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おはようございます。web3リサーチャーのmitsuiです。
今日はAKINDOファウンデーであるkinjoさんへのインタビュー記事となります。現在開催中の「WaveHack Global」に関してお伺いしました。
※以下、動画の内容を要約して簡単に紹介します。詳細が気になる方はぜひ動画もご覧ください。
-まずは自己紹介をお願いします。
はい、kinjoと申します。僕たちはAKINDOという日本最大のweb3ハッカソンプラットフォームの開発・運営をしております。
この1年半近くで、30以上のハッカソンだけではなくてワークショップ、アイデアソン、ミートアップ、パーティーなど、ビルダーコミュニティを作りたいと考えているプロジェクトの支援をしてきました。日本で一番ビルダーコミュニティを持っていると認めてもらい、AptosやZkSync、Scroll、XRPレジャーなどグローバルのトッププロジェクトのハッカソン支援もしてきました。
自社でもハッカソンイベントを開催しており、特に盛り上がったのが2022年秋に開催した「東京web3ハッカソン」です。事前の勉強会も含めて800名ほどのエントリーがあり、100以上のプロダクトが提出されました。それがきっかけで「ハッカソンと言えばkinjoさん」みたいな感じになり、様々なハッカソンの企画サポートをさせていただいています。
-これまでのキャリアについても教えてください。
10年以上スタートアップ・インターネット界隈にいます。例えばネットショップが簡単に作れる「BASE」の立ち上げに3人目のメンバーとして関わり、2013年頃に初期のグロースを担当しました。
その前は新卒で入ったWEB広告代理店を辞めて独立し、BASEにジョインする前に自分で事業を立ち上げようとしたこともあります。
2016年に起業し、それ以降は様々なプロダクトを作ってはピボットを繰り返してきました。何十個ものプロダクトを作った感じですね。
2017年頃のクリプトバブル時にはクリプト領域に傾倒していた時期もありました。ただ、2018-2019年の冬の時期は厳しくて一旦離れ、動画アプリやZoomのイベント開催アプリ、Instagram向けアプリなどを作っていました。
しかし、今はToC向けのプロダクトをグロースさせるのは難しい状況です。TikTokやインスタなどのプラットフォーマーに巻き取られてしまう。そんな中、web3のデータ所有や分散化の概念に魅力を感じ、約3年前からWeb3/クリプト領域にフルベットしています。ずっとプレイヤーとしてガンガンやってる感じですね。
-AKINDOの概要と、今回始めるWaveHack Globalについて教えていただけますか。
AKINDOに関しては、私がweb3に入ったタイミングで、DeFiやNFT、ゲームなどいろいろな要素がある中で特にDAOの文脈にワクワクして、そこから深堀りを始めたのがきっかけです。新しい組織体系の概念や、グローバルに開かれていて誰にでもオプチュニティがあるというDAOの考え方が面白いなと。
当初は、誰でも簡単に仕事ができるクリプト版のIndeed(インディード)のようなものを作ろうとしていました。今でいえば、GalxeやLayer3のようなサービスイメージです。ただ、いろいろヒアリングしていく中で、いわゆるバウンティーボードのようなものに対するエンゲージメントは低いという課題があり、代わりにハッカソンが最適なアプローチだと考えるようになりました。
当時からweb3領域では大規模なハッカソンが頻繁に開催されていて、インフラ領域のプロジェクトがデベロッパーコミュニティを増やすために多額の予算をかけていました。そこにポテンシャルを感じ、ハッカソンに舵を切ったのが2022年の夏頃です。
AKINDOは、ハッカソンのLP作成からエントリー受付、コミュニケーション、提出物の受付、審査、賞金のオンチェーン送金まで、ハッカソンに必要な機能をワンストップで提供するバーチャルハッカソン向けのプラットフォームです。
ただ、プラットフォームを作っただけでは無風なので、プロダクトのユースケースを作るために、自社企画の「東京web3ハッカソン」を開催し、国内で一定のポジションを確立しました。
ただ、ハッカソンを運営していく中で、主催者側と参加者側のインセンティブにズレがあることに気づきました。主催者は長期的にエコシステムを拡大し、参加者とのエンゲージメントを築きたいと考えている一方で、参加者は週末の思い出作りやアクティビティ、学習の場として捉えている側面があります。デモやMVPレベルのプロダクトは生まれるものの、その後の開発を続けるインセンティブが弱いんです。
そこで提供を始めたのが「WaveHack」です。
従来のハッカソンや助成金プログラムに比べて、10倍効率よくエコシステムを拡大でき、より強いエンゲージメントが築けます。継続的な開発アップデートに応じてグラントを自動的に分配していく仕組みで、スマートコントラクトで透明性高く動作します。「グラント分配プロトコル」と呼んでいます。
-例えば、僕がAptosでDappsを作るとして、毎週同じプロダクトでアップデートしながら応募し続けられるイメージですか。
その通りです。基本的な概念は「進捗 to Earn」というもので、アップデートの進捗を評価するモデルですね。理想的なケースとして、例えばmitsuiさんがイーサリアム上に既存のプロダクトを持っているとします。そのアプリをAptosベースに移植してデプロイすれば、Aptosエコシステムに新しいアプリがもたらされるわけで、高い評価を得られるはずです。
それだけではなく、通常のアプリ開発はアップデートしてもすぐに売上につながるわけではありません。でも、WaveHackを通してアップデートを申告すれば、その差分に応じて継続的に助成金が得られる。日々の活動をしているだけでお金がもらえるベーシックインカムのようなものです。評価期間は2週間だったり、3日だったり、プロジェクト次第で柔軟に設定できます。
-少し細かい点ですが、例えば、最初に応募した時と、その次は応募せずにプロダクトの改善を進めていて、3ヶ月後に再度応募した場合、最初の応募時点から3ヶ月後までの進捗が評価されるのでしょうか。
おっしゃる通りですね。一回応募してから2回目のアップデートまでに数ヶ月となると、結構な差分が出てくると思います。そういった場合は非常に高い評価対象になりますね。
もう少し抽象的に言うと、各Waveごとに提出されたプロダクトの中で、どのアップデートがエコシステムにとって最も価値をもたらすのかという観点で、投票者の方々は審査基準を考えて投票します。なので、ご質問の例でいうと、かなり高い評価を得られるでしょうというのが回答になります。
-なるほど。では、プロダクト自体を応募しているというよりは、アップデートを応募している感覚なんですね。
はい、そのイメージです。既存のプロダクトがあれば、それを募集に合わせて最適化し、募集しているチェーンにデプロイするのも一つのアップデートとして評価対象になります。
例えば、ボタンを追加したりフロントのデザインを変えただけのアップデートに比べて、既存アプリをエコシステムに合わせて最適化するのは、すごく大きなインパクトになると思うんです。そういったものは大きく評価されますね。
なので、既存プロダクトがある方にとっては、めちゃくちゃチャンスのあるプログラムだと個人的には思っています。
-開発以外のチャンスもあるのでしょうか。
はい、あります。とあるプロジェクトとMTGする中で、ドキュメントやコンテンツ作成のテーマでも出していくという話がありました。
そのプロジェクトはドキュメントが整理されているので、それをブログ記事にしたり動画で説明したりするような形で評価されるWaveHackが、これから出てくる予定です。
WaveHackは汎用性が高いので、企画を出してそれを評価したり、実現に向けたマイルストーンを設定したりするようなことも可能だと考えています。
-WaveHackのようなプロジェクトはグローバルに存在していたりするのでしょうか。
同じような思想でいうとGitcoinが結構近いなと感じています。ハッカソンプラットフォームで言うと、DoraHacks、DevPost、DevFolioなどいくつかあるんですが、あまり差別化が効いていないというか、ここだけでやるのは厳しいよなとマーケットサイズ的にも思っています。
一方で、WaveHackと全く同じようなものでしっかりワークしているのは、現状ないんじゃないかなと見ています。
-少し話は戻りますが、先ほどお話しされていたハッカソンやグラントの課題については、その通りだと思いますがプロジェクト側はなぜそのままの方法を続けているのでしょうか。
そうなんですよ、まさにそこがおかしいなと思っていて、正直ベースで言うとハッカソンや助成金プログラムってめちゃくちゃレガシーな方法なわけです。ビットコインやクリプト以前から、インターネット以前からある概念ですよね。
評価の仕方、送金の仕方、助成金プログラムも書類をアップデートして面談をして一個一個、非常に属人的に評価をして決める。また都度都度、マイルストーンごとにエビデンスの書類を送信する。めちゃくちゃ面倒くさいんですよ。僕もグラントをもらったことがありますが、未だにそれをやっているのは僕的にはもう「なぜ?」って感じです。正直、惰性で続けているというのも感じます。
ETHグローバルなどのフィジカルのハッカソンの盛り上がりに引きずられて、バーチャルでも同様の仕組みでやっているみたいなのはちょっとあるかもしれません。
-今回のWaveHack Globalには、グローバルなプロジェクトが参加されていますよね。そのプロジェクトに話をした際の反応や、どの辺りが刺さっているのか、温度感を聞きたいです。
やっぱりこの話をすると、まさに助成金やハッカソンを運営するのも参加するのも面倒くさいし、効率的だと思っていなかった。だからこういったのを待っていたというような感じで、目を見開いて乗ってくるプロジェクトもいくつかあります。しっかり理解してもらえれば刺さるなという手応えはありますね。
ただ、僕の英語力の問題もあって、もっとしっかり熱意を持って伝えられれば、もっと刺さるプロジェクトを増やせるのにというのは正直ありますね。でも基本的には、ちゃんと理解してもらえれば導入してくれるはずです。
デポジットの仕組みや2週間おきの投票など、シンプルなハッカソンに比べると説明コストがかかり、担当者以外の人に理解してもらうにはコミュニケーションコストが必要だなとは感じています。
この辺りの話はそもそものWaveHack Globalの開催理由にもつながるのですが、実は去年の11月頃にはリリースされて使える状態になっていて、一つ一つのプロジェクトにお声掛けして回ったんです。「こんなの作ったんで使えませんか」みたいな。
Aptosさんなどとは先にスタートしているんですが、新しいツールということもあり、事例もないので、既存のハッカソンや助成金の予算をここにアロケーションしてもらうのに時間がかかったり、新しいことをやるのが面倒だったりという部分もありました。
そこで、前回の東京web3ハッカソンのように自分たちで箱を作って、みんなここに集まってもらう方が乗ってきやすいと考えました。テーマも自分たちで決めて、ガツッとやろうと。去年の10月、11月から計画して、やっとWaveHack Globalをアナウンスできたという感じです。
こういった箱を作ると非常に乗ってきやすいですね。最初の事例をいかに作るかが重要で、一定数ワークしていけば、今回参加しなかったプロジェクトも「とりあえず助成金やハッカソンはWaveHackにデポジットしておこう」という流れになっていくはずです。
僕の思いとしては、あらゆるハッカソンや助成金プログラムの予算を全部WaveHack に当ててほしいですね。それが最適化されるべきで、より適切なビルダーに、より透明性を持って、より効率よくお金が分配されるべきだと考えています。
-WaveHack Globalに参加するのに求められるエンジニアリングのレベルはどれくらいでしょうか。
エンジニアリングのレベルとしては、スマートコントラクトを各パートナーのブロックチェーンにデプロイできるのが最低条件かなと思います。ちゃんとデプロイされていて、ちゃんと動くものが求められます。
-参加は1人でもチームでもOKなんでしょうか。
どちらでも大丈夫です。1人参加もOKですし、チーム参加もOKです。
WaveHack Globalのポイントは、同時に複数のWaveHackが走るので、同時に提出することもできます。例えば最初の2週間はAptosに提出して、次の2週間はXRP Ledgerに提出するみたいな感じで、同じプロダクトを各チェーンに置き換えながら参加できます。
また、チェーンだけでなくThe GraphやSuperfluidのようなミドルウェアやライブラリに導入した上で、同時にアップデートを出していくこともできます。
なので、1つのプロダクトで効率よく賞金獲得のチャンスがある、結構珍しいプログラムだと思います。
-今後web3業界ではアプリケーションレイヤーがとても重要になってくると思います。その中で開発者は絶対的に必要な存在だと思うのですが、WaveHackのようなグラントや助成金を通じた開発者支援について、どのようにお考えでしょうか。アプリレイヤーの重要性と開発者サポートについて改めてお聞かせください。
まさに強く感じているところです。よくナラティブという言葉を使いますよね。例えば今だとEigenLayerやミームコインなどのトレンドがあります。でも、それ以上に大きいメガナラティブとして、インフラレイヤーからアプリレイヤーへの移行は確実にあると思っています。
今までは「ファットプロトコル」という考え方で、インフラレイヤーに価値があると捉えられていて、そこにお金や資金が集まっていました。トークン上場やVCからの資金調達など、インフラレイヤーにお金がプールされている状況です。
ただ、そのお金はどこに行くかというと、基本的にはインフラの上に作るアプリケーションを増やすために使われます。インフラレイヤーにとって一番重要なのはアプリビルダーなんです。アプリエンジニアがいないと、荒廃した土地でしかない。そこにお店やモールを建てるためにアプリビルダーが必要で、お金はアプリビルダーに分配されていきます。
インフラレイヤーはある程度揃ってきていていると感じているので、今後はアプリレイヤーが世の中の課題を解決し、マスアダプションを進めていくことになります。何億人ものユーザーを獲得するには、実際に使えるプロダクトが必要不可欠です。
そのためには質より量だと考えています。本当にたくさんのアプリを出して、その中から伸びしろのあるものを見つけ、投資や買収、手厚いサポートをするという流れになるのではないかと。
分かりやすい例だと、Warpcastは今年のキラーアプリの代表格ですよね。web3ソーシャルやゲーム化は確実に来ると思います。ただ、アプリビルダーがVCから資金調達するという概念はあまりないと思います。100個作って1個当たるぐらいの世界なので、VCからよりもインフラレイヤーからお金が流れてくるイメージです。
そのためのお金は、今までのハッカソンや助成金プログラムから、これからはWaveHackを通して流れていけば良いなと思います。
-先ほどキラーアプリの話が出ましたが、FarcasterなどのSocialFiのアプリは、web3ネイティブでない人にも広がっていくと思いますか?
