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Ep.601 Docker Model Runnerが正式版に──“ローカルで走るLLM”を標準ワークフローへ(2025年10月2日配信)


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9月18日、Dockerは「Docker Model Runner」の一般提供(GA)を発表しました。今年4月のβ公開から機能改善を重ね、エンタープライズの標準フローに耐える成熟度に達した、と位置づけています。正式版は“開発者ファースト”を掲げ、Docker Desktop/Engineに密に統合。Docker HubやHugging FaceのGGUFモデルをそのまま引き込み、OpenAI互換APIで即座に叩ける——そんな“いつものDocker操作でAIを回す”体験が核です。


DMRが持ち込んだいちばんの変化は、モデル配布の“型”をそろえたことです。従来ばらばらだったモデルファイルを、コンテナと同じOCI Artifactsとして扱い、レジストリ経由で組織内に配る。依存関係や権限管理はDockerの慣れた作法に乗るため、セキュリティとコンプライアンスの境界内で導入しやすくなります。ログやトレース表示、CLIとGUIの両操作、Apple SiliconやWindows/NVIDIA、Linux上のGPU対応など開発現場の“痒いところ”も押さえました。さらにDMR自体はオープンソースで無償提供。カタログ化された人気モデル群を無料でプルできる点も、チームの試験導入を後押しします。


もう一つの追い風が、エージェント開発との噛み合わせです。Dockerは7月に「Composeをエージェント時代へ」と題して、compose.yaml一枚で“モデル/エージェント/MCPツール”を束ね、ローカルから本番相当まで同じ記述で走らせる構想を打ち出しました。リソースが足りなければDocker OffloadでクラウドGPUへ逃がす道も用意。DMRはこのスタックの“ローカル推論エンジン”として、開発からCI、配布まで一気通貫の流れを作ります。


エコシステム連携も進みます。Hugging Faceでは、レポジトリ画面からローカル実行エンジンとして「Docker Model Runner」を選び、互換モデル(GGUF)でフィルタ検索→ワンクリック起動が可能になりました。研究コードと実行環境の距離が縮まり、“試す→比べる→配る”までを日常運用に落とし込みやすくなります。


ロードマップ面では、推論エンジンの多様化(MLXやvLLM)や、UIでのマルチモーダル対応、MCPツール統合の強化、さらにDocker Engineから独立した“単体デプロイ”の選択肢まで示されています。“ローカルで作り、必要に応じてクラウドへ伸ばす”開発様式を、Dockerらしい再現性と管理性で固めていく——そんな方向性が、今回のGAでいっそう明確になりました。


実務への効き目を一言で言えば、“AIもDockerの流儀で”。モデルはOCIで配り、Composeで束ね、足りない計算はOffload、SDKはOpenAI互換で差し替え最小。ローカル実行ゆえのスピード感とコスト可視化を保ちながら、セキュリティ境界内で段階的に拡張できるのが、現場の安心材料になります。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki