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Ep.630 “職場AIの玄関口”──Google「Gemini Enterprise」発表の意味(2025年10月16日配信)


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グーグルは米国時間10月9日、企業のあらゆる業務フローにAIを行き渡らせる新基盤「Gemini Enterprise」を発表しました。Thomas Kurian氏はブログで、これを“職場のAIへの新しい玄関口”と表現。裏側ではGoogle DeepMindの研究に基づく最新Geminiモデル群と、GoogleのTPUを含むAI最適化スタックを土台に据え、業務で求められる知能と安全性、拡張性を一体で提供すると強調しました。


特徴は、単なるチャットボットを超え“六つのコア要素”を一つのUIに束ねた設計にあります。ノーコードのワークベンチで現場部門でもエージェントを編成し、導入初日から使えるGoogle製の事前構築エージェント群を追加。社内外の文書・アプリ—Google Workspaceはもちろん、Microsoft 365やSalesforce、SAP—に安全に接続し、中央集権のガバナンスで可視化・監査まで一元管理します。さらに10万超のパートナーからなるオープンなエコシステムを掲げ、“組み上げ不要の統合基盤”を前面に出しました。


ユースケース面でも厚みがあります。データ業務を自動化する「Data Science Agent」(プレビュー)を公開し、MorrisonsやVodafoneが既に活用。顧客接点ではCustomer Engagement Suiteを刷新し、ボイスを含む多言語の次世代会話エージェントをアロウリストで提供開始。ドイツのCommerzbankは相談の70%を自動解決する実績を示し、日本ではメルカリがコールセンターをAIで再設計し、担当者負荷を2割以上削減して5倍のROIを見込むとしています。さらにGoogle VidsやMeetの同時通訳拡張など、Workspace内でのマルチモーダルな“仕事の変換”も打ち出しました。


開発者の生産性も押し上げます。端末常駐の「Gemini CLI」と、その拡張フレームワークにより、CI/CDや監視、課金など開発〜運用の道具立てとAIを直結。エージェント同士の連携はGoogle主導のオープン標準「A2A(Agent2Agent)」が担い、決済まで含む業務完結には新たな「AP2(Agent Payments Protocol)」を用意。エージェントのコミュニケーションとコマースの標準化に踏み込み、“エージェント経済”の基盤を整えにいっています。


パートナー体制も同時拡充です。BoxやServiceNow、Workdayなど主要SaaSとのクロスプラットフォーム連携を広げ、審査済みエージェントを見つけられる「AI agent finder」も公開。大手コンサル各社はGemini Enterpriseの導入・内製支援を発表し、PwCは連携強化を正式に表明しました。


なお料金水準については、外部報道で“1ユーザー月額30ドル(中小向けは21ドル)”という観測が出ています。マイクロソフトやOpenAIなどが進める“エージェントの企業実装”競争に、Googleがフルスタックで真正面から挑む構図が鮮明になりました。正式な契約・提供条件は地域やプランで異なる可能性があるため、導入検討の際は公式発表の確認が必要です。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki