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Ep.579 “表示するメガネ”の本命──Meta Ray-Ban DisplayとEMGリストバンドが切り開く次のUI(2025年9月25日配信)


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米時間9月17日、MetaはConnectで「Ray-Ban Display」を発表しました。右レンズの端に“必要なときだけ現れる”カラー表示領域を持ち、メッセージのプレビューや写真確認、翻訳、Meta AIのビジュアル回答などを短いインタラクションでこなします。価格はリストバンド同梱で799ドル、米国では9月30日にBest BuyやLensCraftersなど一部店舗で販売開始、カナダ・仏・伊・英への展開は2026年初頭を予定と説明されました。カラーはBlackとSand、グラスは日常使いで約6時間、充電ケース併用で最大30時間の運用をうたいます。


特徴は“手を触れずに操れる”こと。同梱のMeta Neural Bandは手首のEMG信号から微細な指の動きを読み取り、スクロール・決定・音量調整まで直感的に制御できます。バンドは最大18時間駆動、IPX7の耐水、素材には火星探査機のクラッシュパッドにも使われたVectranを採用といい、研究参加者は累計約20万人にのぼるとMetaは述べています。可動が難しい人にとってのアクセシビリティ向上にも配慮した設計です。


機能面では、WhatsApp/Messengerのテキストや動画通話の表示、カメラのプレビュー&ズーム、歩行者向けナビのベータ提供、会話のライブ字幕と一部言語のリアルタイム翻訳、音楽カードの表示と指先操作などを実装。ディスプレイは視界を塞がない位置にあり、“スマホを顔に貼り付ける”のではなく日常動作の合間にサッと使う思想が強調されました。主要メディアのハンズオンでも、通知・字幕・ナビの“使い所がはっきりしたHUD”として評価が紹介されています。


製品の位置づけも明快です。MetaはAIグラスを「カメラ型」「ディスプレイ型」「AR型」の三層に整理し、Ray-Ban Displayを“表示に軸足を置く第二層”として投入。最上位の本格ARはOrion系で継続開発中としつつ、まずは日常を崩さないフォームファクタで“見せる・導く”体験を普及させる戦略です。同日発表のスポーツ向け「Oakley Meta Vanguard」や既存Ray-Banラインの拡充も相まって、利用シーンごとに棲み分けるポートフォリオが整ってきました。


発売・価格・機能の三点がそろった今回の発表は、ウェアラブルの主役が「通知だけのスマートウォッチ」から「見せる×話す×指先で操る“顔のUI”」へ広がる転換点です。スマホ依存の“取り出す→見る→戻す”という動線を、メガネ+リストバンドで“視線→一指動作→完了”に短縮する。この“短い動線”が日常の隙間時間に溶け込めるか――ここが普及のカギになります。まずは米国での初期ユーザーの評価が、2026年の国際展開の地合いを決めるでしょう。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki