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9月11日、米ReutersがThe Informationの報道として、アリババと百度が自社開発のAIチップで生成AIモデルの“学習”を始めたと伝えました。アリババは年初から小規模モデルでの学習に自社チップを投入、百度は「Kunlun P800」で次期Ernieの学習テストを進めているとのこと。長らくNVIDIA製GPUに依存してきた中国AIエコシステムで、部分的ながら潮目が変わり始めた格好です。
この動きの背景には、米国の対中輸出規制の強化があります。最先端のGPUが潤沢に手に入らない環境下で、両社は“使えるところから自社チップを使う”段階的な置き換えに着手。とはいえ最先端の巨大モデルでは依然NVIDIAが主力という現実も併存しており、しばらくはハイブリッド運用が続く見通しです。
百度は4月、P800を3万枚束ねたトレーニング・クラスターを公表し、「DeepSeek級の学習が可能」と強調していました。今回の“自社チップでの学習テスト”報道は、その延長線上にあります。性能の絶対値だけでなく、自社クラウドとアプリ群(検索、地図、動画)に最適化できる点が、競争力の源泉になりそうです。
一方のアリババは、直近でゼロクーポン転換社債による約32億ドルの資金調達を発表。約8割をデータセンター増強や技術アップグレードに充てる計画で、クラウドとAIの“土台”を厚くしつつ、自社チップ活用の間口を広げる構えです。市場では自社チップがNVIDIA H20の代替になり得るとの観測も出ており、まずは小型モデルから段階的に実績を積む戦略が見て取れます。
総じて、今回の報道は“完全な脱NVIDIA”ではなく、“リスク分散と最適地産地消”への舵切りを意味します。短期的には、モデル規模や用途で自社チップとNVIDIAを使い分けるマルチアーキテクチャ時代が続くでしょう。中期的には、ソフトウェア互換性・ツールチェーン・製造歩留まりの3点が勝負所。ここを乗り切れれば、中国勢のAI学習はサプライチェーンのボトルネックから一定の自律性を獲得し、研究開発の回転数を一段引き上げる可能性があります。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。
By ikuo suzuki9月11日、米ReutersがThe Informationの報道として、アリババと百度が自社開発のAIチップで生成AIモデルの“学習”を始めたと伝えました。アリババは年初から小規模モデルでの学習に自社チップを投入、百度は「Kunlun P800」で次期Ernieの学習テストを進めているとのこと。長らくNVIDIA製GPUに依存してきた中国AIエコシステムで、部分的ながら潮目が変わり始めた格好です。
この動きの背景には、米国の対中輸出規制の強化があります。最先端のGPUが潤沢に手に入らない環境下で、両社は“使えるところから自社チップを使う”段階的な置き換えに着手。とはいえ最先端の巨大モデルでは依然NVIDIAが主力という現実も併存しており、しばらくはハイブリッド運用が続く見通しです。
百度は4月、P800を3万枚束ねたトレーニング・クラスターを公表し、「DeepSeek級の学習が可能」と強調していました。今回の“自社チップでの学習テスト”報道は、その延長線上にあります。性能の絶対値だけでなく、自社クラウドとアプリ群(検索、地図、動画)に最適化できる点が、競争力の源泉になりそうです。
一方のアリババは、直近でゼロクーポン転換社債による約32億ドルの資金調達を発表。約8割をデータセンター増強や技術アップグレードに充てる計画で、クラウドとAIの“土台”を厚くしつつ、自社チップ活用の間口を広げる構えです。市場では自社チップがNVIDIA H20の代替になり得るとの観測も出ており、まずは小型モデルから段階的に実績を積む戦略が見て取れます。
総じて、今回の報道は“完全な脱NVIDIA”ではなく、“リスク分散と最適地産地消”への舵切りを意味します。短期的には、モデル規模や用途で自社チップとNVIDIAを使い分けるマルチアーキテクチャ時代が続くでしょう。中期的には、ソフトウェア互換性・ツールチェーン・製造歩留まりの3点が勝負所。ここを乗り切れれば、中国勢のAI学習はサプライチェーンのボトルネックから一定の自律性を獲得し、研究開発の回転数を一段引き上げる可能性があります。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。