もちろん広がると思います。広がらないとニッチな領域のままになってしまいますし、プレイヤーたちも普及させていく思いがあるはずです。ただ、何が一番刺さるのか、一般の人たちの普及のきっかけになる要素は、まだこれからですよね。
今はギャンブル的な要素でユーザーが増えていると思いますが、それ以外の要素はまだ正解が出ていないような気がします。正直、私もWarpcastよりもXの方が圧倒的に使っています。FarcasterはデータがBANされない、検閲されないという点がXとの違いだと思いますが、まだネットワーク効果やユーザー数の多さ、UXの方が使う理由になってしまいますね。
-WaveHack Globalのテーマ設定は、これからキラーアプリにつながる領域、盛り上がるアプリケーション分野を考えたということでしょうか。
まさにその通りです。私も今のキラーアプリの予想を、今回のメインの3つのトラックに反映させています。1つ目が「AI Track」、2つ目が「Game+Social Track」、3つ目が「Utility Track」です。
基本的には、AIとゲームとソーシャル、この3つがうまく組み合わさったプロダクトが伸びるんじゃないかなと思っています。ゲームだけでもソーシャルだけでもなく、それが合わさったソーシャルゲームの要素に、AIのUGC自動生成などが加わる。AIが最初のオンボーディングをサポートし、ソーシャルゲームの価値を高め、自分の資産となっていく。そういったものが伸びるイメージを持っています。
そう考えると、エンジニアとしてはAIもブロックチェーンもアプリケーション開発も分かっていた方が有利ですよね。Web2のプロダクトを普通に作れるスキルは大事だと思います。
-web3のプロダクト開発は、Web2と比べてどの程度違うのでしょうか。
正直、web3系のプロダクトの8割9割は、普通のWeb2のプロダクトと変わらないです。アーキテクチャ的には、最後の送金のところだけスマートコントラクトやブロックチェーンを使う感じなので、基本的には普通のプロダクトを作る考え方と同じです。
そこに、データの保管や価値の保存、価値の交換、ゼロ知識証明のセキュリティ技術など、エコシステムが推している技術をちょっと使うぐらいの感覚です。
今回のWavebHackでは技術をがっつり使うと評価されるかもしれませんが、一方で課題ファーストで考えていくのもいいと思っています。
-Web2の知見があるエンジニアなら、web3への学習コストはそこまで高くない感じでしょうか。
そうですね。知り合いの例だと、2、3週間ぐらい1日1時間勉強したら動くものが作れたそうです。1ヶ月あればweb3エンジニアを名乗れるレベルには行けるんじゃないでしょうか。
RustやTypeScriptなど、従来の言語で書けるブロックチェーンもあります。Solidityも癖はあると言われますが、シンプルなトランザクション処理やNFT関連のツールとかなら比較的シンプルに作れるのではないでしょうか。
-なるほど。今の話を聞いていると、開発スタジオのような形でいろんなプロトコルやチェーン、インフラレイヤーにアプリを量産していくチームが生まれてきそうな感じがします。面白そうですね。
全然ありだと思います。例えば、Aptosのために毎週1個デリバリーしていくような軍団とか。そこでグラントを申請して評価してもらう。
ただ、コアチー…
📕TL;DR
・大企業がweb3に参入する時、web3企業と同じように戦おうとしても勝てない。
・資本で勝とうとせずに資産で勝とうとした方が良い。
・同じ戦場で同じ戦略をやって、資本力で勝てるだろうと思いがちだが、それでは勝てない。クリプトのナラティブとスピード感が全く違う。
・資産を提供して独自の戦略、もしくはweb3企業と組んで戦った方が良い。
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Author:mitsui @web3リサーチャー「web3 Research」を運営し、web3リサーチャーとして活動。
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今日は「日本DAO協会」そして日本式の「合同会社型DAO」について、Unyteファウンダーで新しく設立された日本DAO協会のRep Holderも務めるUwaizumiさんに根掘り葉掘りお伺いしたインタビュー記事となります。
5月7日(火)にLive Video Podcastイベントにて公開取材を行ったので、その様子を動画で添付しています。”Transcript”を開くと分数毎のAIによる文字起こしが見れますので、ぜひそちらも活用しながらご覧ください。
以下、文章はインタビューの抜粋になります。(一部、抜粋や要約も含みますので、正確な表現は動画をご覧ください)
-まずは自己紹介をお願いします
改めまして、今DAO協会のRep Holderという運営メンバーを務めさせていただいてるUwaizumiと申します。
UnyteというDAOを立ち上げる人向けのツールを運営しており、最近は合同会社型DAOにも対応しているなど、DAOのことばかりをやっているオタクみたいな人間です。今日はよろしくお願いします。
-web3にハマったきっかけ、これまでのキャリアについても教えてください
一番最初にDAOに出会ったのは、大学生の頃なのでICバブルの頃、2018年に大学の研究で知ったのがきっかけです。
当時経済学部にいたんですが、そのゼミの活動が新しいものについての勉強を結構するゼミだったんですね。機械学習を勉強したり、ブロックチェーンを勉強する機会がありました。最初はすごいデータベースがあるらしい、くらいの認識でしたね、笑。
そこからしばらくはそんなに深入りすることはなかったのですが、2021年の社会人になってすぐの頃にまたNFTがすごく流行っており、より深く勉強をさせてもらうようになりました。
その過程ですごくのめり込んでいきました。その中で自分も当時いろいろなDAOに参加して活動していたのですが、DAOのインフラを作る基盤がないという印象を受けたので、自分たちでDAO向けのツールを作って、まずは今あるDAOのご支援をするという形でスタートさせました。
-DAO協会、合同会社型DAOについて教えてください
もちろんです。いろいろややこしい部分があるなと僕も思っていてそれを整理するために自社でもいろいろまとめているので、そのイラストを共有しながらお話させていただきます。
一番最初のきっかけとしては、自民党のweb3プロジェクトチームっていうところがあり、その方々が提言してくれてDAOが法人格を持って作れるようになりました。
最初、DAOっていう存在は日本にもたくさんありますし海外にもありましたが、それは法律的に認められた団体というよりは、任意で有志で集まってるものだよねっていう捉え方をされました。
難しい言い方をすると”権利能力なき社団”とか言ったりするんですけど、人が集まって何かの活動をする、でも会社とかではなく、ルールも特段決まってないような団体というのが元々の状態です。
一方で、日本においても世界においてもDAOという団体がたくさんたくさん出てきて、何がしらの枠組みっていうのを設定しないと、例えばお金を扱うにあたっても、悪いことをしたという場合に罰することができないんですね。
また、銀行口座作ったりとかもきないので、いい方でも悪いものでもあまり活動の幅が広くないという状態だったので、DAOに法人格あげましょうよということになりました。そこから我々も提案する立場ではいたんですけど、自民党の人がいろいろ連携をしながら、枠組みを作らしていただいて、それを提言してもらいました。
結果、DAO法というものが公布されまして4月22日に法人格を持ってDAOというものを作れるようになりましたというのが今の状況です。この法人格をもったDAOを合同会社型DAOと呼んでます。
-DAO協会は広くDAOを広げていくための組織という位置付けでしょうか?
おっしゃる通りです。例えば、この他にもDAOのルール作りに着手したいときに、業界団体として継続しての法律提言ができる団体が必要だよねというような意見が、自民党側から上がってきていてそれの受け皿になった団体です。
-なるほど。合同会社型DAOで出来るようになったことをもう少し具体的にお伺いしてもよろしいでしょうか。
ざっくり言うとこの三つです。
一つはDAO参加権のNFTを販売してお金を集めることができるようになりました。これまでは証券や株式などと同じものとしてNFT自体も該当しちゃう可能性があったのですが、これをDAOの参加権つまり社員であることを表す権利として販売をできるようにしましたっていうのが一つ目です。
二つ目が、それに関連する制約になるのですが、とはいえ、誰でもかれでもDAO参加券を販売していいよって言うよってことではなくて、DAO業務執行社員という難しい言い方をしてるんすけど、いわゆる会社でいう偉い人みたいなポジションが合同会社型DAOにも存在していて、その人たちだけが参加券NFTを販売しても良いということになっています。
三つ目が、この形を合同会社型として作ることができるようになりましたという話です。本当のネイティブなDAOと合同会社をある意味でがっちゃんこして、あくまで合同会社の一環としてDAO的な運営をできるようになりましたっていうのが、今回の法律の改正です。
なので、いわゆる完全無欠のDAOがいきなり出来るようになったわけではなくて、合同会社の運営の仕方をDAOっぽくできますよっていうのが第1回目の法改正でできるようなった範囲です。
-参加券NFTはFTではダメなのでしょうか?
正確にはいろんな制約があるんですけど、基本的にはNFTが一番安全です。FTでやっちゃうと怪しい部分が一部出てきますね。
-これまでも、例えばCryptoPunks買って限定コミュニティに参加するなどのことはできましたが、それとの違いはありますか?
これまでのような参加券NFTを買って限定コミュニティに参加したり、参加券NFTを二次流通することで値上がり益を獲得するなどの行為は同じようにできます。
そして、それとは別に合同会社の利益の一部を配当として受け取ることができるようになってます。本来的には会社は利益を作るための団体ですし、それを分配するための仕組みも既にあります。これを株式でも合同会社でも配当って呼んだりするんですけど、その得られた利益の一部を株式会社であれば株主であったり合同会社であればその社員さんに分配をしますっていうことはこれまでもできてたんですね。
これは、合同会社型DAOにおいても全く同じで、このDAOの参加券NFTを持ってる人が、合同会社の利益の一部を配当として受け取るということができるようになってます。一方で、現状の法律だと、NFTホルダーさんは、出資額つまり自分がNFTを買ったときの金額以上の配当が受けられないようにはなっています。
例えば、10万円でNFTを買って社員になった人は、得られる配当は10万円までにはなってます。こういう一部制約はあるんですけど、活動の利益の一部を受け取ることが出来るようになったのはDAO法でできるようになったところの一つです。
ただ、先ほど少し出てきた業務執行社員という人たちは配当の上限もなかったりはするので、この辺りを上手いこと設計をする必要があると認識はしてます。
-業務執行社員とはなんでしょうか?
NFTホルダーは参加券NFTを持っているので社員に該当し、業務執行社員は株式会社でいう株主とか取締役のように、その会社の責任を負う人たちになります。この人たちはNFTホルダーとはまた違う扱いになっていて、会社の中で代表っぽい扱いになり、登記上に住所氏名のが乗る人たちです。
ただ、その会社を代表してる以上、得られる便益も大きくなっていて、先ほどの配当の制限っていうのがなくなり、出資額に関係なく配当を受けられます。NFTホルダーは匿名で参加できる分、受けられる配当に限りがあるという形ですね。
-配当以外で普通に給料として支給することもできますか?
それは一般的な会社と同じようにできますね。業務執行社員に対しても、NFTホルダーの社員に対してもできます。結局はDAO次第になるのですが、配当だけのDAOもあれば、社員さんに活動に応じて給料を支払うって形も自由に設定できます。
その一つ外にトークンホルダーというカテゴリがあるので、その方達は社員とは少し違う扱いにはなります。
-このトークンホルダーはDAOが発行している別トークンのことでしょうか?
そうですね。bitFlyerの金光さんの分類がすごくわかりやすいので、引用して説明させていただきます。この3種類の区分が存在しており、一番外側のDAOメンバーが先ほど言ったトークンホルダーで、社員が参加券NFTホルダーで、業務執行社員は先ほど出てきた役割を担う人たちです。
トークンホルダーは出資はしていないけど参加しているような方々です。Discordに参加しているけどNFTを買っていない方のイメージです。この方々は法律的には社員ではありませんが、活動に応じてトークンを渡しておくことはできます。僕らはリワードトークンと呼んでいますが、社員とかに関係なく活動に応じてトークンを渡して、それを獲得することでなんらかの便益が得られます。
-社員証NFTって何枚でも発行して良いんですか?
金融庁のガイドラインでは100万枚以下であれば、直ちに証券には該当しませんという指針が出てるので、基本的に100万枚以下に抑えておくのが安全っていうな考え方です。それを超えちゃうと証券扱いになり、ライセンスが必要になったりするので、基本的に100万枚までです。100万人の社員がいたらすごいですけどね、笑。
-海外の人も参加券NFTを買えますか?
現行の法律だと厳しいという回答になります。日本の法律ではダメという記載にはなっていないのですが、海外の法律の中で配当を受け取るものがダメな場合があるので、国内に留めておいた方が良いと推奨しています。
-ただ、匿名なので正直誰が買ってるかわからないですよね?
結論わからないです。一応日本の法律で社員の方の氏名住所を記載はしなきゃいけないんですね。ただ、これを外部に閲覧できない場所に保管することで匿名性を担保しているので、理論上わからないままになります。
なので、DAO運営者は購入してもらうときに”海外の居住者ではない”みたいなチェックボックスを作って買ってもらう形の配慮は必要なのかなと思ってはいます。
-業務執行社員は随時入れ替わるイメージですか?
入れ替わりは可能ですが、業務執行社員は定款に氏名住所を含め記載をされてる人たちなので、追加したりとか逆に減らしたりする場合には登記が必要になります。
なので、任期を設定したり、リワードトークンの報酬として業務執行社員になることを設定することも可能ではあります。
-意地悪な質問ですが、社員証NFTを発行して投票した結果に対して、業務執行社員が従う義務はあるのでしょうか?
これ難しいですね。僕もなかなか正確なアドバイスをしかねるところは正直あるんですけど、一応法律上はあるはずです。善管注意義務とか言われたりしますけど、一般的に会社の役員とか重役とかを務める場合に存在する義務っていうのは、同じく業務執行社員にも発生はします。
-解任みたいなことも起こり得るのでしょうか?
十分起こり得ます。
定款というその会社のルールを定めているルールブックみたいなのを会社ごとに作らないといけないんですけど、その定款に記載をしておくものになります。例えば業務執行社員を任命するときには、社員の総会が必要になりますとか、社員の50%の同意が必要になりますとか、そういうルールを会社ごとに決める必要があるので、それに則って業務執行社員を決めたり、場合によっては辞めさせる、新しく増やすことが可能になります。
-NFT買ったけど活動参加しない人がいることでデットロックのようなことは起こり得るのでしょうか?
そうですね、設定次第では起こり得ます。
なので、基本的には重要な決議は業務執行社員の決議で決めようみたいなルールにしているところが多いはずです。デットロックされちゃう前提だと色々動かなくなっちゃうので、、。
-専門家の方に相談しながら作らないと全然ワークしないDAOになっちゃいそうですね、、。
そうですね、その辺りは我々も弁護士さんに聞きながら色々作っていますし、一緒にサポートもしています。
一方で、その辺りを吸収するのが協会の役割でもあると認識をしているので、協会としてその定款のガイドラインみたいなのを作ってたりします。
-海外のDAO法との違いはあるのでしょうか?
海外のDAO法も曖昧な部分もあるので、正直これが違いますみたいな大きな差分というのは僕らも出しにくいところはあるんですけど、まずそもそも日本の会社の枠組みに合わせて法律を作ってるので、合同会社に準拠いただく必要があるのが多分一番大きい違いです。
海外においての法人格の枠組みって多分株式会社と合同会社ってよりはLLCとかが有名ですが、日本に枠組みに沿った形の法人格になります。また、海外のDAO法はDAOという枠組みを認めるという位置付けであって、配当などの詳しい位置付けが整理されているわけではないと思います。なので、法人格で配当などを作ってDAOを運営できるのは日本が最速なのではないかと思います。
-今はもう作れるんでしたっけ?
そうですね、作れます。定款を作って法務局に持っていけばDAO法人ができます。
-すでに作られている、もしくは今後設立予定の具体的なユースケースはありますか?
設立時点で想定してたケースっていうのは、やっぱりその資産の共同保有とか、なにがしかプロジェクトを皆さんで共同して進めていくっていうようなケースでした。
具体的に言うと、シェアハウスとかはみんなでお金を出し合って、それで、その集めた出資金額っていうのを使って、物件を買ったり借りたりし収益が得られます。他にも生成AIの研究のためのDAOなど、様々な法人格が出来始めています。
これまでグレーだったことが綺麗になって運営しやすくなったっていうワードが一番言い得て妙な気がします。これまでは法人口座作ったり、物件などの資産を保有したり、契約巻くこともできず、結局運営者の株式会社などで、契約したり、信用に頼ってはいるところが多かったので、そこが綺麗になりました。
-今後の展望などはありますか?
今回第一弾で法改正はできたのですが、我々としてもこれが完全だと思っていないのでアジャイル式に法改正の提言をしていきたいと考えています。
具体的に直近で考えていることは「海外の人の巻き込み」と「配当の制限」です。この辺りの制約をいい感じに考えて提言をしていきたいと思っています。
また、協会としてDAOツール等のネガティブチェックをして認証することもしているので、詐欺等が起こらないように業界として認証していく活動も積極的にやっていきたいと考えています。
-僕らが意見を言いたいときはDiscordとかに参加したら良いのでしょうか?
はい、Discordでオープンに議論していますので、意見はいつでも歓迎しています。ぜひ一緒に政策提言をしていけると嬉しいです。
https://discord.com/invite/fer5RGSqY8
-ありがとうございます、とても勉強になりました。最後にお知らせなどございますか?
ありがとうございます。
僕らが運営しているUnyteでもこれからは合同会社型DAOの設立だったり運営に必要な機能っていうのをどんどん追加をしていきたいなと思ってます。
その一つとして、合同会社型DAOの立ち上げができるパッケージを作っていきたいなと思っていまして、その一つがこの「LLC Unyte」というやつです。ちょっとご紹介させてください。
具体的には、先ほどお話したNFTの販売とか、社員名簿の書き込みは結構ややこしいアクションが必要になるので、その辺りをギュッて一つのツールにまとめました。
NFT販売のためのNFTの新規発行とか、また販売のサイト立ち上げとかを我々の方でやってサポートしますっていうのがまず一つ目の機能です。NFTの販売もクレジットカードで出来るので、暗号資産やウォレットを持たなくても社員証NFTを購入してDAOに社員として参加できるようになります。
あとは定款の作成もできます。ユーザーの方でポチポチと、住所入力してもらえれば、あとはこっちで分散保有、管理ができるパッケージになっています。基本的に定款の書き換えは都度必要になったりするんですけど、我々のツール使ってもらえば書き換えておきます。
それらを含めて合同会社型DAOの設立に必要なパッケージを提供していこうと思ってております。
-めちゃめちゃありがたいですね。
ありがとうございます。今はDAOを立ち上げた後のツールを作って運営していますが、これからはその一番前段階の販売の部分も担えるようになっていくので、ぜひ合同会社型を立ち上げの検討されてる方は、こちらも見ていただけたら嬉しいなと思っております。
興味あればぜひXのDMとか、またはHPのお問い合わせから送っていただけたら、誠心誠意対応させていただきますので、何卒よろしくお願いします!
Uwaizumiさん X:https://x.com/0xUYZUnyte HP:https://unyte.team/
-本日はありがとうございました!勉強になりました!
はい、こちらこそありがとうございました!
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おはようございます。web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は積極的にweb3を活用するグルメアプリ「SARAH」のCo-Founder&CEOである「さかいゆうや」さんへのインタビュー記事となります。
4月23日(火)にLive Video Podcastイベントにて公開取材を行ったので、その様子を動画で添付しています。”Transcript”を開くと分数毎のAIによる文字起こしが見れますので、ぜひそちらも活用しながらご覧ください。
以下、文章はインタビューの抜粋になります。(一部、抜粋や要約も含みますので、正確な表現は動画をご覧ください)
-まずは自己紹介をお願いします
はい、SARAHのさかいです。株式会社SARAHのCo-Founderで取締役CEOをしており、主にストラテジーを担当しています。2014年に学生時代に大学の先輩と共同創業し、10年ほど経営に携わっています。創業当初はWeb2のグルメアプリを作っていましたが、個人的には学生時代からweb3に関心を持っていました。本格的に触れ始めたのは2017年頃からで、2021年には会社としてもweb3化に舵を切りました。
-グルメ関連のサービスをずっと手掛けてきたんですね。
そうですね。投稿型のグルメアプリ「SARAH」を当時から運営していて、アプリ自体は変わらずそのままです。そこにweb3の要素であるトークンやNFTを付け足していった形ですね。
-web3に興味を持ったきっかけや理由を教えてください。
大学時代に在籍していたゼミの先生が、スタートアップやテクノロジーに詳しい方で、シリコンバレー黎明期に現地でマイクロソフトなどへの投資に関わった経験をお持ちでした。その先生から学生時代に、ビッグデータやブロックチェーンの話を聞いていたのが、web3に興味を持つきっかけです。
2017年頃から個人的にも仮想通貨などに触れ始め、すっかり面白さに魅了されました。一方で、自社のグルメアプリ「SARAH」はユーザーが口コミを投稿するCGM(Consumer Generated Media)モデルで、そこで集まる口コミデータを食品メーカーなどに販売するビジネスもしていました。CGMとデータ販売という事業構造は、web3的な要素と親和性が高いのではないかと感じ、web3領域での取り組みを始めました。
-先生の影響は大きかったんですね。当時からブロックチェーンの将来性を予見されていたのは、さすがだと思います。
本当にそうなんです。先生はweb3というワードがない時代から、テクノロジーの革新性とインパクトを語っていました。当時は半信半疑でしたが、今思えば先見の明があったなと感心します。
-プロダクトについて教えてください
「SARAH」は、メニュー単位でユーザーが食べたものを投稿・検索できるグルメアプリです。他の有名なグルメサービスは、お店自体の口コミを集めているのが一般的だと思います。例えば「新宿で美味しい中華料理店を探したい」といった場合に役立ちます。
一方、「SARAH」はお店ではなくメニュー一品一品にフォーカスした口コミを集めているのが特徴です。「新宿で美味しいナポリタンが食べたい」といった、より具体的なニーズに応えられるサービスを目指しています。
創業のきっかけは、共同創業者が「渋谷で美味しいポテトサラダが食べたい」と思ったことでした。検索しても、ポテトサラダを置いているお店は見つかるものの、味の良し悪しまではわからない。そこで、メニュー単位の口コミを集めるサービスを作ろうと考えました。
現在は月間200万人に利用していただいており、口コミは国内外60カ国から合計100万件以上集まっています。居酒屋に行ってポテトサラダが美味しかったら、そのメニューだけを撮影して投稿する。1回の来店で複数のメニューを投稿することもありますね。
個人のブロガーの方でメニュー単位の情報発信をされている方もいましたが、プラットフォームとしては私たちが先駆けだったと思います。日本だけでなく海外でも、同様のサービスは少ないですね。
-「SARAH」にweb3の要素を取り入れていった経緯を教えてください
当社は、「SARAH」で集めた口コミデータを分析し、食品メーカーなどに提供する「FoodDataBank」というBtoBサービスも運営しています。ユーザー投稿を企業に販売するモデルは、web3的な要素との親和性が高いのではと考えていました。
