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Ep.569 中国、NVIDIAに「独禁法違反の疑い」──SAMRが暫定調査結果を公表(2025年9月18日配信)


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9月15日、中国の国家市場監督管理総局(SAMR)は「暫定調査の結果、NVIDIAが中国の反独占法に違反した」と発表し、さらに詳しい調査に入ると明らかにしました。詳細は示されていないものの、発表直後にNVIDIA株は時間外で約2.6%下落。米中通商交渉の只中で、半導体を巡る駆け引きが一段と強まった格好です。


SAMRの公式リリースは、2020年のMellanox買収に対し中国が下した「付加制限条件付き承認」に照らし、独禁法と当該承認公告に違反があったと“初歩的に”判断し、追加調査を決定したと記載しています。つまり容疑の射程は、当時の条件履行に関わる可能性が高いということです。


この案件の背景として、SAMRは2024年12月にNVIDIAを独禁法容疑で正式に調査開始。以降、米中の半導体を巡る対立の節目で、調査の存在と範囲が折に触れて報じられてきました。関係筋や専門家の整理では、2020年承認時の条件に「相互接続の確保」「差別的条件の禁止」「抱き合わせ販売の回避」などが含まれていたとされ、今回の“違反”もこの線に沿うとの見立てが浮上しています(現時点で当局の具体的指摘は未公表)。


市場インパクトも無視できません。ロイターは、独禁法違反で科され得る制裁金の幅を「売上高の1~10%」と整理。バロンズは、当局の動きを受けて株価が2.5%下落し、中国向けの新製品H20を巡って当局が国内企業に“慎重姿勢”を促しているとの観測も紹介しました。短期的には中国売上のボラティリティが増し、供給・価格・製品ミックスの見直し圧力が高まる展開です。


タイミングも政治的です。今回の発表は米中の通商協議と歩調を合わせる形で示され、英語版ブルームバーグは「ワシントンへの圧力を高める動き」と位置づけました。独禁当局の暫定判断は、最終結論・制裁の有無に直結するわけではないものの、交渉テーブルに“規制カード”が一枚積み上がったことは確かです。


業界の視点では、NVIDIAのデータセンター事業はGPUとMellanox由来のネットワーキングを一体で磨き上げてきたのが強み。だからこそ中国当局が“相互接続や取引条件の中立性”に神経を尖らせやすい構図があります。最終的な認定内容と是正措置の中身次第では、販売形態やサポート契約、パートナー・エコシステムへの接し方にまで波及しかねません。現段階は「暫定判断→本格調査」への移行フェーズ。投資家・事業会社ともに、当局がどの行為を違反と見做すのか、そして是正の条件がどこまで具体に及ぶのかを注視する局面に入りました。


今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki