インフレと関税発動の可能性が話題となる中、最近の2つの調査が米国の消費者信頼感の大幅な低下を示唆しています。コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが予想される市場への影響についてお話します。

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トランスクリプト

「市場の風を読む」（Thoughts on the Market）へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

今回はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、消費者の信頼感に関する論点についてお話します。

このエピソードは2月27日 にロンドンにて収録されたものです。 

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2週間前にこのポッドキャストで弊社は、今年に入ってからのM&A活動の過去にない低迷を受け、米国政府の政策を巡る不透明感が、企業の信頼感に痛手を与えていることを示す兆候についてお話ししました。この内容については進展はまちまちです。企業において信頼感が低下し、保守主義が強まれば、投資が抑制されるとともに、大きな利益につながるアニマルスピリットが発揮される機会も減ります。一方で、一般に融資する側は、企業がより慎重でリスク回避的である方が好ましいため、貸し手にとっては好都合とも言えるでしょう。

しかし、この信頼感の問題は消費者にも当てはまります。そして今回は、調査が示す初期的な兆候と、それが弊社見解に及ぼし得る影響について検証したいと思います。

まず、当たり前に聞こえるかもしれませんが、重要なことに、信頼感は経済および金融市場にとって、極めて強い心理的な力です。もし、あなたが将来について良い感情を抱いているなら、株式でも自動車でも、価格やその時点の景気の状態は気にせずに購入するでしょう。そして、将来が心配な時は、あなたに問題がなくても、たとえ価格がさらに安かったとしても、こうした買い物を控えるでしょう。

したがって、先日発表された、米国消費者信頼感の急激な悪化を示唆する2つの重要な調査に市場が大いに注目している理由の一つは、これで説明できるかもしれません。

まず、ミシガン大学の月次調査は、消費者信頼感の低下と予想インフレ率の上昇を示唆しました。そして数日後に発表されたコンファレンスボード社の同様の調査も同じパターンを示しました。たとえ現在の状況は大きく変わっていないと感じているとしても、消費者の将来に対する懸念は大幅に増しています。

様々な要因が影響していると見られますが、少なくとも、最近の米国の政策措置で生じた動揺も一因となっている可能性が示されています。例を挙げると、信頼感の低下は、新しいもので過去1-2ヵ月の間に現れたばかりです。実際に、ミシガン大学の調査では政府の経済政策に関するニュースが信頼感のレベルにどのように影響を及ぼしているか、回答者に質問しています。そして、その回答は過去1ヵ月で急激な低下を示しました。

こうした信頼感調査は、自動車や重機の販売実績のような具体的な経済指標に対して、しばしば「ソフト」データと呼ばれます。しかし、それこそが重要であり、投資家がこれに注目した理由は、他のデータにはできない役割を果たす場合があるからです。経済指標に関して投資家が直面する最大の課題の一つとして、金融市場はしばしば基調にある具体的な経済指標の転換を予想し、事前に動くことがあります。したがって、期待が将来の前兆となるのであれば、重要な、より先行的なシグナルを提供する可能性があります。

低調な消費者信頼感の指標が1回、揃ったとしても、全体像を変えるには不十分です。しかし、弊社が注目していることは確かです。弊社米国担当エコノミストも、総じてこれらの回答と同じように、向こう18ヵ月間、ある程度の景気減速とインフレの下げ渋りを予想しています。経済成長を巡る不透明感が根強く続くとの予想に基づき、弊社は引き続き米国と欧州の債券利回りが低下するとの予想を維持しています。

クレジット投資にとって、信頼感の低下は両刃の剣であることに変わりなく、クレジット市場は他の資産に比べてやや安定的に推移して来ました。しかし、予想される経済成長への影響を考慮すると、政策の軌道がやや緩和されるとしても、信頼感のさらなる悪化はマイナス要因となるでしょう。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか？もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。