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Ep.585 OpenAI、Appleの“ものづくり”部隊を直撃──ルクスシェアと手を組むAIデバイス計画(2025年9月25日配信)


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米The Informationは、OpenAIがAppleのハード・デザイン・サプライチェーンの人材を相次いで採用し、さらにAppleの主要組立業者Luxshareと組んで“ポケットサイズ”のAIデバイス試作を進めていると報じました。記事は有料ですが、同内容はロイターなど複数の一次級メディアが追認。スマホに代わる“AIネイティブ”機器を狙う動きが、一段具体になってきました。


ロイターによれば、Luxshareは大規模製造の経験をOpenAI側に提供し、Goertekにもスピーカーモジュール等で打診があったとされます。デバイスは“文脈把握ができる携行型”の試作段階で、ChatGPT系モデルと密に連携する設計がうたわれました。スマートフォンや従来機器の支配的地位に対し、別レーンから挑む構図です。


人材面では、2025年だけで“二桁後半”規模の元Apple社員がOpenAI入りしたと専門メディアが整理。AppleのUI、ウェアラブル、カメラ、オーディオの中核経験者が含まれ、なかでも元iPhone/Watchのプロダクトデザイン幹部Tang Tanがハード部門を率いると伝えられています。マスプロの設計〜製造移行を熟知した布陣を、最初から前提にしているわけです。


背景には、OpenAIが“形ある製品”へ踏み込むための土台づくりがあります。2025年5月、同社はJony Iveが共同創業したio Productsを約65億ドルで買収。Ive/LoveFromは独立を保ったまま、OpenAIの製品全体で深いデザイン責任を担うと公表しています。デザインの思想と量産の現実――その橋を最初からかける体制です。


時間軸は慎重に見たいところです。一部報道は“2026年後半以降の投入”に言及しますが、量産の難易度や規制・サプライチェーンの調整を踏まえると、第一弾は限定提供や用途特化からの始動が現実的でしょう。いずれにせよ、AIアシスタントが“手のひらの端末”として独り立ちするか、スマホの従属デバイスに留まるか――ここが勝負所になります。


産業への示唆は三つです。第一に、生成AI企業が“自前の体験”を最後まで作り切るため、サプライチェーンに直接アクセスし始めたこと。第二に、Appleの“人と仕組み”が持つ量産移行の知を、AI時代の新カテゴリへ持ち込むことで、ソフト発の企業でもハード立ち上げが現実線に入ったこと。第三に、音声・視線・身振りといった“非画面UI”が主役になるとき、何をどこまでデバイス側で処理し、何をクラウドに預けるか――プライバシーと体験速度の設計が新しい競争軸になることです。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki