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突然すべてを失い、高山へやってきた少女・彩羽。不器用な祖父が作る“ちょっと変なお弁当”に戸惑いながらも、少しずつ気づいていく「本当の気持ち」。
そして迎えた卒業の日。
彼女が祖父に贈ったのは――“最初の弁当”。
『最後の弁当』のアンサーとなる、もうひとつの物語・・・
【ペルソナ】
・彩羽(いろは=16歳〜18歳/CV:坂田月菜)=東京から高山市街地へ引っ越してきた高校1年生。
・静(しずか=58歳〜61歳/CV:日比野正裕)=大学新卒以来高山市役所市民課で働く生え抜きの市職員
・さくら(CV:岩波あこ)=静と同じ市民課に務める市職員。マイペースで仕事をするさくらを静はいつも厳しく叱責していた。彩羽にとっては相談できる唯一の女性
【プロローグ:総合病院/ER病棟】
◾️SE:廊下を走ってくる足音
「はぁっ」「はぁっ」「はぁっ」
◾️SE:病室の音
「ママ!パパ!」「返事してよ!」
私の世界の中心。
大切な二人が、ある日突然、いなくなった。
高校入学前の春休み。
涙を流す暇さえないまま、慌ただしいお別れ。
誰もいなくなった家の中に、親族が集まった。
『かわいそうに』『力になるからね』
みんなそう言って憐れみの表情を向けてくる。
私はうなづくことさえできない。
そのあとは声をひそめて話し合い。
どこかで誰かがささやく。
『誰がひきとるの』『うちは無理だから』『うちだって』
最初小さかった声はだんだん大きくなって、頭の中に響いてくる。
私はイヤホンをして、LINEを開く。
ママと私のトークルーム。
最後のメッセージは、
『彩羽、卒業おめでとう』・・とハートマーク。
私の名前は彩羽。
中学を卒業して高校に入学する直前だった。
おじちゃんたちはベランダに出てタバコを吸ってる。
パパもママも吸わなかったから、灰皿ないんだけどなぁ。
家の中ではおばちゃんたちが、身振り手振りを交えて話し合ってる。
イヤホンをしてても聞こえるくらい、声のボリュームが上がっていく。
『養護施設しかないんじゃない』
え・・
それって・・・
知らない子たちと一緒に暮らすんだよね。
高校はどうなるの・・・
おうちは・・・?
不安で胸が押しつぶされそうになる。
そのとき・・・
「この子は私が、高山へ連れて帰る!」
大きな声がリビングに響き渡った。
ざわざわしてた室内がシ〜ンとなる。
私は左耳のイヤホンをはずし、横目で声の方を見る。
高山のおじいちゃんだ・・・
なんか目をウルウルさせて、親戚のおじちゃんたちを睨んでる。
おじいちゃんは、ゆっくりと私の方へ歩いてきて・・
「もちろん、無理にとは言わないが」
「彩羽、私と一緒にくるか?高山へ」
と、小さな声で話しかけてきた。
後ろでは、親戚のおじちゃんおばちゃんたちが睨んでいる。
私は怖くて、下を向いたままうなづいた。
すると、
”無理する必要はないんだぞ”
”おじいちゃんに気を遣うことない”
”1回しか里帰りしたことないんじゃ、まったく知らないとこと同じだ”
いろんな声が飛んでくる。
私はまたイヤホンをして、
「荷造りしてくる」
自分の部屋へ戻っていった。
【シーン1:古い町並にて】
◾️SE:古い街角の雑踏
「さあ、ここが古い町並だよ。
小さい頃、夏休みに一緒に歩いただろう。
覚えてる?」
おじいちゃんが優しい声で話しかけてくる。
私は親族会議のあと、そのまま高山へ。
古い町並は、10年ぶりくらいかな。
あのときは、パパとママに両手を引かれてた。
3人でおじいちゃんおばあちゃんについてったっけ。
私は小さくうなづく。
ちゃんと覚えてるよ。
10年前と変わってないよね。
「疲れてないかい?彩羽」
おじいちゃんは心配そうに尋ねてきた。
少し距離をとって歩き、話すときだけちょっと近づく。
全然疲れてはないけど、お腹がすいてマジやばいかも・・・
コンビニってさっき通ったっけ。
「おじいちゃん・・」
「ん?どうしたんだい?」
「お腹すいちゃったから・・
コンビニ行っていい?」
「おお、ごめんごめん!
