名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト

Ep.621 Qwen3-VL登場──235B“思考版”までオープンでマルチモーダルが実戦投入フェーズへ(2025年10月9日配信)


Listen Later

9月下旬、Qwenが新しいマルチモーダル群「Qwen3-VL」を発表しました。シリーズの目玉は、オープンウェイトで公開されたフラッグシップ「Qwen3-VL-235B-A22B」で、用途別にInstruct版と推論重視のThinking版を同時公開。公式ブログとコミュニティ告知で“現行Qwenファミリー最強のVL”をうたうとともに、開発者向けの実装ガイドとAPI連携も一気に整えてきました。


Qwenはこの発表で、視覚認識や図表・文書理解、長尺動画の時系列把握までを広くカバーしつつ、テキスト単能でも一線級の性能を目指す設計だと説明しています。特徴として、256Kの長コンテキスト、空間・時間の位置合わせを高めた推論、そして多言語OCRの強化などを挙げ、企業の現場ワークフローに直結する“読む・考える・説明する”一連の体験を前提にチューニングしているのが見て取れます。


性能面の主張では、Qwen自身が「Instructが視覚系ベンチでGemini 2.5 Proに匹敵あるいは凌駕、Thinkingは複数のマルチモーダル推論ベンチでSOTA級」と強気の自己評価を提示しました。もっとも、これは自己申告に基づく数字であり、実務では独立評価やドメイン別検証が欠かせません。とはいえ“閉じた最上位”に肉薄するオープンの選択肢が増えた意義は小さくありません。


開発者体験も急速に整備されています。GitHubの公開リポジトリでは9月23日の235B公開に続き、10月4日にはより扱いやすい「Qwen3-VL-30B-A3B」系のInstruct/Thinkingも追加。さらにFP8版の配布で推論・学習の実用負荷を下げる工夫も進み、Hugging Faceや各種ホスティングでの運用が広がっています。商用利用に親和的なApache-2.0ライセンス採用も、エンタープライズ導入の後押しになりそうです。


産業利用の文脈で見ると、文書と図表まみれのバックオフィス、現場カメラ由来の映像、設計図・取説・時系列ログといった“バラけたモダリティ”を統合しやすくなるのが最大の効用です。例えば製造なら検査映像と工程票の突合せ、金融・公共ならスキャンPDFのOCR+根拠付き要約、メディアなら長尺素材のカタログ化とナレーション生成までを、一つのモデルで連続的に回しやすくなります。Qwen3-VLの“Thinking版”は推論チェーンを伴うタスクで強みが出やすく、社内RAGやエージェントと組み合わせると、説明責任と再現性の両立に一歩近づくでしょう。

...more
View all episodesView all episodes
Download on the App Store

名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki