心を磨く人間関係教室

ep441:【禅語シリーズ】千里同風(せんりどうふう)


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出典は、中国最古の詩集「詩経(しきょう)」。中でも、小雅(しょうが)つまり日常生活や身近なひとへの思いなどを集めた部分にある。

唐代(800年代)の禅僧・玄沙(げんさ)は、使いの者に禅僧・雪峯(せっぽう)への手紙を託した。雪峯が開封すると、何も書かれていない紙一枚が入っていた。使いの者が「え?なんで?」と戸惑っていると、雪峯が「遠く離れていても、同じ風が吹いているのだよ」と

教えた。…という話が残されています。

遠く離れていても、同じ風が吹いている。この空はどこまでも続き、大地はつながり、人々の心もつながっている。何も言わなくても、何も書かなくても、同じ心で生きている。

…ということでしょうか。

この言葉は一般に、「広大な土地に同じ良い風が吹くように、国中が平和で安定している」と解釈されます。

「同風」を、いきなり「同じ良い風」と訳し、離れていても心はひとつ。みんな繋がっている。素晴らしい!となるわけです。

おそらく正解なのでしょうが、へそ曲がりな私は、こんなことを思うのです。

仮にあなたが、辛く苦しい日々を過ごしていたり、誰かへの嫉妬や怨みを抱えているとします。心は鬱々として、ネガティブな思いにとらわれていることでしょう。

あなたは、そんな自分をダメだと感じるかもしれません。自分が弱いから、心が狭いから、優しくないから、勇気がないから、元気がないから、お金がないから、友達がいないから…。と、ダメダメ要因を数え上げているかもしれません。

ところで、雪峯の教えは「遠く離れていても、同じ風が吹いている」でした。

あなたが悲しいなら、この悲しみは遠く離れた地の、見ず知らずの人とも繋がっています。縁もゆかりもない遠方の人の悲しみが、風にのってあなたのところに届いているのかもしれません。

あるいは、多くの人の悲しみが、あなたに影響を与えているのかもしれません。

お伝えしたいのは、あなたに起きていることは、あなただけのことではない、ということです。

あなたに、自分をダメだと思わせるような何かが、世界のどこかで起きているのかもしれません。

というわけで、自分を責めるのをやめましょう。

どこかの、誰かの、何かの影響を受けて、今のあなたがあります。遠くの風が、あなたを苦しめているだけかもしれません。

ただ、「あぁ、今、しんどいなぁ」と、「きっと、たくさんの人が、同じ気持ちでいるんだろうなぁ」と感じていてください。

良いことも、良くないことも、あなただけに起きているのではありません。誰もが良いことと良くないことを体験しながら、繋がって生きているのです。






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心を磨く人間関係教室By TOMOKO