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Ep.624 AMD×OpenAI、6GWの“超巨大AI計算”提携──初弾は2026年のMI450で1GW着工(2025年10月9日配信)


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10月6日、AMDとOpenAIが“6ギガワットのAMD GPUを段階的に導入する”戦略提携を正式発表しました。契約は複数年・複数世代にまたがり、初弾は2026年後半にInstinct MI450で1ギガワットを着工。その後、将来世代のGPUやラックスケールのAIソリューションまで視野に、6ギガワット規模へ積み上げていく青写真です。両社はMI300X/MI350X時代からの最適化の知見を持ち寄り、製品ロードマップのすり合わせも進めるとしています。


資本面では、AMDがOpenAIに対して最大1億6000万株分のワラント(権利行使価格は$0.01)を発行。権利は段階的な調達達成に連動して確定し、最初の1GW導入で一部が確定、最終的には6GW購入で満額に到達します。さらに株価水準などの追加条件も設定され、報道では$600水準の目標連動も言及されました。いずれも“実際に大規模展開が進むほどOpenAIの権利が増える”仕立てです。


今回の発表直後、米主要メディアは“AMDがNVIDIA一強のAIチップ市場に対抗する起爆剤”と位置づけ、株価の急伸など市場の反応も伝えています。AMDは本提携を“数十億ドル規模の収益貢献(tens of billions)”と表現。OpenAIはNVIDIAやMicrosoftとの関係を保ちつつ、サプライヤーの多様化を明確化した格好です。初期1GWの工程やマイルストーンの設計が公開情報として示されたことで、2026年に向けた実装の見通しも具体度を増しました。


実務の景色を描いてみましょう。1GW級の着工は、学習クラスターの“塊”をまず確保し、モデル開発・自己改善・推論配備の循環を安定運転に乗せる段取りです。MI450世代を皮切りに世代交代を織り込むことで、性能/電力効率の進化を前提とした“継続増設”が可能になります。OpenAIにとっては、モデル規模と利用者増が同時進行する中で、供給リスクを分散しつつ、ソフトウェア側のスタック最適化(コンパイラ、通信、メモリ管理)をAMD向けにも深められる利点があるでしょう。


一方のAMDにとっては、ラックスケールでの量産・運用知見をOpenAIとともに磨く機会になります。ハード単体の性能競争に留まらず、ネットワーキングや冷却、スケジューラまで含めた“AI工場”の総合最適で競争力を引き上げられる。株式ワラントという“成果連動の絆”を結ぶ設計は、供給・価格・品質の三点で長期のアラインメントを効かせる狙いと読み取れます。市場はこの“量と継続性”を先読みし、ニュース直後のプレマーケットでAMD株が急伸したと報じられました。


最後に一言、現場目線です。6GWという大枠の数字に目を奪われがちですが、実際の勝負は“最初の1GWをいかに遅延少なく立ち上げ、翌世代へ滑らかに接続できるか”。この初弾の出来が、その後の加速とワラントの権利確定にも直結します。OpenAIはNVIDIAなど既存パートナーとの併走を続けつつ、AMD系スタックの成熟を実証できるか。2026年後半、MI450の立ち上げがひとつの関門になりそうです。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki