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かなめは冷泉公園に向けて走った。工事現場の看板の前だ。「ほら、この写真ば見て。ここにあった噴水と花壇、黒田藩の藤巴の家紋に、似とると思わん?」「確かに、写真は藤巴の紋に良く似てるけど、もう工事で花壇は撤去されてるみたいだし、無理じゃないかなぁ……」傘鉾のマイヅル様と共に、壁の中の工事現場に入り込んだ。――私に残った力で、この場所だけば、一年前に戻してみるばい――傘鉾の回転が速まると共に、地面の下から、一年前までここにあった、藤巴の紋の形の花壇の姿が浮かび上がった。だが、封鎖が破られた様子はなく、相変わらずシュプレヒコールが続いている。――今の私の力じゃ、これが精一杯たい。この藤巴の刻印自体に力ば発揮させんと、槍ば引き寄せられんごたるな――万策尽きてしまった。おばあちゃんは今も、抗うこともできずに踊り続けているのだろう。かなめは思わず、涙を流した。「かなめ……」「な、何ね、泣きよるっちゃなかよ。めぇのはまから雨が降ってきただけたい」
かなめは冷泉公園に向けて走った。工事現場の看板の前だ。「ほら、この写真ば見て。ここにあった噴水と花壇、黒田藩の藤巴の家紋に、似とると思わん?」「確かに、写真は藤巴の紋に良く似てるけど、もう工事で花壇は撤去されてるみたいだし、無理じゃないかなぁ……」傘鉾のマイヅル様と共に、壁の中の工事現場に入り込んだ。――私に残った力で、この場所だけば、一年前に戻してみるばい――傘鉾の回転が速まると共に、地面の下から、一年前までここにあった、藤巴の紋の形の花壇の姿が浮かび上がった。だが、封鎖が破られた様子はなく、相変わらずシュプレヒコールが続いている。――今の私の力じゃ、これが精一杯たい。この藤巴の刻印自体に力ば発揮させんと、槍ば引き寄せられんごたるな――万策尽きてしまった。おばあちゃんは今も、抗うこともできずに踊り続けているのだろう。かなめは思わず、涙を流した。「かなめ……」「な、何ね、泣きよるっちゃなかよ。めぇのはまから雨が降ってきただけたい」