そんなことを考えている2020年頃、とりあえず「SARAH」のユーザーコミュニティとしてDiscordを立ち上げてみることにしました。「SARAH」のユーザーのほとんどはweb3もDiscordも知らないユーザーばかりなので、まず100人ほどで始めたクローズドコミュニティでスタートしました。そのコミュニティがとても盛り上がりました。ユーザー同士でオフ会を企画したり、お店のメニュー表の写真を次々投稿してくれたりと、自発的な活動が生まれました。わずか半年で1.2万件もの新メニューが登録されました。
トークンやロール、インセンティブ設計などweb3の概念はなかったものの、「SARAH」のビジョンである「世の中に美味しい体験を増やす」ことに共感したユーザーが自主的に動いてくれた。そこでこの活動をさらに促進するためにはトークンが有効だと考え、新たな取り組みを始めました。
現在は「SARAH」に投稿をするとトークン「UME」が付与され、それを使って飲食店ごとの「NOREN NFT」を取得できる仕組みを導入しています。ユーザーが「UME」で取得した「NOREN」は、お店に還元されるので応援の証となります。
NFTを発行するなどweb3らしい施策も打ち出していますが、そこまでweb3に馴染みのないユーザーにとっては、ハードルが高く感じる部分もあるかもしれません。
そこで、Avalancheのサブネットを活用し、ガス代なしでトークンやNFTを発行できるようにしました。ウォレットを持たなくてもNFTを所有できるERC6551のような仕組みも取り入れています。Web2のユーザーでも違和感なく使えるよう、工夫を重ねているところです。
UMEトークンも現在はオフチェーンで動いていますが、徐々にオンチェーンに移行していくことを考えています。
-ユーザーと店舗の反応はいかがでしょうか。
当社のユーザーはほぼWeb2のユーザーなので、NFTを意識して購入しているわけではないと思います。ただ「NOREN NFT」は、リリース3日で100個ほどミントされました。取得者の多くは、自分の好きな店を応援したり、そのお店に貢献している人だとアピールしたりする目的だと感じています。
NFTを保持している人は、そのお店のページに名前が載る仕組みにしています。例えば「NOREN」にはファン、アンバサダー、エバンジェリストの3段階のランクがあり、12回以上来店した人だけがエバンジェリストのNFTを取得できるなど、来店実績と連動させています。レベルが高い「NOREN」を持っている人は、そのお店の大ファンだとブロックチェーン上で証明できるわけです。
今後は、お店側が「UME」トークンを使って集客などに活用することも考えています。現在1日の獲得上限はありますが、その枠を超えて「UME」を獲得するために店舗が配布するなどの施策も可能性としてはあるでしょう。単なるポイントではなく、トークンならではのエコシステム設計を模索しているところです。
-お店が「UME」トークンを使って集客したりマーケティングに活用するには、まずSARAHに登録する必要があるのでしょうか
現状はそのようなフローはありません。お店ごとの「NOREN NFT」は、弊社が代理で作成している形です。「NOREN NFT」の取得に利用された「UME」トークンは全てお店に還元するつもりですが、お店からすれば「NORENが取得された=応援してくれる常連客がいる」ということに加えて、トークンも手に入るので、一緒にやりませんか?と声をかけやすいのではと考えています。
その流れができてから、お店がSARAHに正式に加盟するようになれば、「UME」トークンがもらえてマーケティングなどにも使えるようにしたいです。お店のファンが増えれば増えるほど、より多くの「UME」が使えるエコシステムを目指しています。
-ONIGIRI ChainをAvalancheサブネットで構築した理由を教えてください
2年ほど前に色々調べたところ、Avalancheがカスタマイズ性が高くガスレスでの運用も可能など、開発しやすいと感じたからです。元々は、自社アプリ「SARAH」をweb3化する過程で、トークンやNFTを発行するためのインフラとして構想しました。
ただ、せっかくブロックチェーンを構築するなら、自社アプリだけでなく食やヘルスケア業界全体に価値を提供できるのではと考えるようになりました。例えばグルメアプリ、レシピアプリ、ダイエットアプリ、小売りのPOSデータなど、食に関するデータは様々なサービスに分散していますが、同一ユーザーのデータが連携されていないのが課題だと感じていました。
自分が渋谷でブックマークしたお店が、どのアプリで記録したのか分からなくなるようなことがよくあります。ダイエットアプリ運営者からも、外食データが欲しいというニーズをお聞きしました。こうした課題は、web3のデータ連携基盤を作れば解決できるのではと。
また、せっかく集めたデータも、サービス終了と共に消えてしまうのはもったいない。ブロックチェーンなら半永久的にデータを残せます。そこで、食とヘルスケアに特化したパブリックブロックチェーン「ONIGIRI Chain」の構想に至りました。
-プライバシーに関わるデータを扱うために、パブリックチェーンとプライベートチェーンを分けているとのことでしたが、もう少し詳しく教えてください
ユーザーが何を食べているのか、病歴や体重などのヘルスケアデータは機密性が高いので、完全パブリックチェーンには載せにくいですよね。一方で、データ提供へのインセンティブとしてトークンを付与するなら、パブリックチェーンの方が適しています。
そこで、データ自体はプライベートチェーンに格納し、データ提供の対価としての「ONIGIRI」トークンをパブリックチェーン上で発行する、ハイブリッド構造を取ることにしました。Avalancheのサブネットを2つ立ててAvalanche Warp Messageで接続しています。
プライベート側のバリデーターは、セブンイレブンさんや味の素さんなど食領域の事業会社にお願いしたいと考えています。彼らはデータを活用したいニーズも高いはずです。私たちはすでに「FoodDataBank」というデータ分析サービスを提供していますが、「ONIGIRI Chain」でもバリデーターになってもらうことで、対価を得ながらデータにアクセスしてもらえるモデルを目指しています。
-SARAHのようなユーザーがデータを提供するサービスも増えていくイメージでしょうか?
