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声の力は、目に見えないけれど、心に触れる。
飛騨高山発の番組『Hit’s Me Up!』が贈る、新しい物語シリーズ。
この『声優物語/エピソード1』は、一人の少女が“声”という運命に出会い、やがてそれが人生を変えていくまでの軌跡を描いた実話風ボイスドラマです。
物語の主人公・エミリは、幸運を呼ぶ「オッドアイ」をもって生まれ、幾多の選択の中で“声優”という世界に辿り着きます。
「声に想いを乗せる」とはどういうことか。「見えないものを見る」とはどういうことか。
彼女の歩みは、私たちに問いかけます。
あなたの心にも、そっと灯りますように。
※本作はPodcast(Spotify/Amazon/Apple)や『小説家になろう』でもお楽しみいただけます(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
[シーン1:出生】
アナウンサーの実況・絶叫風(宮ノ下さん)
『風が来た。アプローチもよし。さあ、原田。因縁の2回目飛んだ〜!高いぞ、立て、立て、立て、立ってくれ!立ったぁ〜!原田〜!!』
■SE/長野オリンピック実況~赤ちゃんの泣き声がかぶって
26年前、私はこの世に生を受けた。
春というには、まだ肌寒い3月。
数々のドラマを生んだ冬季長野オリンピックが終わり、
日本で初めての冬季パラリンピックが開催されていた。
[シーン2:オッドアイ】
■SE/病院の環境音
病院を退院してから半年後。
私の笑顔を見たママがパパに言った。
『見て、この娘の瞳。オッドアイよ』
オッドアイ。
別名・虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)。
左右の眼で虹彩の色が異なること。
オッドアイは『幸運を呼ぶ証』と言われる。
私の場合、右目が海の底のように澄んだマリンブルー、
左目はルビーのように深みのある琥珀色。
パパもママも、神様に幸運を感謝して、心から喜んだ。
幼稚園にいくようになっても、
小学校へ通うようになっても、
ずう〜っとずっと、その気持ちは変わらない。
いつだって私を宝物のように大切にしてくれる。
私への気持ちはメッセージにして子守唄を歌ってくれた。
[シーン3:小学生】
■SE/学校のチャイム〜教室の環境音
それは私が小学校4年生のホワイトデー。
ロッカーをあけると
チョコレートやお菓子、クッキーにくっついている手紙がドサっと下に落ちた。
その頃の私は、小学生ながら
まっすぐ整った鼻筋。
丸みのあるおでこ。
すっきりとしたフェイスライン。
美しい口元。
そして、オッドアイ。
そのすべての要望からついたあだなが「高嶺の花」。
毎日のように男子からコクられ、毎日のように『 ゴメン』と謝る。
美人女優のだれだれに似てるとか似てないとか。
そんな話ばかりがとびかうクラス。
毎回断ることに疲れてしまった私に、
ある日、担任の先生がつぶやいた。
『エミリは声を生かすといいんじゃない?』
声?
考えたこともなかった。
いつも褒められるのはこの容姿。
ママも自覚して、いつもお顔の保湿ケアをしてくれてたし。
『エミリの声、透き通ってて、耳に入るとすごく気持ちいいもの』
へえ〜、そうなんだ。
その頃、私はクラシックバレエにのめりこんでいて、
早朝も放課後もスタジオでお稽古づけの毎日。
だって、パリのオペラ座バレエ団に入るのが夢だったの。
『エミリなら、きっと声で人の心を動かせるわ』
声かあ。
初めて自分の声を意識する。
あー。あー。あ〜〜〜。
いや、歌、じゃなくて、声、よね。
声のお仕事ってなんだろう?
アナウンサー?ラジオのパーソナリティ?朗読?
『いろんな本を、声に出して読んでみたら』
こうして私は、朗読を始めた。
元々お芝居も好きでアニメのセリフよく真似してたから、
私の朗読は、リアリティがあって聞きやすいと評判に。
高山市内や岐阜県内の朗読コンクールで、何度も優勝した。
その頃、テレビで知ったのが『声優』という言葉。
声優?俳優じゃなくて?
