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パレードを挟んで道の反対側に、博がいた。博も、かなめの姿を見つけたようだ。パレードの列が途切れ、警備員が道を横断する歩行者を通す。警備員の笛に追い立てられるように、二人はリバレイン側に渡った。人ごみを避けて、博多川添いを歩き続ける。リバレイン裏手の鏡天満宮の前で、ようやく二人きりになって向き合った。止まった時計を動かそう。そう思って、かなめから口を開いた。「九年前……、あの時のことから、話さんといかんと思うと」「あの時、私は本当に博君の告白にオーケーしたとよ。でも、あの矢が、自分に向けて逆さまに飛んできたごたる気がして、思わず手ば離してしまったと……」かなめは目をつぶって、博の返事を待っていた。「……素直に謝るかと思ったら、まだそんな言い訳をするつもりなのか」目を開けると、博は表情を一変させ、氷のように冷たいまなざしを、かなめに向けていた。
パレードを挟んで道の反対側に、博がいた。博も、かなめの姿を見つけたようだ。パレードの列が途切れ、警備員が道を横断する歩行者を通す。警備員の笛に追い立てられるように、二人はリバレイン側に渡った。人ごみを避けて、博多川添いを歩き続ける。リバレイン裏手の鏡天満宮の前で、ようやく二人きりになって向き合った。止まった時計を動かそう。そう思って、かなめから口を開いた。「九年前……、あの時のことから、話さんといかんと思うと」「あの時、私は本当に博君の告白にオーケーしたとよ。でも、あの矢が、自分に向けて逆さまに飛んできたごたる気がして、思わず手ば離してしまったと……」かなめは目をつぶって、博の返事を待っていた。「……素直に謝るかと思ったら、まだそんな言い訳をするつもりなのか」目を開けると、博は表情を一変させ、氷のように冷たいまなざしを、かなめに向けていた。