名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト

Ep.589 Neuralink、米国で“思考→テキスト”試験へ──発話障害の自立支援に挑む(2025年9月25日配信)


Listen Later

米ブルームバーグの報道や同日付の各社記事によれば、Neuralinkは米国で10月にも“思考をテキストへ”と変換する臨床試験を開始します。対象は発話障害のある人々で、キーボードやポインタを介さず直接コミュニケーションする手段の実装を目指す計画です。試験計画はプレジデントのD.J. Seo氏がKAISTでの講演で言及し、同社の装置は発話用途でFDAのBreakthrough指定を受けていると整理されました。


Neuralinkは2024年から人への埋め込み試験を開始し、2025年夏までに世界で12人が合計1万5千時間超使用。ウェブ閲覧やゲーム、SNS操作など“入力・操作”の実証を積み、次は“会話”という日常の中核機能へ標的を広げます。ブルームバーグは、同社が非医療用途(将来的な健常者応用)も視野にロードマップを描く姿勢を伝えており、医療から周辺領域へ裾野を広げる野心もうかがえます。


技術的な勝負所は三つ。第一に、個人差の大きい“内語(頭の中の発話)”の解読精度を、長時間の実生活で安定させること。第二に、感染リスクやデバイス耐久性、信号劣化といった古典的課題の管理。第三に、“話すリズム”や抑揚をどこまで自然に再現できるかという体験の質です。競合のParadromicsは2025年5月に発話解読を志向するデバイスの初のヒト試験を報告しており、Synchronもタイピング支援で臨床を進行中。発話・入力・操作の各用途で、多層の実装競争が加速しています。


制度面では、Breakthrough指定が開発・審査の迅速化に寄与しますが、医療機器としての市販前承認(PMA)への道のりはなお長く、在宅運用に必要なリハビリ・ソフト更新・データ保護の設計が並走必須です。とはいえ、“思考→テキスト(→音声)”が実用域に近づけば、ALSや脳幹卒中後の患者の自己表現や社会参加を大きく広げる可能性があります。まずは10月の試験開始と初期症例の経過報告が、技術・臨床・規制の三面で次の判断材料になるでしょう。

...more
View all episodesView all episodes
Download on the App Store

名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki