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9月17日、イタリア議会が包括的なAI規制法を可決し、EUで最初に“国内版”を整えた国になりました。法律は「人間中心・透明・安全」を掲げ、医療や職場、教育、司法、行政まで横断して“トレーサビリティ(追跡可能性)”と“人による監督”を義務づけます。14歳未満の利用には保護者同意を要し、AI生成物の悪用、特にディープフェイクで被害が生じた場合は最長5年の禁錮刑を含む厳罰が科されます。
執行体制は、デジタル・イタリア庁(AgID)と国家サイバーセキュリティ庁(ACN)が主管。当局間の役割分担として、中央銀行(イタリア銀行)や市場規制(Consob)など既存監督機関の所掌も維持され、分野別の罰則や監督と“AI横串ルール”を重ねる設計です。著作権では、AI“支援”であっても人の知的努力が認められる創作は保護対象としつつ、TDMは非著作物か認可研究機関の学術目的に限定されます。
産業面の火種も同時に置かれました。政府系ベンチャーファンド経由で最大10億ユーロの投資枠を用意し、AIやサイバー、通信などへの出資を促進する方針です。ただし国際的な投資規模と比べ“小粒”との指摘もあり、規制と成長の両輪をどう厚くするかが次の論点になります。
EU全体の文脈では、AI Actが2024年8月に発効済みで、6〜36カ月の猶予期間を経て各義務が段階適用されます。イタリアの“先行整備”は、他加盟国の国内実装にも影響を及ぼす見込みです。企業の実務では、未成年アクセス管理、生成物のラベリングと流通管理、説明可能性ログ、人の最終判断プロセスの明文化――これらを“出荷前仕様”として織り込むことがEU展開の新標準になっていきます。
最後に日本の事業者目線での含意です。イタリア法は“使い方の設計”を詳細に求めています。EU域内向けの生成AIプロダクトは、利用者年齢の検証フロー、ディープフェイク申告と削除の実装、モデル学習におけるTDMの適法性確認、そして医療・職場など高リスク領域での人の監督証跡――この4点を先に設計しておくと、域内拡張での手戻りを減らせます。国内外の報道も同趣旨で整理しており、今回の先行例は“規制を味方にする設計図”として活用価値が高いと言えます。
By ikuo suzuki9月17日、イタリア議会が包括的なAI規制法を可決し、EUで最初に“国内版”を整えた国になりました。法律は「人間中心・透明・安全」を掲げ、医療や職場、教育、司法、行政まで横断して“トレーサビリティ(追跡可能性)”と“人による監督”を義務づけます。14歳未満の利用には保護者同意を要し、AI生成物の悪用、特にディープフェイクで被害が生じた場合は最長5年の禁錮刑を含む厳罰が科されます。
執行体制は、デジタル・イタリア庁(AgID)と国家サイバーセキュリティ庁(ACN)が主管。当局間の役割分担として、中央銀行(イタリア銀行)や市場規制(Consob)など既存監督機関の所掌も維持され、分野別の罰則や監督と“AI横串ルール”を重ねる設計です。著作権では、AI“支援”であっても人の知的努力が認められる創作は保護対象としつつ、TDMは非著作物か認可研究機関の学術目的に限定されます。
産業面の火種も同時に置かれました。政府系ベンチャーファンド経由で最大10億ユーロの投資枠を用意し、AIやサイバー、通信などへの出資を促進する方針です。ただし国際的な投資規模と比べ“小粒”との指摘もあり、規制と成長の両輪をどう厚くするかが次の論点になります。
EU全体の文脈では、AI Actが2024年8月に発効済みで、6〜36カ月の猶予期間を経て各義務が段階適用されます。イタリアの“先行整備”は、他加盟国の国内実装にも影響を及ぼす見込みです。企業の実務では、未成年アクセス管理、生成物のラベリングと流通管理、説明可能性ログ、人の最終判断プロセスの明文化――これらを“出荷前仕様”として織り込むことがEU展開の新標準になっていきます。
最後に日本の事業者目線での含意です。イタリア法は“使い方の設計”を詳細に求めています。EU域内向けの生成AIプロダクトは、利用者年齢の検証フロー、ディープフェイク申告と削除の実装、モデル学習におけるTDMの適法性確認、そして医療・職場など高リスク領域での人の監督証跡――この4点を先に設計しておくと、域内拡張での手戻りを減らせます。国内外の報道も同趣旨で整理しており、今回の先行例は“規制を味方にする設計図”として活用価値が高いと言えます。