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導かれるように飛騨高山の千光寺へ辿り着いたOL。職場で酷いハラスメントを受けていた彼女を待っていたのは千光寺に祀られている両面宿儺の木像だった・・・(CV:桑木栄美里)
<ストーリー>
車窓に流れる景色が
街並みから新緑の山並みへ変わっていく
ある朝
いつものように目覚めて
いつもの駅へ向かった
でも乗ったのは
いつもと反対方面の特急列車
会社を無断欠勤した理由は
仕事のストレス
パワハラめいた言葉の圧力
体調不良・・・
数え上げればきりがない
それは禍々しい黒い圧力となって
日に日に大きくなっていった
なにもかもに疲れ果てた心
ただ
私はガラスに映る自分の顔を見つめていた
何かに導かれるように
降り立ったのは高山駅
遠くから祭りの喧騒が聞こえてくる
駅前のベンチにしばらくたたずみ
往来する人の流れを眺める
みんな
自分の人生をどう生きているんだろう
スマホの画面には
ひっきりなしに会社からの連絡が通知されてくる
通知画面から湧き上がる黒い想い
思わずスマホの電源を落とす
でも気配は消えない
気がつくと私は
ターミナルからバスに乗っていた
市街地を抜け
車窓の風景はさらに山深い緑の中へ
その間も黒い圧力は
私から離れることはない
絶対に離すまいと
心の奥をわしづかみするように
逃げるようにバスを降りたのは
山の中の小さなバス停
国道沿いにしばらく歩くと
山門の入口が見えてきた
普門山善久寺
寺院の名前を口にしたとき
黒い圧力が一瞬たじろいだ気がした
住職に本堂に招かれて目にしたのは
柔和な顔立ちをした
両面宿儺の像だった
両面宿儺
仁徳天皇の時代に飛騨に現れたとされる鬼神
大和朝廷によって退治された
と言われている
王に背き従わないものか
なんだかちょっぴり私みたいじゃない。
ハードワークに疲れ
パワハラめいた言動に従いたくなくて
ここまで来たんだもの
どのくらいの時間が経ったのだろう
宿儺像の前に佇む私の頭の中に
幻聴が響いてくる。
「動け」
本堂を出た私は
寺の駐車場に停まっていたタクシーに迷わず乗り込む
このあたりに
ほかに両面宿儺を祀ってあるお寺ってありますか?
運転手さんは迷わず「千光寺」と答えた
善久寺から千光寺までは車で約20分
袈裟山という山を
登りきったところに境内がある
本堂の横にある宿儺堂に祀られた宿儺像
その表情もすごく穏やかだ
両面宿儺のイメージがどんどん変わっていく
手にはマサカリ?飛騨を開拓した人だからかな?
後ろへまわると
こちら側の手は印を結んでいる
右手が大日如来の慈悲
左手が智慧を表すのだと
住職が優しく教えてくれた
そのとき
私に纏わりついた黒い圧力がうごめく
私が両面宿儺に興味を持っていると感じた住職は
位山へ行きなさい
と諭してくれた
位山
飛騨川の分水嶺
世界最大級のパワースポットと言われる位山には
両面宿儺にまつわる飛騨一宮水無神社がある
陽が高いうちに着くようにと
住職に呼んでもらったタクシーに乗って位山へ向かう
私のスマホは知らないうちに電源が入り
会社からの通知が画面を埋めつくしている
それと同時に
黒い圧力は前より酷く毒を吐き続けていた
境内に一歩足を踏み入れると
張りつめた空気に背筋がピンとなる
社の前で目を閉じると
脳裏にセピア色の情景が見えてきた
大和朝廷がその勢力を全国に広げようとしていた時代
飛騨高原には独自の文化を持った先住民族が暮らしていた
先住民族の首領は「両面宿儺」
前後に2つの顔を持ち
4本の手で武器を操り
4本の足で走る超人である
宿儺は位山に潜む
七儺という鬼を退治して住民を守った。
だが飛騨征服を企む大和朝廷に逆らったために
朝敵として葬られてしまう
なぜか瞳が潤む
と同時に私の弱さにつけこむように
黒い圧力が突然私に覆い被さってくる
その刹那
大きな炎の形をした赤いなにかが社から飛び出した
それは私にまとわりつく黒い圧力を一瞬で包み込むと
体を反転させて吸い込まれるように社へ消えていった
まさに一瞬の出来事
だがその瞬間
私はすべての災厄が私の身体から霧散していくのを感じた・・・
そこから先は早かった
私は住んでいる街へ帰ると
すぐに辞表を書き会社へ提出した
こんなことがどうして今までできなかったのだろう
自分自身を受け入れ
自分自身を愛すること
自分の強さと自信を取り戻すこと
禍々しいモノに立ち向かう勇気を持つこと
両面宿儺のように
自分自身の内面にも光と闇が存在することを理解しよう
そうすればこれからの人生
きっと前向きに進んでいける
導かれるように飛騨高山の千光寺へ辿り着いたOL。職場で酷いハラスメントを受けていた彼女を待っていたのは千光寺に祀られている両面宿儺の木像だった・・・(CV:桑木栄美里)
<ストーリー>
車窓に流れる景色が
街並みから新緑の山並みへ変わっていく
ある朝
いつものように目覚めて
いつもの駅へ向かった
でも乗ったのは
いつもと反対方面の特急列車
会社を無断欠勤した理由は
仕事のストレス
パワハラめいた言葉の圧力
体調不良・・・
数え上げればきりがない
それは禍々しい黒い圧力となって
日に日に大きくなっていった
なにもかもに疲れ果てた心
ただ
私はガラスに映る自分の顔を見つめていた
何かに導かれるように
降り立ったのは高山駅
遠くから祭りの喧騒が聞こえてくる
駅前のベンチにしばらくたたずみ
往来する人の流れを眺める
みんな
自分の人生をどう生きているんだろう
スマホの画面には
ひっきりなしに会社からの連絡が通知されてくる
通知画面から湧き上がる黒い想い
思わずスマホの電源を落とす
でも気配は消えない
気がつくと私は
ターミナルからバスに乗っていた
市街地を抜け
車窓の風景はさらに山深い緑の中へ
その間も黒い圧力は
私から離れることはない
絶対に離すまいと
心の奥をわしづかみするように
逃げるようにバスを降りたのは
山の中の小さなバス停
国道沿いにしばらく歩くと
山門の入口が見えてきた
普門山善久寺
寺院の名前を口にしたとき
黒い圧力が一瞬たじろいだ気がした
住職に本堂に招かれて目にしたのは
柔和な顔立ちをした
両面宿儺の像だった
両面宿儺
仁徳天皇の時代に飛騨に現れたとされる鬼神
大和朝廷によって退治された
と言われている
王に背き従わないものか
なんだかちょっぴり私みたいじゃない。
ハードワークに疲れ
パワハラめいた言動に従いたくなくて
ここまで来たんだもの
どのくらいの時間が経ったのだろう
宿儺像の前に佇む私の頭の中に
幻聴が響いてくる。
「動け」
本堂を出た私は
寺の駐車場に停まっていたタクシーに迷わず乗り込む
このあたりに
ほかに両面宿儺を祀ってあるお寺ってありますか?
運転手さんは迷わず「千光寺」と答えた
善久寺から千光寺までは車で約20分
袈裟山という山を
登りきったところに境内がある
本堂の横にある宿儺堂に祀られた宿儺像
その表情もすごく穏やかだ
両面宿儺のイメージがどんどん変わっていく
手にはマサカリ?飛騨を開拓した人だからかな?
後ろへまわると
こちら側の手は印を結んでいる
右手が大日如来の慈悲
左手が智慧を表すのだと
住職が優しく教えてくれた
そのとき
私に纏わりついた黒い圧力がうごめく
私が両面宿儺に興味を持っていると感じた住職は
位山へ行きなさい
と諭してくれた
位山
飛騨川の分水嶺
世界最大級のパワースポットと言われる位山には
両面宿儺にまつわる飛騨一宮水無神社がある
陽が高いうちに着くようにと
住職に呼んでもらったタクシーに乗って位山へ向かう
私のスマホは知らないうちに電源が入り
会社からの通知が画面を埋めつくしている
それと同時に
黒い圧力は前より酷く毒を吐き続けていた
境内に一歩足を踏み入れると
張りつめた空気に背筋がピンとなる
社の前で目を閉じると
脳裏にセピア色の情景が見えてきた
大和朝廷がその勢力を全国に広げようとしていた時代
飛騨高原には独自の文化を持った先住民族が暮らしていた
先住民族の首領は「両面宿儺」
前後に2つの顔を持ち
4本の手で武器を操り
4本の足で走る超人である
宿儺は位山に潜む
七儺という鬼を退治して住民を守った。
だが飛騨征服を企む大和朝廷に逆らったために
朝敵として葬られてしまう
なぜか瞳が潤む
と同時に私の弱さにつけこむように
黒い圧力が突然私に覆い被さってくる
その刹那
大きな炎の形をした赤いなにかが社から飛び出した
それは私にまとわりつく黒い圧力を一瞬で包み込むと
体を反転させて吸い込まれるように社へ消えていった
まさに一瞬の出来事
だがその瞬間
私はすべての災厄が私の身体から霧散していくのを感じた・・・
そこから先は早かった
私は住んでいる街へ帰ると
すぐに辞表を書き会社へ提出した
こんなことがどうして今までできなかったのだろう
自分自身を受け入れ
自分自身を愛すること
自分の強さと自信を取り戻すこと
禍々しいモノに立ち向かう勇気を持つこと
両面宿儺のように
自分自身の内面にも光と闇が存在することを理解しよう
そうすればこれからの人生
きっと前向きに進んでいける