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Ep.576 英AI投資ラッシュ──Microsoft・Google・OpenAI×NVIDIAが英国内に“新しい計算地図”を描く(2025年9月18日配信)


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9月16日、英国でAIインフラ投資の“束ね打ち”が始まりました。まずMicrosoftが2025~2028年の4年間で総額300億ドルをコミット。そのうち150億ドルをクラウドとAIインフラの設備投資に振り向け、英Nscaleと共同でNVIDIA製GPUを2万3千基以上搭載するスーパーコンピューターを建設すると公表しました。これは同社の英史上最大の投資で、英国内のCopilot・Azure需要の受け皿を一気に厚くする狙いです。


同日、Googleも英国に50億ポンドの投資を発表しました。ロンドン近郊ウォルサムクロスの新データセンター稼働を含み、検索やCloud、WorkspaceなどAI駆動サービスの伸長に対応。英財務相レイチェル・リーブス氏が開所式に出席し、雇用・エネルギー面の波及効果にも言及しました。


一方で、OpenAIとNVIDIAはNscaleと組んだ英データセンター投資を“数十億ドル規模”で準備していると、ブルームバーグが先行報道。モデル学習・推論の現地提供を視野に、欧州での計算分散とデータ主権への配慮を両立させる構図が浮かびます。


これらの民間投資は、米大統領の英訪問と歩調を合わせて発表された英米テック協力「Tech Prosperity Deal」と重なります。ロイターは総額420億ドル規模のパッケージの下で、AI・量子・炉心技術などを含む官民連携が強化されると伝えました。政治イベントに合わせて“インフラ・人材・規制”を一体で進める英政府の姿勢が、ビッグテックの大型コミットメントを呼び込んだ格好です。


実務的な意味合いに目を移すと、第一に「レイテンシと主権」の改善です。国内スーパーコンピューターとデータセンター群の増強は、英国・欧州ユーザー向けの推論遅延を下げ、金融・公共など規制の厳しい領域で“英国内処理”の選択肢を広げます。第二に「サプライ網の多層化」。NVIDIAの供給を核に、Microsoftの既存クラウド、Nscaleの専用DC、そして将来のOpenAI運用基盤が重層的に並ぶことで、巨量の学習・推論を分散吸収できる体制が整います。第三に「電力・系統のボトルネック」。英北東部やロンドン圏で進む複数案件が送電容量と系統接続を争う現実は厳しく、許認可や系統増強と“同時並行での産業設計”が問われます。


総じて、今回の投資群は“欧州のAI計算地図に英国という太い柱を立てる”動きです。Microsoftの即時性ある30Bコミットと、GoogleのDC稼働開始が“まず効く”近景を作り、OpenAI×NVIDIA×Nscaleの構想が中期の拡張余地を開く。政策の側面からは英米の枠組みが追い風となり、企業にとっては「英国を起点に欧州へ」展開する現実的な足場が見えてきました。投資と同時に、人材育成・電力調達・規制運用の三点をいかに並走させるか──ここが“新しい計算地図”を持続させる鍵になります。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki