名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト

Ep.610 DeepSeek、V3.2-Exp発表──次世代アーキテクチャへの“中間着陸”(2025年10月2日配信)


Listen Later

9月29日、DeepSeekが最新モデル「DeepSeek-V3.2-Exp」を発表しました。公式説明は「次世代アーキテクチャへの中間ステップ」。従来より学習効率が高く、長いテキスト列の処理に強いことを強調し、実運用に近い課題での手応えをうかがわせます。公開の場はHugging Faceで、技術ノートには改良点として新しい“DeepSeek Sparse Attention(DSA)”の採用が明記されました。


同時にビジネス面の動きも鮮烈です。DeepSeekはAPI価格を「50%超」引き下げると告知。既存ユーザーが挙動を比べられるよう、旧V3.1(Terminus)の一時APIを10月15日(UTC)まで残す運用も案内しました。価格と互換の両面で“中間着陸”を丁寧に設計し、次世代機の前段で裾野を広げる狙いが透けて見えます。


技術トピックの中心はDSAです。Hugging Faceの技術説明では、細粒度のスパース・アテンションにより、長文脈での学習・推論効率を大幅に改善しつつ、出力品質は実質維持できると主張。V3世代で培ったアーキテクチャの延長線上に、長コンテキスト最適化の“新しい歯車”をはめ込んだ格好です。


市場の文脈で見ると、この「中間版」は十分な存在感を持ちます。V3とR1が年初にシリコンバレーと投資家を驚かせた記憶は新しく、今回のV3.2-Expも“価格と性能の両面圧力”でアリババのQwenや米系の有力モデルにプレッシャーをかけうる、とロイターは評しています。もっとも、本番の“次世代アーキテクチャ”ほどの市場撹乱は見込みにくいとの冷静な見立ても併記されました。


競合関係では、中国勢のアリババが大規模モデルの刷新を相次いで打ち出し、特定ベンチでDeepSeek世代を上回ると主張。中国内でのシェア争いが加速する一方、米勢との国際競争では、DeepSeekが“同等性能を低コストで”という路線をどこまで再現できるかが勝負どころになります。


総じて、V3.2-Expは“橋渡し版”でありながら、技術では長文脈・計算効率、事業では価格戦略で手を打ってきた印象です。年末以降に控える本命アーキテクチャの土台を固めつつ、開発者に早めに触ってもらい、ワークロードや評価軸を実地で集める──その実務的な一歩が、次の本番リリースの勢いを決めることになりそうです。

...more
View all episodesView all episodes
Download on the App Store

名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki