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Ep.583 世界最強のAIデータセンター、ウィスコンシンで可動──Microsoft「Fairwater」の中身(2025年9月25日配信)


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マイクロソフトは現地18日、公式ブログで「世界最強のAIデータセンター」とうたう新拠点「Fairwater」を米ウィスコンシン州マウント・プレザントで披露しました。敷地は315エーカー、3棟合計で約110万平方フィート。基礎杭延長46.6マイル、鋼材2650万ポンド、地中中電圧ケーブル120マイル――その物量はまさに“工場”。数十万枚規模の最新GPUを単一のフラットネットワークで束ね、「現行世界最速スーパーコンピュータの10倍性能」を目指すと述べています。


心臓部はNVIDIAのGB200群。1ラックあたりBlackwell GPUを72基載せ、NVLink/NVSwitchで1.8TB/秒のGPU間帯域を確保。各GPUが14TBのプールメモリにアクセスでき、ラック全体が“1台の巨大アクセラレータ”として振る舞います。ブログはこの構成で「1ラックあたり毎秒86.5万トークンの処理」をうたい、学習・推論の両面で桁違いのスループットを狙うと説明しました。


この“巨大計算機”を成り立たせる工夫が、ネットワークと配置です。ラック間はInfiniBandとEthernetの800Gbpsファブリックで全結合(フル・ファット・ツリー)。さらに物理距離の遅延を詰めるため、ラックを上下にも配した二層構造のホールでホップ数を抑え、数万GPUが“ひとつの頭脳”として並列動作できるよう設計されています。


冷却はクローズドループ液冷を施設規模で実装。冷水をサーバへ循環させる閉回路により運用時の水を実質ゼロ化し、設備側では世界2位規模の水冷チラープラントと、20フィート級の巨大ファン172基で熱を放出します。Microsoftによれば同社DC容量の9割超がこの方式へ移行済みで、古典的な空冷に比べて水資源の負荷を大幅に下げられるといいます。


ストレージも“AI速度”に合わせて再設計されました。FairwaterにはAI計算用とは別に、エクサバイト級のデータを捌く専用ストレージDCを併設。Azure Blob Storageはアカウント単位で秒間200万回超の読書きをさばけるよう最適化され、GPUノード局所の学習I/Oに高スループットで応答する構成が明かされています。


そしてFairwaterは単独で完結しません。Microsoftは英国ロートン(Loughton)ではnScaleと組み“英国内最大級のスーパーコンピュータ”を、ノルウェー・ナルヴィクではnScaleとAkerのJVと再エネ駆動のAIデータセンターを計画中。これらをAI WANで束ね、地域をまたぐ分散学習も視野に入れるとしています。英国投資は300億ドル規模、ナルヴィク計画は約62億ドル規模と伝えられ、欧州分散の柱づくりが進みます。


要するに、Fairwaterは“とてつもない一拠点”であると同時に、“つながる前提の一枚歯車”です。国内外の同型AIデータセンターを横串にし、AI WANで“施設の壁”を越えて計算・ストレージ・ネットワークをオーケストレーションする。レイテンシや主権要件に配慮しつつ、フロンティア級の学習・推論をより多くの国と企業に届ける――Microsoftの狙いはそこにあります。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki