ああ、今日は少し疲れたな。
私は、防災無線を傍受しながら、ゆっくりと森の上を飛ぶ。
そのとき、またしても火災の一報が入った。
場所は・・・え?うちの近く?
待って、住所は?え?これって、うちじゃん!
そんな!火の始末はなによりも完璧にしているのに!
ばあちゃん!!
警察無線を同時に傍受すると、とんでもない事実が浮かび上がった。
最近市内に出没している放火犯の可能性ありだと!
なんだってぇ!
ばあちゃん!無事でいて!お願い!
音速を超えるかと思うくらいのスピードで家に到着した。
よかった。まだ炎の勢いは強くない。
私は、勝手口から家の中へ入る。
ばあちゃんは、TVのある奥の座敷にいるはずだ。
ばあちゃん!
ああ、よかった。無事で!
さっきまで火の勢いがすごかったけど、もう大分小さくなったから大丈夫?
違うよ、ばあちゃん。炎はまだ生きている。
弱くなったフリをしてるだけなんだ。
さあ、私の肩につかまって。ゆっくりと窓の方へ行くよ。
そのとき、若い消防士が窓を叩き割った。
あ、だめ!バックドラフトが!
■SE〜バックドラフトの爆発音
考える間もなく、炎が窓から夜空へ噴き上がる。
私は片手でばあちゃんを抱き抱え、片手で消防士を炎の届かないところまで引っ張る。
安全な場所でばあちゃんを降ろすと、ばあちゃんはすかさず
『お前が無事でよかった』
と泣きながら私の頭を撫でる。
『なに言ってんの。それはばあちゃんの方でしょ』
『TVで見て心配してたんやさ』
あ、あのときの、カメラ・・・そっか。ばあちゃんに、わかっちゃったんだ・・・
『もうええから休みんさい』
うん・・・
でも、あとひとつだけ仕事残ってるから。
火災現場の最前列でサングラスをして我が家を見つめる男性。
私はその肩を強くつかみ、
『放火は重罪だよ』
と言って、近くにいる警察官の元へひきづっていく。
その際、男のジャケットから、燃焼促進剤の瓶がこぼれ落ちた。
私はばあちゃんの元へ走って戻り、笑顔で呟く。
『今日はもう、温泉にでも泊まろうよ。みんなにバレちゃったし』
ばあちゃんは満面の笑みになり、私の頭を優しく撫でた。