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すべての人がパレードに巻き込まれる中、一人の男が、はじき出されたように、呆然とした表情でたたずんでいた。「博君、どうしたと……?」博は混乱した表情で、かなめとのいさかいも忘れたようだ。「俺……、いったいどうしたんだ。かなめと別れた後、いつのまにか驛長と一緒にいて、博多部を封鎖して怨念を集めるお先棒を担がされていたんだ……」「この傘鉾は……?」博はかなめの後ろに立つ、傘鉾を見やった。「あの、声の主たい」かなめは博と共に、傘鉾の中に入った。「かなめと博よ……。お前たちが離ればなれになって九年。ようやく二人して博多に揃ったとに、なして、そげんいがみ合うとか? お前たちば再び結びつけんと、私の力は戻らんとぞ」「何のことだ?再び結びつけるって」「覚えとらんとね。住吉神社の歩射祭たい」博との最初で最後のデートの日、矢が射られた瞬間、つないだ手が燃えるように熱くなって、思わず手を離した。その時、目の前にいた着物姿の人物が、忽然と姿を消してしまったのだ。「それじゃあ、あの時、私たちの目の前に立っとったとって……?」
すべての人がパレードに巻き込まれる中、一人の男が、はじき出されたように、呆然とした表情でたたずんでいた。「博君、どうしたと……?」博は混乱した表情で、かなめとのいさかいも忘れたようだ。「俺……、いったいどうしたんだ。かなめと別れた後、いつのまにか驛長と一緒にいて、博多部を封鎖して怨念を集めるお先棒を担がされていたんだ……」「この傘鉾は……?」博はかなめの後ろに立つ、傘鉾を見やった。「あの、声の主たい」かなめは博と共に、傘鉾の中に入った。「かなめと博よ……。お前たちが離ればなれになって九年。ようやく二人して博多に揃ったとに、なして、そげんいがみ合うとか? お前たちば再び結びつけんと、私の力は戻らんとぞ」「何のことだ?再び結びつけるって」「覚えとらんとね。住吉神社の歩射祭たい」博との最初で最後のデートの日、矢が射られた瞬間、つないだ手が燃えるように熱くなって、思わず手を離した。その時、目の前にいた着物姿の人物が、忽然と姿を消してしまったのだ。「それじゃあ、あの時、私たちの目の前に立っとったとって……?」