はい。理想を言えば、食べログさんやクックパッドさんにもデータを提供してもらえたら素晴らしいですよね。ただ、各社のサービスをブロックチェーン対応させるのは時間がかかります。
そこで私たちは、誰でも簡単にNFTを発行できるサービスを準備しています。例えば、ハウス食品さんのレトルトカレーを食べた人にNFTを渡すことで、誰がカレーを食べたのかがブロックチェーン上で分かり、マーケティングにも活用できる。こうした切り口でまずは「ONIGIRI Chain」の利用を促していければと考えています。
Web2のサービスをいきなりweb3化するのは難しくても、NFTを通じたトークン化は比較的取り組みやすいです。だからこそ、まずはNFTの発行支援から始めることで、今は自社だけのインフラでも将来的には業界全体のデータハブになれると良いと思っています。
-データ連携の重要性は理解できるのですが、データを提供する企業側としては、自社の競争優位性を失いかねないというジレンマもありそうです。その辺りについてはどのようにお考えでしょうか。
その通りだと思います。データは競合優位性の源泉なので、例えば食べログさんやクックパッドさんのような競合他社とデータを共有するのは、なかなかハードルが高いでしょう。
ただ、飲食店向けのモバイルオーダーサービスのような、本業として飲食店にシステムを提供している事業者は状況が違います。実は、ユーザーの注文履歴という形で、どんな人がどんな料理を食べているのかといったデータが手に入っているんです。しかし、そのデータを使ったビジネスは彼らの本業ではないので、うまく活用しきれていないことも多い。
こうした、本業として収集しているものの十分に生かせていない副次的なデータは、世の中に意外と多く眠っていると思うんです。それをブロックチェーンに載せれば、トークン報酬というインセンティブを通じて、新しい価値を生み出せるようになるかもしれません。企業にとっても、今までの行動を変えずに済む上に、新たな収益源にもなり得る。利用者にもメリットのあるモデルが作れるのではと考えています。
-なるほど。確かにデータ提供企業のビジネスに影響を与えない形なら、Win-Winの関係が築けそうですね。
そうなんです。データ連携やAPI連携の議論の中で、データの価格設定が曖昧なブラックボックスになりがちなんです。データ提供側も利用側も、適正な対価がわからない。
この問題に対して、市場原理に基づいた価格形成ができる仕組みが必要だと考えています。しかし、現状ではデータの価格を決定する市場というものが存在しません。
そこで私たちは、「データを提供してくれたらONIGIRIトークンを付与する」というモデルを考えました。将来的に取引所に上場すれば、トークンの市場価格が形成されます。トークンの価値が、提供されたデータの価値と連動するようになれば、データの適正価格を市場のメカニズムで見出せるようになると思っています。
-例えば「SARAH」に投稿するとONIGIRIトークンがもらえたりするのでしょうか。
現状、ONIGIRIトークンは主に事業者向けに設計しています。ユーザーが「SARAH」に投稿した情報を、「SARAH」というサービスがONIGIRI Chainに提供することで、サービス運営者である私たちに対してトークンが発行されるイメージです。
将来的には、ユーザーに直接トークンを還元することも可能だと思います。ただ、「SARAH」の場合は独自のアプリ内トークンとして「UME」を発行しているので、他のサービスでも同様のことができるかもしれません。つまり、ONIGIRI Chain上で作られた各アプリのトークンは、ONIGIRIトークンに価値が裏付けられている、という構造が成り立つわけです。
-なるほど。ONIGIRIトークンが、色々なサービスを横断する共通の価値基盤になるというわけですね。
そうなるといいなと思っています。「SARAH」が発行する「UME」トークンや「NOREN NFT」は、ONIGIRIトークンのパブリック側で流通します。誰がどれだけのトークンやNFTを持っているのかが可視化されるので、ブロックチェーンならではのメリットも発揮できます。
-現在運営されているFoodDataBankをブロックチェーンに移行していくイメージでしょうか?
そうですね、ブロックチェーンを活用すれば、個人の食事データを数十年スパンで保管し、医療や創薬などの分野に活かすことも可能になります。
例えば、30代の食生活と、その人が80歳になった時の健康状態を紐付けて分析できれば、予防医療などに役立ちそうです。週に3回ラーメンを食べていた人は、こんな病気になりやすいといった知見が得られるかもしれません。しかし現状のWeb2のやり方では、個人のデータを50年100年といったスパンで管理し続けるのは困難です。
また、データの価値は使い道が広がるほど高まります。ある人の食事データを、その時々の商品開発やマーケティングに使うだけなら価値は一過性に留まりますが、未来の医療や製薬、保険といった領域にまで活用の幅を広げられれば、一つ一つのデータの現在価値はもっと上がるはずです。つまり、時間軸と用途の両面でデータの価値を最大化する。それを可能にするのがブロックチェーンの力だと考えています。
今はFoodDataBankで、「SARAH」で集めたデータを分析・可視化して販売していますが、将来的には、誰もがONIGIRI Chainのバリデーターになれば、FoodDataBankのようなサービスを作ることができる。データの民主化が進むことで、価値還元の幅も広がります。そうしてデータ提供者に還元された価値を元手に、さらに業界に投資していく。そんな好循環が生まれることを目指しています。
-お答えできたらで大丈夫ですが、今後の開発体制ですが、SARAHは株式会社で運営され、トークン発行体がファンデーションになるなどの構想はあるのでしょうか?
「SARAH」アプリに関しては、今のところ自社での開発を継続する予定です。一方、「ONIGIRI Chain」に関しては、本来であればパブリックグッズとしてファウンデーションに移管したいという思いがあります。ただ、「SARAH」という株式会社の形で始めたという経緯もあり、そのタイミングや方法についてはまだ検討中の段階ですね。
将来的に、外部のパブリックブロックチェーンに移行すると、現在の「SARAH」のビジネスモデルにも影響が出るでしょう。とはいえ極論を言えば、データというのはユーザー個人のものであって、企業は収集しただけに過ぎない。これからは、どういう形でデータを集めたのか、どう分析したのかといった点で企業の真価が問われる時代になるのかもしれません。もちろん、簡単には切り替えられませんが、そういった思想は持っておく必要があると考えています。
-「SARAH」の面白さの一つは、Web2から出発して、そこにweb3の要素を加えていった点だと思います。最初からトークンインセンティブありきではないのが特徴的ですよね。
おっしゃる通りです。多くのweb3サービスは、トークンありきで無理矢理ユースケースを作っている印象があります。対して「SARAH」は、web3というソリューションを使っているだけで、我々のビジョンは一貫して「世の中に美味しい体験を増やす」ことです。ポイントは、ユーザーのロイヤリティや能動的な活動を促して、それを可視化・証明するためにNFTを活用している点ですね。
この実現のために大切にしているのが、トークン発行の意義を問い直すことです。「SARAH」が「UME」トークンを発行する理由は、法定通貨では測れない価値を数値化するためです。例えば、ユーザー同士がオフ会を開催したり美味しいお店を紹介したりする行為は、誰かの美味しい体験を増やしているのに、それに値段を付けるのは難しい。1,000円渡そうとはなかなか思わないですよね。けれどその行為自体に価値があるのは事実。その価値を可視化するために「UME」トークンを設計しました。
「NOREN NFT」についても同様の思想があります。よくあるNFTは…
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