アニメや映画、ゲームなどのキャラクターに声をあてる仕事。
キャラクターの感情や個性を表現して、物語や場面に命を吹き込む。
重要なエンターテインメントの一分野。
知らなかったなあ。
[シーン4:大学卒業】
■SE/キャンパスの環境音
頭の中に声優とダンサーという2つの未来を描いたまま、
私は東京にある超難関の女子大を受験した。
結果は・・・そう、合格。
だって、言葉にできないくらいホントに勉強したんだもん。
大学を卒業したら、いきなり声優事務所の門をたたくとか
オペラ座バレエ団を受験するとかはしなかった。
まずは手堅く上場企業でマーケティングの会社で働き、
生活の基盤を作る。
そんな中で見つけた1枚のポスター。
ショッピングモールに貼られた声優オーディションの募集告知だった。
大きく書かれた『未経験者大歓迎』『プロアマ問わず』『人気声優と共演』の文字。
これだ!
同じようなコピーは街中でよく見かけたけど。
なぜだかピン!ときて、すぐさまエントリーした。
2年目で2回目だというこのプロジェクト。
過去に作られたアニメをすぐさまチェックする。
10分未満のショートアニメ。
キャラクターはどこにでもいるような家族。
どこにでもあるような、ちょいエモのストーリー。
だが、不覚にもホロリとしてしまった。
そうか、こういう感じなんだな。
今年の物語は続編という感じでもないし。
そういえば、課題セリフは・・
『たいせつなことは、目にはみえないんだよ。
ものごとはハートで見なくちゃいけない、ってこと。
だから心を開いて、夢に手を伸ばそう』
ふむ。
サン・テグジュペリ『星の王子さま』か・・
これは、キツネのセリフだ。
今回は、劇中劇でもやるのかな。
いろいろシミュレーションしているときにオーディションの事務局から
メールが届いた。
『一次審査合格』
やった。
でも、ここまでは想定内。
公開で審査される、ファイナルオーディションで勝たなくちゃ。
私は毎日、頭の中でシミュレーションしながら、ファイナルの日を迎えた。
公開オーディションの待合室。
当日渡された課題セリフを下読みする8名のファイナリストたち。
プロ・アマ問わずってことだったけど、確かに玉石混交って感じ。
そして公開オーディションのステージ。
『自分が舞台に立つことなんて考えてもいないけど、
こうしてみんなのお芝居のそばにいるのが心地いい。
今日は、友だちの晴れ舞台。
私は美術係・背景係だから一生懸命、絵筆を走らせたわ。
少しでも彼女のお芝居に花を添えたいんだもん。
思えばこの1か月、ずうっと彼女に付き合って
一緒にお芝居の練習してきたなあ。
私も一緒にあの舞台に立てたら・・・
ううん、なに考えてるんだろ、私。
だめだめ、もうすぐ1ベル鳴っちゃう。
背景の位置、チェックしとかなきゃ。
あ、先生。
え?
いまなんて?
代役?
私が!?
そんな・・・無理です!
え、でも、でも・・・
わ、わかりました・・・
みんな!?そうだったの!?
私のためにセッティングしてくれたの?
ありがとう・・・。
そうか、これだったんだ。
一番大切なものは、目には見えない。
こころでみなくちゃ、ものごとはよく見えないんだ!』
なぜか私、感情移入しすぎちゃって、目頭が熱くなっちゃった。
このあとすぐに結果発表。
『声優オーディション、グランプリは、エントリーNo.6番、エミリさん!』
合格・・・
いや、自分でも自信があったし、想定内のはず。
なのに、涙が止まらなくなった。
MCは「エミリさん、涙が・・」なんて言うし、
ゲスト声優は「私たちと同じ景色を見てください」なんて言うから
よけい感無量になっちゃったじゃない。
ついに人生初のアニメに出演か・・しかも主演で!
[シーン5:アフレコスタジオ】
いよいよ私が初出演・初主演するアニメのアフレコ。
私は指定された時間の5分前にスタジオへ入る。
ニコニコした笑顔で迎えてくれたのは音響監督。
音響監督というのは、アフレコスタジオの中で一番偉い人らしい。
私は、ドキドキしながら、スタジオのアナブースへ。
ヘッドフォンの使い方を監督自ら優しく教えてくれる。
『返しの音量は大丈夫?』
「大丈夫です」
『映像の中に、名前のテロップがでてくるだろう?』
「はい」
『これは、ボールドと言って、キャラクターの喋るタイミングを表しているんだよ』
「へえ〜」
『まあ、でも全然気にしなくていいからね』
じゃあ、説明すんなよ。なんて(笑)
音響監督が丁寧に教えてくれる。
この人、どんな声優さんにも、こうやって手取り足取り教えてくれるのかしら。
『よし、じゃ本番いこうか』
「はい!」
ビデオコンテの、半分だけ作画が入った映像を見ながら
主人公の声をあてていく。
終始笑顔の音響監督。
無事にアフレコが終わってから握手をして、一緒に写真を録る。
エレベータで帰るとき、
音響監督は私にだけ聴こえるようにそっとつぶやいた。
『エミリ、会いたかったよ』
え?
『オーディションを見て、どうしても会いたかったんだよ』
どういうこと?
『僕が作った課題セリフの原稿。
ちゃんと思いが届いたのは君の声だけだった』
そんな・・うそ!
『よければ、このアニメ以外にもいろいろ手伝ってくれないか』
この人、本気?
でも、目がマジだ。
『大切なものは目には見えない。
心の目、というのは君のオッドアイのことだったんだね』
あ・・
『今日は単なるスタート地点。
これから長い道程だから、よろしく』
私の手を握り、真剣な眼差しでささやく。
この日から、私の長い長い声優人生がスタートした。
幸運を呼ぶオッドアイ。
いつまでもその輝きを失わずにいてくれますように・・
声の力は、目に見えないけれど、心に触れる。
飛騨高山発の番組『Hit’s Me Up!』が贈る、新しい物語シリーズ。
この『声優物語/エピソード1』は、一人の少女が“声”という運命に出会い、やがてそれが人生を変えていくまでの軌跡を描いた実話風ボイスドラマです。
物語の主人公・エミリは、幸運を呼ぶ「オッドアイ」をもって生まれ、幾多の選択の中で“声優”という世界に辿り着きます。
「声に想いを乗せる」とはどういうことか。「見えないものを見る」とはどういうことか。
彼女の歩みは、私たちに問いかけます。
あなたの心にも、そっと灯りますように。
※本作はPodcast(Spotify/Amazon/Apple)や『小説家になろう』でもお楽しみいただけます(CV:桑木栄美里)
【ストーリー】
[シーン1:出生】
アナウンサーの実況・絶叫風(宮ノ下さん)
『風が来た。アプローチもよし。さあ、原田。因縁の2回目飛んだ〜!高いぞ、立て、立て、立て、立ってくれ!立ったぁ〜!原田〜!!』
■SE/長野オリンピック実況~赤ちゃんの泣き声がかぶって
26年前、私はこの世に生を受けた。
春というには、まだ肌寒い3月。
数々のドラマを生んだ冬季長野オリンピックが終わり、
日本で初めての冬季パラリンピックが開催されていた。
[シーン2:オッドアイ】
■SE/病院の環境音
病院を退院してから半年後。
私の笑顔を見たママがパパに言った。
『見て、この娘の瞳。オッドアイよ』
オッドアイ。
別名・虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)。
左右の眼で虹彩の色が異なること。
オッドアイは『幸運を呼ぶ証』と言われる。
私の場合、右目が海の底のように澄んだマリンブルー、
左目はルビーのように深みのある琥珀色。
パパもママも、神様に幸運を感謝して、心から喜んだ。
幼稚園にいくようになっても、
小学校へ通うようになっても、
ずう〜っとずっと、その気持ちは変わらない。
いつだって私を宝物のように大切にしてくれる。
私への気持ちはメッセージにして子守唄を歌ってくれた。
[シーン3:小学生】
■SE/学校のチャイム〜教室の環境音
それは私が小学校4年生のホワイトデー。
ロッカーをあけると
チョコレートやお菓子、クッキーにくっついている手紙がドサっと下に落ちた。
その頃の私は、小学生ながら
まっすぐ整った鼻筋。
丸みのあるおでこ。
すっきりとしたフェイスライン。
美しい口元。
そして、オッドアイ。
そのすべての要望からついたあだなが「高嶺の花」。
毎日のように男子からコクられ、毎日のように『 ゴメン』と謝る。
美人女優のだれだれに似てるとか似てないとか。
そんな話ばかりがとびかうクラス。
毎回断ることに疲れてしまった私に、
ある日、担任の先生がつぶやいた。
『エミリは声を生かすといいんじゃない?』
声?
考えたこともなかった。
いつも褒められるのはこの容姿。
ママも自覚して、いつもお顔の保湿ケアをしてくれてたし。
『エミリの声、透き通ってて、耳に入るとすごく気持ちいいもの』
へえ〜、そうなんだ。
その頃、私はクラシックバレエにのめりこんでいて、
早朝も放課後もスタジオでお稽古づけの毎日。
だって、パリのオペラ座バレエ団に入るのが夢だったの。
『エミリなら、きっと声で人の心を動かせるわ』
声かあ。
初めて自分の声を意識する。
あー。あー。あ〜〜〜。
いや、歌、じゃなくて、声、よね。
声のお仕事ってなんだろう?
アナウンサー?ラジオのパーソナリティ?朗読?
『いろんな本を、声に出して読んでみたら』
こうして私は、朗読を始めた。
元々お芝居も好きでアニメのセリフよく真似してたから、
私の朗読は、リアリティがあって聞きやすいと評判に。
高山市内や岐阜県内の朗読コンクールで、何度も優勝した。
その頃、テレビで知ったのが『声優』という言葉。
声優?俳優じゃなくて?
アニメや映画、ゲームなどのキャラクターに声をあてる仕事。
キャラクターの感情や個性を表現して、物語や場面に命を吹き込む。
重要なエンターテインメントの一分野。
知らなかったなあ。
[シーン4:大学卒業】
■SE/キャンパスの環境音
頭の中に声優とダンサーという2つの未来を描いたまま、
私は東京にある超難関の女子大を受験した。
結果は・・・そう、合格。
だって、言葉にできないくらいホントに勉強したんだもん。
大学を卒業したら、いきなり声優事務所の門をたたくとか
オペラ座バレエ団を受験するとかはしなかった。
まずは手堅く上場企業でマーケティングの会社で働き、
生活の基盤を作る。
そんな中で見つけた1枚のポスター。
ショッピングモールに貼られた声優オーディションの募集告知だった。
大きく書かれた『未経験者大歓迎』『プロアマ問わず』『人気声優と共演』の文字。
これだ!
