ヒダテン!ボイスドラマ

ボイスドラマ「ミニキャラの記憶」


Listen Later

(CV:桑木栄美里)

【ストーリー】

「わぁ、このキャラなんか可愛い」

「アニメのちびキャラかなあ。見たことないけど」

ここは高山市内にある創業57年の玩具(おもちゃ)屋『ジーニー』。

ボクは店の片隅に置かれたぬいぐるみだ。

ワゴンの中、ミニキャラの山の中に埋もれていたのを

女の子たちが掘り起こしてくれたらしい。

ボクの見た目は、

アライグマのような顔、水晶のような青い瞳、

お腹にアイテムのベルトをしめて、モフモフの毛皮に包まれた二頭身。

気がついたら、この玩具屋さんの倉庫の中で寝ていたんだ。

周りにボクのことを知ってるキャラがいないか、一生懸命探したんだけど、

ミップルもルナもマシャも、なにも答えてくれないんだ(涙)

ボクが一体何者なのか、なんのためにここにいるのか、

なんとか思い出そうとしたんだけど、どうやっても記憶を辿れない。

ひょっとしたらボク、ただの昭和っぽいぬいぐるみなのかなあ・・・

いやいや、そんなコトはない。

だって、今もボクの頭の奥に渦巻くこの焦燥感と使命感!

それにほら、ぬいぐるみはこうやって喋ったりしないでしょ。

「あれ?」

悩んでいるボクの前で立ち止まったのは・・・

それまでお店のキャラたちをとっかえひっかえ手にとってた女の子。

修学旅行で高山を訪れた女子高生だな。

髪の毛を三つ編みにしたキュートな女の子。

彼女はいきなりボクを手にとって、

「なんかこの子、昔どこかで会ったような・・・気がする・・・」

とつぶやいた。

ボクを見て、感じるものがあったみたい。

「あのう・・・君はだれ?」

ボクに顔を近づけて、瞳を覗き込む。

女子高生の瞳の中に、ボクの瞳が映り込んだとき、

彼女は突然その場にたおれこんだ。

お店の人が慌てて近寄ってくる。

ああ、どうやら気を失っちゃったみたい。

大丈夫かなあ。

■シーン2/救急車のサイレン

女子高生が救急車で運ばれていってから時間が経つと

お店の人たちもようやく落ち着いてきたみたい。

ボクは女子高生が倒れたときに、

持っていた手から床に投げ出されて、棚の下にころがっていた。

いやだ、暗いよ〜。助けて〜。誰か早く見つけて〜。

棚の下の小さな隙間から見える、横向きの細長い景色。

お客さんやお店の人の靴だけが忙しく歩き回る。

可愛いローファーやスニーカーに混ざって、1組だけ不釣合いな黒い革靴が現れた。

■シーン3/革靴の足音

なんだろう。何か探しているみたいだ。

ぬいぐるみが積まれたワゴンをひとつひとつ乱暴にまぜかえす。

ワゴンから可愛いキャラクターたちがぽとんぽとんと落ちてくる。

かわいそうに。みんな泣いてるじゃん。

ひどいやつめ。ようし、顔を見てやろう。

顔を床に押し付けて様子を探る。

黒い帽子と黒いサングラス。

眉間にシワを寄せて必死で何かを探してる。

こいつ、絶対に悪者だ!ピンときた。

悪者を見逃さないようにと目で追っているうちに・・・

あ!

サングラス越しに目が合った!?まずい・・・

悪者は床に押し付けるように革靴を鳴らしながら、ボクの方へ近づいてくる。

ボクがころがっている棚の前で足を止めると、

”やっと見つけたぞ・・・”

と低い声でつぶやく。

見つけた?

なにを?

床に膝をついた悪者の手が僕の体に伸びる。

タバコ臭い、ごつごつした手のひら。

やめろ!はなせ!悪者!

”こんなところに隠れていたとはな。

あやまって神の杖が発動したら、この銀河が一瞬で消え去るところだった”

神の杖・・・

ってなんだ?

”この銀河を破壊できる最終兵器か、やっと手に入れたぞ”

えええええ!

最終兵器〜!?

ボクが〜!?ミニキャラじゃないの〜!?

ちょ、やめろって!その手をはなせ!

ぐるじい〜

悪者はボクの首根っこをつかんで、う、首を切断するつもりだな。

い、意識が遠のいていく・・・。

とそのとき、瞳の中に光が走った。

同時に、あたり一面が真っ白な光に包まれる。

悪者はボクを放りなげて、吹っ飛ばされた。

■シーン7/電撃の衝撃音〜光の中でヒロインが覚醒する音

「おまたせ!」

まばゆい光の中に立っていたのは・・・

さっき救急車で運ばれた女子高生だ!

「やっと思い出したわ」

彼女の瞳の光とボクの瞳の光が交差する。

「キミも覚醒するんだよ」

ボクが・・・覚醒?

女子高生は僕を抱き上げ、アイテムベルトの中央にあるボタンを押した。

再び、光のヴェールがあたりを覆い尽くす。

気づけばボクの体も光り始めている。

光が収まったとき、ボクはまったく異なる姿に変貌を遂げていた。

アライグマではなく、ユニコーンのような体。

背中には眩く煌めく大きな翼が広がっていた。

これは・・・

「おかえり」

ボ、ボクは・・・

「最終兵器オメガよ」

オメガ・・・

「アルマゲドンのとき、君の力が敵の手に渡らないように、

その物理的な存在をマルチバースへ飛ばしたの。

こっちの世界には仮の姿=ミニキャラのぬいぐるみだけ残して。

もちろん私も、魂を近くにいた女子高生に預けて、力は向こう側へ飛ばしたわ。

私と君の復活のトリガーは、ぬいぐるみのアイテムベルト。

女子高生とミニキャラの瞳が交差して初めて起動するようにしてあったの」

じゃあ、君が修学旅行で高山へ来なかったら・・・

「危なかったね」

彼女が微笑んでボクに近づこうとしたとき、

さっき吹き飛ばされた悪者が後ろから彼女に襲いかかった。

その瞬間、ボクの体は全身から発光し、悪者の体を包み込んで

跡形もなく消し去った。一瞬の出来事だ。すごい。

・・・思い出したぞ。

「完全復活ね」

そういう彼女もヴィーナスのような光のドレスを身に纏い、

額に光のティアラが眩く煌めいている。

「さあ、私たちの天の川銀河を守るために、

ブラックホールにある敵の本拠へ乗り込むわよ!」

了解!!

彼女が僕の背にまたがると、僕たちは翼を広げて空の彼方へ飛んでいった。

...more
View all episodesView all episodes
Download on the App Store

ヒダテン!ボイスドラマBy Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会