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今回お届けするボイスドラマは、高山レッドこと「アカナ」が主人公。祭と屋台を誰よりも愛する、ひたむきな少年が歩む成長の物語です。
失われた祭屋台『浦島台』。
そして、存在すら知らなかった双子の姉『アカネ』。
赤かぶの町、宮川朝市。
さるぼぼに宿る祈り。
時を超えて紡がれる家族の絆。
心の奥に秘めた想いが、静かに、しかし確かに、未来へと動き出します。どうぞ、アカナとアカネの物語を、あなたの胸に刻んでください。
本作は、公式サイト「ヒダテン!」をはじめ、各種Podcastプラットフォーム、「小説家になろう」サイトでもお楽しみいただけます。
【ペルソナ】
・アカナ(16歳)=高山生まれ高山育ち=生粋の高山っ子/祭と屋台が何よりも好き(CV:米山伸伍)
・アカネ=アカナの双子の姉(享年1歳)(CV:小椋美織)
・朝市の野菜売り(38歳)=宮川朝市で赤かぶを売る/アカネをよく知る朝市の野菜売り(CV:小椋美織)
【資料/さるぼぼに顔がない理由】
https://column.enakawakamiya.co.jp/gifu/derived-from-hida-sarubobo.html
【資料/失われた屋台/浦島台】
https://www.takayama-yatai.jp/yatai/lostfloat/urashimatai.html
【資料/萬屋仁兵衛工房】
https://yorozuya2.jp/the-first-generation-nihei-yorozuya/
【資料/白線流し】
https://school.gifu-net.ed.jp/wordpress/hida-hs/school_info/hakusen-nagashi/
[シーン1:八幡祭】
◾️SE:高山祭の喧騒
「そうれっ!」(※男衆たちの声)
櫻山八幡宮の表参道。
絢爛豪華な11台の祭屋台が曳き揃えられる。
10月の9日・10日は秋の高山祭。
櫻山八幡宮の境内では、布袋台(ほていたい)が見事なからくりを奉納していた。
祭と屋台は高山の華!
これほど美しくて、荘厳で、人を惹きつける祭などほかにはないだろう。
オレの名は、アカナ。
高山で生まれ、高山で育った、生粋の高山っ子。飛騨人(ひだびと)だ。
生まれたのは、一之新町(いちのしんまち)。(※あえて旧町名にしてあります)
桜山八幡宮の参道と江名子川(えなこがわ)に挟まれたエリア。
小さいころから桜橋で遊び、秋葉様へは毎日お参りした。
いま、オレの視線の先にあるのは、
華やかな祭屋台たちの横でひっそりと佇む、1台の志良車(しゅらぐるま)。
志良車というのは、台車部分だけが残った屋台のこと。
明治8年の大火で焼け残った『浦島台』の志良車である。
失われた屋台『浦島台』。
記録によると、浦島台はからくりも備えていたらしい。
演目は誰もが知る浦島太郎伝説。
玉手箱を持つ浦島の人形が屋台のステージをゆっくりと進む。
やがて白い鳩が飛び出すと、浦島の顔は一瞬にして白髪の翁に変わる。
山王祭(さんのうまつり)で言えば、三番叟(さんばそう)か。
『浦島台』の志良車を見ながら、
胸の奥に、遣る瀬無い思いが募っていった。
[シーン2:宮川朝市】
◾️SE:宮川朝市の雑踏
「おはよう」
「おはよう、アカナ。
祭の朝に、朝市なんかうろうろしとってええんか?」
「ええんやよ。うちの組は」
「ほんなもんかね」
祭の2日目。
宮川朝市をうろつく。
顔見知りのおばちゃんと無駄話。
生まれたときから野菜を売ってる隣組のおばちゃんだ。
そろそろ今年採れた赤かぶが並ぶ頃だな。
「お前いくつになった?」
「16歳」
「ほうか。も16年か。
時が経つのは早えもんやなあ」
「年寄りみてえなこと言うなや」
「ははは。
あ、おいアカナ。腰のさるぼぼとれそうやぞ」
「ああ、これな。わかっとる。
直さならん。
母さん、このさるぼぼ見るといっつも捨てろって言うんや。
早よ国分寺でお焚き上げしてもらいやあって」
「そりゃ、しゃーないわな。
あんま見とうねえやろし」
「え?どういうこと?」
「あ、いや。なんもねえ」
ヘンなこと言うなあ。おばちゃん。
それからは、どうでもいい話になったけど、どうにも気になった。
腰につけたさるぼぼの人形をはずす。
顔のないさるぼぼが何か言いたげにオレを見つめていた。
[シーン3:祭の夜/アカナの夢】
◾️SE:夢の中のイメージ
祭りが終わったその晩。
不思議な夢を見た。
淡いピンクの霧がただよう世界。
その中にぼんやり人影が浮かぶ。
赤い顔をした・・・
さるぼぼ・・・?
「久しぶりだね、アカナ」
「え?」
「わかんない?」
「ええっ?」
「そっか、わかんないかぁ」
「だってお前、さ、さるぼぼだろ」
「そうだよ、さるぼぼ。
だけど、名前はアカネ」
「アカネ?
なんか、聞いたことあるような・・・」
「やだなあ、私たちずうっと一緒だったじゃない」
「そりゃそうだろ。
このさるぼぼ、生まれたときから持ってるんだから・・・」
「アカナとずっと一緒にいられて、楽しかったよ」
「なんか、過去形みたいに言うな」
「そろそろ、国分寺でお焚き上げしてもらわないと」
「なに言ってんだよ、そんなオフクロみたいなこと」
「ねえアカナ、最後に願いをきいてくれる?」
「まだお焚き上げするなんて言ってないぞ」
「いいから。とにかく聞いて」
「なんだ?」
「私・・・浦島台をもう一度見てみたい」
「え?」
「アカナだって考えてたじゃない。
失われた屋台の復活」
「あ・・」
「完全体作ってよ、浦島台の」
「そんな・・無理だよ」
「そうは思わない」
「なんで?」
「だってアカナ、飛騨の匠になりたいんでしょ」
「え・・」
「卒業したら、木工やりたいんでしょ」
「なんでそれを・・・」
「なってよ、飛騨の匠に」
「なれる・・・わけない」
「なれるわよ、アカナなら」
「無責任なこと言うなよ。
だいたい、祭屋台1台作るのに、どんだけ費用がかかるかわかってんのか」
「お金の問題じゃないと思う」
「問題だよ。
何億ってかかるんだぜ」
「そんなん、クラウドファンディングでもなんでもやればいいじゃない」
「ク、クラウド・・・?」
「要は、やる気の問題よ」
「やる気があっても、そもそも飛騨の匠になるのに
何年かかるか、何十年かかるか、わからない」
「それがどうしたの。時間なんてどんだけかかったって関係ないわ」
「時間だけじゃない。匠になっても、からくり人形なんて作れない!」
「作れなきゃ、作れるようになりなさい」
「なんだ、それ」
「からくり人形師に、頭下げて弟子入りしなさいよ」
「からくり人形師・・」
「名古屋の工房へ行って土下座でもなんでもすれば?」
「あ・・」(※言われてみればという感じ)
「お願い、何年かかってもいいから、浦島台を復活させて!」
言ってることは無茶苦茶だったけど、
アカネの言葉。その威圧感に圧倒された。
夢だとはわかっていたのに、現実を凌駕する感覚。
結局、朝の光が差し込むまで、意識は覚醒したままだった。
[シーン4:翌朝/朝食風景】
◾️SE:朝の小鳥のイメージ
翌朝。
朝食のとき、オレは両親に尋ねた。
「”アカネ”って知ってる?」
たちまち、両親の顔が曇る。
それどころか、母親は手で顔を覆って泣き出した。
『おまえ、どこでそれを?』(※父親)
「どこだっていいだろ」
夢の話だ、なんて言えるはずもない。
しばらくの沈黙のあと、父が語り始めた。
それは、あまりにも衝撃的な話。
オレの頭で理解するのは難しいほど、悲しくてやりきれない話だった。
アカネ、というのは、オレの双子の姉。
一卵性双生児だった。
家族4人の幸せな時間。
悲劇が襲ったのは、オレたちが1歳になった日の明け方。
隣からの貰い火で家が火事になった。
ハイハイして玄関にいたオレは助かったが、
ベビーベッドのアカネは、逃げ遅れた。
火の中に飛び込もうとする父を、消防士が懸命に止める。
母はオレを抱きながら、いつまでも泣き叫んでいたそうだ。
「じゃあ、このさるぼぼは・・・?」
生まれたその日。
アカナとアカネにひとつずつ、さるぼぼの小さな人形を持たせたという。
オレたちはいつも手で握って放そうとしなかった。
家が全焼したとき、アカネの手に握られていたのは、焼け焦げたさるぼぼ。
それを見た母は、天に向かってこう叫んだ。
”さるぼぼは子どもの守り神じゃないのか”
”どうしてアカネを守ってくれなかったのか”
(※ここはレッドの声で伝聞的に)
怒り狂って、オレの手からもさるぼぼをもぎ取ろうとした。
ところがオレは、赤ちゃんとは思えない力でさるぼぼを握り、
絶対に離さなかったそうだ。
そうか・・・
だから母は、お焚き上げしろって、うるさく言ってたのか。
オレは立ち上がり、母の目を見て話しかけた。
「わかったよ、母さん」
「つらかったろ」
「だけど、このさるぼぼはまだお焚き上げしないよ」
「オレたちの夢が叶うまで」
母は涙を拭おうともせず、小さくうなづいた。
[シーン5:誓い/充実した高校生活】
◾️SE:からくり工房のガヤ
それからのオレは、自分でも驚くほどの行動力だった。
まず最初に、父と母に宣言する。
「オレは飛騨の匠になる!」
「うちの組の浦島台を復活させたい!」
そのあと訪ねたのは、名古屋のからくり工房。
屋台のからくり人形を数多く作っている人形師に土下座をする。
「弟子入りさせてください!」
最初はあきれていたからくり人形師も、オレの気合いに気圧された。
弟子入りを認める。
※続きは音声でお楽しみください。
今回お届けするボイスドラマは、高山レッドこと「アカナ」が主人公。祭と屋台を誰よりも愛する、ひたむきな少年が歩む成長の物語です。
失われた祭屋台『浦島台』。
そして、存在すら知らなかった双子の姉『アカネ』。
赤かぶの町、宮川朝市。
さるぼぼに宿る祈り。
時を超えて紡がれる家族の絆。
心の奥に秘めた想いが、静かに、しかし確かに、未来へと動き出します。どうぞ、アカナとアカネの物語を、あなたの胸に刻んでください。
本作は、公式サイト「ヒダテン!」をはじめ、各種Podcastプラットフォーム、「小説家になろう」サイトでもお楽しみいただけます。
【ペルソナ】
・アカナ(16歳)=高山生まれ高山育ち=生粋の高山っ子/祭と屋台が何よりも好き(CV:米山伸伍)
・アカネ=アカナの双子の姉(享年1歳)(CV:小椋美織)
・朝市の野菜売り(38歳)=宮川朝市で赤かぶを売る/アカネをよく知る朝市の野菜売り(CV:小椋美織)
【資料/さるぼぼに顔がない理由】
https://column.enakawakamiya.co.jp/gifu/derived-from-hida-sarubobo.html
【資料/失われた屋台/浦島台】
https://www.takayama-yatai.jp/yatai/lostfloat/urashimatai.html
【資料/萬屋仁兵衛工房】
https://yorozuya2.jp/the-first-generation-nihei-yorozuya/
【資料/白線流し】
https://school.gifu-net.ed.jp/wordpress/hida-hs/school_info/hakusen-nagashi/
[シーン1:八幡祭】
◾️SE:高山祭の喧騒
「そうれっ!」(※男衆たちの声)
櫻山八幡宮の表参道。
絢爛豪華な11台の祭屋台が曳き揃えられる。
10月の9日・10日は秋の高山祭。
櫻山八幡宮の境内では、布袋台(ほていたい)が見事なからくりを奉納していた。
祭と屋台は高山の華!
これほど美しくて、荘厳で、人を惹きつける祭などほかにはないだろう。
オレの名は、アカナ。
高山で生まれ、高山で育った、生粋の高山っ子。飛騨人(ひだびと)だ。
生まれたのは、一之新町(いちのしんまち)。(※あえて旧町名にしてあります)
桜山八幡宮の参道と江名子川(えなこがわ)に挟まれたエリア。
小さいころから桜橋で遊び、秋葉様へは毎日お参りした。
いま、オレの視線の先にあるのは、
華やかな祭屋台たちの横でひっそりと佇む、1台の志良車(しゅらぐるま)。
志良車というのは、台車部分だけが残った屋台のこと。
明治8年の大火で焼け残った『浦島台』の志良車である。
失われた屋台『浦島台』。
記録によると、浦島台はからくりも備えていたらしい。
演目は誰もが知る浦島太郎伝説。
玉手箱を持つ浦島の人形が屋台のステージをゆっくりと進む。
やがて白い鳩が飛び出すと、浦島の顔は一瞬にして白髪の翁に変わる。
山王祭(さんのうまつり)で言えば、三番叟(さんばそう)か。
『浦島台』の志良車を見ながら、
胸の奥に、遣る瀬無い思いが募っていった。
[シーン2:宮川朝市】
◾️SE:宮川朝市の雑踏
「おはよう」
「おはよう、アカナ。
祭の朝に、朝市なんかうろうろしとってええんか?」
「ええんやよ。うちの組は」
「ほんなもんかね」
祭の2日目。
宮川朝市をうろつく。
顔見知りのおばちゃんと無駄話。
生まれたときから野菜を売ってる隣組のおばちゃんだ。
そろそろ今年採れた赤かぶが並ぶ頃だな。
「お前いくつになった?」
「16歳」
「ほうか。も16年か。
時が経つのは早えもんやなあ」
「年寄りみてえなこと言うなや」
「ははは。
あ、おいアカナ。腰のさるぼぼとれそうやぞ」
「ああ、これな。わかっとる。
直さならん。
母さん、このさるぼぼ見るといっつも捨てろって言うんや。
早よ国分寺でお焚き上げしてもらいやあって」
「そりゃ、しゃーないわな。
あんま見とうねえやろし」
「え?どういうこと?」
「あ、いや。なんもねえ」
ヘンなこと言うなあ。おばちゃん。
それからは、どうでもいい話になったけど、どうにも気になった。
腰につけたさるぼぼの人形をはずす。
顔のないさるぼぼが何か言いたげにオレを見つめていた。
[シーン3:祭の夜/アカナの夢】
◾️SE:夢の中のイメージ
祭りが終わったその晩。
不思議な夢を見た。
淡いピンクの霧がただよう世界。
その中にぼんやり人影が浮かぶ。
赤い顔をした・・・
さるぼぼ・・・?
「久しぶりだね、アカナ」
「え?」
「わかんない?」
「ええっ?」
「そっか、わかんないかぁ」
「だってお前、さ、さるぼぼだろ」
「そうだよ、さるぼぼ。
だけど、名前はアカネ」
「アカネ?
なんか、聞いたことあるような・・・」
「やだなあ、私たちずうっと一緒だったじゃない」
「そりゃそうだろ。
このさるぼぼ、生まれたときから持ってるんだから・・・」
「アカナとずっと一緒にいられて、楽しかったよ」
「なんか、過去形みたいに言うな」
「そろそろ、国分寺でお焚き上げしてもらわないと」
「なに言ってんだよ、そんなオフクロみたいなこと」
「ねえアカナ、最後に願いをきいてくれる?」
「まだお焚き上げするなんて言ってないぞ」
「いいから。とにかく聞いて」
「なんだ?」
「私・・・浦島台をもう一度見てみたい」
「え?」
「アカナだって考えてたじゃない。
失われた屋台の復活」
「あ・・」
「完全体作ってよ、浦島台の」
「そんな・・無理だよ」
「そうは思わない」
「なんで?」
「だってアカナ、飛騨の匠になりたいんでしょ」
「え・・」
「卒業したら、木工やりたいんでしょ」
「なんでそれを・・・」
「なってよ、飛騨の匠に」
「なれる・・・わけない」
「なれるわよ、アカナなら」
「無責任なこと言うなよ。
だいたい、祭屋台1台作るのに、どんだけ費用がかかるかわかってんのか」
「お金の問題じゃないと思う」
「問題だよ。
何億ってかかるんだぜ」
「そんなん、クラウドファンディングでもなんでもやればいいじゃない」
「ク、クラウド・・・?」
「要は、やる気の問題よ」
「やる気があっても、そもそも飛騨の匠になるのに
何年かかるか、何十年かかるか、わからない」
「それがどうしたの。時間なんてどんだけかかったって関係ないわ」
「時間だけじゃない。匠になっても、からくり人形なんて作れない!」
「作れなきゃ、作れるようになりなさい」
「なんだ、それ」
「からくり人形師に、頭下げて弟子入りしなさいよ」
「からくり人形師・・」
「名古屋の工房へ行って土下座でもなんでもすれば?」
「あ・・」(※言われてみればという感じ)
「お願い、何年かかってもいいから、浦島台を復活させて!」
言ってることは無茶苦茶だったけど、
アカネの言葉。その威圧感に圧倒された。
夢だとはわかっていたのに、現実を凌駕する感覚。
結局、朝の光が差し込むまで、意識は覚醒したままだった。
[シーン4:翌朝/朝食風景】
◾️SE:朝の小鳥のイメージ
翌朝。
朝食のとき、オレは両親に尋ねた。
「”アカネ”って知ってる?」
たちまち、両親の顔が曇る。
それどころか、母親は手で顔を覆って泣き出した。
『おまえ、どこでそれを?』(※父親)
「どこだっていいだろ」
夢の話だ、なんて言えるはずもない。
しばらくの沈黙のあと、父が語り始めた。
それは、あまりにも衝撃的な話。
オレの頭で理解するのは難しいほど、悲しくてやりきれない話だった。
アカネ、というのは、オレの双子の姉。
一卵性双生児だった。
家族4人の幸せな時間。
悲劇が襲ったのは、オレたちが1歳になった日の明け方。
隣からの貰い火で家が火事になった。
ハイハイして玄関にいたオレは助かったが、
ベビーベッドのアカネは、逃げ遅れた。
火の中に飛び込もうとする父を、消防士が懸命に止める。
母はオレを抱きながら、いつまでも泣き叫んでいたそうだ。
「じゃあ、このさるぼぼは・・・?」
生まれたその日。
アカナとアカネにひとつずつ、さるぼぼの小さな人形を持たせたという。
オレたちはいつも手で握って放そうとしなかった。
家が全焼したとき、アカネの手に握られていたのは、焼け焦げたさるぼぼ。
それを見た母は、天に向かってこう叫んだ。
”さるぼぼは子どもの守り神じゃないのか”
”どうしてアカネを守ってくれなかったのか”
(※ここはレッドの声で伝聞的に)
怒り狂って、オレの手からもさるぼぼをもぎ取ろうとした。
ところがオレは、赤ちゃんとは思えない力でさるぼぼを握り、
絶対に離さなかったそうだ。
そうか・・・
だから母は、お焚き上げしろって、うるさく言ってたのか。
オレは立ち上がり、母の目を見て話しかけた。
「わかったよ、母さん」
「つらかったろ」
「だけど、このさるぼぼはまだお焚き上げしないよ」
「オレたちの夢が叶うまで」
母は涙を拭おうともせず、小さくうなづいた。
[シーン5:誓い/充実した高校生活】
◾️SE:からくり工房のガヤ
それからのオレは、自分でも驚くほどの行動力だった。
まず最初に、父と母に宣言する。
「オレは飛騨の匠になる!」
「うちの組の浦島台を復活させたい!」
そのあと訪ねたのは、名古屋のからくり工房。
屋台のからくり人形を数多く作っている人形師に土下座をする。
「弟子入りさせてください!」
最初はあきれていたからくり人形師も、オレの気合いに気圧された。
弟子入りを認める。
※続きは音声でお楽しみください。