同じようなコピーは街中でよく見かけたけど。
なぜだかピン!ときて、すぐさまエントリーした。
2年目で2回目だというこのプロジェクト。
過去に作られたアニメをすぐさまチェックする。
10分未満のショートアニメ。
キャラクターはどこにでもいるような家族。
どこにでもあるような、ちょいエモのストーリー。
だが、不覚にもホロリとしてしまった。
そうか、こういう感じなんだな。
今年の物語は続編という感じでもないし。
そういえば、課題セリフは・・
『たいせつなことは、目にはみえないんだよ。
ものごとはハートで見なくちゃいけない、ってこと。
だから心を開いて、夢に手を伸ばそう』
ふむ。
サン・テグジュペリ『星の王子さま』か・・
これは、キツネのセリフだ。
今回は、劇中劇でもやるのかな。
いろいろシミュレーションしているときにオーディションの事務局から
メールが届いた。
『一次審査合格』
やった。
でも、ここまでは想定内。
公開で審査される、ファイナルオーディションで勝たなくちゃ。
私は毎日、頭の中でシミュレーションしながら、ファイナルの日を迎えた。
公開オーディションの待合室。
当日渡された課題セリフを下読みする8名のファイナリストたち。
プロ・アマ問わずってことだったけど、確かに玉石混交って感じ。
そして公開オーディションのステージ。
『自分が舞台に立つことなんて考えてもいないけど、
こうしてみんなのお芝居のそばにいるのが心地いい。
今日は、友だちの晴れ舞台。
私は美術係・背景係だから一生懸命、絵筆を走らせたわ。
少しでも彼女のお芝居に花を添えたいんだもん。
思えばこの1か月、ずうっと彼女に付き合って
一緒にお芝居の練習してきたなあ。
私も一緒にあの舞台に立てたら・・・
ううん、なに考えてるんだろ、私。
だめだめ、もうすぐ1ベル鳴っちゃう。
背景の位置、チェックしとかなきゃ。
あ、先生。
え?
いまなんて?
代役?
私が!?
そんな・・・無理です!
え、でも、でも・・・
わ、わかりました・・・
みんな!?そうだったの!?
私のためにセッティングしてくれたの?
ありがとう・・・。
そうか、これだったんだ。
一番大切なものは、目には見えない。
こころでみなくちゃ、ものごとはよく見えないんだ!』
なぜか私、感情移入しすぎちゃって、目頭が熱くなっちゃった。
このあとすぐに結果発表。
『声優オーディション、グランプリは、エントリーNo.6番、エミリさん!』
合格・・・
いや、自分でも自信があったし、想定内のはず。
なのに、涙が止まらなくなった。
MCは「エミリさん、涙が・・」なんて言うし、
ゲスト声優は「私たちと同じ景色を見てください」なんて言うから
よけい感無量になっちゃったじゃない。
ついに人生初のアニメに出演か・・しかも主演で!
[シーン5:アフレコスタジオ】
いよいよ私が初出演・初主演するアニメのアフレコ。
私は指定された時間の5分前にスタジオへ入る。
ニコニコした笑顔で迎えてくれたのは音響監督。
音響監督というのは、アフレコスタジオの中で一番偉い人らしい。
私は、ドキドキしながら、スタジオのアナブースへ。
ヘッドフォンの使い方を監督自ら優しく教えてくれる。
『返しの音量は大丈夫?』
「大丈夫です」
『映像の中に、名前のテロップがでてくるだろう?』
「はい」
『これは、ボールドと言って、キャラクターの喋るタイミングを表しているんだよ』
「へえ〜」
『まあ、でも全然気にしなくていいからね』
じゃあ、説明すんなよ。なんて(笑)
音響監督が丁寧に教えてくれる。
この人、どんな声優さんにも、こうやって手取り足取り教えてくれるのかしら。
『よし、じゃ本番いこうか』
「はい!」
ビデオコンテの、半分だけ作画が入った映像を見ながら
主人公の声をあてていく。
終始笑顔の音響監督。
無事にアフレコが終わってから握手をして、一緒に写真を録る。
エレベータで帰るとき、
音響監督は私にだけ聴こえるようにそっとつぶやいた。
『エミリ、会いたかったよ』
え?
『オーディションを見て、どうしても会いたかったんだよ』
どういうこと?
『僕が作った課題セリフの原稿。
ちゃんと思いが届いたのは君の声だけだった』
そんな・・うそ!
『よければ、このアニメ以外にもいろいろ手伝ってくれないか』
この人、本気?
でも、目がマジだ。
『大切なものは目には見えない。
心の目、というのは君のオッドアイのことだったんだね』
あ・・
『今日は単なるスタート地点。
これから長い道程だから、よろしく』
私の手を握り、真剣な眼差しでささやく。
この日から、私の長い長い声優人生がスタートした。
幸運を呼ぶオッドアイ。
いつまでもその輝きを失わずにいてくれますように・・