そういや、おじいちゃんもお腹すいてきたわ。
コンビニより、ラーメンでも食べにいこか?」
「高山ラーメン?」
「ああ、そうだ」
「やった・・」
のぞみの中でTikTok流し見した。
高山グルメは全部保存済み。
そのなかで高山ラーメンが一番、推しだったんだ。
インスタでスイーツ界隈も把握しよう。
でも、これからは、ご飯って、どうするんだろう・・・
【シーン2:高校生活】
◾️SE:扉を閉める音
「おじいちゃん、行ってきます」
朝7時半。
私は自転車で家を出る。
ピンクのフレーム。
前からほしかった、すっごく可愛いEバイク。
引っ越しした次の日に
おじいちゃんがプレゼントしてくれた。
そういえば、
おじいちゃん、市役所に勤めてるんだって。
私は部活が終わるとそのまま市役所へ。
おじいちゃんと待ち合わせて、
一緒に外食を食べてから家へ帰る。
東京では毎日コンビニの夕食だったから
フツーに嬉しいかも・・
高山って観光地だから、おいしいものいっぱいなんだもん。
みたらし団子。
漬物ステーキ。
飛騨牛バーガー。
鶏ちゃん丼(どんぶり)。
夕ご飯のあとは、スイーツのお店へ。
プリン専門店とか、和菓子屋さんとか、ジェラートのお店とか。
どれも美味しすぎて、決められない。
だけど、あ〜、体重計に乗るのが怖い。
こ〜んなに、グルメ満載の生活だけど、
ひとつだけ食の悩みがあるんだ。
それが・・お弁当。
おじいちゃんが作ってくれるお弁当は、
こう・・なんていうか・・・
すごくシュール。
基本は、白いご飯の上におっきな梅干し。
おかずはゆで卵のことが多いけど・・・
たまに生卵がかけてあって・・
半熟のTKG?っぽくなってる。
この前はちょっと驚いた。
午前最後の授業中に、
後ろの席の子が「なんかヘンな匂いがする」って。
匂いの元をたどったら、なんと私のお弁当。
白いご飯の上に、お刺身がのってて、お醤油が垂らしてあった。
多分これ、海鮮丼?
・・・だったやつ。
友だちは「ひどいね〜」とか言うんだけど、
私は、おじいちゃんの顔が浮かんできて・・
おかしくっておかしくって、笑いが止まんなくなっちゃった。
みんなは「お腹こわすよ〜」とか言うし。
仕方なく、用務員さんにお願いして、焼却炉に捨てさせてもらった。
とはいえ、友だちからおかずを分けてもらうのはちょっと・・・
だから購買でパンを買ってる。
人気の飛騨牛カレーパンは毎日争奪戦。
引っ越した日、おじいちゃん私に言ったんだよね。
『私は典型的な昭和男子だから。家事はあまりしたことがないんだ』
だけど、彩羽の弁当だけは私が作るから』・・・って。
感謝感謝。
でも・・・いつか言わなきゃね。
これ以上は無理しなくてもいいよ・・
【シーン3:文芸部の朝バフ】
◾️SE:小鳥のさえずり〜トーストの焼ける音〜ドリップコーヒーを煎れる音
「彩羽〜、朝ごはんだよ〜」
朝5時。
おじいちゃんがトーストを焼き、コーヒーを煎れる。
文芸部が朝活をスタートさせてから毎日この時間。
おじいちゃんはそれに付き合って朝4時起き。
朝食を用意してくれる。
年をとると朝早く目が覚めちゃうんだよ・・・
って言ってたけど、本当かなぁ。
少し焦げたトーストにバターをたっぷり塗って口に入れる。
急いでるときは、コーヒーで流し込んじゃう。
私、本当はご飯と味噌汁派なんだけど・・・
おじいちゃんが眠そうな目をこすりながら焼いてくれる、
焦げ気味のトースト。美味しいんだよなぁ。
そういえば昨日、先生に、
おじいちゃんのスマホの番号聞かれたけど、
なんだろう・・・
ちょっとだけ不安かも。
【シーン4:アプデした弁当】
◾️SE:教室の雑踏〜おおっという小さな感嘆の声
お弁当箱の蓋を開けた瞬間、教室中がざわめいた。
みんな私の”お弁当ガチャ”に期待してたんだけど
中身は初めての”アタリ”。
なんと『あずき菜の”混ぜごはん”と タラの芽の”ごま和え”』。
あずき菜の塩気と滋味(じみ)がじっくりと染み込んだお米。
タラの芽の水分を吸い込んで、ようく馴染んだごま和え。
まるで、食べる時間を考えて作ったような・・・
え・・・?
これ・・・
ホントにおじいちゃんが作ったの・・・?
それからのお弁当は、アプデがもう半端ない。
おかずも一品でなく、どんどん増えていく。
朴葉味噌を具にしたおにぎり。
赤かぶを細かく刻んで入れた卵焼き。
こもどうふの煮物。
あまりに美味しくて、嬉しくて、
私はノートの切れ端にお手紙を書くようになった。
『お弁当、ガチで沼る美味しさ!』
次の日は、白米の上に飛騨牛しぐれ煮。
『しぐれ煮冷めても柔らかくて神!」
その次の日は、飛騨一本太ネギの肉巻き。
『ネギ太すぎ甘すぎおいしすぎ!』
そのまた次の日は、宿儺かぼちゃのクリームチーズ和え。
『東京のカフェよりガチうま!』
嘘偽りはまったくない。
おじいちゃん、すごい。
料理教室にでも行ってるのかなあ。
【シーン5:対面】
◾️SE:扉を開く音
「ただいま〜」
ある晴れた日。
部活が急に中止になって、家に帰ると・・・
「え・・・」
キッチンに立って料理しているおじいちゃん。
その横には・・・
わ、きれいなお姉さん・・・
落ち着いたグレージュのニット。清潔感のある細身のパンツ。大人だ・・・
※続きは音声でお楽しみください
By Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会突然すべてを失い、高山へやってきた少女・彩羽。不器用な祖父が作る“ちょっと変なお弁当”に戸惑いながらも、少しずつ気づいていく「本当の気持ち」。
そして迎えた卒業の日。
彼女が祖父に贈ったのは――“最初の弁当”。
『最後の弁当』のアンサーとなる、もうひとつの物語・・・
【ペルソナ】
・彩羽(いろは=16歳〜18歳/CV:坂田月菜)=東京から高山市街地へ引っ越してきた高校1年生。
・静(しずか=58歳〜61歳/CV:日比野正裕)=大学新卒以来高山市役所市民課で働く生え抜きの市職員
・さくら(CV:岩波あこ)=静と同じ市民課に務める市職員。マイペースで仕事をするさくらを静はいつも厳しく叱責していた。彩羽にとっては相談できる唯一の女性
【プロローグ:総合病院/ER病棟】
◾️SE:廊下を走ってくる足音
「はぁっ」「はぁっ」「はぁっ」
◾️SE:病室の音
「ママ!パパ!」「返事してよ!」
私の世界の中心。
大切な二人が、ある日突然、いなくなった。
高校入学前の春休み。
涙を流す暇さえないまま、慌ただしいお別れ。
誰もいなくなった家の中に、親族が集まった。
『かわいそうに』『力になるからね』
みんなそう言って憐れみの表情を向けてくる。
私はうなづくことさえできない。
そのあとは声をひそめて話し合い。
どこかで誰かがささやく。
『誰がひきとるの』『うちは無理だから』『うちだって』
最初小さかった声はだんだん大きくなって、頭の中に響いてくる。
私はイヤホンをして、LINEを開く。
ママと私のトークルーム。
最後のメッセージは、
『彩羽、卒業おめでとう』・・とハートマーク。
私の名前は彩羽。
中学を卒業して高校に入学する直前だった。
おじちゃんたちはベランダに出てタバコを吸ってる。
パパもママも吸わなかったから、灰皿ないんだけどなぁ。
家の中ではおばちゃんたちが、身振り手振りを交えて話し合ってる。
イヤホンをしてても聞こえるくらい、声のボリュームが上がっていく。
『養護施設しかないんじゃない』
え・・
それって・・・
知らない子たちと一緒に暮らすんだよね。
高校はどうなるの・・・
おうちは・・・?
不安で胸が押しつぶされそうになる。
そのとき・・・
「この子は私が、高山へ連れて帰る!」
大きな声がリビングに響き渡った。
ざわざわしてた室内がシ〜ンとなる。
私は左耳のイヤホンをはずし、横目で声の方を見る。
高山のおじいちゃんだ・・・
なんか目をウルウルさせて、親戚のおじちゃんたちを睨んでる。
おじいちゃんは、ゆっくりと私の方へ歩いてきて・・
「もちろん、無理にとは言わないが」
「彩羽、私と一緒にくるか?高山へ」
と、小さな声で話しかけてきた。
後ろでは、親戚のおじちゃんおばちゃんたちが睨んでいる。
私は怖くて、下を向いたままうなづいた。
すると、
”無理する必要はないんだぞ”
”おじいちゃんに気を遣うことない”
”1回しか里帰りしたことないんじゃ、まったく知らないとこと同じだ”
いろんな声が飛んでくる。
私はまたイヤホンをして、
「荷造りしてくる」
自分の部屋へ戻っていった。
【シーン1:古い町並にて】
◾️SE:古い街角の雑踏
「さあ、ここが古い町並だよ。
小さい頃、夏休みに一緒に歩いただろう。
覚えてる?」
おじいちゃんが優しい声で話しかけてくる。
私は親族会議のあと、そのまま高山へ。
古い町並は、10年ぶりくらいかな。
あのときは、パパとママに両手を引かれてた。
3人でおじいちゃんおばあちゃんについてったっけ。
私は小さくうなづく。
ちゃんと覚えてるよ。
10年前と変わってないよね。
「疲れてないかい?彩羽」
おじいちゃんは心配そうに尋ねてきた。
少し距離をとって歩き、話すときだけちょっと近づく。
全然疲れてはないけど、お腹がすいてマジやばいかも・・・
コンビニってさっき通ったっけ。
「おじいちゃん・・」
「ん?どうしたんだい?」
「お腹すいちゃったから・・
コンビニ行っていい?」
「おお、ごめんごめん!
そういや、おじいちゃんもお腹すいてきたわ。
コンビニより、ラーメンでも食べにいこか?」
「高山ラーメン?」
「ああ、そうだ」
「やった・・」
のぞみの中でTikTok流し見した。
高山グルメは全部保存済み。
そのなかで高山ラーメンが一番、推しだったんだ。
インスタでスイーツ界隈も把握しよう。
でも、これからは、ご飯って、どうするんだろう・・・
【シーン2:高校生活】
◾️SE:扉を閉める音
「おじいちゃん、行ってきます」
朝7時半。
私は自転車で家を出る。
ピンクのフレーム。
前からほしかった、すっごく可愛いEバイク。
引っ越しした次の日に
おじいちゃんがプレゼントしてくれた。
そういえば、
おじいちゃん、市役所に勤めてるんだって。
私は部活が終わるとそのまま市役所へ。
おじいちゃんと待ち合わせて、
一緒に外食を食べてから家へ帰る。
東京では毎日コンビニの夕食だったから
フツーに嬉しいかも・・
高山って観光地だから、おいしいものいっぱいなんだもん。
みたらし団子。
漬物ステーキ。
飛騨牛バーガー。
鶏ちゃん丼(どんぶり)。
夕ご飯のあとは、スイーツのお店へ。
プリン専門店とか、和菓子屋さんとか、ジェラートのお店とか。
どれも美味しすぎて、決められない。
だけど、あ〜、体重計に乗るのが怖い。
こ〜んなに、グルメ満載の生活だけど、
ひとつだけ食の悩みがあるんだ。
それが・・お弁当。
おじいちゃんが作ってくれるお弁当は、
こう・・なんていうか・・・
すごくシュール。
基本は、白いご飯の上におっきな梅干し。
おかずはゆで卵のことが多いけど・・・
たまに生卵がかけてあって・・
半熟のTKG?っぽくなってる。
この前はちょっと驚いた。
午前最後の授業中に、
後ろの席の子が「なんかヘンな匂いがする」って。
匂いの元をたどったら、なんと私のお弁当。
白いご飯の上に、お刺身がのってて、お醤油が垂らしてあった。
多分これ、海鮮丼?
・・・だったやつ。
友だちは「ひどいね〜」とか言うんだけど、
私は、おじいちゃんの顔が浮かんできて・・
おかしくっておかしくって、笑いが止まんなくなっちゃった。
みんなは「お腹こわすよ〜」とか言うし。
仕方なく、用務員さんにお願いして、焼却炉に捨てさせてもらった。
とはいえ、友だちからおかずを分けてもらうのはちょっと・・・
だから購買でパンを買ってる。
人気の飛騨牛カレーパンは毎日争奪戦。
引っ越した日、おじいちゃん私に言ったんだよね。
『私は典型的な昭和男子だから。家事はあまりしたことがないんだ』
だけど、彩羽の弁当だけは私が作るから』・・・って。
感謝感謝。
でも・・・いつか言わなきゃね。
これ以上は無理しなくてもいいよ・・
【シーン3:文芸部の朝バフ】
◾️SE:小鳥のさえずり〜トーストの焼ける音〜ドリップコーヒーを煎れる音
「彩羽〜、朝ごはんだよ〜」
朝5時。
おじいちゃんがトーストを焼き、コーヒーを煎れる。
文芸部が朝活をスタートさせてから毎日この時間。
おじいちゃんはそれに付き合って朝4時起き。
朝食を用意してくれる。
年をとると朝早く目が覚めちゃうんだよ・・・
って言ってたけど、本当かなぁ。
少し焦げたトーストにバターをたっぷり塗って口に入れる。
急いでるときは、コーヒーで流し込んじゃう。
私、本当はご飯と味噌汁派なんだけど・・・
おじいちゃんが眠そうな目をこすりながら焼いてくれる、
焦げ気味のトースト。美味しいんだよなぁ。
そういえば昨日、先生に、
おじいちゃんのスマホの番号聞かれたけど、
なんだろう・・・
ちょっとだけ不安かも。
【シーン4:アプデした弁当】
◾️SE:教室の雑踏〜おおっという小さな感嘆の声
お弁当箱の蓋を開けた瞬間、教室中がざわめいた。
みんな私の”お弁当ガチャ”に期待してたんだけど
中身は初めての”アタリ”。
なんと『あずき菜の”混ぜごはん”と タラの芽の”ごま和え”』。
あずき菜の塩気と滋味(じみ)がじっくりと染み込んだお米。
タラの芽の水分を吸い込んで、ようく馴染んだごま和え。
まるで、食べる時間を考えて作ったような・・・
え・・・?
これ・・・
ホントにおじいちゃんが作ったの・・・?
それからのお弁当は、アプデがもう半端ない。
おかずも一品でなく、どんどん増えていく。
朴葉味噌を具にしたおにぎり。
赤かぶを細かく刻んで入れた卵焼き。
こもどうふの煮物。
あまりに美味しくて、嬉しくて、
私はノートの切れ端にお手紙を書くようになった。
『お弁当、ガチで沼る美味しさ!』
次の日は、白米の上に飛騨牛しぐれ煮。
『しぐれ煮冷めても柔らかくて神!」
その次の日は、飛騨一本太ネギの肉巻き。
『ネギ太すぎ甘すぎおいしすぎ!』
そのまた次の日は、宿儺かぼちゃのクリームチーズ和え。
『東京のカフェよりガチうま!』
嘘偽りはまったくない。
おじいちゃん、すごい。
料理教室にでも行ってるのかなあ。
【シーン5:対面】
◾️SE:扉を開く音
「ただいま〜」
ある晴れた日。
部活が急に中止になって、家に帰ると・・・
「え・・・」
キッチンに立って料理しているおじいちゃん。
その横には・・・
わ、きれいなお姉さん・・・
落ち着いたグレージュのニット。清潔感のある細身のパンツ。大人だ・・・
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